お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話   作:たーぼ

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32.クリスマスプレゼント

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 有記念が終わって数日。

 今年のレースも一通り終わった事でウマ娘達の雰囲気も一気にガラリと変わっている。

 

 言うなれば世間はクリスマスだった。

 トレセン学園はレースの育成だけでなく勉学という教養の面も当然持っている。もっと単純に言えばレース以外の事に関しては学校とそんなに変わらない。

 

 という訳でトレセン学園は冬休みに入ろうとしていた。

 

 

「終業式がクリスマスって今年は学生にとっちゃタイミング悪そうだよなあ」

 

 そんな中、トレーナー室で他人事のように呟いたのは渡辺輝である。

 彼は教師でも生徒でもないのでトレーナー室に暖房を効かせてひっそり温もっていた。

 

 いったいどこから取り出してきたのか、床に絨毯を敷いてこたつとこたつ布団を設置し完全にトレーナー室を自室同然のように扱っているトレーナーを見てため息一つ吐いたのはナイスネイチャだ。

 

 

「アタシ達が申し訳程度のストーブが置かれてて何の効果もなくただただ寒いだけの体育館で話を聞いてる間に1人でぬくぬくと暖をとってたとは良い御身分ですな~トレーナーさんは」

 

「お、来たかネイチャ。お前もこっち来て座れよ。ちょうど良い感じにこたつがあったまってきたぞ」

 

 一応は皮肉のつもりで言ったようなのだが、ネイチャの小言もこたつの前ではトレーナーにノーダメージらしい。

 寒がりな彼にはこたつは冬のゴッドアイテムなのである。

 

 

「てかこのこたつどっから出してきたのさ。去年はなかったよね?」

 

「暖房だけじゃ何だから買ったんだよ。自分の家の次に長くいるのがトレーナー室だからな。第二の自室として使わせてもらってるんだ。あ、もちろん自費だぞ」

 

「これで自費じゃなかったらどうかしてると思うけどね」

 

 とは言っても日本の宝の一つ、こたつの魔力にはネイチャも逆らえない。何だかんだ言いつつもトレーナーの向かいに座りこたつ布団を首元まで被せている。

 

 

「クリスマスだってのにトレーナーさんはこんな所で何してたのさ? ずっとこたつに潜ってたの?」

 

「人をこたつ魔人みたいに言うな。今日の分の仕事はもう終わらせたよ。来年のレースプランとかトレーニングプランとかな。まあしばらくはレースもないし学生なんだから適度なトレーニングだけして後は冬休みを満喫しときな」

 

「トレーナーさんからそう言ってもらえると素直に休めるからありがたいですわ~」

 

 レースがなければ基本的にトレーナーは事務仕事などが多い。トレーニングがなければ大体はPCとにらめっこしている。そんな作業も終わった事で今日はこたつに引きずり込まれているという訳だ。

 クリスマスに何をしているのか聞かれれば仕事、という悲しい答えしか持っていないのは言わないお約束である。

 

 

「で、お前は何でこの部屋に来てんの? 有記念もまだ終わったばっかで今日はクリスマスだし終業式なんだから練習はオフにしたって言ってたろ?」

 

「まあね~。トレーナーさんは何してんのかなってちょっと気になったもんで」

 

「俺は仕事も終わったし今日は適当にのんびりしたら帰ろうとしてたとこだよ。んでお前は? クリスマスなんだから友達とかと予定あるんじゃないのか?」

 

「ん~まあ去年はマヤノ達と軽いお菓子パーティーみたいな事はしたけどね。今年は終業式と被ったし、みんなそれぞれ自主練とか他の娘と予定あるっぽいんだよね」

 

「なるほどねえ。年末にレースがなかったウマ娘は走っとかねえとなまっちまうからな。じゃあネイチャはそれでフラれちまった訳か」

 

「言い方。アタシとしてはキラキラしてる娘達に囲まれてパーティーってのも楽しいけど眩しいもんでもあるからさ、毎年連続でやるのもあれだしたまにはこうしてゆっくりできるクリスマスも悪くないなあって感じでここにやってきました~」

 

 子供に付き合わされてる大人かというツッコミは野暮だからしないでおくトレーナー。

 クリスマス。ふとその単語で思い出した。

 

