ダンガンロンパ・リバイバル ~みんなのコロシアイ宿泊研修~ 作:水鳥ばんちょ
【ログハウスエリア:折木公平の部屋】
音も無く窓を貫き続ける朝の日差しは、窓に向けていた顔を照らしだし、俺の意識を目覚めへと誘っていく。
「……うぅん」
何となくまだ眠っていたい。そんな気持ちが先行したためか、まぶたを貫通するその光から逃げるように、俺はベッドの中でグルリと身を翻す。
「ふぅ……」
そんな朝の目覚めから小さく抗う俺に、1度起きたのならキッパリ体を起こせ、と生真面目な信号を脳は訴えてくる。俺は観念したように、ため息をつきながら身を起こしてみる。
「……」
ボーッとしたように、数秒ほど朝の眠気の余韻に浸る。その目は寝ぼけの様相を呈しており、まだ開ききっていない。
わずかな間を挟んだ俺は、何気なしに壁にかけられた時計を見上げてみる。
「6時半…か…」
…昨日よりも遅めの起床だ。
遅れた原因は恐らく、昨日陽炎坂が主催した運動会の疲れによるものだろう。まだフルとは言えない脳の回転で、わずかな寝坊の要因の当たりをつけてみる。…まあつけただけで、特に恨みを持ったりはしない…むしろ楽しかったことだから他意は無い…。
新しく綴られた思い出の1ページに笑みをこぼしつつ、意識の目覚めを促すための朝のルーティンを済ませる。既に3日も繰り返しているだけあり、その動きはスムーズだ。
「準備は良し……そろそろ……」
『キーン、コーン、カーン、コーン……』
“朝ご飯を食べにでも行くとするか…"そんなセリフをこぼそうとした矢先、施設全体にチャイムの音が響き渡る。
『ミナサマ!おはようございまス!!朝7時となりましタ。起床時間をお知らせさせていただきまス!それでは今日も、元気で健やかな1日送りましょウ!』
…どうやら支度を済ませている間に、朝のアナウンスの時間になってしまったようだ。反町たちを待たせるのも申し訳ないと感じた俺は、炊事場へと足を急がせようとする。
『……と、平常であればココでアナウンスを締めくくるのですガ……本日はキミタチに報告がありまス!!至急!!!……ええと具体的には……10分以内にグラウンドまでお越し下さ~イ!“時間厳守”ですので、来なかった生徒には罰則が発生いたしま~ス!……それでは、それでハ』
ブツンッ――――――
「な…なんだ?……今のは?」
“10分以内にグラウンドに来い、来なければ罰則”
唐突に追加された物騒なアナウンスに対し俺は、小さく無い戸惑いを覚える。今まで数回しか聞いてこなかったとはいえ、こんな風にモノパンが言葉を添えてくるなんて初めてのことであったからだ…。
…だがここ数日のモノパンは俺の部屋に果物を置いていったり、ランドリーで店番をしていたり、運動会の裏方に完全に徹して姿すら見せなかったりと、初日の挨拶に比べれば大人しいモノだった。……気味が悪いくらいに。
…今思えば、コロシアイを積極的に説いてくるあのモノパンが、この3日間で目立ったアクションをしてこなかったのはどう考えても可笑しい…。今までの音沙汰の無い期間の中で、モノパンが何らかの企てをしているという可能性を少しは考えておくべきだったのかもしれない。
……何をするつもりなんだ。
……俺達に何をさせるつもりなんだ。
……一体、何が始まろうとしているんだ。
これから起こるであろうロクでもない未来への不安。何も疑問も持たずにノウノウと過ごしてきた過去の自分への責。そして……今急がなければ、また初日の見せしめような事が起こるのでは無いかという恐怖。様々な負の感情が俺の心の中に次々と湧いて出てくる。
――すると、ツンとした痛みが頬から響く。
頬を走る、大きな切り傷。モノパンに刻まれた見せしめの証。今まで痛みなんて感じたことも無かったのに……何故か気づいたようにピリピリとうずき始める。
今になって、あの時の痛みが巡ってきたかのようだ。
「……少し…頭を冷やそう」
これ以上マイナスの展開を考え続けても、足がすくむだけだ。何の前進にもならない。頬の痛みで落ち着きを取り戻したようにそう考え、ふぅ…と少し長めの呼吸を取る。脳の活性がちょっとずつ明瞭になっていくのを感じる。
「……とりあえず、だ。まずはグラウンドへ行ってみよう」
そう自分に言い聞かせるように、小さくつぶやく。
俺は急ぐように、それでいて冷静に部屋を飛び出す。
他の皆もさっきのアナウンスを聞いていたためか、周りのログハウスからは人の気配は無い。先にグラウンドへ向かったのだろう。
――――どうか、何事も起きずに…。
そう祈りながら、グラウンドまで続く歩道を、俺は足早に踏みしめていく。
* * *
【グラウンドエリア】
何とか時間内にグラウンドへとたどり着いた俺は、少し乱れた息を整えつつ周りを見回してみる。他の生徒の有無を確認をするためだ。
……見たところ俺以外の全員は到着済みのようで。時間厳守という突発的なタイムアタックを、俺達は無事にクリアできたようだ。
だが、それぞれの間からは物々しい匂いが立ちこめており、個人差はあれど皆の顔色は優れていない。雰囲気的には2日目の朝に起きた、小さな言い争いの後の余韻に似ている。
…会話という会話も当然無い。ただどこかを見続けていたり、足下の石ころを所在なさげにイジっていたり、ベンチにじっくりと腰掛けていたり……酷く重たい空気に当てられ、皆一様に口を開けていないように思える。
そんな俺も重い圧をモロに受けてしまい、言葉と共に息を呑む。凡人の俺には、沈黙を選択せざるを得なかった。
それから、数分。俺は足のつま先で石ころを蹴飛ばすわけでも無く、ベンチに座り込むわけでも無く。じっくりと、演説台をにらみ続けていた。…ここに連れてこられた初日に、モノパンが初めて現れた場所。
多分というか確実に、またあそこにモノパンは降りてくる。そう確信じみた直感が、俺の目を演説台に貼り付けている。
――そして……どこからともなく、聞き慣れた、それでいて聞き飽きたような声がこだまする。…奴が来る。
「くぷぷぷぷぷぷぷぷ…どうやら全員集まってくれたようですねェ……しかも時間内に……施設長は嬉しいでス、嬉しいですよォ……」
今度は上からではなく、生えてくるように演説台の下からニョキリとアイツは…モノパンは姿を見せる。
声を合図に、元々現れてくるであろう場所を凝視していた生徒以外は、演説台に目を向ける。…これで全員の視線の先が、モノパンに集積した構図となった。
「えー、すでにアナウンスで済ませてはいます、ガ!改めて……キミタチ!おはようございまス!!今日も良い天気ですねェ」
いつも通り、場違いな程に朗々とした口調でモノパンは朝のアナウンスのセリフをリフレインさせる。その人を小馬鹿にした態度に数人の生徒達が苛立ちを表わす。
「やいやいモノパン!一体何事だい!?アタシらはこれから朝ご飯の時間なんだよ!!」
イライラを抑えきれなかったのだろう、誰よりも早く反町がモノパンに食ってかかる。相当怒っている様子に俺は思わず息を呑む。
「そーだそーだー!ご飯が冷めたらどうするんだー!」
「折角今日のメニューは、ウチの大好きな卵かけご飯やったのに……ホカホカご飯がホカホカしなくなってしまうやろ!!」
「腹減ったぜええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
「…ここまで全員メシの話しかしてないんだよねぇ。……食い物の恨みはなんとやらだねぇ」
反町の切り込みに追随するよう、水無月達が少し的の外れた文句を連ねる。
「くぷぷぷぷ…まあまあ、そうカッカしないでくださいヨ……ものの数分で終わりますかラ…」
そう含みのある言い方で反町達を制するモノパン。そして、コホンコホンともったいぶるように喉を鳴らし出す。
「ここにキミタチが入所してから早3日……とても、とても平和な日々でしタ」
初日の挨拶と同じように、モノパンは演説台の端から端まで行ったり来たりを繰り返しながら訥々と語り出す。
「しかしワタクシにとってしてみれば……とても、と・て・も!!退屈な日々でしタ……」
丸々とした両手でステッキを握り、訴えかけるように、語気を強める。
「まあ?ワタクシとしても?この3日間何の行動もしてこなかったですシ?しょうが無いといえばしょうが無いのですが?」
…しかしその語りは、段々とモノパンの自分語り…というか愚痴のようなものへと転換し始める。そしてその間延びしかけている雰囲気を察したのか、怪訝な顔色になる生徒達がチラホラと出てくる。
