お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話 作:たーぼ
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10月初旬。
約9ヶ月間の猛特訓を終えたナイスネイチャが久しぶりのレースを迎えたのはGⅡレース『毎日王冠』だった。
上半期を全てトレーニングに費やし、夏合宿でもただ勝つ事を考え苦手な部分を最大限まで克服し、体調も状態もほぼ完璧に仕上げた上で挑んだレース。
約10ヶ月振りのレースで少しは緊張しているものかと思っていたが別にそうでもなかったようだ。
他の出走ウマ娘の対策も万全にこなして走り抜けた結果、ネイチャは無事に1着を勝ち取る事が出来た。
2着との差は1バ身。他にも強いウマ娘がいたにも関わらずこの仕上がりは上々だろう。この調子のまま月末にある『天皇賞(秋)』も上手くいってくれればいいが、さすがにGⅠレースともなればどうなるかは分からない。
本番にならなければその日のコンディションや相手の状態で全てが変わってくるのだから。
とまあ、考えなきゃいけない事は山ほどあるが今は久々に勝利した現実を喜び合うのが先か。
レース終わり、場所が東京という事もあり別段打ち上げに持ってこいの場所も特に思いつかずどうしようかと考えた末。
「という事で久々のレース大勝利という事でカンパーイ!」
「かんぱ~い……ってこれいつもと変わんなくない? トレーナーさんの家だし」
自宅で晩ご飯を食べるだけとなった。普通なら女の子と家でご飯を食べるなんて夢のような空間のはずなのだが、如何せんトレーナーとネイチャにとってはただの日常となりつつあるため特別感も何もない。
強いていつもと違う事を挙げるなら。
「何言ってんだ。いつもはネイチャにご飯を作ってもらってるけど、今日は出前で色々頼んでるんだからネイチャに手間はかけさせてないし豪勢でしょうが。トレーニングのために食事制限も大事っちゃ大事だけど、たまにゃ好きなモン好きなだけ食うのも良いだろ。心の栄養をとるってやつだよ」
「ホントたくさん頼んでるもんねー。トレーナーさんが食べる量を考えたらアタシが食べなきゃいけない量多すぎません?」
並べられている料理はテーブルだけでなく床にまで置いてある。ピザやカツ丼、焼肉の盛り合わせにポテトやナゲット、餃子とカレーライスにラーメンなど色んなジャンルの容器があった。
そしてトレーナー、勢いでめちゃくちゃ頼んだけど実際多すぎたかもしれないと少し思っているのは内緒だ。
「レース終わりでネイチャも腹減ってるだろ。食欲増しそうなやつばっか買ったからきっと大丈夫だって。……え、大丈夫だよね?」
「いや知らんけど。頑張ってはみるけどあんま期待しないでね。食欲あるとは言っても油ものばっかはさすがに若いアタシでもキツくなりそうだし」
「ねえそれだと俺とかもっと油ものキツくなるんだけどどうしよ。助っ人とか呼ぶか? 滝野さんとこのスペシャルウィークとか。2つ返事ですぐ来そうだし」
「アタシが食べるから呼ばなくていい」
「そ、そうか? まあ今日はネイチャの勝利祝いだしな……」
何故か食い気味に断られた。この家に呼ばれたら不都合な事でもあるのだろうか。
確かにスペシャルウィークとネイチャ自体はそんなに話した事もないし少し気まずいか。ならマヤノやマーベラスサンデー辺りを呼んだ方が良かったかもしれない。
気遣ったつもりだが的外れな推測をしているトレーナーをよそに、ネイチャは呆れながらいただきますと言ってからさっそく品々に手を付け始めていた。
最初にポテトを一つまみして少女は言う。
「それにしても久しぶりのレースで勝ったからって大袈裟じゃない? GⅠで勝ったならまだ分かるけどさ」
「こういうのは最初が肝心なんだよ。出だしが好調ならその先もこのまま勝てるように景気づけるのは大事だ。それにGⅡも立派な大きいレースだしな。ここで重賞獲れたのは大きい。ネイチャの成長の仕方が間違ってなかった何よりの証拠だ。いただきますっと」
ピザを一切れ取って頬張る。空腹だと一口目は何でも美味しく感じる現象は何なのだろうという疑問をすぐにどこかへ追いやり、ネイチャの方へ目をやる。
ポテトとナゲットを両手に持って交互にパクついていた。
「まあ勝てたのは素直に嬉しかったけどね。今後のモチベーションにもなるし。次の天皇賞はどうなるかな~ってのはあるけど」
