バトルスピリッツ 怪異札奇譚   作:アイリスせんせー

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本作はバトルスピリッツの二次創作、通称架空バトスピです。
本編にはバトルパートも挟まりますが、本作ではオリジナルカード(通称オリカ)が登場する予定となっております。
苦手な方は、予めご了承の上でご覧下さい。


序章

照りつける暑い日差し、囲う人々の歓声。学園のグラウンドは熱気に包まれていた。

灼熱のトラック、最後の直線をその男はたった一人で駆け抜ける。

それは決して、彼がたった一人で出走している訳では無い。二番手以下の走者を置き去りにし、圧倒的な差をつけて先頭を駆け抜けているのだ。前には勿論、彼の後ろにすら人の影はない。もはや誰一人として彼の順位を疑う者はいなかった。観衆の期待は、彼がどれほどのスピードで戻り、レコードを残すのかだ。

ここまでのタイムは中距離走の高校生記録、すなわち彼の自己ベストを上回るハイペース。()()()()()()彼の背中を捉えることは出来ないだろう。

 

 

 

ゴールラインまで100mを切った。脚の調子は良好。体力にも十分の余裕がある。俺は長距離だって全力で駆け抜けられるんだ、1500mをもう一周って言われたって涼しい顔で回る自信があるね。無論、靴ヒモが解けて転倒!なんて凡ミスもしない。勝ちは決まった。俺の背中を押す「ガンバレ!」の声援も、既に「オメデトウ!」の祝福に変わっている。まぁ、親友の声も聞き分けられない程の大歓声だ、最後のは完全に俺の勝手な想像だけどね。

なんにせよ、今回の走りも圧倒的だった。いつもと同じように、俺は一人きりでゴールへと突っ込むだろう。なんだか寂しいと、そう思う感覚も多少はあるが、仕方がないと割り切る。だって一着だ。それも、俺が追い求める圧倒的な一着。ライバルとの激しいデットヒートに憧れは持つが、そんなヤツはいない。俺の走りに、夢に、着いてこられるようなヤツは後ろにはいない。

 

 

 

 

 

   いない。はず、なのに。

 

 

 

      の』

 

声がする。

 

この歓声の中でも聞こえる、耳元で囁くかのような、声が。

いや、ありえない。観衆や監督の声がこんなに近くで聞こえるわけがない。二番手の選手だって、コーナーで振り向いた時には遥か後方に置いて行かれていたはずだ。後ろに誰かがいるなんて、ありえない。

 

じゃあ、()()()()()()()()()()()()()

 

まさか、あれから一気に詰めてきたのか!?

それこそありえない。一度だけ振り向きはしたものの、それ以外では何も手を抜いた走りはしていない。ならば距離は詰まるのではなく、さらに大きく開くはずだ。

本当に誰かが上がってきているのか?気配だけでは確証は持てない。もう一度振り向いて確かめようか。いや駄目だ、驚異のラストスパートでここまで伸びる奴が本当にいたのなら、スキを見せれば(振り向けば)食われる。

 

ならば、結局やるべき事は変わらない。

俺は俺の最速で駆け抜けるだけだ。

誰だか知らないが、その気配を振り切ってやる。

俺の背中は、もっともっともっと後ろで見てやがれ!!!

 

 

   さん、   るの』

 

 

 

 

彼の最高のスピードを、()()()()()()捉えることは出来ないと評した。

それは決して誇張ではない。事実、一流のアスリートであろうと、彼の背中を捉えることは困難であろう。

 

 

しかし、その背中を狙うモノが()()()()()()()()であれば、どうだろうか。

 

 

 

 

 

 

『わたしメリーさん、今あなたの後ろにいるの』

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