「…それに、ワタクシとしてもココの運営も始めたばかりで、コロシアイ関連の事に手が回らなかったので、そちらに関してもしょうが無いと言えばしょうが無いとも言えまス………後なんか生徒達はそんなワタクシを妙にこき使ってきて仕事を増やしてきますシ…」
「あ、あの~つまり何が言いたいんですか?」
「……こっちからしてみれば、今が退屈な時間」
「ね~もう帰って良い~?」
うつむきながらブツブツと言葉を落とすモノパンに対し、生徒達はうんざりとしたように口々に文句を言い出し始める。
「ですがですがですが!!!そしてそんな退屈な毎日も今日限り……つまり、サヨナラバイバイなのでス!!」
「あの、つまって無いんですけど…」
「言葉の扱い方が成っていないな……稚拙といえばわかりやすいか?」
「いやむしろ分かりにくくなってるですよ……」
俺達が生徒が自分勝手に野次を飛ばす中で、全くと言って良い程モノパンは目もくれず、語りを止めない。完全に自分の世界に入り込んでいるようだ。
――――すると、モノパンはガバッ!とこちらへと急に向き直る。
「さてキミタチ!!この惰性に伏した状況を覆し、ドロドロのチミドロ的な状況へと落とし込むためには“何が”必要だと思いますカ?」
なんの前触れも身も蓋も無い、それでいて物騒な問いかけを繰り出すモノパン。唐突な意識の方向転換に対し俺達は、首を傾ける他無かった。
「え~!急に変なこと聞かないでよ~!」
「それって何?もしかしてナゾナゾ!!ちょっと待ってね~、今から考えてみるから」
「なぞなぞかー。ウチ不得意中の不得意やから、他のもんに任せるわ」
「アタシもパスだよ」
「いやいやいやいやいやいや……そんなのんきにシンキングタイムするムードじゃないと思うんだけどねぇ……ていうか水無月さん!そこまでマジになって熟考しなくて良いんだよねぇ!!!静かすぎて怖いんだよねぇ!!」
「ぬう…分かるようで…分からないでござる…もう頭のここら辺まで来ているような気がするのでござるが…無念!!」
「……解答不能」
「あんた達もかねぇ!!」
しどろもどろになりながら言い合いをする様子を、モノパンは嘲笑するかのように笑みを浮かべながら見据える。
「くぷぷぷぷ…分からないですか?まあ分かっていても、言いたくないですよねェ?この質問ってナゾナゾっていうよりかは、消去法で解けてしまう選択肢ありの穴埋め問題みたいなものですかラ。本当~に分からない人なんてごく少数だと思いますヨ………」
俺達の心の内を完全に理解しているように、何もかもを見透かしているように…モノパンはその笑みをさらに深くする。すると、少し面倒臭くなってきたのか、モノパンは“そろそろ答え合わせでも……”と言いかける。
「――――“動機”」
たった一言の言葉…いや2文字の言葉が、俺達の間を風のように走っていく。その2文字を耳にしたモノパンは手を口元まで持って行き“くぷぷぷぷ”と“当たりでス”と言いたげに笑いをこぼす。
俺達は振り返り、その声の主……落合の居る方向へと顔を向けた。
「人が人を殺めることによる平穏の破壊、そして君にとっての退屈な日々の打破。これらを全て行うためには、誰かに秩序を破らせなければならない……しかし、何の意味も無く秩序を破るというのはあまりにも愚行。常人であれば、鼻で笑って“あり得ない”と、口々に言い始めるのだろう。だけど、もしそこに秩序を破るにたり得る“理由”というものがあれば……」
“きっとその誰かは、罪を犯してしまうんだろうね”
そう長々として口上を歌うように落合は言い終えると、眠るように静かに、ベンチへと腰を沈める。自分の役目は終えたとばかりに、口を閉ざし、それ以上は何も話さなかった。
「……“動機”」
「くぷぷぷぷ、ご名答。落合クンには花丸をあげちゃいまス……まああげたところで何かメリットがあるわけでは無いんですけどネ」
モノパンは満足げに頬を赤らめ、鼻で息をならす。
「……では、キミがこの場にボク達を呼び寄せた理由は、動機をボク達に与えるため…ということかい?」
「簡単にまとめてしまうならそうなりますねェ……」
その発言を起点に一瞬、悪寒が背中を伝う。俺は目の前のモノパンから、底知れないナニかがぞわりぞわりとにじみ出き始めているように錯覚する。
「ま、まずいんだよねぇ。皆!耳を、耳を塞ぐんだよねぇ!!今からあいつ絶対碌でもない事を言い出すと思うから、早急に対処するんだよねぇ!!」
「オッケー!!……はい!!!塞いだよ!!!」
「あーあー何も聞こえへんでー。今のウチは携帯で言うマナーモード状態やでー」
「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!俺も!!!全力で!!!耳を塞ぐぜええええええええええ!!!」
「あの陽炎坂が耳も目も塞いで微動だにしない…だと…?」
「…ある意味1番シュール」
「そもそもアイツを破壊してしまえば良い話なんじゃないのかい?何も言わなくなるまでボコっちまえば動機なんてもの聞かなくて済むじゃ無いか」
「ダ、ダメですよ!!それこそ秩…秩……ええと、その、何かを違反してしまいますよ!!」
「…せめて秩序くらい言えて欲しかったですね」
「大丈夫だよ!今のアタシは喧嘩に明け暮れた全盛期並に怒りが有頂天だからね。早くあのヘラヘラした面に一発ぶち込みたいって拳が唸りに唸っているよ」
「ヤバい…反町さんは急場になるとセルフで話しを聞かない人になるんだったんだよねぇ………沼野君!!押さえ込むの手伝って欲しいんだよねぇ!!」
「……ん?何でござるか?」
「アンタも耳塞いでたのかねぇ!!!忠告を聞いてくれてありがとうなんだよねぇぇぇぇ!!」
さっきまでの不穏な空気はどこえやらと、ギャーギャーと騒ぎ出す生徒達。ちなみに俺は、古家の発言と同時に耳に指を入れて蓋をしていたので、この騒動の一部始終を理解できてなかったりする。
すると、そんなわちゃわちゃとした騒々しい雰囲気に、モノパンは困ったように“コッホン!”大きな咳き込みをする。その対応が効いたのか、全員がモノパンの方に意識をむき直し、静まりかえる。
「……えーお騒がしい所申し訳ないのですガ………実のところ、今この場で今回の動機をキミタチにお渡しするわけでは無いんですよネ」
「何やと!!そんなら耳にチャックした意味あらへんやんけ!!」
「…ん?今モノパン、何か言ったでござるか?」
「沼野、くん。もう耳は、いい、よ?」
「であるなら我々がココにいる意味が無いであろうがああああ!!貴様ぁ!このワタシの崇高なる睡眠の時間を返上願うぞぉ!!!」
「仰々しい言い方の割に、結構腰が低いですね」
…確かにおかしな話しだ。動機を与えるためにココに集合させたのに、このタイミングで動機とやらを俺達に与えないのなら…一体どこで…?
「キミタチの言い分も最もでス。ワタクシの行動はハッキリ言って矛盾していまス」
「その通りだ!!何も無いというのならワタシは帰らせてもらうぞ!!!寝直す!!」
「……私も寝直す」
「驚くほど単純な行動原理なんだよねぇ…」
モノパンの肯定に嫌気が差したのか、それとも寝起きでイラついていたのか、雨竜と風切は、そそくさと自分の寝床へと帰ろうとする。他の生徒もモノパンの言い分に違和感を感じていたのか、2人を止める様子は無い。
「……良いですよ?帰っても。ですが~帰った際には、ご自分の机をご確認くださいネ?」
「自分、の、机?」
「それは、一体どういう意味?」
「くぷぷぷぷぷぷ、ワタクシは言いましたよね?“ココに呼び寄せたのはキミタチに動機を与えるため”…と」
「まあそれを言ったのはニコラスの奴だけどね」
「細かい事は良いのでス!!……コホン。ですが、“ワタクシが手から直接与える”とは一言も言っておりませン」
「ど、どういうことなのだ!………・ッ、まさか……!」
「そうでス…雨竜クンや他の何人かの生徒はお気づきかもしれませんが……キミタチがココに集合した時点で、ワタクシはすでに、“動機”を……いいえ、この際ですから言い換えましょウ……ワタクシからの“手紙”を!!キミタチに渡していたのでス!」
「て…手紙?」
では……もう俺のログハウスにある机の上には……モノパンの言う、“人が人を殺す理由”があるということか。
