ロリ花騎士になった団長   作:イッチー団長

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凄くキリの良い所まで書けましたので、これで更新します。
今回は筆がノリに乗ってました。まあ文章力はお察しですが……それでも勢いは中々だと思います。


10話 覚醒

(な、何があった……皆は無事か……)

 全身が痺れて上手く動かせない。顔だけを動かして辺りを見ると、大地が焼け焦げている。まるで雷が落ちたように。

 

(……っ!? リシアンサス、ランタナ、イキシア……)

 ボロボロになって倒れている花騎士達が視界に入る。私の騎士団の花騎士だけではなく、ブリオニアやコオニタビラコ、テリー団長やロザリオ団長までも同じ状態だった。

(い、生きているのか……? 遠くて良く見えない……)

 その時、ズシンと足音が頭の上で響いた。足音だけで分かる威圧感。現れたのは雷鳴だった。

 

「ほう、天地雷鳴を受けてなお意識があるのか。他の花騎士どもも、虫の息だが生きているようだ」

(生きているのか……良かった……)

「ここまで頑丈な戦士達は始めてだ。面白い」

「はぁ……はぁ……な、何も面白くはない……」

 痛い。恐らく骨が何本か折れている。皮膚も肺も焼け焦げ、呼吸をするのも苦しい。それでも、何とか気迫だけで奴の前に立ちはだかった。

 

「立てるのか? 素晴らしい気迫だ。そのまま攻撃してこい! さあ、早く!」

「くっ……」

 手には刀が握られている。あの攻撃を受けてもなお放さなかったのか……。しかし、このボロボロの身体で刀を振ったところでどうなるのだろうか。反撃で殺されるのが分かりきっている。

 

「く……そ……!」

「……流石に剣は振れんか。だが恥じることではない。立っていられるだけでも信じられんことなのだ」

 

「しかし戦いが終わってしまうのはつまらんな……そうだ、お前達が敗北したと分かれば他国から援軍が来るだろう。分かりやすいように何人かの死体を晒しておくか」

 そう言って高らかな笑い声をあげた。

 その瞬間、私の心臓がドクンと脈打つ。怒り、憎しみ、嫌悪。害虫相手ですらこんな気持ちになったことはない。今目の前にいるのは生物だが生物ではない、畜生だ。殺さなければ。

 

 

 

「っ!? な、何……」

 背後からの攻撃に咄嗟に剣を弾き、距離を取る雷鳴。その黒い複眼に私の姿が映る。

 

「馬鹿な。何故貴様が動ける……」

 明かな動揺を見せる。しかし数秒後、彼は再び笑い声をあげた。

「まあ良い。まだ戦えるということだ。実に面白い」

 その言葉を聞き、私は地面を蹴った。先程までボロボロだったのに、自分でも驚く程速く動ける。一瞬で雷鳴の目前に現れ、刀を振るった。

 

(!? 動きが突然速く……まるで別人のようだ……)

「何も面白くはない。ふざけるのも大概にしろ」

 炎のように燃える怒り。しかし対照的に心は水のように静かだった。奴の細かい仕草や心の動きが手に取るように分かる。

 

「貴様は何故命を愚弄する? 形は違えど、貴様だって貴様の仲間だって同じ生き物だろう。何故その大切さが分からない?」

「いや、違うな。貴様ら人間と俺達では根本的に違う。俺達は破界王……神に選ばれし種族。その命が貴様ら下等生物と同じであるはずがな……ぐぅっ!」

 一つ一つの言葉が不快感を与える。その不快感を叩き付けるように、私は奴と剣を交えた。

 

「自分達よりも下の生物はどうなってもいいと言うのか? 弱き者には存在価値が無いと?」

「ぐっ……そ、そうだ! 弱い生物はより強い生物の食い物にされるだけ。それがこの世界の理……ぐ……がぁぁぁ!」

 腹から胸にかけて切り上げる斬撃に、雷鳴の身体は数メートル吹き飛ばされた。

 

「違う。貴様らも我々も同じ、この世界の一部だ。生と死を繰り返す、儚い生き物に過ぎない」

 私がその言葉を口にすると、雷鳴の纏う空気が変わった。恐らくこれは怒り。そして憎悪。人間と同じだと言われることは、彼には相当な屈辱なのだろう。

 

「違う……違う違う! 俺達は選らばれし者だ。貴様らと一緒にするな!」

「同じだよ。今から私がそれを証明する。私がお前を殺す」

 

 

 


 同じ頃、サントリナと炎武の交戦が始まっていた。

「おらぁ! 威勢がいいのは口だけかぁ!」

「くっ……!」

 炎武の炎を纏った剣戟に、サントリナは苦戦を強いられていた。いや、いかにAランクの敵が相手だろうと、サントリナならば互角以上に戦えるはず。何が彼女を苦しめているかというと、

「おりゃぁっ!」

「!?」

(また炎攻撃……しかも狙いは……)

 

