14話 湖底にて
ロータスレイク。一面湖の広がるこの地で、コンボルブルスとソリダゴはある二人を待っていた。
「お待たせ致しました~」
「キャロットさん、バードックさん」
店員のような掛け声を挨拶したのは、金髪ツインテールの少女、キャロット。そしてその後ろを仏頂面で歩いてきたのはバードック。どちらも花騎士であり、遺跡調査の専門家でもある。
「ごめんね、バナナオーシャンであんな戦いがあった後に……」
「大丈夫。どこだって大変なのは同じ。それなら私は、私に求められることをするだけ」
「さっすが、バードック博士!」
「き、キャロ……茶化さないで……」
二人の掛け合いに微笑みながらも、すぐにコンボルブルスとソリダゴは真剣な表情に戻った。
「調べて貰いたいのは湖底なんだ。遺跡とは少し違うと思うけど……」
ロータスレイクは水中で一つの都市が成り立つ程、豊かな水源に恵まれた国家である。しかしその中には調査の進んでいない水中遺跡が数多く存在している。
ソリダゴをリーダーとしたコイソリハ隊、そして彼女達が憧れて止まないトリトニア調査隊は、それらを日々調査している部隊だ。
「湖の中って、こんな感じなんだ。興味深い」
バブルロータスに乗って湖を深く深く進む一行。そして見えてきたのは……。
「あれは……!」
「凄い大きさ……それにどんどん広がっていってる……?」
彼女達が見たのは、一つの都市に匹敵しそうな程の巨大建造物。構成するのは金属であり、電気系統でアームやコンベアを動かしている。
「何これ……」
現在の春庭の技術では到底再現不可能なこれらの建造物に、四人は開いた口が塞がらなかった。
その建造物に降り立つ。水中だが結界が張り巡らされているため、水がその中に入ってくることはないようだ。
「大丈夫。酸素はあるみたい」
「発見した時はこんなに大きく無かったんだけど」
「見て」
バードックが指差したのは、小型の自動飛行するロボット。それら三つが円を描くように連なると、
「構造物が現れる……」
そこを軸に機械が転移してくる。
「自動で広がってるんだ……」
「これは明らかに敵軍の装置。いくらか持ち帰ってガンライコウさんに調べて貰おう」
「そうはさせませんよ~」
真剣な場にそぐわない、子供のような可愛らしい声が聞こえてきた。コンボルブルス達が振り向くと、そこにはツインテールの少女のようなシルエットがあった。しかし良く見るとツインテールのようなものはアンテナで、全身銀色の金属で覆われたロボット、と言った方が近いだろう。
「初めまして~! 私は破界王軍Aランクの兵士、
愛願と名乗った兵士は、頬に手を当てて首をかしげて見せた。見た目に不釣り合いなアイドルのような仕草に、四人は一瞬困惑したが、すぐに武器を構えた。
「やめましょうよ物騒なことは~。そんなことよりお話しましょ♪ あなた達みたいな可愛らしい方々とお話するのが、私は大好きなんです」
「あなた達の目的は?」
愛願の話には耳を傾けず、コンボルブルスは冷静に尋ねた。
「目的……春庭を支配することですね。これはそのための装置なんです」
「それじゃああなたは敵。話なんて出来ない」
「そんなこと言わないで下さいよ~。大丈夫、あなた達は殺したりしませんから」
「信じられるわけない」
「ホントですって! 私の直属の上司、紅毒様は特にお優しい方なんです。気に入った人間さんは、殺さずに愛玩動物として飼ってあげるんです」
「愛玩……動物……?」
そのおぞましい単語に、特にキャロットは背筋をぞわぞわと震わせた。
「そう! まずは逃げられないようにお手々とあんよをちょん切って~、そして脳みそをちゅるちゅるして壊すんです。そうすると、自分では何も出来ない惨めで可愛い愛玩動物の完成! とっても可愛く「ハッピーメジャー、お願い」
愛願の言葉を遮り、バードックのオトモ、ハッピーメジャーのレーザーが彼女を襲う。間一髪でそれを避けた愛願は、プンプンと音を立てて怒り始めた。
「何するんですか~! 人が折角面白い話をしてあげてたのに~!」
「あなたの話は聞く価値が無いと判断した。それにキャロが引いてる」
「まったく! この話の面白さが分からないなんて、やっぱり野蛮な生き物ですね!」
愛願を囲むように、無数の触手が現れる。
「では、あなた達は紅毒様への貢ぎ物にしましょう。頭は悪いですが、見た目はとても可愛らしいですし、きっとお気に召すはずです」
「来るっ!」
「私が前に出る!」
コンボルブルスが槍を手に駆け出した。
(速い!? でも……背中がガラ空きですよ)
触手はコンボルブルスの隙を狙う。しかしその触手はソリダゴの鞭によって全て叩き落された。
「ほう……いいコンビネーションですね。それでこそ捕まえがいが「風穴を開ける!」
愛願が言い終わる前に、コンボルブルスの必殺技「ラストディスペアー」が彼女の上半身を粉砕する。しかし、
「手応えが……無い!?」
コンボルブルスは困惑していた。それまで戦ってきた敵は全て胸の部分に核があった。しかし愛願は上半身全てを破壊したというのに核が壊れた様子が無い。そして身体は再生しようとしていた。
「ふふ……いい攻撃ですね♪」
(何なのこいつ……)
愛願には口も眉も無い。しかし何故か人間以上にころころと表情を変えていくように感じる。
(と、とにかく核を探さないと……そのためには)
「ソリダゴ!」
コンボルブルスは走り出すと共にソリダゴに目で合図を送った。
「おっと、あなたの狙いは分かってますし、今度は避けさせて貰いますね……えっ!?」
(う、腕が引っ張られてる……!)
