お気楽そうなトレーナーとナイスネイチャがほのぼの?頑張る話 作:たーぼ
読者の方から直接お声頂ける感想を見てはニヤケています。
「はーい、という事で『ドキドキ、プールでスタミナを上げよう大作戦』の始まり始まり~! ドンドンドンパフパフ~イェイイェイイェイ」
「ドキドキってとこいる?」
「一番大事なとこだぞ」
「一番どーでもいいとこでしょ」
授業が終わり、いつも通りトレーナー室に入ると言われた。
『水着に着替えてプールに集合』
そうしてここまでに至る。
「トレーナーさんがアタシのスクール水着を突き出してきたのナゾすぎるんですけど」
「俺はお前のトレーナーだぞ。当たり前だろ」
「もしもーし警察ですか?」
「いやんちょっと噓じゃんウソウソ。冗談だって。お前と同室の子……確かマーベラスサンデーだっけ? あの子に聞いたら何故か持って来てくれたんだよな」
「あんのマーベラス……」
プライバシーもへったくれもねえ友人であった。
とりあえず通報用に持ち出したスマホを濡らさないようベンチへ置く。ここまで流されるがまま水着を着た自分も自分なのだという自覚もあるネイチャだった。
「こっちのプールはまだ誰も使ってない……か。なら遠慮なく自由に使えそうだな」
「というか何でプール?」
「決まってんだろ。今日はひたすら泳いでもらう」
「ひた、すら……?」
「ああ。先週も言ったろ。今のネイチャに足りないのはスタミナとパワーだ」
「あー、確かに……」
忘れるはずもない。突然デビュー戦をすると言われ驚いたのだから今でも鮮明に覚えている。
先週の模擬レースが終わった後、トレーナーに言われた事があった。
『お前が仕掛けようとしたタイミングは悪くなかった。けど、先にテイオーが仕掛けたせいで焦ったんだな?』
『……うん。アタシも追いつかなきゃって思って、すぐに仕掛けたんだけど』
『追い付けなかった、か。まあ、見てても分かったよ。焦りで自分のリズムを考えずにスパートかけたせいで
『さすがトレーナーさん、的確だね』
『これでもトレーナーだからな。そして結局序盤から逃げ切りを狙ってたウマ娘にも逃げられ三着』
『ウッ……うぁぁぁ今のアタシに3という数字を出さないで~!』
『や、三着入れるだけマシなんだけどな……』
と、こんな事があった訳である。
そして今日連れて来られたのは、トレセン学園に設置されている複数あるプールの中の一つ。
まだトレーナーとネイチャ以外には誰もいなかった。
「ここではもし次回以降に掛かってしまった時があったとしても尽きないスタミナを付けるのが目的だ」
「ランニングマシンとかじゃダメなの? スピードも一緒に鍛えられそうだけど」
「あれも悪くはないんだけどな。今日はスタミナ増強がメインだ。そして明日は加速力を上げるための筋トレがメイン、その次にレース中でも自分のペースを乱されないよう冷静でいられるように専用の本とかを一日中読みまくるっつうメニューをループさせていく」
「はえー、重点的にメニュー絞ってくんだ」
「ああ。ネイチャのスピード自体は申し分ないからな。実際先頭集団をほとんど躱して差したんだ。掛かりさえしなかったら二着の子にも追い付けた可能性は高い」
実によく見ているなと、ネイチャは素直に感心した。
自分は必死に走っていたからよく分からなかったが、トレーナーが付くだけでこんなにも自分の課題が分かるものなのか。
「……ヨシ、とりあえず泳げばいいんだよね?」
「おう。クロールでも平泳ぎでも何でもいい。自分のやりやすい泳ぎ方で構わん」
「あいよー」
こうしてネイチャのスタミナ訓練が始まった。
ネイチャが選んだのはクロールだ。
学校などでも一番最初に習う一般的な泳ぎ方。金づちでもない限りは誰もが出来るであろう王道のもの。
それ故に、一つ一つの動作が洗練されていないと速度に差が出るものでもある。シンプルだからこそ、基本だからこその所作が必要とされるのだ。
例えそれが、スタミナ作りのただの訓練であっても。
「クロールの動作を一つ一つ意識して泳げよー。走ってる時のフォームを意識するような感覚でだ。あと息継ぎする時のリズムは常に一定を保て。泳ぐ速度を上げる時も下げる時もだ。ひたすら泳ぐと言っても、何も意識せずに泳いでても何の意味もないからなー」
「……ぶ、ぅぶ……っ、ぶはぁっ! ちょ、トレーナーさんっ、一気にそんな言われても分からないって! 泳いでるし水の音で聞こえにくいし!」
「え? ああ、それはすまん。プールだしどっかにトレーナーが使う用のメガホンとかなかったっけかな……。あ、ネイチャはそのまま続けといてくれー」