「きゃぁぁぁ!」

 逃げようとしていた花騎士の目の前に火柱が現れ、彼女は腰を抜かした。

「やめろ! お前の敵は私だけだろっ!?」

「甘ちゃんだなぁ……使えるもんは全部使う。自分より弱い相手だろうと、俺は勝つための手段を選ばねぇからな。ほら、もう一丁!」

 炎武の手の中から再び炎が放たれ、花騎士達目掛けて飛んで行く。サントリナは咄嗟に地面を蹴り、彼女達の前に立ち塞がる。そして、

「ぐぅぅぅ!」

 

「直撃か。無事じゃ済まないだろうな。雑魚どもを庇って死ぬなんて、戦士としては三流以下だな……っ!?」

「はぁ……はぁ……」

 煙が晴れ、炎武は驚愕した。炎魔法は確実にサントリナに直撃したはず。手応えもあった。それなのに何故、

(何故立っていられる……しかも傷もほとんど付いてねぇ……)

 

「……もう一発だ! さっさと死ね!」

「たりゃぁぁぁ!」

「っ!?」

 はっきりと見えた。サントリナが何をしたのか。

(炎魔法を……物理的に斬りやがった……!)

 

 炎を斬っているのは剣圧だ。物理的に振れていない所まで切り刻むことが出来る。そしてそれを可能にしているのは、サントリナの剣を振るう異常なまでの速さ。世界花の加護を剣先に集中させ、一呼吸で振る。それにより、どんな硬い敵も、魔法等であっても斬ることが出来るのだ。

 

 

 

(だから何だってんだ……魔法が斬れたって、奴はその場から動けない。遠距離から攻撃出来る俺の方が圧倒的に有利だ)

 魔法の連打に、流石のサントリナも追い詰められていく。……ように見えた。

 

(……何だろう、不思議な感覚だ。奴のことが憎くて仕方ないのに、頭の中は物凄く冷静になってる。集中すればする程、攻撃がゆっくりに見えてくる)

 

 サントリナの強さは、もう一次元先へ進もうとしていた。何が彼女をそうさせたのか?

 それは命の危機を感じ取ったことに他ならなかった。自身を上回る強者との戦い。負ければ自分も仲間も死ぬ。

 伝説と言われる程強くなったサントリナにとって、そんな命のやり取りは久しいものだった。

 それは団長が雷鳴との戦いで発現させたものと同じ力。創世の女神によって与えられる『創世の力』。

 

「ほらほら、出来るもんなら攻撃してみ……ろ……」

 突然目の前に現れたサントリナの顔に、炎武は始めて恐怖を覚えた。

(こ、この俺が知覚出来なかった……奴の動きを。まずい、武器を取れ。こいつを早く殺せ!)

 炎武が剣を握ろうとした瞬間、彼の右腕は地面に落ちた。既に斬られていたことに気付いていなかった。

 

「ぐ、あぁぁぁ!」

 失った右腕を抑え、その場にうずくまる炎武。

(い、痛い! 何だこの激痛は! は、早く再生しなければ、逃げなければ奴に殺される!)

 彼は右腕に力を込めるが、それが再生する気配は無かった。

「な、何故だ!? 何故再生しない!?」

 

 動揺する炎武に、サントリナはゆっくりと歩み寄った。

「どうやら再生しないようですね。それじゃあ止めを刺します。何か言うことはありますか?」

 普段の穏やかな彼女とは別人のような、冷たく無感情な物言い。その威圧感に、炎武の身体は震え出した。

 

「す、すまなかった! 見逃してくれ!」

「……」

 頭を地面に擦り付ける炎武。その様子を、サントリナはただ黙って見つめていた。

 

 

 


「はぁ……はぁ……くぅっ!」

「オジギソウ!」

 よろけるオジギソウ。彼女の横を氷魔法が掠め、無数の切り傷を付けていった。

(やはりあちらの花騎士が先に力尽きましたか。そうなれば金色の方も時間の問題。ふふ……)

 

「アブラナさん、私に構わないで下さい!」

「そんなこと出来るわけ」

(出来るわけありませんよねぇ……仲間を見捨てるような残忍さ、覚悟は、あなたにはありませんもんねぇ……)

 仲間に駆け寄るアブラナを、氷雪は内心嘲笑う。

 彼女達にとっては勝つことこそ全てだ。それは自身を造り出した破界王に報いること、すなわち自身の存在意義と言っても良い。そのためならば仲間だって見捨てることが出来る。それが出来ない人間に負けるわけがない。氷雪はそう思っていた。

 だがそこには誤算があった。

 

『アブラナさん、0.5秒後に私目掛けて氷攻撃が来ます』

『うん……死なないでよ、オジギソウ』

『アブラナさんこそ』

 

「ぐっ……あぁぁぁ!」

「おや?」

 オジギソウに氷魔法が放たれた瞬間、アブラナは方向を90度変え、氷雪に向かって走り出した。

(ほう、仲間を見捨ててのフェイントですか。てっきり氷魔法を弾きに行くと思いましたが。まあ、こちらのパターンも想定済みですがね)

 レイピアを構え、応戦しようとする氷雪。そこにもう一つの誤算があることも知らずに。

 

(あなたの速さは既に把握している。この距離なら充分迎撃態勢に入れます。残念でしたね……っ!?)

