ロリ花騎士になった団長   作:イッチー団長

2 / 19
あまりTSものっぽさが無い第2話。
新たな敵もだんだんとその姿を露わにしていきます。

敵側の設定を考えるのが面白いです。厨二心をくすぐるというか……w


2話 新たな戦い

「いくぞ、コンボルブルス!」

「うん。いつでも来て!」

 訓練場の中。コンボルブルスは訓練用の槍を、私は刀を構える。

 ゆっくりと腰を下ろし、一気に間合いを詰める。

 

「とっ!」

 訓練用の木製の武器とはいえ、花騎士の力が加わるとその威力は絶大なものになる。

 腕にビリビリと痺れる感覚を感じながら、コンボルブルスに連撃を加えていく。

 

 何とか力を制御出来るようにはなってきたが、未だに花騎士に攻撃を与えることは出来ないでいる。

 リーチの差はあるだろうが、一番はその動きの無駄の多さだ。私の攻撃を最小限の動きでいなすコンボルブルスを見ると、余計そう思い知らされる。

 洗煉されている。そう思える程、彼女の動きは無駄が少なかった。

 

「それならっ!」

 コンボルブルスの攻撃を避けるために、前のめりになりながら身体を回転させる。それと同時に彼女の足元を狙った。

「甘いっ!」

「ぐおっ!?」

 背中に激烈な痛みが走った。コンボルブルスの長い槍がしなりを効かせながら私の背中を強打したのだった。

 

 

 

「ご、ごめんね団長さん……いい動きだったから、つい力が入っちゃった」

 ヒリヒリ痛む背中を、コンボルブルスの小さな手がそっとさすってくれる。

 しかしコンボルブルスを本気にさせたのなら、以前よりは格段にレベルアップしてると言ってもいいだろう。そろそろ実戦も交えたいところだ。

 

「はい団長。漢方、処方。強靭、肉体、生成」

 漢方を差し出しながら、クコがぽんぽんと自分の膝を叩く。枕にしろということだろうか。女の子になってから、恋人というより妹のように扱われている気がする。

 

「……早く強くならなければ」

 クコの膝に頭を預けながら、ふとそんな言葉が漏れ出した。

「焦り、禁物。マイペース、重要」

「うん。たくさん頑張ってるし、これ以上無理することはないと思う」

 しかし、敵は待ってはくれない。早く花騎士たちの戦力にならなければ……。

 

 

 

 一方その頃、ワレモコウとコマチソウは数人の花騎士を連れ、ブロッサムヒルとリリィウッドの国境付近にある森の中に調査に来ていた。

 

「何かおかしいなぁ……この辺りってもっと害虫が多かったと思うんだけど」

 実際この日、彼女たちの部隊は一度も交戦をしていなかった。それどころか、一体も害虫の姿を見ていないのだった。

 

「……あっ、あれ見て下さい!」

 花騎士の一人が指さした方向。そこには身体を半分だけ切り取られた害虫の姿があった。

 

「死んではいないけど、もう動けないだろうね」

 ワレモコウは静かに害虫に近づき、その切り口をじっと見つめた。

「……凄い切り口です? 花騎士でもここまで綺麗に斬ることは不可能?」

 と、その時だった。

「きゃぁぁぁ!」

「っ!?」

 

「どうしたの!?」

「あ、あれ……」

 腰を抜かした花騎士が指さした方に、一つのシルエットがあった。遠くからでは人間に見えたシルエットは、近づくにつれて徐々にそのおどろおどろしい姿を露わにしていった。

 

「怪物……?」

 害虫でも動物でも、もちろん人間でもない。緑色の外殻に覆われた異形の怪物。そう形容するしかない生物が佇んでいた。

 

「ニンゲン……フラワー……ナイト」

「し、喋った!?」

 動揺する花騎士たち。ただ一人ワレモコウは、冷静に怪物と向き合っていた。

 

「あなたは誰です? 何か目的がある?」

「ハカイオウ……シモベ……モクテキ、シンリャク」

 言い終わると同時に、怪物は花騎士たちに向けて走り出した。

「く、来るっ!」

 

 

 

 怪物が手の形状を鋭い鉤爪のように変化させる。

「きゃっ!」

 花騎士の一人にその手が振り下ろされる。何とかそれを武器の剣で受け止めた彼女だったが、

「っ!? 避けて!」

 その剣にはヒビが入り、やがてくだけ散った。鉤爪が彼女に到達する直前、コマチソウの突進が怪物に当たり、その攻撃は風を切った。

 

「危なかった……」

「あ、ありがとうございます」

 

(今は戦力が少ない……撤退するしかない……?)