俺はモノパンがこの集会に制限時間を課した理由を、何となくだが察することが出来た。制限時間を設ければ、俺達は罰則を恐れてそそくさと集合場所に行くことになる。そうなれば、集合している間俺達は“確実にログハウスの中には居ない”事になる。
「随分と、回りくどいマネをするのね…」
「くぷぷぷぷ、どうとでも言って下さい……まあぶっちゃけた話、キミタチが寝静まったときに、こっそりと置いておこうかな~とか思ったんですけど~、何か丁度良く~全員が寝てる時間無かったから~なんて~」
“て・い・う・か!”と先ほどの冗長な口調から一転、怒鳴り口調に様変わりするモノパン。
「キミタチ夜更かししすぎ!!後起きるの早すぎ!!ちゃんと適切な睡眠時間とれええええええ!!!!」
「何だと貴様ぁ!!夜こそがワタシの極限にして至高の聖なる時間!!つまり、1ミクロンとて無駄に出来ぬ観測の時間なのだぁ!!それをとやかく言う筋合いは貴様にはないのだああああ!!」
俺達の睡眠時間のラグと、健全とは言えない生活習慣に怒りをぶつけるように、モノパンは半分ほど正論に近しい言葉を並べる。そして、恐らく夜更かししすぎている人間の1人であろう雨竜が、真っ先にその言い分に噛みつく。
「もう体壊れても知らないですからネ!!プンプン何ですからねえええヱ!!」
そうあざとい言葉を言っているはずなのに全く愛嬌を感じさせないモノパンは、そのまま去って行く。最後の最後に締まらないというか、もう少し愚痴を減らせばカッコのついた去り方が出来るのに……そんな意味の無いアドバイスがよぎったが、表に出さず心に仕舞っておくことにした
* * *
「クソ!あのモノクロパンダめ!!言いたいことを言ってそのまま消えるとは、卑怯であるぞ!!」
「雨竜、取りあえず落ち着くです…それに元々パンダはモノクロです」
雨竜が今はもうこの場を去ってしまったモノパンに対しやり場の無い怒りをぶつけ続け、雲居がその雨竜をやれやれとしたように宥めている。
そんな中で、誰かが“あのぅ…”と奥手ながらも口火を切り出す。
「モノパンさん居なくなってしまいましたし……これからどうしますか?」
「そりゃあ決まっているさね、その“動機”とやらを拝みに行くに決まっているさね!」
「え、ええ!み、みみ見に行くのかねぇ!?あの話しを聞いた上で!?」
「もちろんさね!!今ココで動機とかいう紙切れ如きに腰が引けてちゃあ、族長の名が廃るさね!!」
「だが…モノパンのコロシアイへの本気度は計り知れないものだ…あまり無闇に突っ込んでいくのは、無謀すぎじゃないか?」
「でもでもー、カルタ的にやっぱり気になるんだよね~。あのモノパンがその紙切れでワタシ達をどんな風に陥れようとしているか~とか、どんな風にワタシ達をコロシアイにかき立てさせようとしているのか~とか」
「み、水無月殿の意見について深くは聞かないことにして……とどのつまり好奇心のままに手紙を見たい、てことでござるな?」
「そうだよー!」
知らず知らずのうちに話し合いをする態勢になる俺達。今の時点の意見を見てみると、動機を見る派と見ない派で二分しているように見受けられる。ちなみに俺自身は、怖いもの見たくなさで、見ない派だ。
「そういう沼野は、どうなんだ?」
「……かくいう拙者も実は是非とも読んでみたいと思っている派でござる」
「ほうほう…ではその心、聞かせてもらえるかな?ミスター沼野」
「どーせ怖い物見たさやろ?」
「せせ、拙者とて考え無しに意見を連ねているわけではござらん!!失礼でござる!!……ふぅ…拙者はただ、“情報”が何よりも欲しいのでござる」
動機を見たい派の沼野の意見から“情報”という気になる単語が飛び出したことで、生徒達が注目を集める。
「情報…?」
「皆の衆は何となく察していると思うでござるが。今この施設について、そして自分たちが今どのような状況に陥っているのかについての調査を、ここに連れてこられた初日から始めているでござるよな?しかし、見ても分かる通り現状その調査は行き詰まっている状態でござる」
いつになく真剣な表情で沼野は俺達に自分の意見を述べる。内容はネガティブであるが、沼野の言っている事は事実で…俺達が置かれている状況を把握するための尻尾を掴むに掴めていない膠着状態が、この3日間続いてしまっている。
「先の見えない調査ほど、時間の無駄はござらん。そこで!あのモノパンからの“動機”でござる!!」
「つまり沼野君が言いたいのは、その動機とやらを情報源にしよう…ということ?」
「如何にも。全ての黒幕であるあのモノパンから出てくることでござる。きっと拙者達個人に関する何かが書かれており、今拙者達が知りたいことが書いてあるやもしれないでござる。……コレを無碍にしてしまっては拙者達の明日に前進は無いに等しでござる。……多分」
…最後まで自信を持って言って欲しかったが、沼野の言いたいことは分かる。正論とまで行くかは分からないが、今の悶着状態を打破する理にはかなっている。
そんな沼野の意見に俺と同様に納得したのか、動機を見るのに反対気味だった派閥も賛成派に傾いているように思える。賛成派はむしろ俄然やる気になっており、さっきよりも無策で突っ込みそうな雰囲気を感じる。
「それやったら渡りに船や!!今すぐ手紙を見に行くでぇ!!ほら古家も!いつまでもまごつかんで、さっさと肝を据えるんや!!」
「ええ…でもぉ…」
「ああもうハッキリしないねえ!!さっさと行くよ!!ほら!!」
「ああ…襟は掴んじゃダメなんだよねぇ!服が伸びちゃうんだよねぇ…」
元々動機を読むのに賛成派だった反町を先頭に、鮫島と古家はログハウスの方へと戻っていく。まあ古家の場合は『無理矢理』に近いが…。
「…ワタシも戻るしよう。沼野、貴重な意見であった」
「まっ、私は何言われようと帰ってこっそり読んでいたですけどね…」
「……眠い」
「悪い事書いてないと良いな~」
雨竜、雲居、風切、長門も次いで出て行く。
「あっ…えっと、私はまだ食事を済ませていないので、それを済ませてからにしますね…それでは」
「あ、わ、わたし、も、行く」
「腹減っては戦はなんとやら!!だねー」
「え?それって何の言葉ですか?……もしかして、外国の言葉とかですか?」
「ええ…このことわざ知らないのはさすがのワタシでもビックリだよ…」
小早川、贄波、水無月は食欲優先らしく、口ぶりからしてだが、恐らく炊事場の方へと向かっていった。
「ではでは拙者もログハウスへと……と、言いたいところでござるが。……朝衣殿、ニコラス殿、折木殿。最後に1つ質問をさせてもらってもよろしいでござるか?」
皆の流れに乗ってそのままグラウンドを後にしようとした沼野は、出る方向とは逆の朝衣へと向き直る。
「ええ。よろしくてよ?」
「…俺も構わない」
「勿論いつ、いかなる時でもこの名探偵ニコラス・バーンシュタインについての質問は随時受付中さ」
「………先ほどの小さな会議の中の話しでござる。三人は、さっきの拙者が考えを述べている間、終始聞き役に徹していて、意見という意見を出さなかったでござる。……どうして反論してこなかったのでござるか?…短い期間ながらも其方達の聡明さは理解しているつもりでござる。動機を見た後に皆が起こす行動など、容易に想像がつくはずでござる」
先ほどの真剣な表情を保ちながら、朝衣に本当に些細な質問を投げかけてくる。俺が聡明かどうかは置いといて……確かにいつもは、こういう話し合いの場となると率先して議論を引っ張る朝衣、おちゃらけながらも言いたい意見は言うニコラス、この2人が何も言ってこなかったのは少し気になる話しだ。
その質問に、ニコラスは“ふっ、単純な話しだよ”と鼻で笑いながら、余裕たっぷりといった態度で質問に答え始める
「ボクも、動機を読みたい派の一派だった……というだけさ。だから、ボクはミスター沼野の意見を尊重して何も言わなかったのだよ」
「私も同じよ。ジャーナリストとして情報は命だから…ね?」
「俺の場合は、元々は進んで読みたくは無かったけど……沼野の話しで考えが変わったというところだ。……俺自身、自分についての情報は喉から手が出るくらい欲しい代物だからな。“俺が読んでも良くて、皆は読んではいけない”なんて、自分勝手な事は言えん」
俺達3人はそれぞれ簡潔に質問に答えていく。だが、俺に比べて2人の答えは妙にぼやかしているように思える……コレは下手な勘ぐりという奴なのだろうか?