 

「そういやこっちに来てからクリスマスの日に地元の人達とかとは何もないのか?」

 

 ネイチャにとってはクリスマスは思い入れのあるイベントのはずだ。

 勝負服にだってそれを強調させたカラーを使っている。幼少期の頃からずっとネイチャと一緒にクリスマスを祝ってくれていた母と地元の大人達はどうしているのか、特別な今日という日をどう過ごしているのかがトレーナーとしても気になるところだ。

 

 

「え? ああ、みんな毎年この日に色々送ってくれるよ。商店街の食べ物とかはさすがに無理だから普通の仕送りとあんま変わんないけど、色んな野菜とか果物とか送ってくれるんだ。いっぱいありすぎていつも消費するの大変なんだけどねっ」

 

 そう言うネイチャの表情は呆れているようにも見えるが、どこか柔らかかった。それだけで、どれだけ彼女が商店街の人達から愛されているのかが一目で分かる。

 これもネイチャの人柄の良さもあるのだろう。照れ臭そうに言っていた彼女は誤魔化すようにテーブルの上に置かれているみかんに手を出していた。

 

 今日のトレーニングはない予定だったからネイチャと会う事もないと思っていたのだが、彼女はこの部屋に来た。

 なら都合が良いと考えたトレーナーは面倒そうにしながらもこたつから立った。

 

 

「どうしたの?」

 

「今度お前に会った時に渡そうと思ってたんだけど今日来たからちょうど良いと思ってな」

 

 PCが置かれている机の引き出しから取り出したのはカラフルな紙袋だった。

 それをこたつテーブルのネイチャ側に置き、一言。

 

 

「ほい、一応俺からのクリスマスプレゼント」

 

「……え?」

 

 予想外のプレゼントに一瞬理解が遅れたネイチャ。

 目の前の紙袋を見てからトレーナーへ視線を移した。

 

 

「トレーナーさんが、クリスマスプレゼント?」

 

「あれ、思ってた反応と違うんだけど? もしかして俺クリスマスプレゼントも渡さないようなヤツに見えてた? もっとこう、えっ、噓っ、トレーナーさんがアタシに? って感じのリアクション期待してたのに俺ってそんな冷たいヤツって思われる?」

 

「普通にビックリしてただけなんだけどそれ言われると何かその通りのリアクションしたくなくなったわ」

 

 思わぬ墓穴を掘ってしまった悲しき青年。反応がトレーナーよりも大人であった。

 何はともあれ、だ。ネイチャの手はみかんから紙袋へと変更された。

 

 

「まあ貰える物は貰っときますけどね~。ねえ、開けていい?」

 

「おう、開けろ開けろ。そして今度こそ期待通りのリアクション待ってるぞ」

 

「だからそんな事言われると無理だっ……」

 

 ネイチャの言葉が止まった。

 紙袋から出てきたのは、マフラーだ。

 

 

「これ……」

 

「ああ、お前に絶対合うと思ってつい買ったんだ」

 

 普通のマフラーならまだ何の変哲もないリアクションを取れただろう。

 しかし、普通とは違う点が一つあった。

 

 色だ。このマフラーの色は、緑と赤を基調とした物だった。

 つまりは、クリスマスカラー。ネイチャの勝負服と同じ、思い入れのある特別な日を模した色。そんな特別な物を、特別な日にプレゼントされた彼女の顔は、どうやらトレーナーが思っていた以上の反応をした。

 

 

「今年一年もよく頑張ったからな。俺からの労いのプレゼントでもあるんだぜ」

 

「……うん、ありがと」

 

 マフラーを優しく抱きしめた少女からのお礼は、何ともくすぐったい気持ちになった。

 何だかんだ当日に渡せて良かったとトレーナーは思いながら目を逸らす。ネイチャの反応が想像以上に年頃の乙女だったのでこちらも何だか照れ臭くなってしまう。

 

 目を逸らしているせいでみかんを取ろうとしながらも手が宙を舞っている状態のトレーナーを見て、今度はネイチャが声をかける番だった。

 

 

「そうだ。お礼って訳でもないんだけどアタシもね、トレーナーさんにクリスマスプレゼントを持ってきたんだ」

 

「え、そうなのか?」

 

