お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話   作:たーぼ

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52.ファッション雑誌

 

 

 

 

 

 

 

 6月中旬。

 梅雨入りしたにも関わらず今日は晴れた。おかげでグラウンドでいつものようにキツい練習を終えたネイチャはシャワールームで汗を流した後、涼しいトレーナー室へすぐにやってきた。

 

 

「うあー、今日もキツかった~。晴れた日の6月はもう完全に夏ですなーこれ。シャワーもちょっと冷たいの浴びちゃった」

 

「んなの7、8月に入ったらもっと暑くなるんだから覚悟しとけよー。俺だって暑いのは死ぬほど嫌だけどな。いっそ室内に涼しく走れる練習場作ってくんないかな理事長」

 

「覚悟しとくべきなのはトレーナーさんでしょうに。いつも夏場は二言目に暑い帰りたいって言うんだから。はー涼しっ」

 

 言いながらソファに座ってもたれかかるネイチャ。

 練習終わりにこの部屋で寛いでから帰るのももう習慣となっているようだ。

 

 ネイチャの練習は終わってもトレーナーの仕事はまだ少し残っている。さっさと今日のレポートを終わらせて自分も早く帰りたいのが本音だ。

 家でしか集中できない研究(対策)もあるのだから。

 

 

 

 

「ふぅ、終わりっと」

 

 レポートを終わらせ一息つく。部屋が涼しいとストレスなく作業が出来るからありがたい。

 時計は18時半辺りを指していた。夏場は陽が高いから何故かまだ時間に余裕があるように思ってしまう。

 

 と、やけに静かなネイチャに目が行った。

 寝ている訳ではなさそうだが、ここからでは後頭部しか見えないので何をしているか分からない。作業も終わったので近づいてみると、何かを読んでいた。

 

 

「何読んでるんだ?」

 

「んー? あーこれ? 普通のファッション雑誌ですよ~」

 

 ファッション雑誌と聞いて、まず最初に読んだ事ないなと思ったトレーナーはオシャレに無頓着の人間である証拠だ。

 

 

「珍しいな。ネイチャがそういうの見てるって」

 

「一応言っておきますけど、アタシだってこういうの興味ない訳じゃないですからね? ほら、最低限の身だしなみと言いますか、ダサいと思われるよりかは良い感じに見られたいじゃん?」

 

「なるほどねえ。まあ学生だしそう思うのも当然か。俺は基本スーツだしオシャレとかしなくなったしなあ」

 

 ネイチャが良く見られたい相手は自分だという事に当然ながら気付かないトレーナー。普通に友人とかの目線が気になるのかなと思っていた。

 自分の服はもうスーツ以外だと3着くらいしか持ってなかったような気がする。平日はスーツ、休日には夕飯を買いに行く程度しか外に出ないから服自体もそんなに汚れる事もなく綺麗なまんまだ。

 

 

「確かにトレーナーさんの私服ってあんまり見た事ないね。あってもいつも同じような服ばっかだし。もしかして使いまわしてる?」

 

「使い回すほど着てないのが現状だよ。そういやファッション雑誌って何でまたそんなの読んでるんだよ? 今まで雑誌読んでるとこ見た事ないのに」

 

「え? まあ普通に今の流行りの服がどんなのかとか気になってるってのもあるけど、一番はこれかな」

 

 ネイチャが見せてきたのは雑誌の表紙だった。

 そこには1人のウマ娘が載っている。

 

 

「あれ、ゴールドシチーか?」

 

「そそ。普段はアタシもこういうの見ないんだけど、ゴールドシチー先輩が表紙飾るから気になってちょっと買ってみたんだよね」

 

 ゴールドシチー。ネイチャより学年が上の先輩であり、モデル業をしながらトレセン学園に所属しているウマ娘だ。

 そのスタイルと美貌から100年に1人の美少女ウマ娘と呼ばれ、プラチナブロンドの髪色と青みがかった瞳は見る者を惹き付ける程とも言われている。

 

 トレセン学園にも彼女のファンが多い事から、トレーナーもゴールドシチーの事は知っていた。

 

 

「はー、やっぱ生で見ても雑誌で見ても綺麗な人だなあ。何着ても似合うって分かっちゃう感じがもうスゴい」

 

 ファッション雑誌の表紙を飾るほどの容姿をしている時点でそうなのだろうとは思う。

 誰が見ても綺麗、美人と思うのは実際トレーナーも思っているから事実だ。

 

 

「確かに見れば見るほど美人って感じだよなゴールドシチーって。俺も何度か見た事あるけど、ホントに俺より年下かよって思うくらい大人びてる印象あるし」

 

「……ふーん、トレーナーさんでも誰かを可愛いとか綺麗って思う事あるんだね」

 

「俺だって一応は男だからな。そりゃそう思う異性がいれば綺麗だのなんだの思うってのは普通だろ。単に縁がないってだけで」

 

 最後のは余計だったか。自分で言ってて少し悲しくなった。トレーナーももう良い歳だからこういう事はあまり言わないように控えているのだが、そういうのを差し引いてもゴールドシチーというウマ娘は綺麗だ。

 何よりトレーナーが綺麗だと思っている部分は他にもあるが。

 

 で、トレーナーの言葉を聞いて少し表情が変わったのがネイチャだった。

 

 

「へえ、じゃあ今のトレーナーさんが可愛いとか言うのって本当にそう思ってる時なんだ……?」

 

「可愛いだの綺麗だのってむしろ本気で思わんと俺は言わないぞ。ってあれ、どうした? 何か機嫌悪い?」

 

「べっつにー、シチー先輩が綺麗なのは事実だし? アタシもそう思うくらいなんだから男のトレーナーさんが思ってても不思議じゃないですもんねー」

 