「……分かりましたよーぶぶぶぶぶ」
言いながらプールの隅に置かれているカゴをガサゴソし始めるトレーナー。
トレーニングには真面目なのだが何故かどこか抜けている感が否めない。
というよりもだ。
あのトレーナー、仮にも女子が水着を着ているのに何の一言も言ってこないではないか。トレーニングを始める前にせめて何か言ってくれてもと思いながら水をブクブクさせるネイチャ。
(いや、まあ所詮はスクール水着だし、トレーナーとウマ娘だし、何よりトレーニングだし何も言ってこないのはフツーなんだけどさ……)
仕方なくさっき何となく聞こえてきたアドバイスを意識しながら泳ぎ始める。
(というかトレーナーさんにそーいうのを求める時点でアタシが間違ってるのか。うん、あの人だしな……。いやいや、てかトレーナーさんがアタシのために考えてくれたメニューなんだから失礼な事考える方がヤバイじゃんっ。何だこれ、メンドクサイ思春期かアタシは!)
実にめんどくさい思春期であった。
そしてそれを見ているトレーナー。メガホンを見付けさっきのアドバイスをまた言おうと構えたところで止まる。
「あれ、出来てんじゃん。飲み込み早いなあいつ」
何ならさっきよりも早いペースなのにリズムもフォームも綺麗になっていた。
「ほい、休憩。俺特製のドリンクだ」
「はあ、はあ……そこの自販機で買ってきたスポドリじゃんか。……ありがと」
およそ二時間、ずっと泳ぎっぱなしだったネイチャにドリンクを渡す。
プールから上がってきたネイチャは案の定疲れている。
「うーわ、体おもっ……」
「そりゃ数時間ずっと水の中にいたらそうなるさ。つうか二時間あのペースで泳ぎ続けれるの凄えな。さすがはウマ娘ってとこか」
「案外出来るもんだねー。めっちゃ疲れるけど」
隣のベンチにネイチャが座る。
見ている限り元々のスタミナは結構あるように思えた。やはりペースを乱されない限りスタミナ面は善戦できそうだ。しかし万が一に備えて鍛えておくに越した事はない。
二時間も経てば他のウマ娘もプールにやって来てトレーニングをしている。
それを2人で見ながらトレーナーがある事に気付いた。
「そういやお前のそのツインテールって毎日セットしてんの?」
「え、急にどーしたの」
「いやさ、普通のツインテールだったらそのまま重力に任せてスラ~って下に落ちるじゃん。でもネイチャのってすげえふわふわしてるというか、いつももふもふしてんなって思って」
「どうした急に。……んー、まあいつも気を遣ってセットはしてるよ? 小さい頃はおふくろがしてくれててさ、自分でもしたくて教えてもらったんだけど、これがケッコー時間かかるから大変なんだけどねー」
「へえ、てことはセットしなかったら普通のツインテールみたいになるって事か?」
何やらトレーナーの視線が気になるが、何だか目を合わせてはいけないような気がしてドリンクを一口含んでから答える。
「どうなんだろ? この辺は元々癖っ毛か何かでモサッとしてるんだよね。だからおふくろがそれを誤魔化すためにセットしてくれてたけど。アタシもセットする時以外はあんまり自分の髪見ないからなー」
「ほーん?」
「……な、なに?」
全体的に怪しい。主に視線が。
何だかやたらとニマニマしていないかこのトレーナー。やはり素で不審者系男子なのは出会ってからも変わっていない。
通報一歩手前まで考えられているとは思いもしないトレーナー。
しかしそこで会心の一撃を出す。
「や、お前今プールのせいで普通のツインテールになってるからさ。珍しいなーって思って見てる」
「………………………………………………………………あ」
すっかり忘れていた。そういやそうだ。
風呂に入る時は普通に髪を解くから気付いていなかったが、プールでは髪は解かなかった。
故に水分を吸収した髪は重さによってそのまま重力に逆らえずだらりと垂れ下がる。
どれだけ癖っ毛だとしても、パーマをかけない限りほとんどはペタンとなってしまうものだ。
つまり、今のネイチャはいつものもふもふツインテールではなく、正統派ツインテールなのだった。しかも水も滴っている。
「…………あ、あの、トレーナーさん……? できればあんまり見ないでくださいますと助かるんですが……」
「え、何で? 見られたって別に減るもんじゃないだろ? それにこれからプールでのトレーニングも増えるんだから気にすんなって。今の内に俺に思う存分見られとけ」
(アタシが気にするんですけど……!?)
