暗い……あまりにも… 作:薄氷の仮面
大体の物語や漫画は、初期設定と後々の設定が乖離する。それは史実というベースとなる物語があっても、容易に起こり得ることだ。
趙の第9代国王である
更に厄介なことに、この身体は病弱です。健康体そのものだった前世の身体が欲しいというか知っている分恨めしいです。現代日本と比較するなんておこがましいほど低い医療レベルだから仕方ないけど、効能が怪しい薬を飲ませるのは本当に止めて欲しい。
まあ趙が完全に滅亡する前に、自身の死が決まっていることは逆にありがたいです。気楽に王様RP出来るしね。さて今現在、趙国内の軍事評価は以下の通り。
「兵は文句なしに強い。騎馬隊は中華最強。しかし率いる者がいない」
……うん。廉頗がまだ趙にいてもこの評価なんだ。そりゃ廉頗が趙から離れたら趙は動くことが出来ないとか言われるのも納得ではある。しかし史実はともかく、キングダムでは質に差はあれど将軍は畑から大量に穫れる趙国である。廉頗一派がまだ趙国内にいるなら、それなりに軍事力はあるんじゃないかな。
まあこの畑から穫れる将軍の内、大半は使えない凡人だらけなのは問題か。紀彗軍3万対蒙恬軍5千で秦左軍不抜とかやらかしてるし。何で地の利と数の利があって相手の軍は兵糧が尽きているのに勝ててないんだろ。これが紀彗軍5千対蒙恬軍3万で趙右軍不抜なら地方の名将紀彗だったのに。
というか軍事面で他国から舐められているほどなのに趙国内で趙軍対趙軍の戦争とかしているしね。とりあえずそれだけは回避するために、魏を攻めている軍の大将を廉頗から楽乗に変える命令は出さなかった。これだけで廉頗が手元に置いておけるなら誰だってそうするわな。あと楽乗は普通に内政面で有能だからここで死なれても困る。
ここで問題。廉頗は趙に残って、楽乗も三大天を名乗らせて良いという状況、果たして李牧はいるのかいらないのか。原作のキングダム登場時は結構な人気だった李牧だけど、最近では無能の代名詞感覚で李牧の名が使われているような状態。その最大の理由は朱海平原での敗北だろうけど、この世界ではそれは絶対に起きない。俺はたぶん、合従軍を失敗させた時点で許せないと思う。
そもそも、金や兵を散々投入した合従軍を失敗に終えても前線基地の掃除だけで済んでる懐の深い王に対して「暗い……あまりにも…」は酷くない?次はないぞ李牧と言って秦軍より多い数の兵、高い練度の水軍、藺相如の懐刀2人を付けて地の利のあるホームで敗北。まあ投獄もやむなしだわな。
李牧が一番活躍したの、もしかして燕に攻めて劇辛将軍を殺した時かな?その劇辛将軍、ちょっと俺が時間をかけただけでもうじき金で買えるんですけど……。まあ原作でも燕より金を積むなら移籍するって豪語してたしね。何なら劇辛将軍自体が趙出身だし秦より移る理由はあるという。というか劇辛将軍を倒して燕の領地を奪ったのが一番の活躍なのに、そのせいで合従軍最大の戦犯であるオルドが参戦しているのは本当に李牧が李牧してる証だと思うの。
あ、王騎将軍を殺したのは李牧の功績か。でも最後に殺したのは汚れ役を買って出た魏加さんだし、その魏加さんがいなかったら龐煖すら失っていた可能性が高いことを考えると評価は微妙。というか魏加さん中華十弓の1人だし、それを死なせたと考えると李牧の評価は凄く微妙。
あの戦、結局領地を奪えず軍の被害もこちらの方が酷いという戦争だしね。王騎将軍1人を殺したのを戦果としても、趙軍は趙荘、馮忌、渉孟、魏加さんを失って龐煖も怪我してるし、完全に出血多量である。
でも外交能力は高そうだし、文官としてならまだ活躍の余地はあると思うから北方から呼び戻します。武力はあるし、北方では無双していたから無視するわけにもいかない。三大天の一席はやらんがな。もうすでにその枠は廉頗、楽乗、劇辛で埋まります。楽乗は作中最強格の廉頗の腹六分目まで満たせるなら十分でしょ。何度か廉頗をヒヤリとさせたらしいし。
