ロリ花騎士になった団長   作:イッチー団長

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今回は二人目の四天王との接触回。
地味に主人公団長久しぶりの登場だな……。


16話 接触、そして

 コンボルブルスから手紙が届いた。敵軍の装置を手に入れたので、その解析をガンライコウに頼むため、ベルガモットバレーに向かっているらしい。そして我々にも来て欲しい、そう書いてあった。

「ご主人、どうするです? ベルガモットバレーならモコウが案内できる?」

「そうだな……」

 あの慎重なコンボルブルスが判断したんだ。かなり重要なのだろう。これからの作戦にも影響しかねない。それならばこの目で直接見た方が良いのかも知れない。

 

「……うむ、行こう」

 私がそう言うと、クコは私の腕に抱き付いてきた。

「クコも同行。今度は一緒。団長、許可?」

 バナナオーシャン戦線の時は留守番させてしまったからな、寂しかったのだろう。

「では一緒に行こう」

「あい♪」

 

「というわけで、三人でベルガモットバレーに向かう。ポーチュラカ、後のことは任せた」

「了解だよ!」

 ポーチュラカはピシッと敬礼をした。

「だんちょ、安心しなって。ランタナに任せとけ~!」

(ランタナがいるから不安なのだが……)

 

 

 

 旅支度を整え、いざ出発だと意気込んだ矢先、

「よっし、出来たぁ! 団長、見て見て~!」

 執務室のドアを勢い良く開けて、コマチソウが飛び込んでくる。その手には試験管のようなものが握られている。これがどうかしたのだろうか。

 

「ふっふ~、これは毒薬。ようやく完成したんだ!」

 コマチソウは目をキラキラ輝かせながら語り出した。

「まず敵の身体は核が中心になってるんだけど、この核ってのが凄いんだ。人間でいう脳と心臓、その他色々な役割をこれ一つが担ってるの。その核に」

「ち、ちょっと待て。出来るだけ完結に頼む……」

 やたらと饒舌になったコマチソウを手で制する。彼女は熱中するとそれしか見えなくなる質だ。今までは害虫にその熱意が向けられていたが、どうやら破界王軍兵士の構造にも興味を持ったらしい。

 

「えっとね、つまりはこの毒薬を打ち込むと核に作用して、体中の細胞の結び付きを破壊するんだ。そうなったら、もう再生出来ないどころか、動くことすらままならなくなるってわけ!」

「本当か……凄いな……」

 そんな効果があるのなら、戦いも大分楽になるはず。特に並みの花騎士でも彼らを倒せるようになるのが大きい。

 

「ま、まだ試作段階だけどね。あれ? ところで団長はどこかお出掛け?」

 騎士団中に告知したはずだが……と頭を抱えながらも、ベルガモットバレーに行くところだと説明する。

「それならあたしも行く! 薬を作るのにベルガモットバレーの技術者にはたくさん協力してもらったし、そのお礼に。それに道中で敵と遭遇したら毒薬が試せるしねぇ……」

 コマチソウはやたらと不敵な笑みを浮かべた。

 同機は不純だが、確かに私も薬の効き目を見てみたいような気がする。

 

「……では今度こそ出発する。皆、気を付けてな」

「団長こそ。いってらっしゃーい!」

 ポーチュラカ達に背を向けて歩き出した。行き先は渓谷風の吹く国、ベルガモットバレー。しかし妙な胸騒ぎがするのは気のせいだろうか……。

 

 

 


 ベルガモットバレー、マフル高原。ガンライコウのラボはどうやらここを抜けた先にあるらしい。

 不吉な風が吹きすさぶ。敵軍や害虫に襲われる前に早く抜けてしまおう。そう思った時、どこからか私を呼ぶ声が聞こえた。

「お~い、女の子団長ちゃ~ん!」

 見ると着物姿の少女が手を振りながらこちらに近付いてくる。

 

「やぁ、久しぶり」

 朗らかな笑顔を見せたのは花騎士のヘチマ。バナナオーシャン戦線でも一緒に戦った花騎士だ。しかし彼女が何故こんな所にいるのだろうか。

「うちのセオ団長ちゃんが、君がここを通るからお迎えに行きなさいって」

 そんなことまでお見通しなのか……。

 

「これからガンライコウちゃんの所に行くんでしょ? ついでにうちの騎士団にも寄っていってよ。すぐ近くだから」

 セオ団長か。確かに彼には一度会いたいと思っていた。それにブリオニアにも挨拶しておきたいし。

 クコ達に目線を送ると、彼女達もこくりと頷いたので、ヘチマに手を引かれセオ騎士団に向かうことにした。

 

 

 

