お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話   作:たーぼ

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後書きにてちょっとした宣伝がありますので、よろしければ見てくださると幸いです。


34.トレーナー宅訪問(後編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 とあるドアの前に少女が1人。ナイスネイチャだ。

 

 前日にあらかじめ家の住所をスマホに送ってもらい、それを頼りにここまでやってきた。のはいいのだが、インターホンを鳴らそうとすると何故か直前で手が止まってしまう始末に陥っている。

 ネイチャの住んでいる栗東寮からトレーナーの家までは徒歩で約10分程度。それをウマ娘の脚の速さで急げばものの3分程度で着く。

 

 そのためか予定の時間よりも遥かに早く着いてしまい、このままインターホンを鳴らすべきか予定の5分前になるまでは待機しておくべきか、という何ともくだらない理由でドアの前に立ち尽くしてからおよそ10分経過していた。

 

 

(どどどどうしよう……! まだ予定より20分も前だし今鳴らしても逆に迷惑になっちゃわないっ!? けどずっとここにいると変に目立って不審に思われちゃう可能性も高いし……だあ~もう何でアタシはこんなとこでずっと自問自答してるかなー!?)

 

「何してんだネイチャ」

 

「ひょえわあッ!?」

 

 変な声が出た。

 頭を抱えて悩んでたら急にドアが開いてトレーナーが出てきたのだ。普通に心臓に悪い。

 

 

「と、トレーナーさん? な、何でアタシがいるって分かったんでしょうか……?」

 

「や、一応客が来るんだしいつもは脱ぎ散らかしてた靴とか並べとくかなーって思って玄関行ったら、外から何回も玄関前を往復する足音聞こえたから不審に思って。まだ時間に余裕あるからまさかなとは思ってたんだけど、お前だったんだな」

 

「あはは~、お、お騒がせしました……」

 

 トレーナーから不審に思われるほど足音がうるさかったのだろうか。気付かぬうちに脚にも力が入っていたのかもしれない。

 今後は気を付けるのと同時にちゃんとインターホンを鳴らそうと心に決めた。

 

 

「まあいいや。ほら、入れよ」

 

「あ、うん。お、お邪魔しま~す」

 

 ネイチャの緊張をよそにトレーナーは普通に招き入れてくれた。

 事前に並べられたであろう靴の隣に自分の靴を置く。そのまま案内され着いて行くと。

 

 

「ここがトレーナーさんの部屋、かぁ」

 

「とは言っても何もないけどな」

 

「意外と片付いてるんだね? トレーナー室がいつもくしゃくしゃになった紙でいっぱいだからもっと散らかってると思ってた。もしかして今日だけアタシが来るから綺麗にしてたとか?」

 

「お生憎様、家では基本的にこんなだよ。トレーナー室は例外だ。それに片付いてるというよりかは何もないって言った方が例えとしては正しいかもな。基本は飯食って風呂入って家事して勉強して寝るだけの家になってるし」

 

「大人とはいえ若者のセリフじゃなくないですかね」

 

 見渡せば、確かにあるのはテレビにテーブル、ウマ娘関連の資料がある本棚やPC、ベッドという必要最低限の物しか置かれていない。

 現代の若者の部屋、というにはあまりにも質素で簡素な物悲しい部屋という印象が強い。

 

 

「確か中央のトレセン学園って給料良いんじゃないっけ? てっきりマンションとかに住んでると思ってたけどこの家もアパートだよね」

 

「まあそれなりにな。だから生活必需品に関しては結構良い物買ってる自負はあるぞ。洗濯機とかは最近乾燥機付きのやつに変えたしな。テレビは無駄に4Kだし、枕はオーダーメイドだから快眠って訳よ。ちなみに家はトレセン学園から近くてちょうどよさそうなのがこのアパートしかなかったからここにした」

 

「お金かけるとこそこなんだ。もっとこう、娯楽的なのには使わないの?」

 

 見た感じDVDプレーヤーやゲーム機なども見当たらない。本棚に多少のマンガがあるぐらいか。

 20代の大人といえばまだまだ若く1人の時間を重宝し娯楽に興じるものだとばかりネイチャは思っていたが、どうやらこの男は例外らしい。

 

 

「前も言ったろ。特に趣味もないからありがてえ事に貯金も貯まってく一方なんだよ。娯楽なら最近はマンガアプリでちょくちょく課金する程度かな。俺にはそれで十分だよ。基本は資料読んでるかPCで作業してるし」

 

「相変わらず勉強熱心なことで」

 

「ちなみにPC作業ってのは気になったマンガのアニメを有料サイトで見てる事を言う」

 

「アタシの褒め言葉返してもらえます?」

 

「家では仕事はしない主義なんだよ。教本とか読んでるのはただの俺の数少ない趣味だ。っと、適当に座ってくれてていいぞ」

 