北方の備えは、地方の凡将紀彗と守備の李白と頭脳の馮忌に任せておこう。それらを纏めるのは李牧の元副官の馬南慈。馬南慈はまだあまりやらかしてない方の将軍だからマシに見えてしまう皮肉。それでも李牧信奉者というだけで印象悪いけど、無双状態李牧の副官だったならまあ仕方ない。やらかしていないのは単純に描写が少ないだけだけど、武力がめっちゃあるのは確か。まあ李牧が抜けるなら李牧の副官が大将を務めるのは当たり前だし、大将を務めさせても大丈夫なんじゃないかな。
時は俺が悼襄王として即位した前245年。秦では王弟叛乱が起き、秦と魏が蛇甘平原で戦う年。趙の国力は決して低いものではなく、長平の戦いがあったのにも関わらず趙の軍力は結構高い。そして燕の大将軍、劇辛将軍を金で引き抜けそう。状況は決して良くはないけど、悪くもない。
翌年の2月に、秦が韓を攻めることも分かっているから趙は大きく動くことが出来る。ただ大きく動き過ぎると、魏から鄴を貰えないかもしれない。前245年現在、鄴が趙の領土じゃないのはキングダム世界だと違和感を感じるけど、前239年までは魏の都市だったから仕方ない。まあ、魏が同盟のために鄴をプレゼントしてくれるでしょ。特に今年、蛇甘平原で呉慶が死ぬからそこで突っつけばすぐに貰えるかもしれない。
既に魏の繁陽攻めを廉頗将軍が行っている最中だし、楽乗将軍も追随する形で軍を展開している。……上手く話を纏めれば、鄴を貰った上で魏と同盟は可能だ。何せあの魏は、絶賛侵略中だった秦とすら同盟を結ぶしな。
魏と同盟を結び、秦を撃退しつつ、燕を征服する。これが基本の方針になるだろうか。北への備えは出来ている。秦の相手を李牧、龐煖、劇辛にやらせて、燕への侵攻は廉頗、楽乗、堯雲、趙峩龍あたりにやらせよう。軍は幾らでも起こせそうな気がするし、この世界が完全にキングダム世界なら、趙が中華統一をする未来もあるかもしれない。
「前の王はアレじゃったが、悼襄王は中華を平定するかもしれんぞ」
「そんなにですか?私には先王よりも良い、としか把握しておりませんでしたが……。
……そういえば、太子時代の噂というのを聞いたことがありませんね」
「自身の噂は一切流すなと言っておったしの」
「しかし、繁陽を落とした後は軍を停止せよという命令は不自然ではありませんか?」
「……悼襄王は郭開を魏に向かわせている。話し合いの内容次第じゃが、郭開が死んでも魏と同盟を結べても趙にとっては大きな前進じゃな」
魏の繁陽を落とした廉頗と楽乗の2人は、本来の歴史であれば殺し合いを始めていたが、この世界では両者軍を並べて繁陽城付近に展開をしていた。5万という大軍を引き連れ廉頗の援軍として参戦した楽乗は、廉頗の悼襄王に対する評価を聞き、自身の悼襄王に対する評価を上げる。
廉頗は悼襄王の太子時代の教育係でもあり、幼い頃の悼襄王を知る数少ない人間の1人だった。そして齢3歳にして常に人を値踏みするような目付きだった悼襄王の教育係を務め、将来は恐ろしい王になるだろうと予感していた。先王の時代よりも、ずっと戦争が多くなるだろうと、廉頗は内心期待をしていた。
「郭開が自ら赴くとは思えませんが……では今、宮中を取り仕切っているのは李牧ということになりますか?」
「そうじゃな。うぬもあの男を見たであろう?武力と知力、共に文句なしの武将じゃな」
「紀彗という男も将軍に任命していましたが、どこからあんな将を掘り起こしたのか……」
「趙国内の使える人材、というのを洗い出しているようじゃからな。少なくとも、先王よりかはずっとマシじゃ」
本来であれば、楽乗軍は壊滅していた。しかし楽乗軍を支える幕僚たちも戦死せず、廉頗も趙を去らなかった。それだけでも趙国内の大幅な軍力低下を避けることが出来ており、なおかつ在野から原作という未来知識を使って人をかき集めた現時点での趙の軍力は、秦と拮抗しているほどにもなっていた。
一月後。蛇甘平原で秦と魏の戦争が終着した頃。劇辛将軍が趙に移り、魏の大将軍である呉慶が討ち死にした。これにより秦と趙と楚という列強の脅威に晒されることとなった魏は、趙に鄴を明け渡す形で同盟を結ぶ。
そしてすぐさま、趙は燕に戦争を仕掛ける。率いる軍の総大将は廉頗将軍であり、副将として楽乗、堯雲、趙峩龍、趙荘、渉孟といった面々が揃う趙の大軍は、燕の大将軍オルドの率いる軍勢と相対することになった。