お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話 作:たーぼ
この小説を書く時はいつもネイチャのwikiと競走履歴を見ながら書いてます。
目的地にはすぐに着いた。
「ネットで何回か調べはしたけど結構いろんなのがあるんだな」
「専門店とかと比べるとさすがに少ないけど、トレセン学園と近いからウマ娘用の店とか商品は結構充実してるんだよね」
デパートの中にあるウマ娘用の蹄鉄店だ。
周りを見ると他にもレース用のシューズやトレーニング器具、果ては勝負服やウイニングライブ衣装の見本となる資料雑誌店もある。
さすがは中央と言ったところか。ウマ娘のためにあると言っても過言ではないくらい商品や店が揃っている。
トレセン学園の生徒らしいウマ娘もちらほらいた。大抵は友人と一緒か1人で来ていてトレーナーと来ている者はネイチャ達以外にはいない。
その事に気付いたのはネイチャのみだったが、それも別に気にするほどの事でもないだろう。
というか気にしたら買い物に集中できない可能性が高い。
「今日はトレーニング用の蹄鉄を買いに来たんだよな」
「だね。走行用だから重さもそんなにないやつなんだけどそこはトレーナーさんに任せるわ」
「ちなみにいつも履いてるシューズは何足ある?」
「スペア合わせると3足かな」
「じゃあ走行用、踏み込み用、レース用で三つほど買っとくか。いちいち蹄鉄を付け替えるのも面倒だろ。なら練習別に使い分けできる方がそれぞれダメになりにくいしな」
トレーナーの言い分には納得したが、如何せんネイチャには素直に頷けない部分があった。
「あー、ごめん。そう言ってくれるのは嬉しいんだけどさ、蹄鉄って結構良い値段するやつもあるから出来たら安めなの選んでね? ネイチャさん一個だけしか買うつもりなかったから今日そんなお金持ってきてないんですよね~……イヤ、ある程度遊ぶ分は持ってきてるんだけど」
「あん? んなもん俺が全部買うから気にしなくていいぞ。あと俺が選んでいいとは言ってくれたけどネイチャも気になるのがあったら遠慮なく言えよ」
「ええ!? いやいや、いいってそんなの! ただでさえアタシの買い物に付き合ってもらってるんだし自分の物は自分で買うってば!」
「バッカお前、トレーニング関連の物なら俺にだって関係あるだろ。何なら担当ウマ娘が使う蹄鉄なんだし俺に買わせてくれ。俺の休日の過ごし方知ってるだろ? 基本寝てるか家でボーっとしてるかだ。趣味も特にねえから無駄に貯金は貯まってく一方だしな。こういう時に使わねえとトレーナーとして腑に落ちん」
トレーナー業。
チームに所属するウマ娘のレース指導や体調管理などをするトレセン学園特有の職業だ。そのためレースに関する専門知識はもちろんウマ娘の事や栄養管理の知識、ウマ娘がケガした時のために最低限の医療知識が必要とされる。
いくつかの資格も必要とされ、それも中央のトレーナーともなればまずトレーナーの資格を取得するだけでも難しいとされているほどだ。
だからかと言われればそうと断言できる訳でもないのだが、給料は結構良かったりする。一人暮らしの男性が割と余裕に生活できるほどは貰っていた。
それに加え渡辺輝は特に趣味を持たずお金を使うのは基本生活費のみ、あとはトレーナーとしての教本や資料などの仕事関係の物か多少のマンガくらいだろうか。
とにかくまだ新人トレーナーとは言ってもそれなりに裕福な遊びができるくらいには貯金がある。つまり遠慮はいらないという事だ。
「……じゃあ、甘えさせていただきます」
「それでよろしい」
こういう時のトレーナーが強情なのをネイチャは知っている。
よって折れるのはネイチャだ。ここで押し問答をしていても羞恥心が芽生えてくるのは自分だからもはや諦める他なかった。
「じゃあさっさと決めるか。走行用の場合だと重すぎない程度の蹄鉄でいいな。自分の脚の感覚を掴めるぐらいの重量なら……っと、これがちょうど良いか」
値札を見る事すらなく形や重さを確かめては買い物かごに入れていく。
「ネイチャの得意技はあの踏み込みからの加速力だから、結構重いけど踏み込みの練習をするならこれがいいか。脚を上げる時と踏み込む時の力の入り方を感じやすいはずだ」
「結構すんなり決めていくんだね?」
「ネイチャの課題は基本分かってるからな。それを加味すればどれを買えばいいかってのは案外分かるもんだよ。レース用のはっと……75グラム、よしっこんなもんか。会計行ってくる」
そう言ってレジへと向かうトレーナー。ものの数分でネイチャの買い物は終わってしまった。
手早く会計を済ませてきたトレーナーはレジ袋を片手にネイチャの元へ帰ってくる。
「えっと、ありがとねトレーナーさん。三つも買ってもらっちゃって」
「気にすんな。お前のためなら貯金の全部使ったって構わねえよ」
「それは言い過ぎ」
