ノリと勢いで書いてたら、何故かこんな展開になってしまいました……w
グリフィス騎士団。一般市民から国の上層部までその名を轟かせる、現代最強の騎士団。国家規模の危機を救ってきたことも数知れず。
破界王との戦いでもその活躍が期待されていたが、その騎士団長、グリフィスはバナナオーシャン戦線開戦前に意識を失い、寝たきりの状態になっていた。
彼を治そうと一流の医師達が集結したが、遂に彼が目を覚ますことはなかった。そう、バナナオーシャン戦線が終わるまでは。
「団長……」
ブロッサムヒルへ向かう馬車の中、アブラナは祈るように胸の前で両手を組んだ。
グリフィス騎士団発足当時からグリフィスと共に励んできた彼女にとって、彼は自分の命と同じくらい大切な人だった。
「アブラナちゃん、大丈夫だよ。大丈夫だから……」
彼女の手を、コオニタビラコの小さな手が包んだ。しかしその手も震えている。最も信頼し尊敬している人物が命の危機なのだ。不安にならない者はいない。
馬車が城門に着くと、小さな影が駆け寄ってきた。花騎士のイチゴだ。
「アブラナちゃん、団長さんが……団長さんが!」
普段おっとりとした彼女からは想像もつかないような慌てた様子。アブラナ達の頭の中に最悪の事態が浮かんだ。
「イチゴ! 団長がどうしたの!?」
「団長さんが……女の子になっちゃった!」
「そんな……え?」
…………
………
……
…
執務室。机の前にはピンク色の髪をした少女が立っていた。背はコオニタビラコと同じ位。長い髪をツーサイドアップにまとめている。
どう見ても可愛らしい少女だが、その落ち着いた佇まいからは、確かに歴戦の戦士の風格が漂っていた。
「アブラナ、コオニタビラコ、クマツヅラ。今回の戦いに参加出来ず、すまなかった。しかし君達のおかげでごはぁっ!?」
アブラナの正拳突きが彼女?の言葉を遮った。彼女の身体は机の上まで吹き飛び、書類の束が宙を舞った。
「アブラナちゃん、抑えて……抑えて」
コオニタビラコとクマツヅラが必死にアブラナの両肩を押さえ込む。
「ど、どうしたアブラナ……何か気に障ることがあったのかな?」
「あんたねぇ! あたし達がどれだけ心配したか……どれだけ……」
感極まり泣き崩れるアブラナ。少女、グリフィスはアブラナに歩み寄り、その小さな手でアブラナの頭を優しく撫でた。
「心配掛けてすまなかった」
「それにしても、本当に団長さんですか? 随分と可愛くなっちゃいましたね……」
花騎士達はソファーに座ったグリフィスを凝視する。ぱっちりとした赤い瞳、ぷにぷにの頬。最強の騎士団の団長とは思えない程、その容姿は可愛らしかった。ただ一つ、男性時代から身に着けている黒いマントだけが、グリフィスの面影を感じさせた。
「あたしよりちっちゃくなるなんてね。というか、その髪の毛どうしたのよ?」
アブラナが彼女のツーサイドアップを指差す。
「イチゴがノリノリでやってくれた」
「イチゴ……」
「私がこの姿になったのは理由があるんだ。バナナオーシャン戦線の前、私は夢の中で我らの主、創世の女神様のお告げを聞いた」
「創世の……女神……」
『グリフィス……グリフィス……』
優しい声が聞こえてきた。その声には、まるで今は亡き母のような温もりを感じた。
「あなたは……」
『私は創世の女神。あなた達の生命を司る存在』
『グリフィス、あなたは今春庭を襲っている危機を救うことが出来る。そのための力が、あなたにはあるのです』
「いえ、私はそんな大それた存在ではありません。一人の騎士団長です。その役割を全うすることしか出来ません」
『いいえ。あなたは自分が思っているよりも遥かに強い。しかし器が合っていないのです』
器とは身体のことなのだと直感で分かった。
『もしあなたが望むのなら、私があなたの器を作り替えます。しかしそれは辛い選択になるでしょう。良く考えてから』
「お願い致します」
迷いは無かった。どんな姿になろうとそれが