 ワレモコウがコマチソウに目で合図を送る。コマチソウはコクりと頷き、カバンをゴソゴソと漁り出した。

 

「よし、爆弾に煙幕に毒薬、全部喰らえ!」

「!?」

 怪物が怯んだ隙に花騎士たちは撤退を始める。しかし、

「はやっ!」

 怪物のスピードは花騎士たちを大きく上回っていた。みるみるうちに距離が詰められていく。

 

「皆、先に行って! あたしが足止めする!」

 殿を務めていたコマチソウが立ち止まり、怪物の方へ向き直る。

「でもコマチソウさん……」

「大丈夫。あたしはこの中で一番速いし、一人だけなら逃げ切れるよ」

 心配する花騎士に笑顔で答えるコマチソウ。しかし胸の奥は不安でいっぱいだった。

 

(害虫の攻撃パターンなら大体分かるけど、相手は未知の敵。逃げるのだって簡単じゃない……)

 心臓の高鳴りを抑えながら、コマチソウは迫りくる怪物と対峙していた。

 

 

 

「とぉりゃ!」

「フンッ!」

 二人の武器がぶつかり合い、火花が散る。しかしパワーは怪物の方が上なのか、コマチソウはだんだんと押されていく。

 

「そこです!?」

「グッ!?」

 ワレモコウ必殺の『ソウルウェーブ』が怪物を捉える。

 

「ワレモコウ!?」

「皆は逃がしておいた? 無駄に被害を広げる必要はないです?」

「まったく、ワレモコウも物好きだね」

 ニッと笑い合い、二人は怪物に向き直る。

 

「傷が……消えてる?」

 ワレモコウの付けた胸元の深い傷跡がみるみるうちに修復されていく。

「ムダダ……」

「く、来るよっ!」

 

「たりゃぁ!」

「甘いです?」

 二人の花騎士の攻撃は何度も怪物に直撃するが、その度に怪物の身体は修復される。花騎士ばかりに疲労がたまっていく。

 

「はぁ……はぁ……これじゃジリ貧だね。どこかに弱点があればいいんだけど……」

 既に肩で息をしている二人。その時、茂みの方から音が聞こえてきた。

 

「たぁぁっ!」

 茂みから飛び出してきた人影が、空中で回転しながら怪物の腕を切り落とした。

「大丈夫ですか!?」

 オレンジ色のポニーテールが可憐に揺れた。

「サントリナ!?」

 

 

 

「近くで戦闘音がしたので来てみたんです。……この怪物は?」

「分からないです?」

「分かってるのは友好的な生き物じゃないってことだけかな」

 

「ハカイオウ……スプリングガーデン、シンリャク」

「ハカイオウ……さっきもそんなことを言ってたような……」

「春庭を侵略……そんなことは絶対させません!」

 サントリナが目にも止まらぬ速さで怪物の目前に迫り、もう片方の腕も切り落とした。

「ムダダ」

 しかし怪物の両腕は瞬時に再生してしまう。

 

「再生能力ですか……それなら再生できない速さで斬り続ければ!」

 サントリナの連撃が始まる。怪物の固い外殻がまるで豆腐のように簡単に切り刻まれていく。

「グッ……ガハッ」

 再生しそうになると、その部分を瞬時にサントリナの剣が切り裂く。怪物の身体の破片が辺りに飛び散っていく。

「す、凄い……」

 

 彼女の戦いを見守っていた二人が息を飲む。

 未知の怪物をも全く寄せ付けない、圧倒的な剣技。どんな敵にも臆することのない勇敢さ。これこそがサントリナが「伝説の花騎士」と呼ばれる所以だった。

 

 

 

「ガァ! ガァァァ!」

 ズタズタに切り刻まれ、もはや原型もなくなった怪物が倒れ込む。その身体の中から、銀色の小さな球体が浮かび上がった。

「あれは……取り敢えず採取しとこ!」

 コマチソウの虫取り網がその球体を捕獲する。

 

「うわっ何か動いてる!? こら、暴れるな!」

 何とか球体を抑え込むコマチソウ。

 動き回る球体とは対照的に、怪物はピクリとも動かなくなっていた。

「こっちは死んでるです……?」

「いや、もしかしたら……」

 

 

 

「団長さん!」

「ど、どうしたんだそんなに慌てて」

 訓練を終え、クコとコンボルブルスと執務室で一休みしていると、調査に行っていた数人の花騎士たちがやってきた。顔色を変えて、何やらただならぬ様子だった。

 

「変な怪物が……コマチソウさんとワレモコウさんが戦ってて……」

「怪物……」

 そこで先日の夢を思い出す。「新たなる脅威」。もしそれがその怪物のことだとしたら……。

 

