ロリ花騎士になった団長   作:イッチー団長

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今回も初めて書く花騎士が登場します。
短編では書けなかった花騎士をたくさん登場させられるのがいいですね。

あとオリジナル団長も何名か。
たくさんのキャラを書くのは楽しいですが、それぞれの見せ場の作り方とか難しそうですねぇ。


5話 決戦の地

「そんなことがあったのか……」

 サントリナから、炎魔法を使う個体と交戦したという報告を受けた。

 単純な戦闘力に加えて魔法攻撃……サントリナが攻めあぐねたくらいだ、相当の強敵なのだろう。

 

 恐らく、四天王と呼ばれる存在はそれよりも強いだろう。未だ敵の戦力は計り知れない。考えるだけで頭が痛くなってくる。こんな時は……。

「サントリナ、稽古をつけてくれ」

 

 

 

 訓練場の中、パンパンと竹刀の音が響く。

 

「たぁっ!」

「くっ……!」

 速い。だが見える。今まで全く反応出来なかったサントリナの攻撃に、何とか対応出来ている。

「やりますね、団長さん。それじゃあギアを上げていきます!」

(まだ上がるのか……)

 

 サントリナの動きは先程とは比べ物にならない程の速さになる。何とか食らい付こうとしたが、

「くっ、この……ぐぁっ!」

 竹刀が飛ばされた。腕がジンジン痛む。勝負ありだろう。

 

 強い。強さの底が見えない。彼女が味方で本当に良かったと改めて思い知らされた。

 

「強くなりましたね、団長さん。努力の賜物ですね」

 にっこりと微笑むサントリナ。先程まで鬼のような攻撃を仕掛けてきた彼女とは、まるで別人のようだった。

 

「なぁサントリナ、君がこの前交戦した怪物と私が戦ったら、私は勝てると思うか?」

「……」

 サントリナは答えない。彼女の頭の中に浮かんでいるのは、無残に敗北し殺される私の姿だろう。

「……そうか。まだまだ鍛練あるのみ、だな」

 

 

 

『……えるか?』

「? 団長さん、何か言いましたか?」

「いや。誰の声だろう?」

『聞こえるか、各国の騎士団長達、花騎士達』

 不思議な声だった。耳というよりも、脳内に直接届いているような……。

「テレパシー……か? 一体誰が?」

 

『私はベルガモットバレーの騎士団長、セオ。こうしてテレパシーで話しかけているのも、あなた達に協力を仰ぎたいからだ』

 セオ団長……その名は聞いたことがある。ベルガモットバレーの強豪団長だ。そして所謂第六感に優れているという噂もある。今まで半信半疑だったが、こうなると信じざるを得ない。

 

 

 

「団長、声、聞こえる?」

 執務室に戻ると、花騎士たちが集まっていた。ある者は不安そうに、ある者は期待に胸を震わせながら。

 

『皆も知っているように、今春庭は新たな脅威に晒されている。破界王とその僕たちだ。そして破界四天王の一人、雷鳴がバナナオーシャンへの侵攻を開始しようとしていることが分かった』

「バナナオーシャン……」

 ポーチュラカ達、バナナオーシャン出身の花騎士たちが喉を鳴らす。

 

『これは決してバナナオーシャンだけの問題ではない。バナナオーシャンが奴らの手に落ちれば、春庭全体が危機に陥るだろう。皆自国を守るのに精一杯だと思うが、少しでもいい、力を貸して欲しい』

 

『今こそ国家の枠組みを越え、協力し合う時だと思う。我々も副団長を含めた主力部隊を送る。あなた達の協力を願っている……』

 そこでテレパシーは途絶えた。後に残ったのは沈黙。いつもは元気なポーチュラカ達も、この時ばかりは俯き加減だった。

 

 

 


≪ベルガモットバレー≫

「げほっ! げほっ!」

「団長さん!? 大丈夫……?」

 着物を着た青年の背中をブリオニアが優しく擦る。

 

 彼は騎士団長、セオ。ベルガモットバレー指折りの強豪団長……と言う肩書きには不相応な程、彼の身体はか細く青白かった。

 

「ありがとう、大丈夫だよ。それに、春庭全体に正確な情報を伝えるなら、この方法が一番早いんだ」

「でも……団長さん、ただでさえ身体が弱いのに……」

「いいんだよ。私のこの力は、そのために与えられたんだと思うから」

 

 彼は生まれつき第六感というものに優れていた。予知や読心、そして先程のテレパシーのように。

 身体の弱い彼が騎士団長に推薦されたのも、その第六感を見込まれてのことだった。その能力を活用した戦術により、彼の騎士団の生存率は春庭一とも言われている。だからこそセオ団長の元には優秀な花騎士が集まってくるのだ。

 

「団長さん、あなたが居なくなったら私達は寂しい。それだけは忘れないでね」

「……うん。分かってる」

 

(しかし我々には時間が無い。こうしている間にも、侵略の手は着々と伸びてきている。皆の命を守るためなら、この命も惜しくはない……)

 ぜぇぜぇとせき込みながらも、セオ団長の眼差しは未来を強く見つめていた。

 

 

 


≪執務室≫

 

「団長……その……」

 ポーチュラカが何か言いたげにしている。

 彼女の考えは大体分かっていた。そしてそれに対する私の返答も一つしかなかった。

 

「行こう、ポーチュラカ。バナナオーシャンへ」

「!? いいの?」

「君たちの故郷を滅ぼさせやしないさ。上層部には私から話をしておこう」

「団長……ありがとう……」

 ポーチュラカの目元がキラリと光っていた。

 

 

 

「これより二つの部隊を編成する。決戦の地へ向かう者、ブロッサムヒルを守る者。どちらも重要かつ危険な戦いになる。ただ一つだけ言わせて欲しい。皆必ず生還すること、私から言えるのはそれだけだ」

