お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話 作:たーぼ
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トレセン学園。
その食堂にやってきたナイスネイチャと既に昼食をとっているトウカイテイオーがいた。
「ここ、いい?」
「あ、ネイチャ! もちろんいいよー!」
同じクラスで席も前後という事もあり、2人の仲は普通に良かったりする。
少し異なるのは、テイオーが食堂メニューにあるかつ丼をトレイに乗せているのに対し、ネイチャは持参した弁当箱を持っているところか。
「今日はお弁当なんだ?」
「まあね。最近自分で作るのがハマってるというか何というか。自分で栄養管理とかもできるから便利だったりするのよ」
「へえ~」
と、軽く流したはいいもののテイオーはちゃんと見透かしていた。
何ならその理由をある者から聞いていたのだ。
「で、ネイチャのトレーナーにお弁当を持って行ってたからここに来るのがちょっと遅れちゃったんだ?」
「うぇぶふぉっ!? な、ななななな何故それを……!? え、な、なんっ……ええ!?」
「この前マーベラスから聞いたよ。最近ネイチャがトレーナーのためにお弁当作って持っていってるって」
「あ、あんの娘はぁ……!!」
プライベートがガバガバであった。
どうりで最近のマーベラスからの視線が温かかったのはこのせいか。何かと質問してくる彼女が突然何も言ってこなくなったのはトレーナーに作っているのがバレたからなのか。
何にしてもネイチャとしては心臓に悪い。
一応はコソコソと自分だけの弁当を作っていると思わせていたはずなのにいつの間にか筒抜けになっているし少し広まってすらいた。帰ったらあのド派手ツインテールの口を封じこまなければならない。
「にしてもトレーナーと一緒に食べてこなかったんだ?」
「……うん。アタシも最初は一緒に食べるつもりだったんだけどね」
これ以上のはぐらかしは無意味と判断し素直に認めた上で話を進める。
意外にもテイオーがからかってこない理由は不明だが。
「トレーナーさんが『俺とばっか食ってても何だし、せっかくの昼休憩なんだから友達と一緒に過ごしてきていいぞ』ってさ。あんな事言われたら断れないし、言われたままこっちに来たってわけ。遠回しに一緒に食べるの煙たがられたのかなー」
「ちょっとした捻挫でネイチャを車で送迎するくらいなんだしそれはないでしょ」
「うっ……よく覚えてるね……」
「レースとか関係なく噂になってる珍しいチームがアークトゥルスとウチのスピカくらいだしねえ」
噂にも様々な種類があるのだがここは聞かない方が身のためだろう。きっと心臓が持たない。
ちなみにチーム・スピカの噂は勧誘ポスターや実際の勧誘活動がほぼ誘拐みたいな事もあってか悪目立ち状態である。
チームの全員がちゃんと結果を残しているからあまり糾弾もされないのだろうと思う。
ヤバいヤツほど秀才が多かったりするのがこの現実だ。グロテスクなモノほど美味いと言われる理論と似たようなものか。
「それにしても」
話題を変えたのはテイオーだった。
「ネイチャってば最近順調だよね。3連勝でしょ?」
「ん、何とかね。重賞レースはやっぱ緊張するわ」
「短いスパンでレースに出たのに勝てたんだから凄いじゃん」
七夕が終わってから1ヵ月ちょっとが経ち、その間のレースに出たネイチャは見事に全勝を果たした。
トレーナーの言っていた通りスタミナを重点的に増やし夏の暑さに少し慣れていたのが幸いしたのか、連続でレースに出たのにも関わらず疲れはほとんど残っていなかったのだ。
ネイチャ的には掲示板に入れば上等だろうと思っていたら予想外の1着続き。これにはさすがのネイチャもレース終わりにガッツポーズをした記憶がある。
初めての
「まあ、一番喜んでたのはアタシじゃなくてトレーナーさんなんだけどね」
「そうなの? ネイチャのトレーナーだしその辺とか計算してたのかと思ってた」
「レース終わりとか髪くしゃくしゃになるまで撫でてきたんだよ? ウイニングライブもすぐ控えてるってのに、直すのめっちゃ苦労したし」
「の割には嬉しそうに言ってるじゃん」
「げふん」
最近表情に出やすいのを本気でどうにかしないとと思う。
このままではテイオーにまでからかわれそうだ。こういう時は話題を変えるに限る。
「けど凄いのはテイオーの方でしょ。皐月賞と日本ダービーのGⅠも勝って未だに無敗のままなんだから」
「えへへ~、それほどでもあるかな~!」
謙遜せずに素直にそう言えるのは真の強さの表れか、はたまたまだまだ余裕すらあるのか。
