お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話   作:たーぼ

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18.トレーナーの一日withネイチャ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 AM.7:00。

 

 

 

 

 

 

 いつものように起き、眠気が取れないまま洗面台へ。

 蛇口を捻れば冷たい水が勢いよく出てくる。それを両手で掬って自分の顔面へバシャリと思いきりかけると一気に意識が覚醒していくのを感じた。

 

 テレビを点けて朝のニュースや今日の天気予報を確認しながら洗濯を今するか夜に帰って来てから部屋干しするかを決める。

 今日の降水確率は10%。雨が降る確率はもはやないと言っていいだろう。洗濯かごに入れていた衣服類などを洗濯機に入れてスイッチを押す。

 

 洗濯が終わるまでの間にやる事も決まっている。

 まずはささっといつもの青みがかったカッターシャツを着て、その上から黒いベストを羽織る。これが普段のスタイルだ。

 

 そしてまた洗面所へ行き、ワックスで軽く髪をセットする。

 朝食は洗い物が面倒なのでコンビニで買っておいたパンを適当に開けて頬張る。飲み物はコップ一杯分の野菜ジュース、申し訳程度の栄養補給だ。

 

 パンを食べ終えると、洗濯が終わるまでまだ少し余裕があるのでその時間を使いスマホを開く。

 テレビでやっているニュースを聞き流しながら開いたアプリはマンガアプリ。ネイチャに教えてもらってから最近のこの時間帯はこれにハマっている。

 

 わざわざ本を取りに行く必要もなく、パラパラといちいちページを捲る必要もない。

 好きなマンガをタップし、ただ親指をスライドするだけで次のページが見れる。何より電子書籍なので部屋のスペースを奪う事もなくかさばらないのが良い。

 

 お気に入りのマンガをいくつか読んでいると洗濯機からピロリロリンッと軽快な洗濯終了の音が鳴った。

 洗濯物を取り出し、まさに快晴と言わんばかりの空と暑苦しい太陽を憎らしく思いながら干していく。これくらいの生活力はいくら男性でも一人暮らしをしていれば身に付くだろう。

 

 独身男性の洗濯物は少ないからまだ楽だ。これだけ日差しが強いと帰宅した頃にはすっかり乾いているだろう。そろそろ天気を気にする心配をしたくないから乾燥付きの洗濯機を買おうか迷うところである。

 

 時計を見ると8時。そろそろトレセン学園に向かう時間だ。

 家でやる事はもうやった。あとは徒歩でのんびり行けばトレーナーとしての仕事が始まる。

 

 さて、行きますか。

 こうして、俺こと渡辺輝の一日が今日もスタートするのだった。

 

 

 

 

 AM.8:20。

 

 

 

 

 

 

 トレセン学園に着きやってきたのは自分のトレーナー室だ。家から近いと少しのんびりできるから素晴らしい。

 俺はウマ娘を育成するのが仕事なのだが、その本腰はまだ始まらない。昼の15時半までしばらくは座学、簡単に言えば一般教養の授業がある。

 

 いくらウマ娘といえどレースで走るだけが全てとは限らない。俺達人間と同じように普通の授業もちゃんと受けてこそ文武両道というのだろう。

 そしてそうなるとトレーナーの俺はこの間に何をしているか。やる事がないから暇、という事は決してない。

 

 主に担当ウマ娘のトレーニングメニュー、毎日の体調管理、今後のレースについて等、考える事は山ほどある。

 と言っても毎日これをやっているとさすがに飽き……じゃない、やる事も減っていくので余裕のある日は俺も勉強しているのだ。

 

 もちろんウマ娘達が今やっている授業とは違う。

 トレーナーとしての勉強だ。滝野さんの元で色々学んだとはいえ、トレーナーとしての経験が浅い俺に出来るのは知識を増やし、どれだけネイチャのために役立たせられるのかだ。

 

 あいつは他の同年代のウマ娘よりも少し考え方が大人というか、達観している節がある。

 自分の実力と他の実力を比べては卑下しやすい、いわゆる自分に自信が持てていない。だからまずはその自信のなさをどうにかするためにレースに勝たせてやりたいのだが、次のレースはまだ決まっていないからどうにもならないのが現状だ。

 

 とにかく今は知識を溜め、それをいつでも最大限発揮できるようにしておく。

 何もしないよりかは全然いい。そのためにトレセン学園に元々あった資料の他に自費で買った本などをたくさん置いているのだ。時間のある限りはこれを見まくろう。

 

