暗い……あまりにも…   作:薄氷の仮面

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第1話 東と西

春秋戦国時代、最も文化が栄えていたのは趙と言っても過言ではない。軍事力だけなら秦と楚が上だけど、領内の発展具合で言えば趙も負けてはいないというか勝っている。

 

で、そこに現代知識で内政してもすぐにパクられて他領に広がるんだよね。そうなると、領地が秦や楚と比べて狭い趙ではむしろ大きな改革をしない方が良い。千歯扱きや肥料の概念とか与えたら、確実に他国に伝わるわこんなもん。

 

そんなことしなくても、趙国内は比較的物が溢れていて豊かな国だ。じゃあそんな国で王になった時、最初にすることは?そうだね粛清だね。文官であり武官の李牧を使って、腐敗している政治を是正する。こういう時、武力が糞高くて正義感の強い文官はめっちゃ便利。ずっと戦場なんかに出ずに文官として正しく趙を統治して下さい。

 

……でもこの李牧、本物という確証はないんだよな。原作が未完だから、後から史実のような本物の李牧が出て来てコイツは弟子でした展開は無くはない状態。というかそうである可能性は結構あると思う。原作は史実なら出ていない戦争に首突っ込んで李牧の戦績に泥を塗っている状態だしね。

 

まあその時は本物の李牧を秦との戦争で使おう。当分の間、秦との戦争は劇辛将軍が主力になる。高い金を払って雇ったんだから、不安は残るけどその分は活躍して欲しい。知略はあるはずだし、武力も龐煖には負けたけどその龐煖とセット運用が出来るから秦軍相手でも互角にはなるはず。……楽観的に考えても互角予想って、いや本当に秦が強いから凄く辛い。

 

今下手に突っついて王騎将軍が復活しても厄介。なら当分は秦相手には防衛を基本として、燕に集中する形は間違っていないはず。秦と趙の同盟はしないです。向こうに得しかないし、山陽取られるの癪だし。原作壊れる。もう既に崩壊した後だけど。

 

……東は燕だけじゃなくて、斉とも国境を接している。一部の国境は、楚とも接していて敵は多い。そんな中でかなりの国境で接している魏と同盟を結べたことは、滅茶苦茶大きいし郭開は政戦頑張れ。史実では完全な奸臣だけど、キングダム世界ならわりと功臣だし、結構期待はしている。

 

 

 

趙と燕の国境を越境し、燕の大将軍、オルドと相対した趙軍はまずその燕軍の構成に驚く。オルドの本陣にいる多くが山民族であり、他の軍にも山民族が入り混じっている混成軍だったからだ。そしてそれは、悼襄王が言う通りだった。

 

「出陣前に言っておくが、戦場は平地にしろ。山の上よりも丘の上。下手したら平地の上の方が守りやすい。これは王命だ。出て来るであろう燕軍に山民族が確認出来た時点で、油断をするな」

 

平地の上よりも丘の上、丘の上よりも山の上の方が、基本的には守りやすい。それを覆すような命令の意図を、読み取れた者は少なかった。しかし廉頗は相対するオルド軍を見て、実際に丘の上や山の上に布陣するのは危険だと感じた。坂がある場所での戦闘と平地での戦闘は全くの別物だからだ。

 

特に勾配の激しい山の中腹辺りで軍が衝突した場合、平地とは違って坂道を駆け上がることもあれば逆に下ることもある。そうなった場合、軽装備である山民族の方が有利であり、平地で訓練している上に騎馬隊が主力の趙軍は不利を受ける。

 

「此度の戦は、出て来る燕軍を打ち滅ぼした上で城を落とさなくてはなりません。よって初戦ではこちらの被害を極力出さないようにする必要があるため、先陣はこの楽乗に任せて下さい」

「いや、うぬは介子坊と共に城を落としてこい。出て来る燕軍に対しては残りの全軍で当たる」

「軍を二つに分けると言うのですか!?野戦では全軍で燕軍に」

「ふん、戦場を平地にするのであればある程度は燕軍を釣らねばならぬ。

だからうぬと介子坊で城を落とし、そなたらの背を討つ援軍を側面から攻撃する。これが一番であろう」

 

燕との国境付近で少し進軍を停止した趙軍の本陣では、将が集まって軍議を開くが廉頗と楽乗の話し合いは完全に廉頗が主導権を握っていた。そして廉頗が城攻めを行う楽乗と介子坊の背を討つ燕軍の背を討つという流れを決めると、輪虎と渉孟を呼び出し檄を入れる。

 

「輪虎!渉孟!いつものをやる!こっちに参れ!」

「はいはい」

「ブヒ」

 

廉頗が力を込めて渉孟に抱き着くと、今まで廉頗のことを内心では過去の遺物だと思っていた渉孟は、改めて廉頗の大きさを思い知らされる。一方の廉頗は、力強く抱き返してくる渉孟の膂力と体躯の大きさを見て、次代を担う将になれる可能性はあると感じた。