「よし、その場所に救助に向かおう」

「それには及ばない?」

 執務室に入ってきたのはワレモコウ達。

「無事だったか」

「サントリナが来てくれなかったら危なかったけどね」

 

「ご主人、新たな戦いが始まる?」

 コクりと頷く。

「とにかく上に報告しよう。我々だけで解決できる問題ではない」

 

「団長、あたしはこれを調べるよ」

 コマチソウが持っているのは怪物の手足と……銀色の玉か。

「怪物の身体からこれが出てきたの。もしかしたらあいつらの弱点が分かるかも」

 

 

 

≪???≫

『四天王よ……破界四天王よ……』

 地響きのような声が、闇の中に響き渡る。

 その声に呼応して現れたのは三つのシルエット。

 

「雷鳴、ここに」

紅毒(べにどく)、参りました」

「……蒼龍」

 

「我々だけか? 黒影(こくえい)はどうした!?」

 一際身体が大きく、琥珀色の鎧のような外殻に赤いマントを羽織った者、雷鳴が声を荒げる。

 

「ふふ、貴公の目は節穴か? 私ならここにいるぞ」

「!?」

 雷鳴が驚愕し見上げると、彼の頭上数メートルの所に一つの黒い影が浮かんでいた。漆のように美しい外殻に、真っ赤な大きな複眼。彼が破界四天王最後の一人、黒影と呼ばれた者だった。

 彼はやがて雷鳴の前に降り立つ。彼に背を向けて。

 

『雷鳴よ、貴様に任せてある春庭侵攻の件、進捗はどうだ?』

 黒影を睨め付けていた雷鳴だったが、破界王の声と共にすぐさま跪く。

「はっ、各国の調査は粗方終わりました。これより侵攻を進めてまいります」

『あそこには花騎士と呼ばれる強者がいるはずだ。心してかかれ』

「はっ! しかしお言葉ですが破界王。いくら強者でも所詮は有機生命体。我々が遅れを取ることなどありえないかと」

「どうかな? そう思い上がっていると痛い目を見るかも知れないぞ?」

 黒影のその言葉に、雷鳴は再び声を荒げ始める。

 

「では貴様はこの俺が、たかだか百年も生きられない弱小生物に負けるとでも言うのか!?」

「そう怒るな。貴公は有機生命体を、人間を舐め過ぎているようだったのでな。百年程しか生きられないからこそ、発揮できる力というのもある」

「ふん、貴様はやけに人間の肩を持ちたがるな。酔狂なのは構わんが、俺まで巻き込まんで欲しいものだ」

「場をわきまえなさい。破界王の面前ですよ?」

 紅毒の一言で場は静まり返る。

 

「申し訳ありません、破界王……」

「少々お喋りが過ぎましたな。失敬」

『構わぬ。余が求めるのは結果だけだ。して黒影、貴様の方の進捗は?』

「インセクト・グラウンドの方は既に侵略を完了致しました。破界王、次のご指示を」

(確か侵略指示が出てから10日と経っていないはず……その短期間であの大国を……)

 雷鳴が息を飲んだ。

 一万年前から破界王の側近として仕える最古参であり、破界王からも一目置かれている存在。それが四天王最強の戦士、黒影だった。

 

『ふふ、素晴らしいぞ黒影。さすが我が軍最強の将』

「有り難きお言葉」

『しばらく待機せよ。場合により他国の侵攻に加わってもらう』

「了解致しました」

 

 

 

「ふっ……はぁ!」

「うん。どんどん良くなってきてる」

(嫌な予感がする……早く強くならなければ……)

 

 春庭に訪れた新たな脅威。果たして我々はこれを退け、平和を掴み取ることが出来るのか。

 花騎士たちの新たな戦いが、今始まった。




敵の幹部、破界四天王が出てきましたので、軽く紹介しておきます。

雷鳴・・・四天王一の巨体と、それに見合わぬスピードを持った戦士。戦うことが何より好きで、弱者を見下している。
紅毒・・・真っ赤な身体に青い複眼。性別があるわけではないが、くびれのある女性的なフォルムをしている。丁寧な口調とは裏腹に残虐性は四天王随一。
蒼龍・・・四天王一の穏健派。普段はあまり喋ることがない。破界王への忠誠心も四天王一と言われる。その名の通り青い外殻を纏っている。
黒影・・・四天王最強の戦士。鍛えることで強くなれる人間という生物に興味を持っている。自らを武人と名乗り、強い人間と戦うことが生きがい。

何だか凄く厨二的な感じにw
でも書いてて凄く楽しいですね。

敵のデザインは、牙狼シリーズなどの雨宮慶太さんがデザインした怪物みたいな感じをイメージして頂ければと思います。ちょっとグロテスクな感じで。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。