「それが誰かを救うことに繋がるのなら。一人でも多くの人を救えるのなら」
『……分かりました。これからあなたは眠りに付きます。目覚めた時、あなたの力は全て開放されていることでしょう』
「世界花の加護を受けることが出来るのは女性だけだ。それは女性が子を産み育てることが出来る存在、命を繋ぐ存在だからだと主様はおっしゃった」
「ふ~ん……良く分かんないけど、ちゃんと元に戻れるのよね?」
そう問われたグリフィスは、きょとんと目を丸くした。
「そう言えば聞かなかったな……」
「聞いておきなさいよ! 自分の身体のことでしょ」
アブラナのツッコミにも、グリフィスは冷静に穏やかに対応した。
「アブラナ、身体というのは器に過ぎないんだよ。それが変わったからといって、それに注がれているもの、私という存在が変わるわけではないだろう?」
「まぁそうだけど……」
「それより私は、アブラナの足の方が気になるのだが」
「あっ……」
グリフィスが指摘したのは包帯の巻かれたアブラナの左足だった。氷雪戦で世界花の加護を集中・爆発させた代償。それはグリフィスが禁じていたものでもあった。
「ご、ごめん団長……でもこれしか勝つ方法が無くて……」
いつも強気なアブラナも、この時ばかりは顔を俯けてしまう。
「アブラナちゃんは凄く頑張ってくれたんだよ」
「そうですよ! アブラナさんが居なければ犠牲者が出ていたと思います」
コオニタビラコとクマツヅラがフォローを入れるが、アブラナの顔は暗く沈んだままだった。
彼女達は怒られるのを恐れているわけではなかった。グリフィスは他者を怒ったことが無いような穏やかな人物である。アブラナ達が恐れているのは、約束を破ってグリフィスに失望されること。ただそれだけだった。
「アブラナ、私は自分を犠牲にすることが美徳だとは思わない。君にもよく言っているね?」
「うん……」
しょぼくれるアブラナを見て、グリフィスは優しく微笑み、窓の方へと歩いて行った。
「自己犠牲というと聞こえが良い。しかし大抵は自分を軽んじているだけだ。それでは何も見えない。自分が守るべきものの美しさすらも……」
太陽の光が彼女の赤い瞳を、桃色の髪をきらめかせる。
グリフィスの瞳は遠くを見つめていた。その大きな瞳が見つめるもの、それが何なのかは花騎士達にも分からなかった。
「春庭は美しい。そこに生きる命も。皆美しく、愛おしい。だからこそ自分の命を懸ける価値がある」
そこまで言うと、グリフィスは再び花騎士達の方へ向き直った。
「私があの技を禁止していたのは、アブラナが頑張り過ぎてしまう性格だからだよ。そしていつか自分を滅ぼしてしまうと思っていたんだ。でも、もう禁止しなくてもいいのかも知れない。君はもう見つけているだろうから。本当に守るべきものを、その美しさを」
「団長……」
アブラナの顔に明かりが差した。そして頬も赤みを増していく。団長に認められたこと、それが嬉しくてたまらなかった。
「皆、私はベルガモットバレーに向かおうと思う。会っておきたい人がいるんだ」
「あんた病み上がりでしょ。大丈夫なの……?」
「大丈夫、無理はしないよ。それにムラサキハナナとフリージアが護衛として付いてくれる。心配しないでくれ」
黒いマントを翻し、グリフィスはその足を進めた。
(おそらくバナナオーシャン戦線以上の激戦が始まる。私も少しでも力にならなければ)
その瞳は力強く春庭を、未来を見つめていた。
というわけで、最強の団長、グリフィスも女の子に。
当初は彼は男性のままで、そこまで活躍させない予定でしたが、いつの間にかこんな感じにw
例によってキャラット ドレスアップ様でイメージを作りました
【挿絵表示】
オリキャラですから、花騎士達の活躍を奪わないように上手く扱いたいです(それを言ったら主人公団長もオリキャラですが……)
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。