お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話   作:たーぼ

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お気に入り登録ご感想高評価本当にありがとうございます。

前回のお話が結構好評価だったので、ネイチャの良さが少しでも出せていたのかなと思いたいところです。


あとがきにて少し『宣伝』があるので、よろしければご一読くださると幸いです。


13.チーム名

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休み時間での一幕があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「でさ~、トレーニングの休憩中にゴールドシップがプロレス技仕掛けてくるからその日は余計に疲れたよぉ~……」

 

「それで今日は授業中のプリント配りの時に後ろ向いたらグッタリしてた訳ね。休憩中とはいえそんなのやられたらそらそうなりますわなー」

 

「せっかくカイチョ―のとこ行こうとしてたのにこれじゃ行こうにも行けないよ……」

 

 ナイスネイチャとトウカイテイオーは席が後ろと前という事もあり、休み時間になるとよく話すほど仲が良い。

 今日の会話もいつもと同じような日常の一コマみたいなものである。

 

 

「こういう時のアンタってアタシと話してるか生徒会室に行ってるかだもんねー。他にする事ないのかって思ったりもするけど」

 

「えー、じゃあネイチャはボクがカイチョ―のとこ行ってる間は何してるのさ? ベンキョー?」

 

「えっ、そりゃあ、まあ……ホラ……と、トレーナーさんのとことか……?」

 

「ボクとそんなに変わらないじゃん! ネイチャもヒトの事言えないよー!」

 

 思わぬところで特大ブーメランがぶっ刺さった。無闇に発言をするとどこから自分に返ってくるか分からないから怖い。

 悔しさよりも一言も返せないのが事実なのでとりあえず話を逸らす事にする。

 

 

「……いや~、それにしてもテイオーのチームはいつも賑やかだよね~。何というかこう、全然ヒマしなさそう的な?」

 

「思い切り話逸らした……。うーん、まあそうだね。おかげでトレーニングとかも楽しくやれてるとこあるし、そこは嬉しいかなっ。併走トレーニングも気軽にチームのみんなで出来るからさ、競い合うの楽しいんだよー!」

 

「競い合い、ねえ……」

 

 テイオーの表情を見る限り嘘を言っている素振りはない。本気でそう思っているのだろう。

 自分のトレーナーの話だと、テイオーのトレーナーはこれまで何度か成績優秀なウマ娘を輩出している敏腕トレーナーと聞いている。

 

 しかもその内の1人は今海外へ遠征中だとか。誰もが認めるほどの強いチームにテイオーは所属している。

 そんなチームメイトと共に毎日高め合っているのならば、成長の幅はネイチャと比べても差は歴然といったところか。

 

 と、またマイナスな方へ考えてしまう思考を振り切る。これではトレーナーに悪い。

 

 

「そーいえばさ」

 

 いつもと同じような日常の一コマに、一石が投じられた。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 言われてみれば、である。

 基本、トレセン学園のみならず全国のウマ娘を育成する施設では『チーム』が存在する。

 

 1人のトレーナーを顧問として、複数のウマ娘が入部する部活と言えば分かりやすいか。それがこの学園、或いはトレーナーとウマ娘の形と言っても過言ではない。

 にも関わらずだ。ネイチャのチームにはたった1人しかいないではないか。

 

 一度浮かんだ疑問というのはそう簡単には離れてくれない。ならその疑問を解消するための解がなければならない。

 ネイチャでもいくつかは推測できるが、一番あり得そうな答えは……すぐに出た。

 

 

「スカウトはしてるけど逃げられてたりするんじゃない? ほら、話した事ある通りあの人結構ぶっ飛んだ発言する時あるし」

 

「あー、うん、ボクなら逃げてたね」

 

 ヒドイ言われようであった。

 色んな意味で容赦がない。

 

 チャイムが鳴った。

 同時に教師がやってくる。体の向きを黒板の方へ戻すが視線は窓の外へ。

 

 

(チーム、か……)

 

 答えは出ても完全に疑問が消えるかと言われればそうでもない。

 わだかまりが残ればそれはもう立派に心を侵食してくるものなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? 何でうちのチームがネイチャだけなのかって?」

 

 

 時は放課後。

 走行トレーニングが数本終わっての休憩中だ。

 

 

「そそ。他のチームって何人かウマ娘の子いるじゃん? チームメイトがいれば一緒に併走トレーニングも出来てもっと強くなれるのかなって。テイオーもそれで高め合ってるって言ってたから何でウチはアタシだけなのか気になってさ」

 