「そうそう、綺麗なんだよなゴールドシチーって。何より走ってる時のフォームまでも様になってるし、しかも残すべき結果はちゃんと残してる。レースもモデルも両立しながらどちらでも活躍してるんだから凄えよ」

 

「……あ、そっちのが重要なんだ」

 

 少しムスッとしていたネイチャの表情が元に戻った。というより呆れた顔になっている。

 

 

「確かに顔もスタイルも良いのは知ってるけどな。俺としてはゴールドシチーのウマ娘としての能力の方が魅力的だと思ってるよ。モデルなのに飾らずに負けず嫌いな走り方。なのにフォームは見惚れるほど綺麗。そんなウマ娘は中々いないもんだ。あの娘にしか持ってないモノ(武器)だし、彼女のトレーナーも凄い人なんだろうさ」

 

「やっぱトレーナーさんはトレーナーさんですなー」

 

「それって褒めてる?」

 

「3割くらい」

 

「半分すらいってない、だと……」

 

 思った以上に評価が低かった。もしかしたら担当ウマ娘は自分に厳しいのかもしれない。

 内心少し傷付きつつもネイチャが読んでいる雑誌を覗き込んでみる。どうやらウマ娘専門のファッション雑誌のようで、人間の男は一切写っていない。

 

 モデルの人達もみんな成人済みのウマ娘だったりとびきり美人なウマ娘が流行りのファッションを着こなしている。

 けどこういう雑誌に載っているような服って5桁くらいするような高い代物なんじゃないのか、とファッション雑誌初見のトレーナーは思っていた。

 

 

「こういうのって気に入った服とかあったら一式で買うもんなのか?」

 

「どうだろうね。他にも組み合わせがない訳じゃないから、自分の持ってる物とかで合いそうなのあったら一点だけ買うって事もあるんじゃない? アタシも雑誌見て買った事ないからよく分かんないけど」

 

 言われてみれば雑誌を見てそれを買う友人や知り合いをトレーナーは見た事がない。そもそも店に行って買わないといけないのか通販でも買えるのか分からない。

 今時の若者なら普通に知っているのだろうか。

 

 そんな事を考えながらそろそろ帰る準備を始めようかと自分の机に行こうとした時。

 

 

「ちなみにさ」

 

「ん?」

 

 雑誌をペラペラと捲っているネイチャから声がかかる。

 ファッション雑誌なんだから服装ちゃんと見ないと意味ないのでは、という疑問もあるがそのままネイチャの言葉を待つ。

 

 

「と、トレーナーさんから見たらアタシって、可愛い方……か、綺麗……だと、どっちに見える……?」

 

 それはどちらの服を着ればいいのかという質問なのか。

 正直可愛いも綺麗もどう違うのかトレーナーはよく分かっていないけれど、お年頃の学生はやはり気になってしまうのだろう。

 

 ならば担当トレーナーとして真摯に答えてやらなければならない。

 ネイチャを見る。可愛い服か、綺麗に見える服か、どちらが彼女に似合うか。ネイチャと出会ってもう3年目だ。彼女もしっかりと成長している。

 

 その上で、トレーナーは迷いなくこう言った。

 

 

「ネイチャは何着ても似合うし可愛いんだから好きな服着ればいいと思うぞ」

 

「かッ……!?」

 

 ネイチャが少し固まった。返答を間違えたか? と考えるもそんなに怒らせるような事を言った覚えもない。

 しかし、トレーナーは数分前に自分で言ったセリフを忘れていた。

 

 

『可愛いだの綺麗だのってむしろ本気で思わんと俺は言わないぞ』

 

 

 

 

 そしてネイチャはしっかりとそれを覚えていた。思っていた返答とは少し違ったがもうどうでもいい。

 つまりトレーナーはネイチャを本気でそう思っているという何よりの証拠だ。先ほどゴールドシチーに芽生えた微かな嫉妬も今のでどこかへ消え去った。

 

 1分間たっぷりかけて解凍されたネイチャは思い切って次の質問をしてみる。

 雑誌を指差してこう言った。

 

 

「じゃ、じゃあさ……この中だとアタシに一番似合いそうなのとか、ありますかねー……なんて」

 

「あー、そうだな~。あえて選ぶなら……これとか良いんじゃないか?」

 

 トレーナーが選んだのは白を基調としたフリルのついたスカート、青いデニムジャケットの下には白いフリルシャツで全体的に涼し気なイメージと清楚な印象を持つ服装だった。

 奇抜なモノは選ばなかったのを見るとぶっとんだセンスはしてないようだ。

 

 

「なるほどねー、ありがと。一応参考にさせてもらいますわ~。っと、じゃあもういい時間だし帰ろっか」

 

「参考になれば何より。んだな、とっとと準備済ませるかね」

 

 言って自分の机に向かっていくトレーナー。その背中を見て何かを考えるネイチャ。

 誰かの服装を考える時は、それこそプロでもない限り少なからずその人の好みが出る。トレーナーはネイチャに似合う服と思ってこれを選んだらしいが、そこには大小問わなくともトレーナーの好みも入ってるはずだ。

 

 だから、ネイチャは結論に至った。

 

 

 

 

(今度似たような服買いに行こうかな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 






首をブンブン振り回しながら断るネイチャにモデルを勧めたい。
世界一可愛いよって言ってあげたいです。



では、今回高評価を入れてくださった、


じゃがりこexさん、ビックバイパー(前:イギー)さん、仮面色さん


以上の方々から高評価を頂きました。
本当にありがとうございます!!励みになります!!





まさかアニバイベントの前にバレンタイン衣装のネイチャとか来ないよな……?と毎晩震えております。
キタサトとマチタンのために2天井分の石は貯めてるけど。
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