ロリ花騎士になった団長   作:イッチー団長

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今回はバナナオーシャン編のエピローグ。
バトルばかりでは息が詰まりますからねぇ……。


13話 戦士達との別れ

「団長、はいあ~ん」

 私の目の前には豚の丸焼きが置かれている。ポーチュラカはそれを慣れた手付きで切り分け、一切れを私に差し出した。

「あ~ん……」

「どう? 美味しい?」

「美味いが……病人にはもっと消化の良い物の方が良いんじゃないか?」

 病室の白いベッドに豚の丸焼き、というのも不思議な組み合わせだ。もしかしたらバナナオーシャンでは普通なのかも知れないが。

 

「そんなことないんだよ。団長の身体は疲れてるし、疲れを取るにはお肉が一番なんだよ。はい、もう一口」

「あ~ん……」

 そうこうしているうちに、ドアが勢い良く叩かれた。

 

「だんちょ、溜まってないか~! ランタナが下の世話してやろうか?」

「団長さん、お暇じゃありませんか? 絵本を描いてきたので読み聞かせしてあげますね」

 病室だというのにやたらと賑やかになる。

「二人ともお見舞いありがとう。それとランタナ、そういうことは人前で言うんじゃない」

 

 しかしあの激戦を終えたばかりだというのに、元気いっぱいの彼女達には感心すら覚える。

「一番凄いのは団長さんですよ。動けない程の大怪我だったのに、三日でここまで回復しちゃうんですから」

 現在リハビリも最終段階まで進んでいる。もう少しで退院出来るらしい。

 医師も驚いていたが、どうやら世界花の加護と創世の力が回復を手助けしているらしい。

 

「クコさんやワレモコウさん、コマチソウさんが待ってるよ」

「そうだな……」

 窓の外に見える青すぎる空。その中に、ブロッサムヒルに残ってくれた花騎士達の顔が浮かんで見えた。

 

 

 

 コンコン。今度は規則正しいノック音が聞こえてくる。中に入ってきたのはブリオニアとヘチマだった。

「女の子団長さん、これお見舞いの品」

「ありがとう……入浴剤?」

「あたしが作ったんだ。疲労回復の効能があるよ」

 

「私達は今日の内に発つよ」

「そうか……セオ団長にも宜しく頼む」

「うん。女の子団長さん、ありがとう」

 ブリオニアが頭を下げると、長い黒髪がふわっと舞った。

 

「あなた達がいなければ雷鳴に勝つことは出来なかった。本当にありがとう」

「礼を言うのはこちらの方だ。君がいなければ勝てなかった。辛かっただろうが、良く頑張ってくれた」

「あっ……う、うん……」

 ぷいとそっぽを向いてきまった。何か気に触ることをしてしまったのだろうか。

「ブリオニアちゃん、顔真っ赤~」

「う、うるさいな……」

(こういうとこ、ちょっとセオ団長さんに似てるな。団長って皆こうなのかな?)

 

「またね~!」

 ポーチュラカ達もブリオニアに手を振る。ブリオニアとヘチマは一礼をして部屋から出ていった。

 

(また……か。確かに、あなた達とはまた一緒に戦える気がする)

 

 

 


 汽笛の音が鳴り響く港。ブロッサムヒルへ向かう船がもうすぐ出発しようとしていた。

「嬢ちゃん!」

「テリー団長、ロザリオ団長!」

 船に乗ろうとしたところで、二人の団長が駆け寄ってきた。

 

「お見送りに来ました。あなたには随分お世話になったので」

「いや、お世話になったのはこちらの方です」

「謙遜すんなって。嬢ちゃんがいなけりゃ、今頃バナナオーシャンは……とにかく、俺達は嬢ちゃんに感謝してるんだ」

 そう言われると、何だか照れ臭くなってしまう。前髪を弄りながら、彼らの笑顔をただ見つめていた。

 

「またバナナオーシャンに遊びに来て下さい。その時は、二人でお茶でもしましょう」

「おいおい、こんな時までナンパすんなよ」

「普通の挨拶です。これがナンパに感じるのは、あなたの心が汚れている証拠ですよ」

「何だと!?」

「はは……」

 バチバチと火花を散らす、二人のバナナオーシャン団長。

 戦いで片腕を失くしたのに随分と元気だな、と感心してしまう。

 

「ブロッサムヒルに何かあった時は、必ず助けに行く」

「それが騎士団長としての役割ですからね」

「二人とも……ありがとうございます!」

 

 

 

 手を振る二人と、バナナオーシャンの大地が遠ざかっていく。青く広い空に汽笛の音が響き渡る。

 繋がっているのだ、バナナオーシャンの空もブロッサムヒルの空も。そう思うと、私の心も青空のように透き通るのが分かった。

 