ネイチャは初のGⅢに出たばかりだが、テイオーは既にGⅠに出ておりどれも1着と結果を残している。いきなりのGⅠを、しかもウマ娘が一生に一度しか出られない日本ダービーを制しているのだ。
紛れもない才能。目指すべき頂点。絶対の王者。
自分がようやく出た重賞よりも、テイオーは遥か上のグレードで爪痕を残している。
「やっぱ凄いわテイオー。ホントに同級生とは思えない強さしてるねえ」
「ふふん、こんなもんじゃないよ。ボクはまだまだ強くなるんだから!」
「かーっ、おっそろしい事を簡単に言ってくれるじゃん」
ネイチャは自分が強くなっているという自覚をちゃんと持っている。
その証拠に連勝しているのだから紛れもない事実だ。
しかし。
それ以上に。
ネイチャの成長速度よりも早くテイオーが成長している。
こちらのレベルが5上がったと思えばあちらのレベルが10上がっているかのような感覚。
何だか、追いかけている背中が逆にどんどん遠くなっている気さえしてしまう。
こんな事を思っていたらまたトレーナーに変な気遣いをさせてしまうので何とか切り替える必要がある。自分で話題を振っておいてダメージを負うとは情けない限りだ。
しかし、ネイチャのネガティブ思考を振り切るように口を開いたのはテイオーだった。
「でもネイチャだって凄く強くなってるよね。さすがだと思うよ!」
「え?」
ネイチャからすれば信じられない言葉を聞いたようなものだ。
何かを言う前に頭の中が少し混乱しかけている。
「連勝してるのもそうだし、チームにネイチャしかいなくて練習効率も悪いはずなのにそれを気にもしないで結果勝ってるんだよ? 普通に凄い事だと思うけど」
「そ、そんなことないってば……」
チームに仲間がいればライバル意識も高まり競合意識も相まって練習に熱が入る。その結果効率も良くなりその分成長速度はより速くなるのだ。
ネイチャにはそれがない。なのにレースで勝てたのはそれだけトレーナーの指示とネイチャの努力があってこそだ。
そして、決定的な言葉があった。
「うーん……言っていいかは分かんないけど、まあいっか」
「?」
「ボクのトレーナーね、
「……え?」
本当の意味で、頭が混乱した。
だって、分からない。そんな事をする理由が見つからない。ネイチャとテイオーが同じレースで走るのならまだしも、そうじゃないのに見ているなんてどう考えたっておかしいのだ。
あの『チームスピカ』のベテラントレーナーが、自分の映像を一番見ている。
そんなの、そんなの。
「ネイチャはもっと自信持っても良いと思うよ」
自分が勝手にライバルだと思い込んでいる相手からの言葉だった。
「ボクのトレーナーが注目してるくらいだもん。それだけの『素質』が絶対ネイチャにはあるんだよ」
追いかけている憧れの存在が、自分なんかにそんな事を言ってくれる。
どれだけ卑屈で斜に構えがちなネイチャでも、ここまで言ってくれたのにそんな事はないなんて言える冷酷さは持っていない。
きっと、自分のトレーナーだって同じ事を言ってくれるから、無下になんて絶対にできない。
半ば諦めたように、だ。
食べ終えた弁当箱を仕舞い、席から立ちあがったネイチャはテイオーに向かってこう言った。
「アタシ、次の
「うん」
「そこでテイオー、アンタに勝ってみせるからね。何たってアタシは、アンタに勝つのが夢なんだから」
「……ボクも、当然負けないよ!」
少しだけ自信をつけた少女と、最初から自信満々の少女の視線が交差する。
まだまだ実力の差は歴然で隣にすら立てていないかもしれない。菊花賞に出ても勝てる見込みだって少ないかもしれない。
それでも、この気持ちだけは。
きっと対等だ。
────────
放課後。
グラウンドにやってきたネイチャを待っていたトレーナーが声をかける。
「おう、ネイチャ。今度の祭りの事なん──、」
「トレーナーさん」
「……何だ?」
「アタシね……テイオーに菊花賞でアンタに勝つって言っちゃった……」
真剣な顔、というより青ざめた表情をしていた。
何だか後からヤバい事を言ったと気付いたかのように。
「アタシとした事がその場の空気にやられてらしくない事言っちゃったんだけど! どうしよ!?」
「大丈夫だ、ネイチャ」
焦りは動揺を生み、冷静な判断を鈍らせる。
そんなネイチャを落ち着かせるのはいつだってトレーナーだ。
ネイチャが全信頼を置いているトレーナーは、彼女の肩にポンッと手を乗せこう言った。
「言うだけならタダだから」
「頼りになんないこの人!!」
はい、今回はテイオーとの食事回でした。
ネイチャとトレーナーの噂どんどん広まれ。
では、今回高評価を入れてくださった、
H&K YAMATOさん、良介さん、闘夜さん、百々芦ぺろりんさん、ユキの宮さん、弥生さん
以上の方々から高評価を頂きました。
本当にありがとうございます!!