 

おおよその戦の流れが決まり、趙軍の先陣を切った楽乗と介子坊は共に2万の兵を引き連れ、合同で武陽という都市の周囲にある小城を落としていく。城攻めをする前に武陽の城主がほぼ同数である兵4万をぶつけて来たが、野戦のしかも開けた土地では騎馬隊が主軸の楽乗軍に手も足も出なかった。

 

その後、燕の大将軍であるオルドが10万を超える大軍を引き連れ、武陽を攻める楽乗・介子坊軍の背後に布陣する。武陽とオルド軍に挟まれた形となった楽乗と介子坊の2人は、あらかじめ決めた通り楽乗軍がオルド軍、介子坊軍が武陽の軍と向き合う。

 

無論、オルドは今回の趙軍の規模がこれだけではないことを知っていた。知ってはいたが、包囲した趙軍を先に殲滅出来ると考えていた。この状況で残りの趙軍が攻めて来ないわけがないので、あらかじめ備えもしていた。しかしながら、突撃して来た趙軍の破壊力が凄まじく、対応に追われる羽目となる。

 

「殿、渉孟は少々自信過剰な所が欠点ですが、先鋒を任せても良かったのですか?」

「あれは先鋒で使う方が本人もやりやすいであろう。儂達が側面を突いたところで、中の楽乗軍、介子坊軍が窮地なことは変わらぬ。まああの2人であれば単独でも脱出は容易じゃろうが……破壊力のある2人を並べて、燕軍の想定以上の攻撃にする必要はある」

 

渉孟の実力に疑問を抱く姜燕だったが、いざ戦が始まると渉孟の破壊力には目を見張るものがあった。易々と燕軍の中へ入っていく渉孟は、輪虎と並んで燕軍を押し込んでいた。

 

「堯雲、趙峩龍はこの後に第二陣として出陣せよ。玄峰、本陣は任せる」

「おい待たんか。もう本陣から離れるつもりか?」

「当たり前じゃァ。さっさと武陽を落として楽乗、介子坊の両軍を率いて燕軍を押し潰す。玄峰はここが危うくなったら姜燕と魏加を使え」

「言われんでも分かっとるわい。

中華十弓を2人も本陣に置いておくとは余裕じゃな」

 

オルド軍12万の内、趙軍本体を警戒していたのは半数の6万。その6万に対し、2万ずつを率いて突撃した輪虎と渉孟の軍は善戦し、大いに押し込んでいたが、未だに楽乗と介子坊軍は挟まれたままであり、武陽から湧き出て来る援軍に苦戦をしていた。

 

そのため廉頗本人が動き、本陣の1万の精鋭を引き連れ、武陽からの軍を迎撃していく。さらに堯雲、趙峩龍もそれぞれ1万の兵を引き連れ、オルドの本陣を目掛けて攻撃を開始した。

 

戦場は堯雲軍、趙峩龍軍、輪虎軍、渉孟軍、オルド軍、楽乗軍、介子坊軍、武陽軍、廉頗軍と各軍が入り乱れる乱戦となった。こうなった時に、強いのは将が強い趙軍である。山民族は部隊毎で構成されており、隊同士の戦いであれば趙軍に引けを取らなかったが、軍との戦いになった時には不利を受けた。

 

燕軍16万に対し、趙軍12万の戦いは、初日から両軍は血を流すが、出血が多いのは明らかに燕軍の方だった。

 

 

 

趙の国都で待つ悼襄王は、燕に遠征した趙軍から緒戦の勝利の報告を待つ。しかしその報告が届く前に、別の知らせが届き、宮中を騒がせていた。

 

「韓を攻めていた秦が別の軍を起こして趙に侵略して来ただと!?李牧は何をしている!貴様が秦は動けないと言っていたではないか!しかも軍を率いるのはあの王騎だと!?」

 

卒倒しそうだった悼襄王は、李牧を怒鳴りつけることで平静を保つ。悼襄王に「秦は韓に大軍で攻め込んでいるから、趙は燕に大軍を送っても秦は攻めて来ないよなぁ?李牧?」と聞かれた際に李牧は「ええ。間違いありません」と答えており、実際に失態ではあるので李牧は頭を下げた。

 

「貴様の失態は貴様が償え。李牧は龐煖と共に援軍を率いて劇辛将軍の軍に合流し、共に秦の侵略者共を皆殺しにしろ。あの秦の怪鳥を、貴様が必ず討て」

 

続いて秦軍の情報が入り、徴兵された兵も多いことが分かると趙の宮中には幾らか余裕を取り戻し、国境を守る劇辛への援軍として、李牧と龐煖を向かわせる。2正面作戦を強いられる形となった悼襄王は、それでも的確に指示を飛ばし続けた。

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