そういえば、ヒグマのフレンズは早死にするらしい
キンシコウが生きている間に、ヒグマは5回死んだらしい
サイキョーであるが故に、己の力を過信しすぎたらしい
じゃああたしは、過信しすぎても死なないくらいに強くなる
一匹でも多くセルリアンを狩るために、強くなる。強くなるために、セルリアンを狩る
キンシコウを泣かせるものか。
~ホートクエリア セーカントンネル前哨基地~
「黒セルリアン大量発生、ねぇ」
あたしははちみつジュース片手に、今回の黒セルリアン大量発生事件について聞いていた。中々、面白そうな事件だ。
「ホッカイドーエリアからの避難誘導はほぼ済ませたわ。今回はホッカイドーの山全域、その規模はかなり大きいからセルリアンハンター総動員、有志のフレンズもかき集め三手に分かれて大掃除に臨む。山の上で狩るチーム。山の下ら辺の森で狩るチーム、山のふもとで警戒、避難の遅れたフレンズや負傷したフレンズを救助するチーム。既に皆ホッカイドーに到着して狩り始めている頃ね」
今回の大掃除作戦のメンバーリスト(参加フレンズ達の似顔絵が描いてある。作:タイリクオオカミ)を眺めながらキンシコウは言った
「
「
「やっぱりな。ホッカイドーはでっかいどーとかいって参加したんだろうな。まぁあいつらと私がいればラクショーだろ」
クマのフレンズは強いというのが相場だ。
「この前の大量発生時も、先代のヒグマはそう言ってたわ」
突然声色を暗くしてキンシコウが言う。まぁ言うことは予想できる。先代の事だ。
「先代のヒグマはホッカイドーで死んだわ。その先代も、先代の先代も。私の出会ったヒグマは全員、ホッカイドーで、大量発生した日に、死んでるわ」
「それがどうした、あたしゃ先代より強いから心配すんなって」
「先代だってそう言いながら死んだのよ!その先代も!みんな!」
キンシコウが血相を変えて怒る。だがその目には涙が浮かんでいる。先代のことを思い出したからだろうか。
「もう二度とあなたの死体なんて見たくないの!ヒグマが帰ってこないって言われて、雪山の中を探し回って、やっと見つけたと思ったら、元の姿に戻ってる上に胸を貫かれているヒグマの死体が、雪の中に埋もれていたの、それも毎回。その度にまた守れなかったって、もっと強ければって、自分を責めて、後悔して、叫んで、泣いて、ヒグマさえ守れない私はセルリアンハンターをやめようとすら思った。二度と新しいヒグマには会いたくないとすら思った」
キンシコウの声が震えている。怒りというより、悲しみの感情が強い。思えば、初めはセルリアンに囲まれながらめそめそしていたところを、あたしが助けたんだっけ。まさかそんなキンシコウがセルリアンハンターのリーダーをやっていたとは夢にも思わなかった。
「でも結局、ヒグマと出会ってしまう。そして一緒にセルリアンハンターに戻ってしまう。みんなを助けるために……だからっ……お願いだから……もう死なないでよ……!!」
うわーんとキンシコウが号泣しながら抱きついてくる。まったく、キンシコウを泣かせるほど弱っちい先代が恨めしい
「あーもう悪かった悪かった!死なないから安心しろって!泣くな泣くな」
涙で私の服を濡らすキンシコウを抱き締めて撫でる。結局慰めるまでに5分ほどかかった。やれやれ。
「はぁ……いい、ヒグマ?三つ約束して。一つは単独行動しない。二つは油断しない。三つは無理しない。わかった?」
「わかった。約束するって」
「とか言って単独行動するのはわかってるけどさ、何が起こるかわからないわ。気を付けること」
「あーはいはいわかったわかった!」
「まったく、じゃ、そろそろ私たちも向かいましょう」
「ああ」
それぞれ武器を担いで、ドアから出る。ここからはジャパリトレインのセーカントンネルラインに乗って、ホッカイドーエリアに赴くことになる。
こんな態度をしておきながら、あたしは心の中では決意していた。今回こそ先代のようなヘマはしない。
つかれた!
久々に全3章(+0章)約10000文字に渡る物語を書いたのでヘトヘトになりました
この章からあと3章、校閲しながら1章ずつ投稿していこうかとおもいます
稚拙な物語ですが、もし気に入ったならば、この後の物語も是非見ていってください