お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話   作:たーぼ

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30.真冬の併走?

 

 

 

 

 

 

 

 

「寒すぎるので部屋に戻ってもいいですかねいいよねいいに決まってる答えは聞いてない!」

 

「ダメに決まってんでしょ。ほらさっさと今のタイムをちゃんと書くっ」

 

 開口一番震えながらも堂々とバカを言ったのは鼻水を垂らしながら凍り付きそうな渡辺輝である。

 12月に入り、下旬にはGⅠレース『有記念』を控えたナイスネイチャは寒空の中、猛練習に励んでいた。にもかかわらず担当トレーナーがふざけた事を抜かしているので襟首を掴んで普通に引っ張る。

 

 

「うぶぐぇッ」

 

「トレーナーなんだからちゃんと見ててくれないと困るんだからね」

 

「寒すぎるのが悪い。真冬の風ほど恨めしいものはないってのに太陽の野郎ちょっとは張り切って照り付けやがれちくしょう!」

 

 半べそかきながらもちゃんとタイムをメモっている。染み付いた動作というものはこういう時に真価を発揮するらしい。

 何だかこういうやり取りを夏にもした覚えがあるのは気のせいではないだろう。

 

 

「真夏の時も同じような事言ってたよね~」

 

「暑いのと寒いのは苦手なんだよってな。むしろどっちも好きだなんて人いないだろ絶対。せめてトレーナーがいるとこには簡易暖房グッズ置いていいか理事長に直談判する必要があるぞ」

 

「まあアタシ達ウマ娘は基本走ってるから冬でも体は温まるからね。じっと見てくれてるトレーナーさんが寒いのは当然っちゃ当然か」

 

 ガタガタ震えながらネイチャを見ると頬辺りに軽い汗がツーッと流れている。正直ヒートテックにスーツの上からコートとマフラー、手袋にニット帽と耳当てまでしているのに寒いと感じている自分には今最も縁がないモノだと思う。

 普通に汗を流しているのが信じられない完全防寒装備の成人男性。ウマ娘の速度で走っているとこの寒さもそんなものなのか。

 

 震えながら書いたせいか若干見づらいタイム表とフォームの解析をメモした自分の字を見ない事にして、トレーナーはある事を思い付いた。

 

 

「試しに俺もこの一周全力で走ったら少しは体も温まるか?」

 

「むしろそんだけ防寒対策しててそんなに寒がってるのが不思議なんだけど。ん~じゃあ走ってみる? 寒くて運動不足になるよりかはマシでしょ」

 

「……このまま走っていい?」

 

「さっさと脱がんかい」

 

 

 

 というわけで急遽始まったトレーナーとネイチャの併走トレーニング。

 スタート地点から準備万端のネイチャと防寒装備一式を無理矢理脱がされて上もワイシャツだけになっているトレーナー。おかげで始まる前から既にやる気が絶不調である。

 

 

「これ併走トレーニングって言うのかな……アタシって普通に走っていいんだっけ?」

 

「ととととトレーニングも兼ねてるんだからららお前は全力でででで走れよ……! てか早く始めてっ、普通に寒波地獄だから!!」

 

「はいよーいドン」

 

 急に始まったと思ったら既にネイチャはトレーナーの遥か先にいた。

 

 

(本気のウマ娘と走ったらこんな光景なのかよっ……分かっちゃいたが相手になれるレベルじゃねえな!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、やっと来た」

 

「コヒューっ……コヒュー……じ、じぬぅ……」

 

「ダースでベイダーみたいな息切れしてるけど大丈夫?」

 

「肺が冷てえ……」

 

 顔は汗だくなのに体内はもう温まっているのか冷えているのか分からない状態だった。

 一周とはいえ真冬のグラウンドを全力疾走すればこうなるのも必然か。トレーナーであってもウマ娘とは体の構造が違うので疲れも段違いである。

 

 おかげさまでコートはいらないくらいにはなってきたが真冬は真冬だ。体が冷え切らない内に一応コートを羽織り直す。

 マフラーなどはもう少し後でもいい。息が整いきる前にトレーナーはこう言った。

 

 

「もう走らん」

 