「…成程、そうでござるか……。うむっ!納得したでござる!いやぁ、珍妙な質問をして申し訳なかったでござるな。拙者も、もう行くでござる。……それでは、御免!」
俺達3人の回答を聞いて少し思考した沼野は、先ほどの難しげな表情を崩し、いつもの穏やかな表情に戻る。そして、そのままグラウンドから姿を消していった。
「…じゃあ俺も行くよ。またな、2人とも」
「ええ、それじゃあね折木君」
「シーユーアゲイン。ミスターマイフレンド」
グラウンドを出て行った沼野に続くように、“俺もそろそろグラウンドから退散しようか”と2人に背を向ける。……するとふと、思い出した…というか、気づいたことを2人に向き直り、聞いてみる。
「…そういえば、陽炎坂と落合はどうした?モノパンの話しの最中に居た事は把握できていたんだが……」
「ああ、彼らのことかい…?」
「陽炎坂君はいつの間にか…落合君は当たり前のように居なくなってしまっていたわ…」
「声を掛けるまもなく……ね?」
……どうやらあいつらには俺達の話し合いは殆ど無意味らしい…。俺は、本当にいつも通り平常運転の2人に苦笑しつつも、どこか安心感を覚えるようになっていた。
* * *
【ログハウスエリア:折木公平の部屋】
「これか……」
グラウンドから自分のログハウスへと帰宅すると、部屋の一角に鎮座する机の上に見慣れない封筒があることに気づく。俺は恐る恐るながら机に歩み寄り、封筒を手に取る。封筒を裏返してみるとそこには“折木様へ”と宛名が書かれていた。
“一体手紙の中には何が……”
心の中でそうつぶやくと、心臓の鼓動が段々と早まっていくのがわかった。たった1枚の封筒に収まる紙を見るだけだというのに、異様なほどの緊張感だ。
ゴクリと唾を飲み込み、1度大きく深呼吸をしてみる。気休め程度ではあるが、緊張をほぐすための所作のようなモノだ。
――――俺はゆっくりと、震えてしまっている指先で封を切り、中にある手紙を取り出そうとする。
「…随分と肩に力が入ってしまっていますねェ。このぐらいで身震いしていたら、これから先が思いやられますヨ?」
「うぉぉっ!!」
手紙と相対する俺の背後から、朝に嫌というくらいに聞き馴染んだ声が背中に響く。急いで振り向くと、そこにはいつものニヤけツラをひっさげるモノパンが両手を背中側で組みながらこちらを見ている。俺は条件反射のように後ずさり、そして、その余った勢いでガンッ!と腰を机に激突させる。
「っ……!!!」
「くぷぷぷぷ、やっぱり折木クンは驚かしがいがありますねェ……ホントーに良いリアクションを取ってくれまス」
あまりの腰の痛みに悶絶する俺を、モノパンは楽しむようにケラケラと笑い出す。
「き、急に現れるな!まだ何か用があるのか!!それともタダのイタズラか!!」
「イヤイヤイヤ、ちゃんと用事があってここに来たので……まっ、いたずら半分、仕事半分みたいなところはあるのは内緒ですけド?」
「わざとらしく、内緒事を漏らすな…!ていうか半分は俺をおちょくっているじゃないか!」
俺は未だ引かない痛みに耐えながら、モノパンとのやりたくも無い会話のキャッチボールを繰り広げる。用事があるなら早々に終わらせて、早々に居なくなって欲しい心境だ。
「用事って言うか、さっきの動機のお話に補足を1つを入れておこうと思いましてネ?本当に大事なことなのでこうやってハウスに直接乗り込んでみたのでス」
「せめて心臓に悪い登場の仕方だけは自重してくれ……たくっ。大事な用なら、早く済ませてしまってくれ、コレを読むのにも心の準備が必要なんだ」
俺のイライラとした催促に、モノパンは“はいはい”としょうがなさげに流す。俺はまた怒鳴りそうになったが、一々コイツの煽りに反応していては疲れが溜まるだけと判断し、グッと言葉を飲み込む。
「先ほどの動機の話しなんですけどネ?キミタチは今回の動機を、1つの情報ツールにしようとか何とか話し合っていましたよネ?」
「ッ…お前、聞いていたのか……」
「ええ勿論!!壁にモノパン有り障子にモノパン有り、ですヨ?キミタチがいつどこで何を話していようと、一言一句全てワタクシに筒抜けなんでス」
“くぷぷぷぷぷぷ”と得意げに笑い出すモノパン。なんとも気味の悪い話しに、俺は元々寄っている眉間の皺を、さらに深めていく。
「……ふぅ。でっ?それがどうした?……まさか“手紙の内容は公表禁止”とでも言うつもりか?」
「イエイエイエ、ワタクシとてそんなおケチなマネはしませんヨ……ただ、その情報源の信憑性を高めてあげようと思っただけでス」
「…信憑性?」
「キミタチに配った手紙の内容には勿論!キミタチ個人個人に関した何かが…もしくはアナタ方の知りたいことが書かれていまス……しかし、その内容は生徒によってそれぞれ、内容のレベルもまたそれぞレ……」
“信憑性”という単語に引っかかった俺はオウムのように言葉を返す。それにモノパンは、つらつらとまた語るように話しし出す。
「……な、内容のレベルって」
「平たく言うなら、生徒によってその情報の重要性が変わってくるということです。とある生徒に渡した手紙には別に大した内容が書かれて無かったり、一方で人生観に関わるほどに重要な内容であったり……」
モノパンの言葉を聞いて、俺は手紙を持つ手が震えたような気がした。
「でもあまりにも重要すぎて、生徒によっては信じない人が出来てしまうんですヨ……そこで!!ワタクシはそういう生徒に……ていうか全員にこう言って回っているんです」
積み重なるように聞こえるモノパンの言の葉に、俺は恐怖した。そんな信じられないほどの内容がこの手紙に書かれていることに、そして俺達はその手紙を今読もうとしていることに。
「“この手紙に書かれている内容は、全て純度100%の真実です”…とネ」
いや…もう既に読んでしまっている生徒もいるのだろう。そして、想像したくは無いが…もしかしたら決意をしてしまっている生徒が居るのかもしれない。
「今更後悔しても無駄ですヨ?“動機”なんですから、キミの想像を遙かに凌駕するショッキングな内容が書かれているのは当たり前じゃ無いですカ……読んだもの負けです…くぷぷぷぷぷ」
――人が人を……仲間が仲間を殺す決意を…。
「それでハ!ワタクシの用事は済みましたので、お暇させていただきますネ!バイックマー!!……あっワタクシパンダでした……」
手紙をにらみながら呆然とする俺を尻目に、モノパンは忽然と居なくなる。多分、他の生徒の部屋に移動したのだろう。…今の話しを繰り返しするために。
俺はもう一度、そしてもう一度大きな深呼吸をした。自分を無理矢理にでも落ち着かせるために。だけど手紙を持つ手の震えは、それでも止まらない。
「大丈夫…大丈夫…」
まるで暗示を掛けるように自分自身に言い聞かせる。
――モノパンも言っていたじゃないか“内容には個人差がある”…と。きっと大した事じゃ無い…大丈夫だ。
そう心の中で言い聞かせてみると、何となく、震えが少しだけマシになった気がした。俺はコレを好機と見計らい、静かに手紙を取り出す。
「たった1枚…か」
その封筒には、わずか1枚の紙しか収まっていなかった。だけど、その手紙1枚に、途轍もない重さがあると錯覚してしまう。俺は慎重に、小刻みに震える指先を手紙の端に掛けてみる。
――そして、ゆっくりと…手紙を開いた。
* * *
『折木様へ
アナタの真の才能は“超高校級の不幸”です。
モノパンより』
* * *
……何だ?これは?
意味の分からない手紙の内容に肩透かしをくらいつつも、言葉では言い尽くせないほどに疑問が溢れかえる。
――これが俺の動機?
――超高校級の不幸?
――俺の才能は超高校級の特待生ではないのか?
――ではこの手紙はでたらめが書かれている?
――この手紙には真実しか書かれていないのに?
いくつもの疑問が疑問を呼び、グルグルと脳内を堂々巡りしていく。しかし疑問に答えは出せず、行き詰まり、塵のようにサラサラと積み上がっていく。
山ほどに塵が盛り上がっても、解答の無い疑問は尽きることが無く、なんとももどかしいような、気持ちの悪い気分に陥る。
モヤモヤとした思考に嫌気が差した俺は、手紙から目を離し、一息つく。ずっと立ったまま悩んでいたこともあって、少し疲れが出てきていた。
俺は考えることを放棄するように、ベッドに身を投げる。しかし、悶々とした気持ちはいつまでもついて回り、考えることを止めることが出来ない。真上の天井を見上げて頭を空っぽにしようにも、天井をホワイトボード代わりのようにして、疑問が箇条書きされていく錯覚に陥り、休む暇も無い。
――いっそ誰かに相談でもしてみようか。
そんな考えが浮かんできたが、先ほどのモノパンの話しが脳裏をよぎる。
『とある生徒に渡した手紙には別に大した内容が書かれて無かったり、一方で人生観に関わるほどに重要な内容であったり……』
超高校級の生徒の中の誰かは……少なくとも俺を除いた誰かは、言い出すことも出来ない内容に対面しているのだろう。軽々しく誰かの心配事を考えられる余裕があるかどうか怪しいレベルだ。
「無闇な相談は却下…だな…」
俺は自分の提案した内容を自分の口で却下をする。なんとも寂しい独り言ではあるが、コレは自分の命題の様なものだ。慎重かつ丁寧に扱って然るべきといえる。
――しかしこのままモヤモヤしても時間浪費に過ぎないのではないか?
――だけどすぐに答えを求められることなのか?
――いっそ全員の前でぶちまけてみるか?
――首をかしげられるだけで終わらないだろうか?
――というか他の皆が答えを持っている確証すらないのでは無いか?
こんな風にして、俺は自分の脳内で会議を開き、提案と却下をリフレインしていく。だけど一向に名案は出てこない。
――そこで俺はさっきの、疑問の大量生産と同様のことをしていることに気づく。
俺はそんな自分に一息では無くため息を吐く。なんて進歩の無い男だろうと、嫌悪してみたりする。
――ここは一旦、確実に分かっていることを並べてみないか?
名案とまではいかないが、比較的生産的だと自分を肯定し、脳内のホワイトボードに自分に関するエトセトラを連ねてみる。
――手紙の内容が本当に本当なら、俺は『超高校級の不幸』
……エトセトラと謳ってはみたが、結局一行しか思い浮かべなかった。考えの浅い男だと、再度自嘲してみる。
だけど『超高校級の不幸』と言われて…俺は何となく、うっすらとだが覚えがあるような気がしてくる。
しかし、それは自分が周りの人よりも少しばかり運が悪いと言う程度であり、ハッキリ言えば才能に昇華出来るほどの能力とも言えない小さな素養である。
「超高校級の不幸……か」
答えはもう既に目の前にありそうなのに、明白にすることができない。さらに本当それが真実なのかも確かめる術も無いし、それに繋がりそうな記憶も無い。
俺はやるせない気持ちがせり上がってきたのを感じる。また自分に嫌みを言うのが嫌だった俺は、かき消すように寝返りをうってみる。
…そしてふと、寝返りをうった目の先の窓を眺めてみる。窓の外には森しか目につかないし、景色と言える景色も無いので殆ど見る意味は無い。しかし、いま朝なのか、昼なのか、夜なのかは、明るさを見れば理解することが出来る。そして、その窓の外は完全に日が落ちて、非常に暗くなっているのが見える。
「…!もう、夜…なのか?」
俺はベッドから飛び起き、慌てたように時計を見てみる。針は18時を示しており、もう1日が終わりに近づいてきていることがわかる。
「一体…何時間悩んでたんだ……?」
まるでベッドに乗って時を渡ったような気持ちだ。考えに没頭するときにする自分の存在は認知していた、だけどここまで深く考え込んだのは初めてのことだ。俺は、自分の新たな一面に、驚きつつも呆れてしまう。
「はぁ……もういいか…寝よ……」
早々に寝る準備でもして明日に備えようか…そう複雑な気持ちを切り替えて、浴室へと足を運ぼうとする。
ドンドン!!ドンドン!!