 

 

 

 PM.12:20。

 

 

 

 

 

 

 やっべ、寝てた。

 昼のチャイムで起きたはいいが、いったい何時間寝てたんだ俺。

 

 記憶に残っているのは確か……10時くらいだったはず。約二時間もイスで寝てた訳か。どうりで腰が痛いはずだ。

 

 

「……あー、このままじゃまたネイチャに怒られるな」

 

 部屋を見れば床のあちこちにくしゃくしゃに丸まった紙が落ちている。

 勉強しつつトレーニングメニューを考えてはこれはダメだと投げ捨てていたのが原因だろう。よし後で片付けよう。

 

 割とでかめの引き出しからストックしておいたカップ麺を取り出し、保温状態にしておいたポットで湯を入れる。

 これが俺の毎日の昼食スタイルだ。朝はパン、昼はカップ麺、夜は適当にコンビニ弁当。いやー、食文化って素晴らしい。

 

 ちなみにネイチャが捻挫した時に食べた食堂の飯はめちゃくちゃ美味かった。危うく常連になりそうだったぜ。

 カップ麵を啜る。うん、美味い。これぞ約束された安定の味ってやつだな。明日はカップ焼きそばにしよう。

 

 

 

 

 PM.15.40。

 

 

 

 

 

 

 待ちに待ったトレーニングの時間だ。

 と言ってもネイチャはまず部室ではなくトレーナー室に来て体操着に着替えるからここで待機していたのだが。

 

 

「……で、何でこの部屋こんなに散らかってんの?」

 

「後で片付けようと思ってたんだけど、気付いたら今の今まで忘れてました、はい」

 

 腕を組んだネイチャの前で正座させられていた。

 俺とした事があの後普通に作業をしていてすっかり片付けるのを忘れていたのだ。まさにうっかりである、てへっ。

 

 

「はぁ……まったく、ほら、アタシも手伝うからさっさと片付けてトレーニング行くよ」

 

「サンキューお袋」

 

「誰が親だ」

 

 

 

 

 PM.16:00。

 

 

 

 

 

 

 グラウンド。

 そこで俺はネイチャの走行トレーニングを見ている。正確にはタイムを計っている。

 

 

「はっ……はっ……!」

 

「そこからスパートだ!」

 

「ッ!!」

 

 メガホンで合図するとネイチャはそこから一気に速度が上がった。

 猛烈な音と共にそのままゴールまで駆け抜けると同時にタイマーを押す。

 

 

「はあ、はあ……どう……?」

 

「ああ、タイムもまた縮まってる。順調に行けばレースに勝てる可能性も高いかもな」

 

「けど同じようにみんなも強くなってるんだし、そう簡単にはいかないっしょ」

 

「それはそうだけど、自分の成長を確かに感じれるんならまだまだ強くなれるさ。俺が合図しなくてもスパートかけようとしてたのも見えてたしな」

 

「うっ、やめて、褒めすぎないで。アタシには素直に受け取る勇気がまだないから!」

 

 両手をぶんぶんと振り回しながら顔を赤くしている。

 ははは、可愛いやつめ。最近はこういうネイチャを見るのが面白くて褒めちぎってやる事が多い。もちろん噓ではなく褒めれるところをちゃんと本音で言っているからお世辞でも何でもない。

 

 こうする事でネイチャに少しでも自信を持ってほしい俺の気持ちでもある。

 やればできる。ちゃんと強いウマ娘なんだと思ってほしいところだ。

 

 

「調子いい事ばっか言わないでよー? アタシにそんなん通用しないから」

 

「攻撃でも何でもないんだからそこは通用してくれよ」

 

「トレーナーさんはすぐアタシを褒めてくるから心臓に悪いのっ」

 

「俺の褒め言葉って心臓にダメージあるのか……」

 

 褒めて伸ばすって前に言ったんだけど素直に喜ぶ時もあれば今みたいにそれを否定する時もある。

 うーむ、乙女心というのは理解できん。普通褒められたら嬉しいと思うんだけど違うのか? 

