長かった……。
見切り発車で始めたお話が一区切りつくとは……感慨深いですね。
「邪魔だぁぁぁ!」
「ぐっ……うぅ……!」
雷撃の嵐が花騎士達を襲っていく。
(威力が上がってる……ここに来てまだ上がるの!?)
「ま、負けない……負けるわけにはいかない!」
その雷撃の嵐の中を、レッドジンジャーが一人突っ込んでいく。
「レッドジンジャーさんを援護する! クマツヅラさん、お願い!」
クマツヅラのアイテル・オブ・アイテルがレッドジンジャーの周りに放たれ、彼女を雷撃から守る。
「うぉぉぉ!」
「ぐぁぁぁっ!」
レッドジンジャーの必殺技、クリムゾンセレナーデが雷鳴の胴体に直撃する。
(ま、まだだ……まだ核は無事。こいつらの攻撃なら致命傷にはならん)
「ツー回転斬り!」
「!?」
死角からポーチュラカの必殺技が放たれる。その攻撃は雷鳴の核へ。
「くっ……このぉ!」
「ぐぁ!」
(核自体がとんでもなく硬いんだよ……並みの攻撃じゃ倒せない……)
「ポーチュラカさん!」
「私に構わないで! 早く攻撃しないと雷鳴が逃げる!」
雷鳴の反撃をもろに喰らってしまったポーチュラカは、ついに動けなくなってしまう。最後の力を振り絞り、花騎士達を回復してから気を失った。
「女の子団長さん、ポーチュラカさん、あなた達の思いは無駄にしない!」
ブリオニアが雷鳴の右腕を突き刺す。そしてレッドジンジャーは体勢を変え、奴の左腕を突き刺した。
「レッドジンジャーさん、このまま雷鳴を固定する!」
「了解! うぉぉぉ!」
「離せ! 離せぇ!」
雷鳴の必死の抵抗にも、花騎士達は何とか食らい付いていく。
「皆、一気に攻めるよ!」
コオニタビラコの号令で全花騎士が駆け出した。
(これで決める! 絶対に倒す!)
「天地……雷鳴!」
「っ!?」
不意を突いた至近距離での必殺技。花騎士達の身体は遥か遠方へ吹き飛ばされてしまう。
「ぜぇ……ぜぇ……くそ……!」
(今まで三度も天地雷鳴を使ったことはない。もう疲労が限界だ)
よろよろと歩き出す雷鳴を、ブリオニア瞳が見つめている。
(追わなきゃ……でも手足がしびれて……このままじゃ逃げられる……)
思い浮かぶのは仲間達のこと。共に過ごした月日は短かったが、皆素晴らしい仲間だ。
(このままじゃ皆の苦労が無駄になってしまう……動いて……動いてよ……)
涙を浮かべてもがくが、身体はどうしても動かなかった。
その涙がポトリと地面に落ちた時、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ま、待てぇ! ここは通さないぞ!」
(ヘチマさん……!?)
雷鳴の前に立ち塞がったのはヘチマ。ブリオニアと同じセオ騎士団の花騎士である。しかし彼女は戦闘が苦手なため、今回の決戦では主に人々の避難誘導などを行っていた。
そんな彼女が、いくら疲労しているとはいえ四天王の雷鳴に挑もうとしている。これは自殺行為以外の何物でもなかった。
「何だ貴様は……そこをどけ!」
「うっ……ど、どかない!」
(こいつ怖過ぎだよ……足も手も滅茶苦茶震えてる……あたしじゃ絶対勝てないって分かる。でも)
「ブリオニアちゃんを泣かす奴は許さない!」
(ヘチマさん……)
「おりゃあぁぁ!」
武器の桶を構え、雷鳴に突っ込んでいくヘチマ。しかし雷鳴の拳が彼女を簡単に吹き飛ばした。
「ぐぎゃぁ!」
勝負は一瞬で終わった。しかし、時としてその一瞬が命取りになる時もある。
「たぁぁぁ!」
「っ!? 貴様は!?」
剣による攻撃を何とかかわした雷鳴。その攻撃の主を見た時、流石の雷鳴も動揺を隠せなかった。
「はぁ……はぁ……あんたが雷鳴ね。ここで倒させて貰うわ!」
現れたのはアブラナ達だった。
(こいつらがいるということは氷雪は……)
アブラナの攻撃を避けながら、雷鳴は部下にテレパシーを送った。しかし返事が返ってくるはずがない。どちらも倒されているのだから。
(氷雪……炎武……くそ! どいつもこいつも!)
「アブラナさん! 雷撃が来ます!」
雷鳴の魔力をオジギソウがいち早く察知した。しかし、
(くっ……避けたくても脚が思うように動かない……)
「ぐぅぅぅ!」
「オジギソウ!?」
オジギソウはアブラナの前に立ち、雷鳴の攻撃から彼女を守った。
「私に構わないで! 雷鳴に攻撃を!」
膝を屈するオジギソウ。アブラナは一瞬戸惑いながらも、叫びを上げて雷鳴に突撃していった。
「だぁぁぁ!」
「くっ……この……!」
(何という力だ……脚が一本折れているんだぞ!)