「ここが……」

 ブロッサムの城とは全く違う雰囲気に面食らう。どちらかと言うと旅館のような雰囲気がある。

 内装も木を使った古風な趣で、見ているだけで心が落ち着くようだ。

 

 書斎のような部屋に通された。ここが執務室なのだろう。中にはブリオニアと一緒に、青白い肌の青年が立っていた。

「やぁ、君が例の女性団長だね。私はセオ、この騎士団の団長だ」

「初めまして」

 痩せた腕を差し出され、握手を交わした。

 

「バナナオーシャンではブリオニアとヘチマが世話になった。ありがとう」

 そう言ってペコリと頭を下げてきた。

 恐らく年齢は20代前半だろうが、歳不相応な、ベテランのような落ち着きを感じさせる。

 

「いえ、世話になったのはこちらの方です」

 そう言うと、ブリオニアもこちらの方を向き、静かにお辞儀をしてくる。

 

 

 

「君を呼んだのは、一度挨拶をしておきたかったから……というのもあるが、あることを伝えておきたかったんだ」

「私に伝えておきたいこと……ですか?」

「あぁ。敵軍が各地でおかしな動きを見せている。コンボルブルス達が装置を発見したのもその一つだ。何かが起きてからでは遅い。私は各国の団長達に呼び掛け、警戒にあたって貰っている」

 

 セオ団長が持つ超能力、テレパシー。これを国外の団長達に飛ばすことで指令を送っているらしい。しかし、確か長距離のテレパシーは体力を消耗するとブリオニアに聞いた。やつれた頬、目の下に黒く残ったくまもそのせいなのだろうか。

「心配しなくてもいいよ、女性団長。自分の身体は自分が一番良く知っている」

 考えていたことに返答が返ってきた。心を読めるのか……。

 

「もしも全ての人間に生まれてきた理由があるとすれば、これこそが私に与えられた使命だと思う。君が戦う理由と同じだよ」

 セオ団長の瞳は炎のように熱く燃えていた。同じだ。私も彼も、手段は違えど共に春庭を守る同志だ。そう思うと、私も彼と同じ炎を灯さずにはいられなかった。

 

 

 

「それともう一つ。君が雷鳴戦で発現した創世の力。あれは敵にとって脅威となり得る。つまり敵は君を狙ってくる可能性が高い」

 雷鳴戦を思い出す。あれだけ力の差があったのを覆せる程、あの創世の力は凄まじかった。反動も凄かったが……。

 

「しかし君は我々にとっては希望だ。決して殺させない……殺させないよ、四天王、紅毒」

「っ!?」

 セオ団長の視線を辿ると、そこには深紅の異形が佇んでいた。

 何故だ、全く気配が無かった。もしもセオ団長が気付かなければ……。

 

「ほう、良く分かりましたね。気配は完全に消していたはずですが」

 四天王、紅毒。そう呼ばれた怪物は、特に焦る様子はなく、おしとやかな女性のような声で語り始めた。

「初めまして。私は紅毒。破界四天王の一人です」

 この落ち着き、余裕すら感じる。

 雷鳴と同格の相手だ。この戦力で倒せるだろうか。しかも私はまだ創世の力を自制出来ていない。戦力に数えることは出来ない。

 しかしやるしかない。花騎士達と共に武器を構えたその時、セオ団長が手で我々を制した。

 

「殺気を感じない。やり合う気はないらしい」

「しかし……」

 奴を逃がしていいのだろうか。思案していると、甲高い笑い声が聞こえてきた。

 

「ふふふ……そう、あなた達はまだ殺しませんよ。今回は予告です。殺される恐怖と向き合いながら、じわじわと弱っていく人間を見るのが、私の最大の楽しみなんですよ」

「嫌悪……」

 クコが呟く。同感だ。

 

「やはり女性団長を狙いに来たのか」

「いいえ。勿論彼女もいずれ殺しますが、今の標的はセオ、あなたですよ。あなたの超能力は危険だと破界王は判断した」

「なっ!?」

 その言葉に、ブリオニアがいち早く反応した。レイピアを構え、紅毒に一直線に突っ込んでいく。

 

「ふふ、いいですねぇ。無駄なあがきは大好きですよ」

 紅毒は一瞬で我々の背後に回り込んでいた。速い。足音が遅れて聞こえた、音を置き去りにする程の速さ。

「さぁお嬢さん、もっと抵抗してみてください。あなた達程度、いつだって殺せますからね。少しでも楽しまないと勿体ないでしょう?」

「うぐ……」

 歯軋りの音が響く。あの温厚なブリオニアがここまで怒るとは。そして私もまた、彼女と同じく激しい憎悪を感じざるを得なかった。

 