 ネイチャを座らせようとして1人キッチンへ向かうトレーナー。おそらく来客用にお茶でも入れてくれるのだろうと思う。

 しかし、ネイチャにも座ってられない理由があった。

 

 予定より早く着いたとはいえ時間はもう昼時。元々時間を決めたのはネイチャだった。

 座らずにキッチンへ駆け寄る。

 

 

「ところでトレーナーさんや、お昼ご飯はもう食べた?」

 

「え、ネイチャが来ると思ってまだ食ってないけど。適当に出前でも取ろうかと思ってたし……ってお前、その買い物袋どうしたんだ? まさか……」

 

 待ってましたと言わんばかりに後ろに隠し持っていた買い物袋を見せつける。

 許可もなく冷蔵庫の中を覗き込んでみれば見るも無残な……という感想すら出てこないほどまともなのが何もない。というかあるのは水にお茶、以前聞いて飲まなくなったと言われていたからかお酒の缶が奥に押し込まれているのと、軽食のつもりかは分からないが10秒メシと言われている飲料ゼリーがいくつかあった。

 

 一人暮らしの男の冷蔵庫と言ってももう少しマシなものと思っていたが、そうでもないようだ。

 

 

「そのまさかですよー。まったく、トレーナーさんの食生活も相変わらずなようで。はいネイチャさんの突撃押しかけ昼ごはーん。キッチン借りますよ~」

 

「ありがたいんだけど何でそんなノリノリなの? エプロンも持参してるし」

 

「そう見える? まあ気にしなさんな。軽くチャーハンでも作りますんで」

 

「男ならみんな大好きチャーハンとか分かってるなお主」

 

「はいはい、今度はトレーナーさんが座っててねー」

 

 親しい男性の家でエプロン姿のまま昼食を作る。という状況で何故か機嫌が良い自分に疑問を持つ事すらなく材料を用意していく。

 自炊しなさそうなのに一応一通りの調理器具はあるようだ。こういうとこはしないにしても買っておいた方がいいだろうと思っていたのかもしれない。

 

 

「さて、パパッと作っちゃいますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはーっ、食った食った。ごちそうさまでしたっと」

 

「はーいお粗末様ー」

 

 食べ終えた皿を慣れた手付きで片すネイチャ。これも幼少の頃に実家のバーを手伝っていた故か。

 チャーハンが出来上がった時にフライパンを既に洗っていたため、残るは片した皿のみである。この辺の手際の良さも中等部にしては立派すぎるというものだ。

 

 テレビから聞こえる休日のバラエティー番組の音を聞きながらキッチンへ視線を向ける。

 エプロン姿のまま鼻歌を歌いながら洗い物をしているネイチャがいた。そして自分はテレビを前に心地良い満腹感を感じながらソファに背を預けている。

 

 

(これって何だか……)

 

 思うよりも先に思考を止める。

 この先は何だかイケないような気がする。主に大人と子供という意味で危険領域に踏み込んでしまいそうだった。

 

 

「何か悪いな。洗い物までさせちまって」

 

「家にお邪魔させてもらってるのはアタシだし、そのお礼だから気にしなくていいですよ~。お弁当作ってるのとあんま変わらないしね」

 

「やっぱネイチャの作る料理は絶品だな。何もかもが美味い」

 

「チャーハンくらいで大袈裟だってば」

 

 その後は何気ない雑談がずっと続いた。

 この家にゲーム機やボードゲームといったものは一切ない。そのためやれる事は少なく、いつもトレーナー室でやっているような雑談を暇潰しとしてやっていた。

 

 時刻が15時を過ぎた頃、ふと思い出したトレーナーはこう切り出した。

 

 

「あ、そういえば忘れてたけどさ」

 

「どしたの?」

 

「そういや俺と話す事があったからウチに来たんじゃなかったっけ?」

 

「……あ」

 

 ネイチャのこの反応、どうやら素で忘れていたようである。かくいう自分も今の今まで忘れたまま普通に話していたので何も言えないが。

 これではトレーナー室でやっている事と何も変わらない。ここにきて話は本題に入った。

 

 

「何の話だったんだ?」

 

「……あ、やー、その……昨日も言ったようにホント全然何も大した事じゃないんだけどね?」

 

「おう」

 

 目の前の少女がもじもじしている。大した事ないと本人は言っているが、ならば何故そんなに言いづらそうにしているのかが分からない。

 ネイチャを見るに体調の変化やケガしたとかの話ではないのは分かる。それならまずトレーナーが見逃さないからだ。

 

 だとすれば何か。生憎女の子の考えが分かるほど陽な生き方をしていなかったせいか皆目見当もつかない。

 大人しくネイチャからの言葉を待つしかないのである。

 

 そして、彼女は気まずそうにようやく口を開いた。

 

 

「蹄鉄がもうダメになってきたから、ま、また買いに行くのにトレーナーさんも着いて来てくれないかなぁ~と……思いまして、はい……」

 