この男はすぐ誤解を招くような言い方をするから心臓に悪い。
とはいえネイチャも彼と出会って数ヵ月。さすがに平静を装ってツッコミを言い返す程度には慣れてきた。
時間は14時半といったところか。
既に目的の物は買えたので解散、でもいいのだがそれにしても早すぎる。ここは先ほどの通り、トレーナーが見たい店に行くという選択が正解だろう。
正直言うとこのまま解散は何か寂しい。
「んじゃトレーナーさんが行きたいとこにでも行く? どうせヒマだし色んなとこまわろっか?」
「ん~、と言ってもさっきフロアマップ見た限り気になるとこもそんななかったんだよなあ」
さすが趣味ナシ男。清々しいほどどの店にも興味がなかった。
これにはネイチャも呆れるところだ。ウマ娘やレース以外に惹かれるものがないのか。
だからといって解散という選択肢をトレーナーの口から出させる訳にはいかない。
何でもいいから代替案を出そうとネイチャが何か言おうとしたところで、
「あ、あのさ──、」
「おっし、適当に見て回るか」
「……え? 気になるとこ、ないんじゃ?」
「ないから見て回るんだよ。それにゲーセンとか娯楽コーナーもあるし、せっかくの休みなんだからネイチャも楽しめるとこ行こうぜ」
「あ……うん……」
自分が言おうとしていた事とまったく一緒の事を言われた時、何だか照れ臭い気持ちになるのは人間もウマ娘も変わらないらしい。
しかし解散は免れた。ならば素直に従うまでだ。
「よーし、とりあえず目に付いた気になる店にでも行くか。今日は全部俺の奢りだ! パーッとやろうぜ!」
「急に乗り気になるね」
かくして、トレーナーとネイチャの突発デパート散策が始まった。
本屋の場合。
「トレーナーさんってマンガとかは読まないの? ずっとレース関係ばっかの読んでる感じ?」
「や、マンガも多少は読むぞ。けど本って結構かさばるし家に多くは置けないから気楽に買えないのが難点なんだよな」
「そんな趣味ナシスマホ音痴なトレーナーさんに良いハナシがあるんですけどいかがかね?」
「今テンポ良くバカにされた気分なんだが。言ってみたまえ」
ふふんと言いながらネイチャは自分のスマホを出してアプリ画面らしきものを開いて見せてきた。
「これは……?」
「ふへへ。トレーナーさんや……今の時代、本はスマホでも読めるんですよ~。電子書籍って言うんだけどさ、スマホ一つで数千冊も見れるんだって。もちろんマンガだけじゃなくてトレーナーさん御用達のレース資料とかもね」
「なん……だと……!? こんな端末一つで、本がめっちゃ読めるのか……!?」
「そうですとも。家のスペースを占領しないし、スマホさえあればトレーナー室でも電車の中でいつでもどこでも読めちゃうわけ。どう、凄くない?」
何故かドヤ顔で聞いてくるネイチャ。
普通ならこんな事で何ドヤってるんだと思うかもしれないが、そこはスマホ音痴なトレーナー。本気で感心しちゃっていた。
「すげえ! やっぱ時代の最先端って進化を続けてんだな! 今の若者はすぐこういうのを見つけては取り入れてるんだからすげえわ」
「まあアタシも最近まで全然知らなくて友達に教えてもらったんだけどね。いや~最近の若い子って凄いわ」
「おい若者」
ウマ娘用洋服店の場合。
(あ、この服……可愛い)
「その服気に入ったのか?」
「ふぇああ!? ととととトレーナーさん!? いやいやいやいや、そんな事ないない! ちょっと見てただけだし!」
「ちょっと見てただけの反応じゃないだろそれ……。ほら、試着してみたらどうだ? 似合うと思うぞ」
「に、似合わないって! アタシには可愛すぎるから荷が重いのですよハイ」
「はーいつべこべ言わずに試着しますよー。とっとと着てこいオーケー」
手を掴まれ見ていた服と一緒に試着室へと連れて行かれていく。
人間より力が強いのがウマ娘という認識は既に世間でも一般となっている。なのに掴まれた手を振りほどかないという事は、ネイチャも満更ではないのだった。
もっとも、掴まれた手に意識が向いていたのか似合うと言われた事について意識が向いていたのかは本人しか分からない。
いとも簡単に試着室へと放り込まれ仕方なく気になっていた服に着替えていくネイチャ。
ウマ娘専門の洋服店だから尻尾の部分もちゃんと考えられている白いフリルのミニスカートだ。
上は無地のシンプルなホワイトシャツに青のデニムジャケット。夏でも着れるように通気性も良くしっかりと作られている。
シャララと、カーテンが開く音がした。
腕を組みながら待っていたトレーナーはその音と共に試着室へと目を向ける。
「……お~」
そこには頬を若干染めながらトレーナーとギリギリ目を合わせないとこへ視線を泳がしているネイチャがいた。
恥ずかしがってはいても手を後ろに組んでファッション全体を見えるようにしている辺り、評価は気になるようだ。
「……え、えと、ど、ドーデスカ?」