 

 

「ほら、次のトレーニングは?」

 

「はいはい、次は相手がいると仮定して走ってもらう。言っちまえば脳内で仮想敵を作りながら本番みたいに走ってくれ。相手は何でもいいが、出来れば常に自分より少しだけ強いウマ娘として仮定すればいい。上手く前に行かせてくれない。もう少しなのにギリギリ追いつけないくらいがちょうどいいな」

 

「アタシより強い娘なんて山ほどいるから仮想敵ってのはいいけど、それって効果あんの?」

 

「勝てる相手よりもギリギリ勝てない相手の方が自分の力を限界より出せるもんなんだよ。最後の力を振り絞って振り絞って最後の最後に勝つ。もっとも熱い展開じゃねえか」

 

「少年漫画の見過ぎじゃない?」

 

「お前が教えてくれたマンガアプリのおかげでな」

 

「アタシが元凶だったか……。まあいいや、それじゃ走ってきますよー」

 

 案外飲み込み早いなあいつ。

 まあこちらとしてはありがたいけど。何だかんだ俺の言ったトレーニングは全部こなしてくれるからちゃんと頑張れる娘なんだろう。

 

 そこからは俺から見てもネイチャの走りは白熱していた。

 走行トレーニングをしていた時よりもまるで顔が違う。

 

 

「はあ、はあっ……負けた……もっかい!」

 

 誰がネイチャの仮想敵をしているのかは分からない。しかし、これで何度目だろうか。

 軽く10は超えている。本番さながらのグラウンドで本番さながらのレースのように走っている。

 

 しかも驚きなのは、疲れているはずなのに速度がまったく落ちていない。

 むしろ、上がっている? 何十周もしているのに速度が上がるなんて、提案した俺でもそうなるとは思っていなかった。

 

 まるで本当に少年漫画の修行編を見ているかのようだ。いや走っているのは少女だけど。

 そして、何度目だったか。明らかにネイチャの走り方が今までとは違っていたのを見た。

 

 

「前傾姿勢……それもだいぶ低い。風の抵抗を少なくしたのか……?」

 

 態勢を低くすることで風の抵抗を少なくするのはよくある事だが、デメリットとしてバランスを保つためにポジションコースを即座に変更できないのがある。

 それもネイチャのように差し型の作戦が多いなら尚更だ。なのに何で、と思ったところで気付いた。

 

 

「……いいや、違う。あの前傾姿勢になったのは最後の直線から。その直前にネイチャは外に回ってた。つまりもう予定していたポジションに着いたのか!」

 

 風の抵抗が少なくなったネイチャは一気にスパートをかけて加速した。

 すぐ横に目線を移しながらも顔は前へ向いている。仮想敵を見ているのか。

 

 およそ練習とは思えない表情になりながらネイチャはゴールを横切った。

 さすがに疲れたのかそのまま四つん這いになってへたり込んだ。俺もすぐさまネイチャへ駆け寄る。

 

 

「ネイチャっ、大丈夫か?」

 

「はあ……はあ……はあ……うん」

 

 手を差し出すとネイチャが少し遠慮がちに俺の手を取った。

 ゆっくり起き上がらせると、トレーニングの結果を聞こうとした俺よりも先にネイチャが口を開いた。

 

 

「……勝ったよ」

 

「ん?」

 

「仮想敵に勝った」

 

「お、おう?」

 

 俺からは何も見えなかったが、ネイチャは何度も仮想敵にリベンジしてようやく勝ったのだろう。

 ギリギリ勝てない相手。それは上手くいけば簡単に勝てそうでいて、その実勝つのはとても難しい。

 

 所詮は脳内で作った敵だ。強さなんてその時の気分で簡単に強弱を分けられる。

 それなのに、ネイチャは全力で応えて勝てるまで何度も本番同様の走りをしたのだ。

 

 そして、勝った。

()()()()()()()()()()()()

 

 そこまで気付いてようやく俺はネイチャの意図を察する事ができた。

 レースに勝ったネイチャに、レースを頑張ったネイチャにしていたのは何だったか。

 

 なるほどね。

 汗だくで無言のまま視線だけ送ってきて何かのアピールをしてくるネイチャの頭に手を置く。

 

 

「よく頑張ったな」

 

「……ん」

 

 何というか、こういうとこは素直なのになあ。

 とか言うと何をされるか分かったもんじゃないので迂闊には言わない。俺だって命が惜しい。

 

 気持ち良さそうに顔を綻ばせる彼女を見て、やはり何だかんだ言ってもまだまだ可愛い子供だなと思う。

 そんな娘達が大観衆の前であんな白熱したレースをするのだからまた凄い。まったくこの世は謎ばかりである。

 

 ひとしきり撫でくり回した手を離し、時計を見てから言う。

 

 

「もうこんな時間だし、今日はここまでにして帰るか」

 

「そーだね。うあー、今日は一段と疲れたー!」

 