「落ち着け、ブリオニア。強い相手こそ冷静にならなければ」

「ふむ、当の本人が一番冷静ですか。これではつまらない。もっと泣き叫び、命乞いをして貰いたいものですが……」

「騎士団長に着任した時から、死ぬ覚悟など疾うに出来ている。私だけではない、他の騎士団長や花騎士も皆同じだ。自分の死を恐れる者などいない。見くびるな」

 口調は飽くまで優しいままだった。しかしそこには強い信念を感じる。病弱で細身な青年が放った気迫に、私も花騎士も、紅毒すらも気圧されてしまった。

 

「それに、君達は大きな勘違いをしている。私を殺しても全く意味は無い。私の後を継ぐ者はたくさんいるのだから」

「ふ、ふふ……何を言い出すかと思えば。あなたのような超能力者、そうそう存在してなるものですか」

「能力の問題ではない。意志の力だ。例え私が死んでも、他の騎士団長が、花騎士が、そしてブリオニアが後を継いでくれる」

「団長さん……」

 ブリオニアの表情が普段通りの穏やかなものに戻る。

 

「まあ、君達には分からないか。破界王の言いなりになっているだけで、命を繋ぐことの出来ない君達では」

「黙れ」

 一瞬で空気が変わった。机の上の本が散らばり、壁や床には亀裂が走っていく。目を背けたくなるような圧迫感は、雷鳴に勝るとも劣らない程だった。

 

「気が変わった。貴様はこの場で殺してやる」

 紅毒の手に大鎌が握られる。

(まずい……殺気が異常に膨れ上がった……だが)

 クコとワレモコウに目で合図をする。

 相手は間違いなく冷静さを欠いている。今がチャンスだ。

 

「これで……くっ!?」

 二人の魔法攻撃が炸裂した。紅毒は何とかそれをかわしたが、そこに一瞬の隙が生まれた。

「うぉぉぉ!」

「なっ!?」

 剣で彼女を背後から突き刺し、そのまま窓を突き破って外へ飛び出した。

 ここは3階。世界花の加護があれば死にはしないはず。

 

 

 

「ぐっ……おぉ……」

 受け身はとったが、あまりの痛さに悶絶する。しかし骨は無事のようだ。戦うのに支障はない。

 

「ふんっ、馬鹿め。貴様の方がダメージは大きいじゃないか」

 その通りだ。紅毒は落ちた傷も剣で刺された傷も治っている。しかし私は血だらけの傷だらけだ。

 

「だが……貴様をセオ団長から遠ざけることが出来た」

「ふむ……ふふふ、面白い。あなたの無駄な勇気を讃え、今この場は退きましょう。次会ったらセオ共々殺して差し上げますからね」

 紅毒が背を向けて走り出そうとした。その時、

「逃がすかぁぁ!」

 コマチソウが建物から飛び出してきた。彼女と共に、私も剣を構え突進する。

 

「ふん、逃げられますとも」

 紅毒が指を鳴らすと、5体の兵士が現れる。しかしどれも雑兵。

「この程度で足止め出来ると思うな!」

 私が奴らの胸の辺りを斬ると、緑色の血が激しく吹き出した。それは私の身体にかかり、そして……。

「ぐぅぅぅ……!」

「団長!?」

 

(熱い……灼けるように熱い……)

 何が起こったのか理解出来なかった。ただただ、身体の熱さと痛さに、私はうずくまってしまう。

「これ……毒!?」

「こ、コマチソウ……私はいいから奴を……」

 こうしている間にも紅毒は遠ざかっていく。コマチソウも全力で追おうとしているが、間に合うかどうか。

 

 

 


(ふふ……まだ隠そうと思っていた奥の手ですが、ここで使うことになるとは……中々楽しめそうですね)

 追手を撒ける。そう確信した紅毒は正面を見据える。その視界に映ったのは、一人の小さな少女。桃色の長い髪に騎士団制服のような服装。その上に黒いマントを羽織っている。

(花騎士か……? ここで足止めを喰らうのは少々面倒ですね。どこか他の道は……っ!?)

 彼女が思案している途中、桃色の少女は尋常ではないスピードで紅毒の眼前に達してしまった。

 

「な……貴様……は……」

 次の瞬間、紅毒の身体はバラバラに斬り刻まれていた。




紅毒は戦闘能力自体は雷鳴より下ですが、色々卑屈な手が多いので、総合的な厄介さでは彼を上回るレベルかと。ステルス能力とかもありますからねぇ……。

最後に出てきた少女は前話のあの人です。この時点では味方陣営でも最強格のはず。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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