愛願の両腕を縛り上げていたのはソリダゴの鞭だった。
「行け、コンボルブルス!」
「回して……貫く!」
二度目の必殺技が、今度は愛願の下半身に炸裂する。
「こっちにも……核が無い!」
「はずれです。残念でした♪」
ケタケタと不気味な笑い声を上げ、愛願は上半身だけで宙を飛び回った。
「それなら……ハッピーメジャー!」
ハッピーメジャーが彼女に追従し、その上半身をレーザーで吹き飛ばした。
「ありゃあ……頭だけになっちゃいましたね」
「余裕でいられるのも今のうちだよ!」
浮游する愛願の頭は、キャロットの槍によって叩き割られた。
しかし愛願の残った細胞はモゾモゾと動き始める。それらは集まり、元の形に戻ろうとしていた。
(どうすれば……っ!?)
その時、コンボルブルスが何かの気配を察知した。それは後方からとてつもない速さで迫って来ている。
「ぐぅ……!」
金属同士がぶつかり合う音が鳴り響いた。その音にその場の全員の視線が集まる。
「へぇ、受け止めたか。やるな、お前」
(凄い力……腕が痺れる……)
コンボルブルスに攻撃を仕掛けた張本人は、空中で一回転をして着地した。
「愛願と遊んでくれたらしいな。俺は
「同じ個体……?」
花騎士達がそう思う程、愛願と破沙羅は容姿も声も酷似していた。しかし愛願が可愛らしい口調だったのに対し、破沙羅は男性的でぶっきらぼうな口調で話している。
そして武器も全く異なっていた。破沙羅は両手剣を出現させ、花騎士達に襲い掛かってきた。
(速い! 愛願とは動きが全然違う)
コンボルブルスが何とかそれを受け止める。その隙にソリダゴの鞭とバードックのレーザーが破沙羅を狙うが、彼はそれを全て避けてしまった。
「へぇ、お前ら本当に強いな。特に銀髪のお前、名前は何て言うんだ?」
「あなた達に名乗る名前はない……ぐっ!」
コンボルブルスが言い終わると同時に攻撃が飛んでくる。
(速さだけじゃない……力も凄い……でも!)
「ぐっ……おぉぉ!」
コンボルブルスが渾身の力を込める。腕の筋肉や血管がピキピキと動く。
(っ!? 押して来やがった! おもしれぇ!)
二人の力は拮抗していた。その均衡を破るように、キャロットが攻撃を仕掛ける。しかし、
「おっと」
破沙羅の身体は高く飛び上がった。高台から愛願と共に花騎士達を見下ろしながら、ケタケタと笑い声を上げた。
「まだ戦っていたいが、俺達にはやることがあるんでな」
「さよなら~♪」
「待て! 逃がすわけ……って、うわぁ!?」
四人はいつの間にか自動飛行ロボットに囲まれていた。ロボットから電波が放たれ、そして、
「何これ~!?」
四人の姿はその場から消えていった。
「花騎士……中々面白いことになりそうだ」
「破沙羅ったら、凄い楽しそうだね~」
「おうよ!」
「ここは……」
四人がワープした先、そこはロータスレイクの地上だった。
「一瞬で転移させられたの? 凄い技術……」
バードックは感心したように呟いた。
「それにしても、さっきの機械捕まえておきたかったね。ガンライコウさんなら何か分かったかも知れないし」
「それなら問題ない。ほら、ここに」
バードックが手に持っていたのは先程のロボット。機能は停止しているようだが、大きな損傷は見当たらない。
「いつの間に……」
「ハッピーメジャーに頼んでおいた。なるべく傷付けずに捕まえてって」
オトモの土偶、ハッピーメジャーを撫でながら、バードックは誇らしげに語った。
「流石バードック博士! それじゃあ早速、ベルガモットバレーにレッツゴー!」
ソリダゴを先頭に、四人は歩き出した。行き先は渓谷風の吹く国、ベルガモットバレー。
しかしその場所で壮絶な戦いが待っていることを、彼女達はまだ知らなかった。
機械の描写とかできるわけない……一応脳内にあるのは弐瓶先生のブラム的な光景ですが、私の文章力では再現できるわけありませんでした。
まぁ適当に流して貰えれば……w
しかし今回の話の花騎士四人組好きですねぇ。オールロリのパーティとか……最高か……。この四人でほのぼの物も書いてみたい気持ちもあります。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。