「何だ。やっぱ全然似合うじゃねえか。雰囲気も合ってるし良いと思うぞ」
「あーははは、そ、そーかなー?」
「こういうのは実際着てみないと分からないもんだからな。よし、店員さーん」
「ええ!? 何で店員さん呼んでんの!?」
「俺が一式買うから今日はそのままでいれば着替え直さなくていいし楽だろ? 今日のところは俺に甘えとけ甘えとけ」
「うぅ……」
そう言われると弱い。というかこうと決めた時の行動が早すぎてネイチャが遠慮する前に全てが終わってしまう。
ネイチャがトレーナーの言動に慣れてきたのと同じように、トレーナーもネイチャがどこで遠慮をしてくるのか分かっているのだ。
「ほら、次行こうぜ」
「ホント……敵いませんなあトレーナーさんには……」
ゲームセンターの場合。
「うあー! また負けたー!」
「はーはっは!! 実際に走ったら絶対勝てねえけどウマオカートなら俺には勝てないようだな!!」
「てかこのゲームでも三着って何なのさー! ゴール手前で赤甲羅ばっか投げてくるなんてズルいわこのNPC!」
「ゲームの方も特訓しとくべきだったなあネイチャさんよお」
「あーもう腹立つ! 行くよトレーナーさん!」
「え、どこに?」
「……プリクラ」
「プリピュア?」
「プリクラ! 少女アニメじゃないから」
さっきとは違い今度はネイチャがトレーナーの手を掴んだ。
当然、振りほどけない。
「えーこれって普通女子が撮るもんだろ~? 学生でもない俺がこれ撮るって相当イタいヤツと思われそう」
「その考えは古いって前も言ったじゃん? それにほら、この前の自撮りのリベンジって事で。笑顔の練習してた?」
「なるほど、それなら甘んじて受け入れよう。俺の超絶爽やか笑顔見せてやる。どんと来い」
「ほいほい、んじゃ軽く設定して、と。全体写る事もあるからポーズとか適当に取ってね。全部同じだとつまんないし」
「……え、ポーズ? 待って、それは練習してな──、」
「はーいカウントダウン始まったよー。さーんにーいーち」
「ちょ、まっ」
────────―
夕陽が差し込むような帰路に二人はいた。
「くっそ、ポーズ考えてたら笑顔なんてする暇もなかったぞ……」
「はーあ、笑い疲れた~。プリクラって自動で結構加工してくれるのにトレーナーさんってば何でそんな面白い顔になるかなー」
「俺が聞きてえよ。くそ、もうプリクラなんて二度と撮らん」
「ごめんって。またリベンジしようよ。
「……ったく、お前がそこまで言うなら考えてやってもいいけどな」
これで言質は取れた。
また適当な口実を考えて休日にでも連れ出そうとネイチャは考える。
そもそも行きが近かったのであれば帰りの道も近いのは必然。
ネイチャが住んでいる栗東寮の前まですぐに着いた。
「送ってくれてどうもです」
「まだ夕方だけどな。俺の家も近いし大丈夫だよ」
「……あと、今日は色々とありがとね。楽しかった」
「俺も久々にちゃんと休日を満喫できたし、お前が楽しんでくれたようなら万々歳だ」
「あっ、あとどれだけ気に食わなくてもあのプリクラ捨てちゃダメだかんね。今度撮る時と比較しなきゃだし」
「さすがに捨てないっつうの。何なら俺の分もネイチャが持っとくか?」
「うーん、それはいいや。多く持っててもあれだしね。トレーナーさんにもちゃんと持っててほしいし」
えー……と言いながら財布から取り出したプリクラの写真を見直すトレーナー。
自撮りのリベンジができると思っていた分、どうやら本気で納得がいかないようだった。
栗東寮にはネイチャ以外にも多数のトレセン学園の生徒が住んでいる。
いつまでもここにいると色々と注目を集めてしまうだろう。ネイチャ的にもそれは困る。
「それじゃね、トレーナーさん。また学校で」
「おう」
去っていくネイチャを見送る。
今日買った服を着たまま、他にも色んなものを買った買い物袋を片手にだ。夕陽に照らされる彼女の姿はいっそ、モデル雑誌の中身にある1ページの写真のようだった。
「俺も次はもっとちゃんとした服着てった方がいいか?」
はい、後編です。
一回目のデー……お出掛けなので大体は端折りましたが、割と濃いな。
次回は月曜か火曜更新になる予定です。
では、今回高評価を入れてくださった
もいすさん、アヌベールさん、ばぺろぺさん、ブクブクグリムさん、総介さん、しのづさん、cheetahさん、ナゴムさん、ヒャオさん、良介さん
以上の方々から高評価を頂きました。
先日日間ランキングを見たら一瞬ですが16位になってるのを見てすぐスクショしました。元気付けられました。最高順位を更新できるのはやはり嬉しいものですね……。
本当にありがとうございます!!
最近ちょっとした出来心でTwitterでこの作品を検索したら、いくつか感想を呟いてくださったりブクマしてくださっている方を見かけていいねするか迷いました(怖くてできない)
恐悦至極です……。