 こちらに視線も合わせずそう言った彼女の顔は仄かに赤い。

 対してトレーナー、渡辺輝の顔は……見るからにポカンとしていた。呆気に取られた、というよりかは本当に大した事なくて拍子抜けしたのだ。

 

 

「……え、そんな事言うためだけに俺ん家来たの?」

 

「バッ……そ、それはトレーナーさんが来ていいって言ったからでしょ! 大した事ないから来週でもいいってアタシはちゃんと言ったじゃんかっ」

 

「まさか本当に来週でもいいような用事だったとは思わなくてな。いや、うん、だって昨日のお前ちゃんと言いたそうにしてたから」

 

「ええぇ!? あ、アタシそんな言いたげな顔してました……ホントに?」

 

「うん」

 

「さ、さいですか……」

 

 恥ずかしいのか両手でパタパタと仰いで顔の熱を冷まそうとしだした。しかしここでトレーナーは素早く思考を切り替える。

 蹄鉄はウマ娘にとって大事な物だ。トレーニング用然り、レース用然り。そんな大事な物がダメになりそうだったのなら、買うのは早めの方がいいだろう。

 

 ネイチャが来週でもいいと言っていたという事は、まだ完全に擦り減った訳でもないはずなので急ぐ必要もまだなさそうだが、念には念をだ。

 こういうのは早いに越したことはない。

 

 

「時間もまだ余裕あるか。よし、んじゃ今から買いに行くか」

 

「え、今から!?」

 

「ああ、休日だしちょうど良いだろ。時間もまだまだあるから適当にぶらついてもいいしな」

 

「けどさ……いいの? トレーナーさんって基本休日は家でぐうたらしてたいんでしょ?」

 

「言い方に棘があるのは気のせいですかね? いいよ別に。昨日も言ったろ。俺はお前のためならいつでも時間を割くって。いちいち気にせんでいい。遠慮もすんな。こういう時子供は大人に甘えとくもんだ」

 

 言いながら外出するための準備をしていく。

 こうしておけばネイチャも無理に断れなくなるからだ。彼女の遠慮しがちな部分には多少強引なくらいがちょうど良いのである。

 

 車のキーを手に取り財布もポッケに入れた。

 最低限の持ち物さえ揃えばあとは出発するだけだ。

 

 

「こんなもんか。んじゃ行くぞネイチャ。ここまで来て断るのはナシだかんな」

 

 確信犯の自覚があるのか、少し意地悪そうに笑いながらネイチャに問いかける。

 その意図を察したのかネイチャは諦め半分呆れ半分、いいや、どことなく嬉しそうに溜め息を吐いた。

 

 

「は~あ……お礼に今日の晩ご飯作らせてもらうから食品コーナーにも寄ってね」

 

「お、それは嬉しい誤算だな。楽しみが増えちまった」

 

 そうして2人は一緒に外へ出る。

 こんなやり取りをきっと今後もしていくのだろうというちょっとした確信を持ちながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうせなら来客用に適当に何個かゲームでも買ってみるかねえ」

 

「ゲームってそんな軽い感じで買うもんだっけ」

 

「つっても来んのはネイチャぐらいだろうし、お前が興味ありそうなやつ選べばいいよ。2人で出来るのとかあるだろ?」

 

「対戦は苦手だから協力できるやつがいっかな」

 

「じゃあそれで探してみるか」

 

 

 

 

 

 

 

 他愛ない会話は止むことなく続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






では、今回高評価を入れてくださった、


太鼓さん、K.W.C.G.さん、十束煉さん、rumjetさん、みやびさんさん、ヒロキチさん


以上の方々から高評価を頂きました。
本当にありがとうございます!!



【宣伝】

現在、ハーメルンで『“高貴なる蒼穹”、或いは“光輝なる真紅”』という小説を書かれている『またたね』さん主催のウマ娘企画小説が開催されるという事で、ありがたい事にお誘いを頂きましたので参加させていただく運びとなりました。

企画小説自体の掲載日はハーメルンにて“10月1日”~“10月9日”まであり、自分の作品は“10月4日”(月)に掲載される予定です。
企画に参加される方は9人ですが、全員ハーメルンでの執筆経験があり実力者揃いの方々ばかりですので自分も楽しみで仕方ありません!
中にはウマ娘の作品を書いてる方もいますので、もしかしたら皆様も一度読んだ事のある作品の作者がいるかもしれませんのでそちらもお楽しみに。

ネイチャが好きでこの作品を読んで下さっている方々がほとんどだとは思いますが、企画ではネイチャ以外のキャラに挑戦します。(そういうルールですので)
そういった意味でも自分の力がどれだけあるのか試せる良い機会だと思うので、もしよろしければ企画小説の方でも読んで下さると狂喜乱舞です!


長々と宣伝にお付き合いいただきありがとうございます。
次回も皆様に読んでいただける事を祈りつつ、今回はここまでにさせていただきたいと思います。



料理しているネイチャを見ながら新婚感を味わいたい人生でした。
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