丁度、ベッドから降りた直後、ドアを強くノックする音が部屋中を駆け巡る。
「…何だ?こんな時間に」
「おい折木!部屋に居るのだろう!!至急玄関前に登場せよ!!」
妙にテンションが高く、人よりも一風変わった話し方。そして常人よりもかなり高い位置から放たれるしゃべり声。それらの特徴から、その声の主が誰なのかは、判断するのにそう時間がかかる事は無かった。
* * *
大声で俺の名前を呼びながら外に出てくるように促す声に、俺は“何事か”と怪訝な顔つきのままドアに手をかける。
「誰だ?……いやまあ誰なのかは分かってはいるが、今何時だと…「天体観測をするぞぉ!!折木ぃ!!」……急にどうした?雨竜…」
ドアを開け、呆れた声で出迎えてみると、その声の発生源……つまり雨竜がキラキラとした瞳を俺に向け、“天体観測をしよう”と食い気味に話し出す。色々と順序をすっ飛ばしたその提案に俺は目を見開いて驚きを表わすが、とりあえず落ち着いてその考えに至った経緯を聞いてみよう……そう考え、真っ直ぐと雨竜の瞳を見つめ直す。
「雨竜……まず物事には順序があるものだ……学者というからにはそれぐらいの体裁くらいは…」
「馬鹿者!!ワタシは学者である以前に好奇心の人である!!そして思い立ったのならすぐに行動を起こす!!それこそが真の研究者なのだぁぁぁ!!!」
俺の話を最後まで聞かず、学者とはいかなるモノかを熱く語り出す。
…興奮状態のコイツは、恐らく平常時の陽炎坂と同等か…それ以上に話を聞かないのかもしれない。俺は鼻息を荒くしながら子供のようにはしゃぐ雨竜を見ながら、面倒臭そうな顔にさらに面倒臭さを孕ませる。
「わ、わかった…だが今では無くても良いだろう……今は星空を見るような気分では」
「“今こそ”であるぞ折木ぃ!!動機などというモノが届けられてからというものの、ココにいる連中の顔はすこぶる優れていない!!…いや、その顔すら見せずに部屋に引きこもったままなのだ!!!!」
「そりゃあ……中には考える時間が必要のある奴もいるだろう。……俺だってそうだったし。…今は腰を落ち着かせて、ゆっくりーと、その…リラックスさせるためにそっとしておくことをだな……「リラックスだとぉ!!!」……頼むから話を最後まで聞け!」
「星を見る以上にリラックスすることがあるものかぁ!!部屋に引きこもっては、考えが煮詰まり、悩み、そして発散しようのないストレスが溜まるばかりであろう!!今こそ!!!インドアからアウトドアへとシフトしていき、気分転換という名の観測の時であ~る!!!!!」
一歩たりとも引かない雨竜の態度に俺は、部屋で悶々とする以上にストレスを溜めていく。コイツの1度やりたいと決めたときの意志の強さは賞賛するが……今から見れば悩みの種という他に無い。
「はぁ……わかった。行くよ、場所はどこでやるんだ?」
本日何度目かのため息を漏らしながら、雨竜の無理矢理な提案に乗ってみる。行かないとこの強引さに拍車がかかりそうだし…ここは観念して参加するのが吉だ。
「分かってくれたかぁ!折木!!!場所はグラウンドだ、みなもすでに集まっている」
案の上ではあるが、他にも参加者はいるらしい。…多分俺と似たような誘われ方をして、参加させられたはらなのだろう。俺はまだ見ぬ参加者に“断りにくかっただろうなぁ”と、同情をしてみる。
「“みな”…か。俺以外のそのイベントの参加者は誰なんだ?」
「ふははっ、ではそれも総括して、道すがらに話そうではないか。さあ行くぞぉ!!」
雨竜は俺の倍ほどの長さを誇る腕で肩を抱かれ、指を差しながら、前を突き進む。一体どこを目指しているのだか……と苦笑しながらも…その指の先にある既に満点の星空に目を向けてみる。……キラキラとした星のプラネタリウムに、無理矢理ではあったがこの誘いに乗ってよかったのかも、と俺は一瞬考えてみる。
* * *
【グラウンドエリア】
「……であるからして!あのクリスタルのような並びをした星がうしかい座!!その右下の平行四辺形の様な形状をしているのが獅子座であ~る!!!」
「なるほどー。星座の並びって結構特徴的なんですね」
「よく言われてみると、人の形とか~、動物の形とかに見えてくるね~~」
「…そして!今行った2つの星のあそことあそこをを繋ぎ、さらに少し離れたあの星を支点にして結べば…『春の大三角』…というわけである!!……理解したかぁ!!貴様らぁ!!」
「そ、そこまで威勢良く言わなくても、ちゃんと分かっているんだよねぇ…」
「なるほどなあ、アレがかの有名なアルタイル、ベガ、っちゅうわけかぁ…ウチ星空よりももっぱら雲の動き見とったから新鮮やで…」
「鮫島君?それは『夏の大三角』の一部ではなくて?」
「……まあ似たようなもんやろ…結局星は星なわけやし……」
「貴様ぁ!!!天体観測を舐めているのかぁ!!星1つ1つには気の遠くなるほどの距離と!記録と!意味が!!込められいるのだ!!全てを一律に扱うなど言語道断であるぞぉ!!!」
そう生意気な態度を取る鮫島に対し、業腹な雨竜は噛みつかんばかりに胸ぐらを掴みかかる。…天体観測が始まったばかりだというのに、幸先の悪くたわいもない喧嘩が勃発する。
喧嘩をおっぱじめた2人を数人の生徒達が止めにかかるが…他の何人かは“やれやれ…”と呆れて見物していたり、“もっとやれやれえ!”と余興のように喧嘩させることを助長させるノリを出していたりと、色々である。
…そういう俺は、さっきの雨竜の天体講座を聴きつつ、サンドイッチを頬張っていた。天体観測中の夜食として、参加者である反町、小早川、朝衣、水無月、長門の女子生徒達が作ってくれていたらしい。朝から何も口にしていなかった俺としては、非常にありがたいオプションである。
ついでに、男子の参加者を確認してみる。まず今乱闘の渦中にいる主催者の雨竜とボコボコにされそうになっている鮫島、それを落ち着かせようと奮闘する古家、何故か喧嘩に参加しようとしている陽炎坂、そして俺の5人である。
参加していない数人の生徒の話を雨竜に聞いてみたところ、“酷く罵倒されて追い返された”、“部屋におらず会えず終いだった”、“用事があると固辞された”とのことだ。…少なくとも罵倒してきたのは雲居だな、と何となく憶測を立ててみる。
「よっ折木。調子はどうだい?……まあ、それだけモリモリサンドイッチ頬張っていたら、悪いってことは無さそうだね」
「ゴクン……反町か。ああ、朝から何も食べてなかったのと、味付けと具が良いからな……大半を頂いてしまったよ。皆の分もあるというのに、悪いな…」
「良いさね、良いさね。食べ物を残されるよりかは、ずっとマシだよ」
「そうか……ならもう少し頂こうかな……」
何となく、調理者の反町に許可を頂いたような気になったので、俺は残りのサンドイッチにも手を出してみる。そして、口に放り込んでみる……うん、うまい。
「ほ、本当に空きっ腹だったんだね……そんなに腹を空かせてたんだったら、昼間に炊事場に来れば良かったのに…」
「ログハウスの机にあった手紙についてずっと考えてたら、夜になっていたからな……食べることも忘れて没頭してしまった」
「ああ……手紙ねえ……」
俺の“手紙”という単語に、ほんのわずかにであるが顔をしかめる反町。
「反町達の方はどうだったんだ?昼間から夜食作ってたって言うし、大事でも無かったのか?」
「…………まあね、そんなところだよ。全然、大した事なかったさね。アタシ以外の連中も、何のそのって感じで気味が悪いくらいいつも通りさね」
少し間を置きながら、俺の疑問に言葉と共に首肯する反町。でも何故かその声色は寂しげで、顔も暗くてよく見えなくて、笑っているのかすら確認できない。
「それに聞いておくれよ!古家なんかはアタシ達が料理しているときに“研究所潰れちゃったんだよねぇ!!”って半べそかきながら女の園に入り込んできたんだよ?無神経ったらありゃしないよ」
「…ははっ、古家らしいな」
そんな一瞬感じた違和感から一転、反町はいきなり古家のエピソードを語り出す。…いつもの強気な反町に戻ってくれたような気がして、少しだけ安心する。
…今の違和感、あまり深追いはしない方が良いのかもしれないな…、そう判断した俺は、無理にでもそう思うようにしてみた。
「んっ…このサンドイッチ美味しいな。他のも美味しかったが、コレは特にうまいな。中身……粗挽き納豆か」
「それは多分小早川のさね。アイツかなり一生懸命作ってたからねえ、真心が詰まってんだから、うまいのも頷けるさね………それに…」
「それに……なんだ?」