雷鳴は恐れ始めた。何度攻撃しても立ち上がってくる人間が。自分を犠牲にしてでも勝とうとする人間が。
「うぉぉぉ!!」
「がっ……!」
雷鳴の渾身の一撃に、アブラナは吹き飛ばされ岩に叩きつけられた。
「……今なら!」
その声に振り返った雷鳴が見たもの。それは直径十mを超える巨大な氷の塊だった。
「な、何だこれは!? ぐ……ぬぉぉぉぉ!」
その衝撃に大地は抉れ、無数の氷が砕け散っていく。
「はぁ……はぁ……や、やりました……!」
肩で息をするハツユキソウ。アブラナとオジギソウが敵を引き付けている隙に、魔力を溜めて巨大な氷の塊を作っていたのだ。
「やりましたよ、アブラナさ……えっ……?」
勝利を確信し喜ぶハツユキソウ。しかしそれも束の間。白い氷煙の中、ぼんやりと大きな影が見える。そこから一発の雷魔法がハツユキソウの身体に直撃した。
「が……はっ……!?」
「くそ……この俺がこの程度の花騎士に……ぐおぉっ!?」
再び逃走を図ろうとした雷鳴。しかしその巨体にヘチマが捨て身の突進を試みる。
「離せ! くそっ、雑魚が!」
「ぐぅぅ……離さないぃ……!」
(一秒でも長くこいつを引き留める。ブリオニアちゃん達が追い詰めたんだ、絶対に逃がさない!)
「このっ!」
「ぐ……あぁっ……」
雷鳴の巨大な拳に叩きのめされ、ヘチマはついに膝をついてしまった。
「邪魔しおって……貴様はこの手で殺す……」
雷鳴が手をかざしたその時、
「っ!?」
宙を舞ったアブラナの紫色の瞳と、雷鳴の黒い複眼が向かい合う。
(こいつ、まだ動けるか!? まずい、避けられん!)
(これが最後の一撃。絶対に決める!)
「たぁぁぁ!」
アブラナの剣が雷鳴の核に達する。だが、
(浅い! 完全に破壊し切れない! くそぉ……)
無念を抱きながら、アブラナは地面に落ち、気を失っていった。
「何というしぶとい奴らだ……だが俺は勝った。ここを逃げ切れば身体も全快させられる。結局は生きている者こそが勝者なのだ」
大地が抉れ、辺りには焦げ臭いにおいが充満している。建物もバラバラに切り刻まれているのが、戦いの凄惨さを物語っている。
その中を、雷鳴は自身の勝利を確信し歩き始めた。ある者の存在を忘れて。
「うぉぉぉぉ!」
「っ!? き、貴様!」
剣が雷鳴の核に突き刺さる。
アブラナ達が粘ってくれたおかげで隙が出来た。その隙に足に加護の力を集中させ、一気に距離を詰めたのだ。
(捉えた! このまま押し込む!)
しかし雷鳴の核は他の兵士とは比べ物にならない程硬かった。握力を失いかけている私では、核を破壊し切るのは不可能に近い。
(それでも必ず押し込む! 腕が折れれば足で、足が折れれば口で押し込め! 絶対に諦めるな!)
「放せ! 放せぇ!」
雷鳴も必死の抵抗を見せる。何度も手を放しそうになり、その度に自分を鼓舞した。
「はぁ……はぁ……放すわけにはいかない!」
「嬢ちゃん! うぉぉぉぉ!」
「っ!? テリー団長、ロザリオ団長!?」
気付くと二人の手が私と共に剣を握っていた。
「花騎士や嬢ちゃんがこれだけ頑張ったんだ、俺達だけ寝てられねぇ!」
「共に戦いましょう! 生まれた場所は違えど、我々は同じ志を持った騎士団長!」
「二人とも……はい!」
しかし三人分の力を乗せても、雷鳴の核を破壊するにはまだ足りなかった。そして、
「天地……」
雷鳴の身体にエネルギーが溜まってくる。
「!? まずい、必殺技が来る!」
「ロザリオ、絶対に手ぇ放すんじゃねぇぞ!」
「あなたこそ!」
「雷鳴!」
遂に雷鳴の必殺技が放たれた。最初より威力は落ちているとはいえ、この至近距離で喰らえば命の保証は無い。
「ぐぅぅぅ!」
テリー団長の右腕とロザリオ団長の左腕が吹き飛ばされた。それでも彼らは剣を放そうとしなかった。
(駄目だ、このままでは三人とも死ぬ。死なせるわけにはいかない……この仲間達だけは! 力を……私にもっと力を!)
その時、私の中で力が溢れてくるのが分かった。暖かく、どこか懐かしい力。創世の力が。
「いけぇぇぇ!」
渾身の力を込めた一撃が、遂に雷鳴の核を……破壊した。
崩れ逝く身体。霞んでいく視界の中で、雷鳴は団長達の姿を見上げた。
(負けたのか、俺は……こんな奴らに……)
そこで脳裏に浮かんできたのは、作戦の前に言われた黒影の言葉だった。
『貴公は人間を甘く見ている。だが百年程度しか生きられないからこそ発揮できる力というものもある』
(分からん……何故俺は負けた? 強さこそ存在価値なら、負けた俺にはもう存在価値は無いのか? 教えてくれ、黒影、破界王!)
だがその心の叫びは誰にも届くことはない。焼き払われた大地の中、雷鳴は一人静かに死んでいった。
実は雷鳴の過去編とか書いてみたかったのですが、オリキャラの話なんて誰も読みたくないだろうし、カットしましたw
雷鳴は、というか破界王軍の兵士はほとんどですが、強さこそが存在価値だと思っています。人間のように命を繋ぐことの出来ない生命体ですので、親のような存在の破界王に尽くすことにしか、存在意義を見出せないんですね。
少し悲しい生き物かも知れません。(だからと言って侵略は許されませんが)
次回はバナナオーシャン編のエピローグです。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。