「でしょうな」

 

 精一杯の抵抗がすんなりと肯定されてしまった。

 ネイチャから見てももうトレーナーはこの冬のグラウンドを走る事はないと思ったのだろう。めちゃくちゃ正解である。

 

 

「あんなに走ったのにすぐ冷えてくるな。汗がすぐ乾いてくる」

 

「だからアタシはまたすぐ走るようにしてるからね。トレーナーさんは一回だけだし風邪引かないようにちゃんと温めときなよ」

 

「俺も今日はシャワー浴びて帰るか……」

 

 この寒さの中を時に体操服や勝負服で走っているウマ娘達は流石だなと改めて思うトレーナー。

 寒がりな自分では考えられないので人間で良かったと安心しておく。ネイチャの方はまだまだ走れそうな顔をしている。有マ記念までもうすぐだからか気合いが入っているのだろう。

 

 空を見る。生憎今日は曇りなのか、冬特有の仄暗い灰色の空模様が視界を覆っていた。そのせいで余計寒いのだから季節を恨むばかりである。

 先ほどのネイチャのタイム表を見てみると前回よりも速くなっていた。まだまだ成長できる余地はある。人間よりも丈夫とは言ってもウマ娘だって風邪を引く時は引いてしまうので、有記念まではこれまでよりも体調管理を徹底していく必要もあるだろう。

 

 夏と冬では体調管理もトレーニングの仕方も異なる方法でやる必要があるのだ。この季節にはこの季節でのアプローチを、特に肌も冷える冬は筋肉が収縮して硬くなりやすく柔軟性が低下するため、ウマ娘にとっても大事な靭帯、腱などが損傷しやすい時期でもある。

 その危険性を最大限まで低下させ、基礎代謝が高くなる冬で最も効果的なトレーニングを考案するのがトレーナーの仕事だ。

 

 これも様々な資料を読みつくしてきたトレーナーの知識だ。とは言ってもこのくらいはトレーナーにとっての基本情報だが。

 

 

「ネイチャ、脚の方はどうだ。重くはないか?」

 

「え? うん、ちゃんと準備運動してから走ってるし大丈夫だよ。身体も柔らかいぐらいだし」

 

「ならいい。じゃああと一周したら温水プールに行くぞ。どんだけ走ってもこの季節だとすぐ体が冷える。温水プールなら体もちょうど良い塩梅に温まるし筋肉も解れる。ついでに泳いでトレーニングも出来るから一石二鳥だ」

 

「おっけー。で、本音は?」

 

「一刻も早くあったかい場所に行きたい」

 

 一瞬で見抜かれちゃっていた。

 最近自分の言い訳が彼女に見透かされている気がしてならない。これもパートナー故の関係性か。とはいえその本音7割、方便3割なので一応は温水プールへ行くのもネイチャのためではある。

 ネイチャもそれは分かっているのか、軽い溜め息を吐きながら、

 

 

「まあトレーナーさんの言う事だからちゃんと考えてはくれてるだろうしそれに乗っかりますよ~。アタシもあったかいとこ行きたい気持ちはあるしね」

 

「ちなみにここで何周も走ってるからプールじゃ泳ぐのは軽くにしとけな。筋肉解しながらクールダウンが目的だから」

 

「はいはい、じゃあパパッと最後の一周してきますよー」

 

 言うだけ言ってネイチャはスタート地点へ走っていき、自分のタイミングで走り出した。

 フォームもスピードも先ほどと差異を感じさせないキレのある走り方だ。問題はあれが有記念でどう通じるのかだが、今はそれよりも思うところがトレーナーにはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱあと一周なしにしてすぐ温水プールに行くべきだった。さっみぃ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、ネイチャとマラソン感覚で並走したい自分です。
彼女なら走りながら雑談とかしてくれそう(妄想)

何気に本編30話突破しました。
まさかここまで続くとは……。
  

では、今回高評価を入れてくださった、


エッショさん、プッチさん


以上の方々から高評価を頂きました。
ありがたいお言葉ばかりいただいております。本当にありがとうございます!!




第二弾ミッションのスピードとスタミナ因子☆2育成終わる気がしませーん!
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