何か言葉を続けようとするような言い方で、俺をニヤニヤと見やる反町。その言葉の裏の意図が気になって見たのだが、反町は“何でも無いさね”と会話を終わらせる。
「…にしても、今って本当に天体観測の時間なのかね?アイツら忘れてるんじゃないかい?」
「雨竜、雨竜!!あかんあかんあかんあかん!!コブラツイストはあかんて!!体もげてまうて!!」
「1度!!!もげてしまええええええ!!!」
「うおおおおおおおおおお!!!!!これは熱いプロレス技だぜええええええ!!!!」
「おお~カッコいいね~」
「ここまでキレイに決まるのは初めて見るねぇ……」
「そこだー!!いけええ!!レフェリー、カウント早く取ってーー!!」
「アホやろあんさんら!!はよ助け…いててててててて!!!ギ、ギブギブギブ!!ロープ!ロープや!!」
「天体観測の!!『て』の字を!!理解するまで!!ワタシは!!絞めるのを!!止めないいいいいい!!!」
「肉体言語で教えるにも、限度があるんじゃ…」
「失言をしてしまったことが運の尽きね……何にも関係ない私達は優雅に星空でも眺めていましょ?」
「そ、そうですね…ハハ、ハハハハ……」
雨竜と鮫島の取っ組み合いは未だ続いており、完全にイベントの趣旨から脱線してしまっている。…もはや何をしに来たのかもわからなくなってきた。
「これじゃあ天体観測の名前を被った宴会さね」
「…止めてやらないのか?」
「夜はまだ長いさね……こういうアクシデントも含めて、イベントの一環さね。楽しんで、ゆっくり雄大な星空に気持ちを馳せようじゃないか……」
「……それも、そうだな」
俺は何となく地面に仰向けに寝転がり、満面の星空を瞳に納める。…どこまでもどこまでも広がっている星の海。何億、何兆、一体どれほどのおびただしい数が目の前の宇宙を漂っているのだろうか…。……まあ空気の読めない話をすると、コレは全て映像ではあるのだが…それを抜きにしても、キレイとしか表現できない、幻想的な風景だ。
これほどまでに大きな、想像を遙かに超える世界を目の当たりにすると、何となく、さっきまでの小さな悩みも吹っ飛んでいくように感じる。…小さな紙切れ1枚で悶々と頭をひねらせる自分が、なんともちっぽけに思えてしまう。どうでも良いとまではいかないが、少しだけ荷物が減って、肩が軽くなったような気分だ。
「――――あれっ?」
「…?どうしたの小早川さん?」
「いえ、えと、あの……何か、冷たい、水みたいなものが顔に落ちてきたような気がして…
「っあ~、私にも落ちてきた~、これ雨の雫だよ~」
「そんなバカなことがあるのかねぇ…ここは施設の中なんだから、雨なんて自然現象……ありゃっあたしの頭にも落ちてきたんだよねぇ……こりゃ雨だねぇ」
「貴様意見を翻すのが早すぎるぞ!!!そんなモノは全て気のせいだ!!それによく刮目して見てみろ、夜空はこれほど晴れ渡って……」
「その空が雲にとんでもない勢い覆い尽くされているさね……」
「何ぃ!!!」
雨竜を含めた他のメンバーも、空をもう一度見上げてみる。するとそこには、さっきまでの星の海は隙間たりとも見えなくなっており、代わりに今にも雨が降り出しそうな程の曇天へと変わり果てていた。
「あっあああああ……」
「雨竜君が膝から崩れ落ちているんだよねぇ…」
「ワーン、ツー、スリー!!」
「水無月さん…確かにダウンしているけど、空気を読んであげて……」
「まあモノパンも、1度たりとも“雨は降らない”と言うて無かったしな~、今まで降ってこなかったことが不思議なもんやで」
そう鮫島が自業自得と言わんばかりに雨竜に対し他人行儀なセリフを吐くと、ポツポツと降ってきた雨は本格的な大ぶりへと変遷していった。
「皆、雨に濡れては風邪を引いてしまう。あの屋根付きベンチで一旦雨宿りをしよう」
「いや~、ウチはもう帰ることにするわ。丁度飽きてきたとこやし、引き時っちゅうわけやな」
「はいはーい!!カルタも帰りまーす!!眠ーい!!」
「驚くほど素直な理由ね……でも。雨竜君には申し訳ないけど、私も帰宅させてもらうわ」
「俺も!!!靴が!!!ずぶ濡れになるのは!!!!気持ち悪いから!!!!部屋に戻るぜえええええええ!!!」
そんなふうに4人は言葉を残すと、雨に濡れすぎないよう手で傘を作りながらそそくさと退散して行ってしまった。…まあ、始まって多少の時間は経っていたのだから、終わり時としてはベストなタイミングだったのかもしれんな。
そう考えていると、地面に膝をつきながら背中を雨に濡らす雨竜が“はっ!!”と何かを思い出したように突然立ち上がる。
「いかん!!このままでは望遠鏡が雨に濡れてしまう!!!早急に避難させねば……」
雨竜はとても焦ったように、(恐らく自前と考えられる)天体望遠鏡に近づいていき大事そうに両手で抱えだす。そして望遠鏡を両手にしたまま俺達の方へと仁王立ちになりながら声高らかに叫び出す。
「残った皆の者よぉ!!我々の天体観測はまだ終わってはいない!!雨のせいで一時的に避難せねばならぬが、それは所謂、戦略的撤退である!!雨が上がればまたすぐに天体観測を再開する!!では……屋根付きベンチに突撃だあああああああ!!!ワタシに続けええええええ!!!!」
まるで一国の軍隊のようなかけ声を1人で上げながら雨竜はベンチへ向けて走り抜ける。俺達も、まあ付き合ってやるかと、仕方なしに付いていく……結構恥ずかしかったので、周りに他に人が居なかったことに内心安堵した。
* * *
「なあ反町…今何時だ…」
雨が降り出してからしばらくたった後、具体的にどの程度時間が経過したのかを知るため、唯一の腕時計持ちの反町に現在の時刻を聞いてみる。
「午後9時を回ってるよ……」
「あれから1時間ですか……一向に上がる気配がありませんねー」
「先より~弱まってはいる感じはあるけどね~」
「ぐぬぬぬぬ…神はワタシを見放したというのか……!!何故そこまでして我が崇高なる観測を邪魔するのだぁ…」
「神って言うか…モノパンだねぇ…」
「それに、神様は個人に対して悪意のスナイピングをするような芸の無いマネはしないさね……ただ単に運が悪かっただけさね」
いつまでも止まない雨に悔しさをにじませる雨竜を見ながら、俺達はこれは今晩はずっと雨が降り続けるのではないかと考え始める。
「……はぁ……雨竜。もうお開きにしないか?止む予兆の無い雨を待ち続けても、埒があかないぞ」
「私も~そろそろ帰りたいな~って思っているよ~」
「雨も今さっきよりは収まってきたし、今ならそこまで濡れなくて済みそうだしねぇ…」
「ワタシは帰らんぞ!!!諦めという文字は、ワタシの辞書に存在すらしないのだ!!」
「あたしらの辞書には諦めの文字はきちんと記載されているんだよねぇ……」
「はぁ……さすがに付き合いきれないね」
そう口々に小言を言いながら、帰ろうとする雰囲気を流しつつも、雨竜のみ帰ろうとする気を1ミリたりとも見せてこない。そこで雨竜以外の俺達全員は、先にハウスの方に戻ることにした。
「じゃあ雨竜さん…私達、先に帰りますね?」
「本当の本当に、帰っちゃうんだよねぇ?」
「フハハハハハハハ、誰に物を言っているのだ!!ワタシは世界を見据える観測者であるぞ!!…貴様らこそ、この雨が上がった末に現れる、満天の星空を見れなかったことを後悔するが良いさ!!!!フハ、フハハハハハハハハッハハハハハ!!!」
「一体あの負けん気はどこから湧き上がってくるのやら…不思議なもんだよ」
「根性あるね~」
俺達はそう言いながら、雨竜とは逆方向に体を向けグラウンドから出て行くように足を進めていく。雨自体は小ぶりになっていき、大きく濡れることはないと考えられるが、また大ぶりになることも予想できるので駆け足気味でハウスへと走って行く。空を見上げてみても、星空どころか未だに欠片程度も顔を見せない、満天の曇天である。
少しばかり雨竜のいる方向に心配の情を込めて一瞥してみるが、暗闇が周りを満たしてきていることもあり、よく見えない。俺は瞳の方向をむき直し、他の全員の後に続いていく。
* * *
【噴水広場】
「あれあれ?噴水の側に誰かいるんだよねぇ………しかも傘も差していないねぇ」
「この雨の中にかい?物好きなヤツがいるもんだね…」
グラウンドからログハウスエリアへ戻る途中、先頭を小走りする古家と反町が広場の噴水の近くに誰かの姿を発見したようだ。他の全員も噴水に注目してみてみると、確かに誰か噴水の側で座っている。
気になった俺達は、寄り道程度にそちらへと進路を変え、当の人物に近づいていく。
「……!……素直達か」
「風切…アンタ何やってるんだい?傘も差さずに…」
そこに居たのは、意外なことに風切であった。“こんな夜遅くに、一体何をやっているのだろうか?”全員の頭に疑問符が浮かぶ。