「GⅠだからな。毎日王冠でも戦ったイクノディクタスはいるし、菊花賞と春天を獲ったあのライスシャワーもいる。あとはそのライスにオールカマーで勝ったツインターボも出るな。他にも注意すべきウマ娘はいるけど、注目を浴びてるのはまだこのくらいか」
「トレーナーさん的にはどう思ってる?」
ナゲットを一つ取って思案する。
とりあえずマスタードに付けて頬張ってから、
「まだ推測の域を出ないけど、強いて言うならライスシャワーは最低でも警戒すべきかな。勝敗に波はあるけど実力は確かだ。狙う相手を見付けたら一点集中してくるのはハッキリ言って恐ろしい。勝負服に付いてるナイフ的なやつってプラスチック製だよな? 本物じゃないよね……?」
「気になるとこ違くない?」
「あと個人的に気になってるのはこれまでの入着率が高いゼンニンオファーとかか。GⅠだから強いのがゴロゴロいるな」
「最高峰のレースだからねー。そりゃ簡単には勝たせてくれないっしょ」
そんな生温いレースならとうに勝っている。そう上手くいかないからこそ中央にいられる条件としてG1勝利を設けられたのだ。
油断なんて一切許されない。誰も彼もが様々な想いを掲げその1着を狙って鎬を削ってくる。それだけの覚悟と決意を背負って。
たった一つの勝利に全てを懸けて走るのだ。その傍らに自分がトレーナーとして支えになれるなら、どんなに誇れるだろうか。
栄光への架け橋となりたい。ネイチャと共にこの先もずっと駆け抜けていきたい。レースにそんな想いを掲げるのは何もウマ娘だけではない。渡辺輝もまたその1人だ。
だから勝つ必要がある。未来を守るために。
勝利への鍵は何か。
「そういや毎日王冠では
「ああ、アレね。前の秋天以来から出ないけど、やっぱあの時の感覚が不思議すぎたんだなって思うよ。異様なくらい体軽かったりしたからね。あんなもん簡単に易々なれたらそれこそ怪物ですわ」
「まあ、そうだよなあ」
簡単になれたら苦労はしない。だから時代を創れると言われている。
この先のレースで勝つための鍵となりそうだが、この上半期にどれだけ練習を積んでも自主的に開花する事はなかった。トレーニングでダメならレースに出れば変わるかとも思ったがそうでもなかったらしい。
練習量と成長した実力。それでも発生の条件には含まれていなかった。
これも推測だが、あの頃より実力が上がっても
(こればっかりは運か)
ピザやポテトを食べ終えラーメンを啜る。
ネイチャもカツ丼をまだまだ余裕の表情で食べていた。
「あれだな。あとやれる事は
「結局はそこに行き着きますよね~。分かってたけど」
年末までにGⅠレースは3つほどある。どれも厳しい戦いになる事は間違いないが、それまでにもっとネイチャの走りを磨く以上やれる事は少ない。
そして最大の壁とも言える強敵は、おそらく最後に立ちはだかってくるだろう。
「トウカイテイオーはどこに出てくるかねえ」
「ま、有馬記念は確定でしょうよ」
「だろうな。あの娘も今年はレース控え目にしてたけど、出てたレースはGⅡ、GⅢ含め全部1着。紛う事なき最強であり続けてる。ビワハヤヒデやウイニングチケットも有馬に出るだろうし、想像するだけで凄いレースになりそうだな」
「うへえ……強豪ばかりじゃん」
「けどそれと一緒に並び立つのがお前だぞ。最終的にテイオーに勝つなら強気でいかねえと」
「それはそうだけど……いや、うん、そうだね。勝つって決めたんだし物怖じしてられないか」
言い淀むとも思ったがそうでもなかった。ちゃんと自信がついている。今のネイチャなら勝てる見込みは充分にある。
トレーナーも他のウマ娘対策をちゃんと立てておかなくちゃならない。1人で勝つのではなく、2人で成長して勝つと決めたのだから。
そうとなればいつだって二人三脚で挑むしかない。
まずは目の前の大量にある料理を片付ける事から始める。
「そうそう、だから英気を養うためにも今日はたーんと食え。明日は休みだけど明後日からまた厳しいトレーニングだし、まずは月末の天皇賞(秋)まで調整しつつもっと仕上げていくぞ。2人で勝つために二人三脚で頑張るんだ」
「はいはい、で、トレーナーさんは次何食べるの?」
「あ、俺はもう何も食えないからパスで」
「二人三脚どこいった」
ウマ娘をやっているとGⅡ、GⅢに勝つ事は当たり前になっているけど、実際考えると普通に凄い事なんだぞってちゃんと再認識しなければ小説を書く上で致命的なミスを犯しそうで毎回気を付けています。
では、今回高評価を入れてくださった、
クロノワさん、蘭童さん
以上の方々から高評価を頂きました。
本当にありがとうございます!!
ファミマコラボの商品に友情トレーニングしてるキタちゃんがいたから周年で期待していいですかね。