 スポーツドリンクを一口飲んでから疑問をぶつける。

 ネイチャの走りからデータを取るために紙に何かをメモっていたトレーナーが逆に疑問を放った。

 

 

「え、何、チームメイト欲しいの?」

 

「……いや、そういう訳でもないんだけど、ちょっと気になっただけでして……」

 

 チームメイト。お互いを高め合える仲間、またはライバル。

 そういう存在が自分を更に強くする。ネイチャもそうは思っているのだがさて、ここで素直に首を縦に振れない自分がいた。

 

 遠慮しがちな性格が出たのか、こんな自分のトレーニングに付き合ってもらうのは悪いと思ったのか、それとも。

2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。真意は不明だ。

 

 無意識の葛藤に陥っていたネイチャをよそに、トレーナーは普段通りの軽い口調でこう言った。

 

 

「ちなみに他のウマ娘をスカウトとかは一切してないぞ。今後もする気はない」

 

「え? そうなの? 何で?」

 

「何でって言われてもなあ……。俺お前の専属トレーナーになるって決めてたし」

 

「せ、専属って……アタシだけのトレーナーって事……?」

 

「そうだけど?」

 

 あっけらかんと答えてきやがった。この男、発言にデリカシーや意図を隠せないのか。

 トレーナーの言葉に慣れてきたと言っても動じないように心掛けているのと不意打ちでそうでないのとでは全く違う。

 

 端的に言えばクリティカルヒットだった。

 

 

「……そ、そうなんだ~。あ、あはは~はははは……」

 

 何か言おうにも言えないレベルだ。トレーナーに変な意思がないと分かってはいてもこうなってしまう自分がおかしいのか。

 なるほど、テイオーが逃げると言っていたのも頷ける。これを初対面の時から言われて慣れてきたネイチャが逆に凄いのだと思う。

 

 

「本音を言えば一緒にトレーニングが出来るってのは大きいポイントだとは思ってるよ。その方がライバルを意識しながら成長も出来るしな。お互いの良い所を奪って自分用の走りにアレンジだって出来る。メリットが大きいのは確かだ。現に俺と同期のトレーナーのチームにもウマ娘が何人かいる」

 

 ならば何故、という当然の疑問が生まれる。

 今回は乙女心よりもウマ娘としての本能から来る疑問が勝った。ピン、とネイチャの耳がトレーナーの方へ向けられる。

 

 

「けど俺はまだトレーナーとして未熟な部分が多い新人だ。実績もなけりゃ経験も少ない。こんなんで一気に複数人のウマ娘をチームに迎え入れても実績を残せる可能性ははっきり言って少ないと思ってる。簡単に言っちまえばそれだけの人数を抱える余裕が今の俺にはまだないって事だ」

 

「……、」

 

 ネイチャが思っているより真剣に考えての結論らしい。

 チームだから複数のウマ娘が所属する方が正しい、という固定観念をトレーナーは捨てているのだ。

 

 たとえ1人しか所属していなくても良い成績を残せばそれは実績となり認められる。ただ所属している人数が多ければ多いほど好成績を残すウマ娘が増え、その分トレーナーの実績も多くなるという仕組みだ。

 しかし、そのやり方にも欠点はある。

 

 必ずしもチーム内全員のウマ娘が好成績を取れる訳ではないという事。

 いくら入学すら難しい中央のトレセン学園に入ったとしても、だからこそ強いウマ娘がわんさかいるここで結果を出す事がどれだけ難しいかを知らなければならない。

 

 そして、あくまで可能性の話だがチーム内だからこそ実力の差を思い知らされ軋轢が生まれてしまう事だってある。それをウマ娘の実力かトレーナーの指導不足かと決める事でまた混乱を招く可能性もないとは限らない。

 

 一人一人の面倒を細かく見る事が出来るのは間違いなく要領のいい者か才ある者だ。

 そして渡辺輝は自分はどちらにも当てはまらないと思っている。調子に乗って何人かチームに入ったとしても面倒を見切れるか、みんながみんなレースで結果を残せるかと言われて首を縦に振れるほど甘くないのを、先輩トレーナーである滝野勝司の元で勉強していた時からよく知っている。

 

 だから今はネイチャ以外のウマ娘はスカウトしない。

 それを堅実と捉えるか臆病者と捉えるかは人次第だ。新人トレーナーだから結果を残したいと思う者が多いのも分かる。人数が多ければ可能性は増えるから。

 

 しかし、勇気と無謀を履き違えてはいけない。

 実力に見合わない重圧は簡単に想定の許容範囲を超えて人を壊す。

 