「うん、今日もホントはそれを渡しに来たのが目的なんだよね~。って事で、はいこれ」

 

 渡されたのはよくある小さな紙袋。

 手に取りさっそく中身を取り出すと、

 

 

「これは……手袋か?」

 

「当ったり~」

 

 黒と青色が特徴の手袋だった。

 デザインもシンプルで大人の男性が使うにはもってこいの代物だろう。

 

 しかし、気になる点が一つ。

 

 

「マフラー選ぶ時に手袋も色々見てたけど、こんなデザインはなかったような……。どこの店で買ったんだ? 素材も結構良い感じのやつっぽいけど」

 

 トレーナーの純粋な問いに、一瞬戸惑いが見えたのは気のせいか。

 何故だかプレゼントを貰った時よりも顔が赤くなっているネイチャは観念したかのように答えた。

 

 

「あ~えっと……一応その、アタシの手編み、です……ハイ」

 

「…………え、手編み?」

 

「ハイ……」

 

「めちゃくちゃ上等なモンに見えるけど、手編みなのかこれ?」

 

「ユキノビジンって娘が手編み凄く上手で、空いた時間に教えてもらいながらコツコツやってました……ハイ」

 

 担当ウマ娘からのクリスマスプレゼント。しかもそれは手編みの手袋ときた。

 自分のプレゼントでネイチャの反応を楽しみにしていたのに、思わぬカウンターを喰らった気分だ。

 

 こんなの、嬉しくない訳がない。

 出たのは小さな笑い声からだった。

 

 

「はは……すげえや。ありがとな、ネイチャ! めちゃくちゃ嬉しいよ」

 

「……ふふっ、そんだけ喜んでもらえたならこっちも頑張った甲斐があったってもんですかねえ」

 

「手編みのプレゼントなんて何気に初めてだし、何なら女の子からクリスマスプレゼント貰ったのも初めてだからなあ。そりゃ嬉しいさ」

 

「あれ、何だろ。ちょっとそれ聞いたらこっちが悲しくなってくるからやめて。別に哀れとかは思ってないけど」

 

 クリスマス。それは誰かにとっては特別な日で、誰かにとっては特別でもない日。

 渡辺輝とナイスネイチャのようなやり取りは、この世界できっとたくさんの人々が同じような事をしている。友人、恋人、家族。大切な人との特別な日は、何でもないような日を彩ってくれるものだ。

 

 この喜びは、今日しか味わえない。

 今日しか楽しめないのなら、せめてこの時間を少しでも共有していたいと思うのは自然な事なのだろうと思う。

 

 ひと通り満足したトレーナーはネイチャに提案した。

 

 

「なあネイチャ。今日はこの後予定あるか?」

 

「さっきも言ったけど今日は特に何もないよ」

 

「じゃあせっかくのクリスマスだ。お前が良ければだけど、俺と一緒に商店街でも行ってパァーッと何か食っていくか?」

 

「お、いいねー。さすがに今日はおっちゃん達もクリスマスっぽい物売ってそうだし行ってみますかっ」

 

 さっさと準備を済ませて暖かいトレーナー室から寒い廊下へと出る。

 

 

「北京ダックとか売ってねえかな」

 

「いくら焼き鳥屋でもそれはないでしょ」

 

「それもそうか。さて、今日も頑張って定価で払わせてもらえるように粘るかね~」

 

「アタシとトレーナーさんが来た時だけみんな値引きしてくれようとしちゃうもんねえ」

 

「親切な人達だから断るのは心苦しいけど俺達だけ特別扱いは悪いしな。まあいいや、とりあえず今日は食いまくるぞ」

 

「そう言って去年みたいに吐きそうにならないでよ?」

 

 

 寒いのにも関わらず2人は雑談をしながら歩いていく。

 お互いが貰ったクリスマスプレゼントのマフラーと手袋を身に付けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はい、という事でクリスマスプレゼント交換でした。
ネイチャの手編みのプレゼントが欲しい人生でした。



では、今回高評価を入れてくださった、


オルトンさん、危険な手品師さん、rumjetさん、キヌツムギさん


以上の方々から高評価を頂きました。
本当にありがとうございます!!



アオハル杯決勝安定しないのでどうにかしたいとこです。
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