 

 


『四天王よ』

 謁見の間。闇に覆われ時の流れからも隔絶されたこの場所に、破界王の地鳴りのような声が響き渡った。

 

「紅毒、ここに」

「蒼龍、ここに……」

「黒影、参上致しました」

 現れたのは破界王の側近中の側近、破界四天王の三人。

 

『雷鳴が死んだ』

「ほう……」

 黒影が感心したような声を漏らす。そこには仲間が死んだことに対する悲哀は微塵も感じられなかった。

 

「雷鳴が攻めていたのは、確か春庭でしたな。まさか雷鳴を倒せる戦士がいるとは……」

「雷鳴……」

 ただ一人悲しそうな吐息を漏らしたのは、碧い外骨格を持つ四天王、蒼龍だった。

 

「蒼龍、そう哀しむな。勝つも負けるも運命の赴くまま。ここで負けるのなら、奴は所詮この程度だったということだ」

「……僕は君のようには割り切れない。何千年生きようと、仲間が死ぬのは慣れない」

 蒼龍の碧い複眼が黒影を見つめる。

 

 四天王・蒼龍。八千年前から破界王に仕えてきた、黒影に次ぐ古参。そして実力も四天王NO.2である。事実、四天王は何度もそのメンバーを変えてきたが、この二人だけは常に四天王の、破界王軍の頂点として君臨している。

 

 長く生きるということは、時に彼らに個性を与える。黒影や雷鳴が強さを求めたように、蒼龍には哀しみの心が生まれた。

 仲間の死を悼む心。戦い死ぬだけの彼らにとって、心とはバグのようなものなのかも知れない。しかしそれでも彼が存在を許されているのは、その強さ故か、それとも……。

 

「それで、春庭侵攻の後任はどう致しますか?」

 二人の会話を遮ったのは紅毒。その語尾には、次は自分を指名して欲しいという期待に満ちたものが感じられた。

 

『紅毒よ、期待通り次の指揮は貴様に任せよう。黒影、蒼龍にも動いてもらう』

(四天王全員を動かすとは……春庭にはそうさせる何かがあるということか。面白い)

『各々、自身の責務を全うせよ』

「「「はっ!」」」

 

 四天王が消えた謁見の間の中、破界王は一人思案に耽っていた。

(千年ぶりか、四天王に欠員が出るのは。そして創世の力を持つ者が二人……いや、三人。今のうちに潰しておかねば)

 

 

 


「ただいま、団長さん」

 セオ団長の執務室。ブリオニアは再会を喜びながらも、努めて無表情に彼に話しかけた。

 

「おかえり、ブリオニア、ヘチマ。良くやってくれたね。君達のおかげで危機を乗り切ることが出来た」

「そ、そんなことはない……皆が頑張ってくれたから……」

 頬を赤らめるブリオニアに、ヘチマがその頬をツンツンとつついた。

 

「もう、謙遜しちゃって~。ブリオニアちゃんの指揮のおかげで、たくさんの市民が命を救われたんだから、もっと誇ろうよ」

「あ、ありがと……でもそれを言うならヘチマさんも……」

 二人を交互に見て、セオ団長は優しい笑みを浮かべた。しかしそれも束の間のこと。彼の表情はすぐに真剣なものになった。

 

「二人の活躍、是非聞かせて貰いたいが、我々にはやはり時間が無いんだ」

「次の襲撃があるの? 場所は?」

 セオ団長はゆっくりと口を開いた。

「ここ、ベルガモットバレー」

「!?」

 

 

 


「見えてきたよ、団長」

 ガタゴトと揺れる馬車が病み上がりには辛い。しかしその辛さも、見慣れた城を目にしたことですっかり治まってしまった。

 

「帰ってきたんだな……」

 

 

 

「ランタナ達の凱旋じゃあ~!」

 門が開く。庭には花騎士の姿は無かった。帰る日時を伝えていないので当然か……。

 

「っ!? 団長!」

「うぉ!?」

 腹に何かが飛び付いてきた。しかしその正体はすぐに分かった。

「クコ……ただいま」

「おかえり、団長! クコ、心配。とても心配」

 声が震えるクコの頭を撫でる。

「心配かけてすまなかった」

 

「ご主人!?」

「わぁ~! 団長だ~!」

 ワレモコウとコマチソウも駆け寄ってくる。彼女達の顔を久しぶりに見ると、私の身体の痛みはみるみるうちに消えてしまった。




次回、新章突入!
コンボルちゃんとソリダゴの出番がやっと回ってきます。お楽しみに。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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