 だから渡辺輝はたった1人のウマ娘を選んだ。

 他の相手との実力差など関係なしに、成功か失敗かなんて度外視で、一目惚れしたあの走りを共に成長させたいと心から思ったから。

 

 

「それがこのチームにアタシしかいないって理由?」

 

「……まあ、そんなとこだ」

 

「何、今のちょっとした間は?」

 

「お前が気にする事じゃねえよ」

 

 他にも理由はあるにはあったが、今は……いいや、今後もネイチャに話すべきではないだろう。話したら何だか怒られそうな気がする。

 まるでメリットだけ話してデメリットは話さない悪徳業者の気分だった。1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「お前は俺がじっくりたっぷり時間かけて強くしてやるからな」

 

「言い方が何かキモチワルーイ」

 

「言い方がストレートすぎてメンタルブレーイク」

 

 すっかりいつもの調子へと戻る。

 この切り替えは柔軟な思考をしているからか、それとも何かを隠すためのカモフラージュか。

 

 

「でもまあ、ネイチャがそこまでチームメイト欲しいってんなら1人くらいは探──、」

 

()()()()()()

 

「お、おう……」

 

 何だか食い気味に言われた。何だろうこの謎の威圧感は。不躾な言葉は不要と言わんばかりの視線すらあった。

 いらないならいらないでトレーナー的には全然良いのだが、そこまで言う必要があったのだろうか。

 

 食い気味で言われたせいで気付かなかったトレーナーであったが、いつもなら気付いているはずだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? と。

 

 普段のネイチャなら『いらない』ではなくもっと遠慮したように『大丈夫だから』と言うはずだ。

 その違いの真意は、きっと彼女にしか分からない。2人と3人なら2人を取りたい。そんなものだろう。

 

 10分の休憩時間もあと2分ほどで終わる。

 そろそろかと立ち上がるネイチャへ思い出したかのようにあっと言ったのはトレーナーだ。

 

 

「そういや言い忘れてた。決まったぞ、ネイチャ」

 

「何が?」

 

「俺達の『チーム名』」

 

 突然の事で一瞬脳内がはてなでいっぱいになったネイチャ。

 

 トレセン学園にはトレーナーとウマ娘からなるチームがある。とすれば、だ。

 この学園にあるチームには必然的にそれぞれ『チーム名』が存在している。テイオーのいるチームにだって確か『チーム名』があったではないか。

 

 個々のチーム特有の名前。

『チーム名』が決まったその瞬間から、そのチームには特別な意味が含まれる。

 

 渡辺輝とナイスネイチャ。

 たった2人だけの『チーム名』。

 

 特別の証。

 

 

「それで、『チーム名』って?」

 

 気付けば喰い付いていた。

 応えるようにトレーナーも立ち上がる。青と朱が混じりつつある空をバックに、その証が刻まれる。

 

 

「『アークトゥルス』。それが俺達の『チーム名』だ」

 

「アーク、トゥルス……」

 

「『アークトゥルス』。一等星の一つで単独の恒星の中ではシリウス、カノープスに続いて三番目に明るく見える星だ。俺達にとってピッタリの名前だろ?」

 

「ここでも3の数字がアタシを蝕むのかー!」

 

 どこまでもいっても『3』が纏わりついて来るのはもはや呪いか何かか。

 せっかく名前が決まったのにうぎゃーと怪獣みたいに呻いているネイチャだが、トレーナーの意図は別にあった。

 

 

「とは言っても案外悪くない名前だぞ」

 

「……ホントに?」

 

「ああ、いつかテイオーに勝つならもってこいの名前だ」

 

「……、」

 

『アークトゥルス』には様々な話があるが、その中にこういうのがあった。

 

 

「『アークトゥルス』。単独の恒星の中では三番目に明るい一等星。そして、その近くには『スピカ』っつう星がある」

 

「『スピカ』、ねえ……」

 

「本来ならその二つの星は朱色のアークトゥルス、青色のスピカで『夫婦星』なんてロマンチックな呼ばれ方をされてるらしいが、俺達は違う」

 

 ピクンッと、『夫婦星』に一瞬反応したネイチャの耳だがそんな場合ではない。

 本題はここにあった。

 

 ネイチャが模擬レースの時から意識していた事でもあり、ある意味では最終目標と言ってもいい儚い夢だ。

 そこへ切り込む。トレーナーが何を言おうとしているのかはもう分かっていた。

 

 

「『チームアークトゥルス』は、『チームスピカ』を超えるぞ」

 