 彼女が構える前に、アブラナの剣は彼女の胸に突き刺さっていた。

 

 

 

「ば、馬鹿な!? 貴様、まさか今まで力を温存していたのか!?」

「はぁ? そんなことする余裕無かったわよ」

(しかしそうでなければ計算が……!?)

 氷雪の碧い複眼が見たのは、アブラナの左足。肉はズタズタに切れ、血が大量に流れている。

(私の攻撃で出来たものじゃない……どういうことだ!?)

 

「団長には止めろって言われてたけど、背に腹は代えられないわよね」

 これはアブラナの奥の手だった。

 

 アブラナ程優秀な花騎士であれば、当然世界花の加護の扱いにも長けている。それを適材適所に集中させて使うことで、花騎士は更なる力を手に入れることが出来る。

 しかし、花騎士と言えど肉体には限界がある。その限界を超えた力を出せばどうなるか。当然、肉体が力に耐えられずに壊れる。最悪再起不能になる可能性すらある。

 特に、先程アブラナの使った力は危険だ。一本の足に世界花の加護を全て集中させ、一気に爆発させる。凄まじい瞬発力を生むが、見ての通り肉はズタズタに引きちぎれる。恐らく骨も折れているだろう。

 

「あんたを倒せるなら、足の一本なんて安いわよ!」

(本当は雷鳴戦まで温存しておきたかったけどね)

 

「ぐぬ……ぐぅぅ……」

(馬鹿な……人間程度に私が追い詰められている!? ありえない……ありえない!)

 ぎりぎりと歯軋りの音が鳴り響く。氷雪の恨み、憎しみが現れていた。

 

「もう手遅れよ! このまま一気に核を……なっ!?」

(剣先が……凍ってる!?)

「貴様如きに殺されるものか!」

 氷雪が死に物狂いで発動させた氷魔法。それが彼女の核を守り、そしてアブラナをも凍らせようとしていた。

 

(くそっ! 剣が動かない……もう少しなのに……)

(この攻撃を受け切れば、後はこいつを殺し、回復するのを待てばいい。貴様のような下等生物が私に勝とうとしたのが間違いだったんだ!)

 剣からアブラナの腕へ、氷が迫って来る。薄れゆく意識の中、アブラナの頭の中にはグリフィス団長の顔が浮かんできた。

 

(だ、団長……力を、貸して!)

「ぐっ! な、何だ!? 力が更に!」

「ぐ……おぉぉぉ!」

 アブラナが苦痛の混じった叫びをあげる。

 彼女の足元の地面が割れている。折れた足で全力で踏ん張っているのだ。

(痛い……死ぬ程痛い! で、でも……こいつに殺された人達はもっと痛かったはず!)

 

「し、死ね! 早く死ね!」

「あんたを倒すまで、死ねるかっての!」

(もう少しよ……頑張れ、アブラナ。行け、行けぇぇぇ!)

 最後の力を振り絞り、アブラナの剣は遂に氷雪の核を……突き破った。

 

 

 

「はぁ……はぁ……アブラナさん、やりましたね」

 切り傷と凍傷でボロボロになって座り込んだオジギソウが、事の一部始終を目に焼き付けていた。

「本当に、凄い人です」

 冷えた頬に暖かい涙が伝う。まだ終わりではないと分かっているが、それでも止めることが出来なかった。

 

「くっ……さて、私はまだ辛うじて歩けますし、アブラナさんに肩を貸してあげないと……っ!?」

 その時、オジギソウは信じられぬものを感知した。

 

 

 

「ふぅ……さて、女の子団長達を援護に行かなきゃ……ん? オジギソウ?」

 遠くに見えるオジギソウの姿。しかし様子がおかしい。何かを叫びながら必死に腕を振っている。

「何……? 何て言ってるの?」

 口の動きからそれを予測するアブラナ。

「に……げ……」

 

「逃げて下さい!!」

 

「っ!?」

 そこではっと背後の気配に気付く。核が壊れたはずの氷雪の身体から、無数の氷柱が放たれようとしていた。

 

(ふふ、私は死にますがあなたも道連れですよ。金色の花騎士さん)

「アブラナさん!」

 

(これ……まずい……逃げられない……団長、皆、ごめん……)

 悔し涙を見せるアブラナ。そんな彼女に、無情にも氷雪最後の魔法が襲い掛かった。




文字サイズって一部だけ大きく出来るんですね。知りませんでした。
他にも知らない機能が色々ありそう……。

遂に決着した氷雪戦。しかしアブラナの運命やいかに。
そして覚醒した団長は? サントリナは?
次回もお楽しみに。
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