 

 

 

 これと同時に、俺の今日のトレーナー業は終わりだ。

 

 

 

 

 PM.20:00。

 

 

 

 

 

 

 晩飯のコンビニ弁当も食べ、風呂も入りのんびりテレビを見ていたらスマホからポンッと通知音が鳴った。

 

 

「そういやそんな時間か」

 

 もはや恒例というか日常と化したようにスマホを手に取りUMAINを開く。

 メッセージを送ってきた相手はネイチャだった。

 

 最近、ネイチャとは毎日この時間帯になるとUMAINを通してやり取りをしている。

 とは言ってもトレーナーと担当ウマ娘としての業務的な連絡ではなく、人とウマ娘として完全にプライベートな……と言えば綺麗に聞こえるかもしれないが、普通に適当な会話を繰り広げているだけだ。

 

 最初はネイチャからの遠慮がちなメッセージから始まったのだが、気付けばもうそれが普通になっていてお互いこの時間帯だと風呂や夕食が終わって暇な時間という事が自然と分かっていた故だろう。

 

 軽いネイチャの挨拶メッセージから約数時間ずっと適当な駄弁りをアプリで続ける。

 普段の俺なら面倒くさくてやらないが、何故かネイチャ相手だとそうは思わないのが自分でも不思議だ。というか何ならちょっと楽しい。

 

 女子中学生相手にメッセージアプリで相手してもらってる成人男性って考えると相当ヤバイかもしれないとか言わないでほしい。

 俺もちょっと自覚あるから。的確に被らない話題を振ってくるネイチャが凄いだけだって。これも実家のバーで培った話術なのだろうか。こりゃ商店街の人達にも人気出るわけだわ。

 

 

 

 

 これが俺、渡辺輝の一日である。

 特に特別な事なんてないいつもの日常。

 

 ただネイチャと共に成長してレースに勝つために頑張るだけの日々。

 それが何とも楽しいのだ。中央のトレーナーになるために滝野さんに振り回されていた甲斐もあった。

 

 ネイチャとの何気ないメッセージのやり取り。

 そこにちょっとした変化があった。

 

 

「珍しく返信遅いな。誰かと話してんのか?」

 

 ネイチャはいつも俺がメッセージを送ると一分もしないうちに返信してくるのだが、今は三分たっても来ない。

 まあこんな事もあるだろうと、というかそれが普通なんだろうと思っていると返信が来た。

 

 ネイチャが写真を送信しましたとの通知だ。

 何だ? そういう会話の流れでもなかったような。まあいいか。

 

 通知から開くをタップするとトーク画面まで開かれる。

 そこに写っていたのは。

 

 

「……ははっ、何だこれ」

 

 おそらく自撮りだろう。

 すぐ手前に満面の笑みのマーベラス、その奥で笑顔でピースをしているマヤノと照れながら顔を隠そうとして若干ブレているネイチャがいた。

 

 女子会でもしていたのか、俺とやり取りをしていてずっとスマホを触っていたから奪われたのかもしれない。

 普通に3人共寝巻きというかパジャマ姿だった。おーおーお若いこって。

 

 すぐに付けたしのメッセージが来た。

 

 

『その画像すぐ消して!! マーベラスがふざけて撮ったやつだから!!』

 

 ネイチャのメッセージを見て簡単に推測できる。

 きっと今ネイチャは部屋で叫んでいるだろう。だから俺も追い打ちをかける。

 

 

『不意打ちの時でも笑顔になれる練習をしとくんだったな』

 

 いつぞやのカメラの時のちょっとした仕返しだ。

 こんな感じで俺の一日はほんの少しの変化をもたらし終わりを迎える。明日も早い。ギリギリまで寝るために乾燥機付きの洗濯機買うか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして俺は、からかってやるためにこの画像をそっと保存した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、という事で今回は珍しくトレーナーの一人称視点で挑戦してみました。
この小説では初めての一人称だったので、違和感なく出来たか少し心配です。

ネイチャのパジャマ姿が見たい(願望)



では、今回高評価を入れてくださった


かすてぃらさん、そうじゅさん、クロ562さん、クオ212さん、アヌベールさん、万年厨二病さん、blossomsさん、宇々字さん、テシルさん、samurai072さん


以上の方々から高評価を頂きました。
ネイチャ可愛い、面白いと言っていただけるだけで狂喜乱舞でございます。
本当にありがとうございます!!




次回からネタ見つかり次第投稿します。
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