「…“見張り”」
「みはり~?」
「それって見るに張るって書く、あの見張り…?」
「……そう、その見張り」
どうやら彼女は“何を”かは分からないが、監視を行っているらしい。しかし、いつもは怠惰な風切が、こんな冷たい雨の中でその何かをジッと待っていることに、全員はさらに疑問を湧かせる。
「……聞いても良いか?何を見張っているんだ?」
「…別に何かを見張っているんじゃない。…ただ見張っているだけ」
「……一応目的はあるんだよねぇ?」
「ん…ある」
「その目的は何さね」
「……見張り」
何だか同じ場所を行ったり来たりしているような気持ちになる。他の皆も堂々巡りの会話に、頭をかき出す。しかし、風切の言葉少なの会話から、“何か”とはいかないが目的は存在していることは分かる。
「…困りましたね。会話が続きません」
「聞くな…感じろってことかい?」
「にしてはヒントが少なすぎるんだよねぇ…」
さすがにこんな細かい事に腹を立てるわけにいかず、皆は黙りこくる風切に困り果てる。そうやって頭をひねらせる俺達に“何事ござるか~?”と声がかかる。
「おお!皆の衆。随分とお集まりでござるな…こんな雨の中一体如何様なことで?」
「沼野君じゃないかねぇ!!ちょっと力を貸して欲しいんだよねぇ…」
「コイツが黙秘を貫いてて、何してんだか分からないんだよ……怪しいったらありゃしないよ」
「…怪しくない。見張りをしているだけ」
「ずっとコレばっかりだよ~」
「ああ…成程。……風切殿。別段隠し立てしなくてよろしいのではござらぬか?悪い事をしようとしているのではなかろうて…」
「……」
「沼野は…何か知っているのか?」
風切の行っていることを理解しているような口ぶりに、俺は何か知っているのではと沼野に問いかける。
「知っているも何も…拙者も風切殿同様、“見張り”をしているのでござる」
「まーた見張りさね。短い間で聞き飽きた単語だよ…。アンタら…もし何か企んでいるんだったら……モノパンに当てるはずだった拳が飛んでくることになるよ…」
「いや、何。先も話したように、別段怪しい行いではござらんよ。ちょっと今夜は“嫌な予感”がした故、このように誰が何時にココを通ったのか…何か怪しい行動が見られないか…を見張っていただけでござる」
「い、嫌な予感…ですか?」
「こりゃまた物騒な話になってきたねぇ…」
沼野達の見張りを行う理由に、俺達は少しずつ顔を曇らせていく。
「貴殿らも既にご承知でござろうが、本日の朝、あのモノパンから“手紙”が配られたでござる」
沼野の口から“手紙”という単語が出てきた直後、曇った俺達の表情はさらにくすんでいく。…何となく、ここまで言えば数人は沼野達のやっていることの意味を理解できるかもしれない。
「その“手紙”の中身は勿論、“動機”、でござる。モノパンが言うにはさし当たって大した内容では無い生徒と、重大な内容が送られた生徒と二分されているとのこと……」
沼野は淡々と、俺達の気も知らないように続けていく。
「前者の場合であれば、恐らく動機になり得るのかどうかすら怪しい故、見過ごしても良いと思われるでござる。しかし、問題は後者でござる。…重大な内容とはすなわち、人が人を殺すのに“充分な理由”、コロシアイを引き起こすのに充分な動機になり得るのでござる」
「そして、その動機が既に俺達の手元にあり、その大半の人間が目を通してしまっている」
「つ、つまり今、あたしらは、“いつ人が死んでも可笑しくない状況に陥っている”……と考えられるわけだねぇ」
「成程……それで見張り、というわけかい」
「えっ?どうしてそこで見張りなんですか?」
「考えてもみるさね……誰もが寝静まった夜なんて、そのモノパンの言う殺人する………何て言うんだったか……」
「…クロ?」
「そう!そのクロが行動を起こす、絶好のタイミングになるさね……。考えてもみるさね、もし居たらの話だけど…今晩にでもアレな行動を起こすバカがいたとしたら…どうだい?」
「え、えっと……多分、夜も眠れません!!」
「いつ襲われてしまうのか~分からないからね~」
反町の想像を交えた説明を真面目に想像しながら聞いた小早川は顔を青ざめさせる。多分長門は既に理解していたのであろう、補足といったように相づちを打つ。
「そう!それ故、拙者らはこのようにして噴水を中心に、あえて眠らずに見張っているというわけでござる」
「そっか~そういう意図があるんだったら~怪しくないね~~ありがと~~」
長門のお礼に、頬を染めながら照れる沼野。個人的にもありがたい行動のため、俺も“ありがとう”と続ける。
「いや~しかしこのように自分の手柄の如く話しているのでござるが…コレは実は、風切殿の提案なのでござる」
「えっ!!この風切がかい?」
「……“この”って言い方は失礼」
「ありゃりゃ……そうだったのかねぇ。それならそうと早く言ってくれれば良かったのにねぇ」
「説明するの面倒くさかったの~?」
「…………何か、自分で言うのが、恥ずかしかった」
そう風切はボソりとつぶやくと、照れくさかったのか俺達とは逆の方向に顔を背ける。しかし顔は隠せていても、耳は赤くなっており、その恥じらいを隠せてはいなかった。
「結構、アタシらの事、考えてくれてたんだねえ。くぅ~~っアンタって案外良い奴じゃないか!!ただメシ食って寝てるだけのプー太郎じゃなかったんだね!!このこの~~~」
「……うっ、痛い、痛い……離れて」
「褒めてるのかけなしているのかわからないよ~~」
「反町さん的には、多分褒めているんだと思いますよ……」
風切の男気、というか女気に感動したのか。反町は風切の頭を掴み撫でるのでは無くグリグリと拳を当てる。嫌がる風切だが、それもお構いなしに反町は続ける。
「ハハハ……っと、そういえば其方達こそこんな時間にどうしたのでござるか?夜遊びでござるか?」
「まあ、夜遊びと言えば…夜遊びなのかねぇ?」
「お前も誘われなかったのか?雨竜の天体観測」
「…………ああ!!アレでござるか。急に拙者のハウスに尋ねて途端“今夜暇かぁ!”などと宣ってきたので何事かと思ったでござるが……天体観測の事だったのでござるか……超高校級の天文学者らしい催しでござるな」
「開催したは良いけど、喧嘩は始まるし、雨は降るし、主催者は頑固だし……散々なイベントだったさね」
そんなうんざりとしたような雰囲気を察したのか、沼野は“ははは、大変でござったなぁ…”と、引きつった笑みを浮かべる。
「じゃあ…今は帰り?」
「ああ、雨竜はまだグラウンドの方に居るけどな…雨が上がるまでずっとあそこに籠城する気らしい」
「左様でござるか……ちょいと心配でござるが、まあ拙者らがココにいれば、問題は無いと思うでござる……」
「アタシらも見張るのを手伝っておくかい?」
「…いや、あまり大人数で見張るのは得策では無いでござる…必要最低限、見張り見張られできる人数…つまり2名程度が丁度良い故、ありがたいでござるがその申し出はお断りさせていただくでござる」
「そうか……」
反町の提案をやんわりと断る沼野。俺達にも出来ることは無いかと、少し考えてみる。だが“今は変に行動するより、大人しくしていた方が良いのかもしれない”と一人合点し、沼野達の協力を諦めようとする。
すると――
『キーン、コーン、カーン、コーン……』
『えー、ミナサマ!施設内放送でス!…午前10時となりましタ。ただいまより“夜時間”とさせて頂きまス。まもなく、倉庫、購買部への出入りが禁止となりますので……速やかにお立ち退き下さイ。それではミナサマ、良い夢を……お休みなさいまセ』
モノパンの一昨日、昨日通りのアナウンスが流れる。そして、その直後にまた雨脚が速くなったように、激しさを増してきた。
「雨、強くなってきたな……沼野、風切、協力できないのは悔しいが、頑張れよ」
「何かあったら、すぐに報告してくださいね!!微力ながらお手伝いさせていただきます!!」
「風邪引かないようにね~~」
「なーに、このような雨、拙者は何度も野晒しで経験してきたでござる……問題なしでござる」
「わたしも……農業高校だったから、雨には慣れてる……」
俺達の心配はどうやら杞憂であったらしく、沼野達はあっけらかんとしたような態度である。それを見て安心したのか、反町が“それじゃあ、アタシらは戻るとするよ”と会話に終わりをつける。
「うむ…では良い夜を…」
「……お休み」
そう見送られながら、俺達は噴水広場を後にした。
* * *
【ログハウスエリア:折木公平の部屋】
――ピシャッ!!
――ゴロロロロロロロロ!!