「……相変わらず大それた事を言いますなーうちのトレーナーさんは」

 

「言うだけならタダだぞ。どうせなら無謀な夢追っかけてこうぜ」

 

「アタシ1人でどこまで『スピカ』に近づけるかって事ね」

 

「ああ。そしていつかは超えてみせる。ネイチャならいけるさ」

 

 勇気と無謀は履き違えてはいけない。

 しかし、何か一つでも可能性のピースがあるとするならば、それに賭けるのはどんなにちっぽけでも立派な勇気となり武器になる。

 

 自分を信頼しすぎではと思ってしまうのは卑屈なネイチャの悪い癖だ。

 だけどそれが心地良いと思ってしまった時点でもうトレーナーに乗せられているのだろう。

 

 季節は真冬。

『若駒ステークス』は来月。そこから『チームアークトゥルス』と『チームスピカ』、ネイチャとテイオーの勝負が始まる訳だが。

 

 

「ちなみに聞くけど勝算は?」

 

「今はまだない」

 

「正直か!」

 

「何かとテイオーのデータは取ってるけどやっぱセンスあるわあいつ。伸びしろの塊って感じが凄い。天才はいるなあ、悔しぶりゅえっ!?」

 

「あっちを褒めるなっての」

 

 ネイチャの人差し指と中指がトレーナーの横っ腹を抉った。

 ウマ娘の力はえげつない。ネイチャにしては珍しく素直な嫉妬だった。

 

 

「ほら、トレーニング再開するよトレーナーさん」

 

「いつつ……結構力入れやがったな……」

 

「勝算がないってのは、()()()()って事でしょ」

 

「……、」

 

 ネイチャはちゃんと過去の言葉を覚えている。

 テイオーの事もちゃんと分析してネイチャを徹底的に鍛えると言っていたのだ。信頼しているのはトレーナーだけではない。ネイチャだってきちんと信頼しているのを忘れてはいけない。

 

 

「どこまで出来るかは分かんないけどさ、テイオーに少しでもアタシを意識させてやるんだからちゃんと付き合ってくださいよー」

 

「……何だ。分かってんじゃねえか」

 

 どうやらチーム名が決まって気合いが入ったのか。

 やる気は充分のようだ。

 

 

「っし、じゃあトレーニング再開だ。スパートかける時のタイミングを全力で走りながら考えるんだ。一秒の思考の遅れが命取りになると思えよ」

 

「はーいよ。ぼちぼちやっていきますかー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全力で練習用のターフを駆ける。

『スピカ』に少しでも近づくために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、という訳でオリジナルのチーム名が決まりました。
個人チームなので『3』に定評のあるネイチャにはピッタリの名前かなと。

チームスピカについてはアニメとは別時空のものとお考えください。
あくまでこの作品でのチームという枠です。

次回は金曜更新となります。



では、今回高評価を入れてくださった


南国フルーツさん、麦丸さん、Кадзукиさん、Chulainnさん、Catalina helmさん、運輸省さん、坂本龍馬さん、紫子さん、腐乱人形さん、五穀米兎さん、球磨猫さん、ぼのわんさん、星狐鴉さん、GREEEEEENさん、柊ナタさん、ロクでなしの神さん、アマゾネス使いさん、静刃さん、Morse信号機さん、なっとう博物館(弟)さん、甘い鯛焼きさん、黒鳥さん、ちゃんひらさん、啓蒙トリルさん、fire-catさん


以上の方々から高評価を頂きました。
ま、まさかまさかの総合日間ランキング6位(19時現在)になってるのを見て呆然となりました。まじか……スクショが増えていく……。
皆様の温かいお言葉や感想にいつも励まされています。本当にありがとうございます!




【宣伝】

5月22日(土)の21時より、『十五夜にプロポーズでも』という作品を執筆なされている知り合いであるちゃん丸さん主催企画小説『ウマ娘プリティーダービー〜企画短編集〜』が毎日一話ずつ9日間投稿されます。
お誘いいただいだ時は驚きましたが、ネイチャとはまた違うキャラで一話完結の話を書くので、もしよろしければ皆様も是非読んでいただけると幸いです!

9日間という事は、他にも現在ウマ娘小説を書いている方や別作品を書いていたけどウマ娘が好きな方々が書く短編集なので、自分も密かに楽しみにさせていただいております。
自分の出番は23日(日)なので二番目でした! 三番目だったらネイチャと縁があったのに……という気持ちは仕舞っておきます。

では、企画小説でもお会いできる事を祈っています!
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