普段の自分じゃないものを見られる時、恥ずかしいと思うのは人間でもウマ娘でも同じなのだ。
特に思春期の女の子にとってはとても重要な問題だったりする。そしてこういう時にそんなものを何とも思わないのが決まって男だったりもする。
果たしてトレーナーはネイチャの気持ちを汲み取るか汲み取らないか。
次の発言で全てが分かる。
「うん、やっぱそっちも可愛いなお前」
「かっ、カワっ……!?」
クリティカルヒットであった。
汲み取った結果、ナイスネイチャに精神的ダメージが入る。
「いや~、担当してくと愛着湧くって言うけど、割と本当なんだなー。大丈夫だネイチャ。俺が保障してやる。お前は一番可愛い。自信を持て!」
「や、だから……そんな、い、言わなくても……いいってば……!」
こういう時、いつもならご自慢のもふもふで顔を隠すのだが、今は絶賛ずぶ濡れで使い物にならない。
結論を言えばだ。ネイチャを守る鎧がないのだった。
「もふもふだろうが普通のツインテールだろうがお前の可愛さは一級品だ!! 早くウイニングライブで踊るお前の姿が見たいくらいだぜ!」
「ちょ、だ、もーいいって言ってるじゃんかっ」
もはや照れるネイチャが面白くて叫ぶトレーナー。気持ちだけは本物である
対して思惑に引っかかっているネイチャは髪で隠せないせいでそろそろ限界の域に達しようとしていた。
いついかなる時もだ。
しつこい者にはそれ相応の罰が下されると相場は決まっている。
よって。
「はーはっは!! 俺のウマ娘が世界で一番かわ──、」
「だーかーらー、もういいって言ってるでしょーがああああああああああッ!!」
思春期乙女も爆発する時はするのだった。
まずトレーナーの腕を掴み、まさに柔道の一本背負いの要領で思い切りトレーナーをプールの方へぶん投げた。
「いっ、ちょ、えっ、う、うォォォあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」
ザッブァァァアアアアアアンッ!! と。
自業自得によってトレーナーがプールの底へと落下した。
幸い周囲のウマ娘達が全員休憩中でプールから上がっていたおかげで誰にも被害はない。
しかし、ウマ娘が驚いているのは確かで、それを認識したナイスネイチャの反応はこうだった。
「……あ、やっちゃった」
ぷかぷかと浮かんできたトレーナーを見て、無意識にやってしまった思春期ウマ娘。
職員室へ呼び出されるのも時間の問題なのであった。
ウマ娘って実は人間よりも力が強いんですよね。
つまりもしネイチャに独占欲が出てきてしまえば……?
あと単純に髪を解いたネイチャが見てみたいです。
では、今回高評価を入れてくださった
ダークスさん、だてっさん、東芝を倒したいさん、そうじゅさん、カリュクスさん、村上 ゆうさん、今井紗夜さん、741さん、グラタンD-89さん、至高王さん、3000フル覚2落ち隠キャさん、四葉志場さん、まみゅ。さん、らんたむさん、でぃれさん、エルスさん
以上の方々から高評価を頂きました。
☆8から☆9や☆10に変えてくださった方もいるようで身に染みています。一言評価も欠かさず見させて頂いてます。本当にありがとうございます!
申し訳ありませんが土日は基本予定が入っているので更新はありません。
月曜更新目指して頑張ります。