窓の外が突然光り、重低音を響かせながら空が鳴る。作り物であると分かっていながらも、未だ変わらず激しく降る雨に俺はリアリティを感じざる終えなかった。
現在の時刻は夜の0時、施設内は完全なる闇に閉ざされ、唯一の光源はログハウスから漏れる電気のみである。
「沼野達…大丈夫だろうか…」
ログハウスエリアの中心で皆と別れた俺は、中々寝付けず、ツラツラと本を読みながら時間を食い潰していた。ベッドに入っても、沼野達の言っていた“嫌な予感”というものが胸の内でモヤモヤと渦巻き、落ち着く事ができなかった。
それに加えて、この雷。いくら雨の中が慣れているとは言え、こんな激しい雷雨の中であれば沼野達も気が気ではないだろう。そんな風に思ってしまうと、どうしても心配せずにはいられなかった。
「……少し見に行ってみるか」
“――確認しに行くぐらいだったら”そう考え出すと、もう止まらなかった。体よくクローゼットに備え付けられた傘を3つ手に取り、濡れても大丈夫なようカッパを被る。
激しい雨でも大丈夫なように準備を終えた俺は、そのまま外に出る……と。
「うおっ!!」
ドアを開けた瞬間、強い突風が俺の体を部屋へと押し戻す。まるで外に出てはいけないと、忠告を受けている気分だ。
だけど、沼野達の心配を解消したい俺は、そんな忠告に抗うようにそのまま噴水広場へと突き進む。
激しい風に揺られながら、俺はドンドンと歩みを止めない。ピカッ!っとまた閃光が走る。そして数秒置いてゴロゴロと地鳴りが如き雷が鳴り響く。横殴りの雨は、俺の顔に水滴を散らしていき、ビショビショに濡らしていく。
――迷わない歩みを進めていき、あともう少しで噴水広場という付近まで距離を縮めていく。
【噴水広場】
「沼野ぉ!!風切ぃ!!大丈夫かあ!!!」
激しい雨に、その叫びは遮られ、うまく真っ直ぐに飛んでいかない。何度も呼んで、その安否を確かめる。
――すると。
「折木殿!?何事でござるか!!」
声が届いたのか、沼野は驚き表わす。体はずぶ濡れであり、絞れば水が滝のように流れそうなほど水を含んでいる。俺達の居る地点の真逆には風切の背中が見える。その後ろ姿で、俺は風切自身の安否が確認できた。
「沼野、風切!!いくら慣れていたとしても、この雨ではツラすぎるだろう!!今からでも遅くない!!!見張りを交代しよう!!」
「なーに!!こんな雨でも心配はご無用!!!風切殿もそうでござろう!!!」
「…問題なし」
「んん??何て言ったでござるか!!」
か細くだが、風切は問題ないと答えている。沼野も風切生きている、2人の声を聞いて、改めてそう確信できた。俺はホッと胸をなで下ろす。
「…だったら!!コレを受け取ってくれ!!!俺の部屋にあった傘だ!!!使ってくれ!!」
「これはこれは!!済まないでござる!!!風切殿も!!!こっちに来るでござる!!!」
そう沼野が言うと、風切は風に揺られながらこちらに近づいてくる。そして、沼野と同じように、風切も傘を受け取る。
「…ありがとう」
「ああ!!どういたしまして!!」
風切は小さくつぶやく様にお礼言い、手ずから受け取っていく。…そして、俺が2人に傘を渡した直後。
――――ドガボォン!!!!!!!
今まで鳴っていた雷とも違う、何かが破壊されたかのよう明らかに異質な轟音。
この施設に来てから今まで聞いたことも無い音を耳にした俺達は、真剣なまなざしで見合わせる。
「風切殿…!」
「…聞こえた方向は湖側」
「よし、行ってみよう!!」
その激しい破壊音は、俺の耳からしても湖側から聞こえてきた。多分、いや確実に、湖で何かが起こった。
――すると。
「おい貴様らぁ!!今のはなんの音だ!!!」
グラウンド側の通路から雨竜が走ってくるのが見え、大声でこちらに事の次第を聞いてくる。
「雨竜!?お前まだグラウンドにいたのか!!」
「当たり前である!!星あるところワタシありだぁ!!!」
「今星ないだろぉ!!」
「フハハハハハハハ!!!!それも観測の醍醐味よぉ!!!…それより貴様ら、一体何事であるか!!」
「んん~!詳しく説明している暇はないでござる!!!拙者らに付いてくるでござる!!!」
「委細承知したぁ!!!!」
突然現れた雨竜を交え、俺達は湖側へと走り抜けていく。雨は変わらず激しく打ち付け、全員の衣服はびしょ濡れにしていく。
「――風切殿!!!何か見えるでござるか!!!」
「…何も!見えない!」
「ペン型であるが、ライトがある!!コレを使えば見えやすくなるか!?」
「ありがたやでござる!!!」
雨の音でお互いの声が届きにくくなっていたいながらも、俺達は声を張り上げ、会話を続ける。その会話の中で、雨竜は持っていたペン型のライトを沼野に渡す。そして沼野は、ライトを用い、辺りを照らし出す。
「むむむ!!!何も変わり無しでござる!!異常なし!!」
「気のせいと言える音では無かったはずなんだがな!!」
「もしやと思うが!!風で木が倒れただけではないのか!!」
「…あり得るけど!でも!何か変な音だった!!」
「しかし!!こう視界が悪くては、調査のしようがないでござる!!!一旦引き返すでござる!!!」
「ああ!!!そうしよう!!!」
音の正体が何かを突き止めることが出来ず、俺達はもどかしいような雰囲気に包まれながら噴水広場へ戻る。…だが、明日の朝に探ってみればそのモヤモヤしたものの正体もわかることだ、焦らずいこう。
「折木殿!!雨竜殿!!お騒がせしてしまったでござるな!!!」
「そんな事は無い!!一応!!このことは俺達の中で覚えておこう!!」
「話し合いの時にでも皆に報告すれば良い話しであるからなぁ!!!」
「…わたし達は!もう少し見張りを続ける!!」
「んん??見張りとはどういうことだ!?」
「………折木殿!!!説明が面倒臭いので任せるでござる!!!!」
「………わかった!!戻るぞ!!雨竜!!!」
「いい、い、いや!!だがグラウンドにはまだ望遠鏡がぁ!!!」
「盗まれるわけはないし、無くなることも無いから大丈夫だ!!!」
寝ずに見張りを続ける沼野と風切の2人に俺は背を向ける。そして帰ることを渋る雨竜を逃がさないよう手を掴み、無理矢理ハウスエリアへと引きずっていく。
「また明日な!雨竜!」
「…くぅ。ワタシの望遠鏡が…」
ハウスに着くと、今でも望遠鏡を心配している様子の雨竜と別れ、俺は自分の寝床のハウスへと戻っていく。
――部屋に戻り、シャワーを浴びた後、俺は急にドッと響くような疲れに襲われる。
俺はその疲れに抗うことも出来ずに負けてしまい、そのままベッドに体を放り投げる。
――何だか、嵐のような一時であった。
俺は、ベッドの中で身を沈めながら、心の中でそうつぶやき、静かに寝息を立てていった。
* * *
* * *
『キーン、コーン、カーン、コーン……』
『ミナサマ!おはようございまス!!朝7時となりましタ。起床時間をお知らせさせていただきまス!それでは今日も、元気で健やかな1日送りましょウ!』
――――朝七時。
――――窓を照らす光が俺に朝を告げる。
――――それと同時に、昨夜の雨が既に上がっていることも。
――――俺はそんな些細な日常の変化に気づきつつも、いつも通りに目覚め、いつも通りに身支度を整える。
――――そしていつも通り、部屋を出る。
「あっ、折木さん。おはようございます」
「折木君、おはようなんだよねぇ」
――――いつも通りに炊事場に足を運び、いつも通り仲間と挨拶を交わし合う。
――――そんないつも通りの光景の中で、いつもと違う小さな違和感に気づく。
「…反町のヤツはどうしたんだ?朝に姿が見えないのは珍しいな」
「今日は体調不良気味だそうなので遅れてくるそうです。だから、本日の朝食は私が腕を振るっちゃいますね!」
「いつもは反町さんが作ってくれているから、楽しみなんだよねぇ」
――――だけどそんな違和感の理由も、些細なこと。
――――気にすることも無い、他愛も無いこと。
「まずは飲み物でも出しましょう。リクエストはありますか?」
「俺は、緑茶で」
「リンゴジュースが飲みたいんだよねぇ」
「ではコップ取ってきますねー」
「あたしらは何か手伝うことあるかねぇ?」
「ええと…じゃあ机を拭いておいてもらっても良いですか?布巾がキッチン台にあるので、濡らして使って下さい」
「OKなんだよねぇ」
――――いつも通りご飯を作って、いつも通り皆で食卓を囲む。
――――そしていつも通りの1日が始まるのだ。
「あれ……?」
「?……小早川、どうかしたか?」
「いえ…あの、ドアノブが……」
「………!…外れ、てる?」
――――そう……これも、些細なこと。
――――いつも通りを崩すことも出来ない、他愛も無いこと。
「ドアは……普通に、開くようだな」
「な、何なんでしょうね?不気味です…」
「ああ……ん?……部屋の奥に何か……」
「確かに…何か大きな物が……」
――――だけど
「――――っ!!!!」
――――そんないつも通りの中に…
「どうしたんですか?そんな驚い……た…か…お……で」
――――“お前が”いなくなってしまったら
「ああ…あああああ……」
――――それはもう“いつも通りに日常”だなんて…
「きゃあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
――――言えないじゃないか……!
「……朝衣ぃ………!!」
『ピンポンパンポーン…!』
『死体が発見されましタ!』
『一定の捜査時間の後、“学級裁判”を開かせていただきまス!』
『生き残りメンバー:残り15人』
【超高校級の特待生】⇒【超高校級の不幸?】折木 公平(おれき こうへい)
【超高校級の陸上部】陽炎坂 天翔(かげろうざか てんしょう)
【超高校級のパイロット】鮫島 丈ノ介(さめじま じょうのすけ)
【超高校級の忍者】沼野 浮草(ぬまの うきくさ)
【超高校級のオカルトマニア】古家 新坐ヱ門(ふるや しんざえもん)
【超高校級の天文学者】雨竜 狂四郎(うりゅう きょうしろう)
【超高校級の吟遊詩人】落合 隼人(おちあい はやと)
【超高校級の錬金術師】ニコラス・バーンシュタイン(Nicholas・BarnStein)
【超高校級のチェスプレイヤー】水無月 カルタ(みなづき かるた)
【超高校級の華道家】小早川 梓葉(こばやかわ あずは)
【超高校級の図書委員】雲居 蛍(くもい ほたる)
【超高校級のシスター】反町 素直(そりまち すなお)
【超高校級の射撃選手】風切 柊子(かざきり しゅうこ)
【超高校級のダイバー】長門 凛音(ながと りんね)
【超高校級の幸運】贄波 司(にえなみ つかさ)
『死亡者:計1人』
【超高校級のジャーナリスト】朝衣 式(あさい しき)