 

 ポーチュラカ、リシアンサス、ランタナは勿論バナナオーシャンへ。私とサントリナ、イキシアも彼女達に同行することにした。

 

「クコ、ブロッサムヒル、守る。団長の居場所、守る」

「それならモコウも騎士団に残る? セオ騎士団の副団長、ブリオニアは優秀な軍師? モコウは手薄な方の防衛に当たるです?」

 ということで、二人はブロッサムヒルに残ってもらうことにした。

 

 あとはコンボルブルスとコマチソウだ。

 コンボルブルスはロータスレイクに出張に行っている。向こうでソリダゴと合流して一緒に戦っているらしい。あの国も戦力的に手一杯だし、今回の決戦は彼女抜きと考えた方がいいだろう。

 

 そしてコマチソウ。彼女は技術者や科学者が集まる会合に出掛けている。敵の身体を研究し、その弱点を探るために。

 

「ただいま~!」

 と、噂をすればコマチソウが帰ってきた。

「おかえり、コマチソウ。何か進展はあったか」

「う~ん、いまいち。もう少しで奴らの構造が分かりそうなんだけどな~」

「そうか……」

 

「それでコマチソウ、君もバナナオーシャンに行くか?」

「……いや、あたしは残るよ。ブロッサムヒルを守りながら研究を続ける」

 彼女もバナナオーシャン出身だ。故郷の危機に、帰りたくないわけがない。それでも帰らないことを選択したのは、自分の研究がいずれ役に立つということが分かっているからだろう。

 害虫のことばかり追いかけている花騎士だと思っていたが、随分と成長したのだな……感慨深くなってくる。

 

「それに~、あいつらの身体の構造って結構面白くてね~」

 ……根本的にはあまり変わっていないのかも知れない。

 

 

 


≪ウィンターローズ≫

「ハツユキソウ、アンタにも今のテレパシー聞こえた?」

「ええ、バッチリ……」

 ハツユキソウの所属するウィンターローズ騎士団の執務室。そこでアブラナとハツユキソウが話をしていた。

 

「あたしはバナナオーシャンに行く。アンタはどうする?」

「私は……」

(正直行きたくない! この前戦った敵よりもっと強いのがいるとか、怖すぎますよ! でもバナナオーシャン出身者は皆行く雰囲気になってるしなぁ……)

「い、行きます……」

「そう。流石バナナオーシャン民ね」

「そ、そうですね……あはは……」

 

「あ、そうだ。決戦に行く前に会っておきたい花騎士がいるんだった。アンタも一緒に来なさい」

「いいですけど、一体誰です?」

「この前の敵を倒すための切り札、かもね」

 

 

 

 二人の足はある部屋の前で止まった。そのドアをコンコンと叩くと、

「は~い。どなたですか~」

 と、のんびりした返事が聞こえてきた。

 

「わ~、アブラナさん、お久しぶりです~。ハツユキソウさんもこんにちは~」

 部屋の主、オジギソウは柔らかい笑顔を見せる。

「うん、久しぶりねオジギソウ……って、アンタもさっきの話聞いたでしょ? 何か緊張感ないわねぇ」

「そんなことないですよ~。故郷を守るために、私も全力で戦います~」

 オジギソウは手で軽くガッツポーズを作ってみせた。

「そう。それを聞いて安心したわ。それじゃあちょっと顔貸してくれない?」

「?」

 

 

 

 三人が向かったのは訓練場だった。フローリングの上に冷たい空気が留まっている。

 

(あれ? これってもしかして果たし合いって奴ですかね?)

「お手柔らかにお願いします~」

 ペコリとお辞儀をするオジギソウ。

「何か勘違いしてない? アンタには特訓に付き合って欲しいの。あの氷魔法使いの敵を倒すための、ね」

 

「アンタって感覚が鋭いでしょ? 魔法攻撃も察知出来ないかと思って」

「なるほど~。試す価値はありそうですね~。でもそのためには魔法が出来る花騎士さんがいないと……あっ」

「へっ?」

 アブラナとオジギソウの視線はハツユキソウに集まったのだった。

 

 

 

「それじゃあ行きますよ。……ほっ!」

 ハツユキソウが意識を集中させると、頭上で氷塊が作られる。

「どう、分かった?」

「う~ん……ごめんなさい、もう一回お願いします~」

 

「たっ!」

「もう一回」

 

「とりゃぁっ!」

「う~ん」

 

 

 

≪三時間後≫

「ぜぇ……ぜぇ……」

「どう? 何か分かった?」

「何となく、ですが。氷が作られる直前、そこだけ空気が静かになるような気がします~」

 物体が冷えるということは、分子の動きが小さくなるということだ。オジギソウはそこを感じ取って、「静かになる」と表現したのだろう。

 

「なるほどね。それじゃあ次のステップに行くわよ。氷魔法がどこからどのタイミングで来るのか、あたしに教えて。あたしはオジギソウの指示通りに動くから」

「ち、ちょっと待って下さい……」

 白い手がにゅっと現れ、アブラナの手を掴んだ。

 

「うわっ!? ってハツユキソウ、どうかした?」

「はぁ……はぁ……もう魔力が空っぽです。少し休ませて下さい……」

 ハツユキソウは両手を擦り合わせて懇願する。彼女のそんな姿を見て、アブラナは「はぁ~」とため息を漏らした。

「だらしないわね。じゃあ10分休憩ね」

「スパルタ!」

 

「仕方ないでしょ、時間がないんだから。ね、オジギソウ」

「……」

 オジギソウは答えない。しばしの沈黙の後、すぅすぅと吐息が聞こえてきた。

「ね、寝てる……」

 

 

 


≪バナナオーシャン≫

「ここが決戦の地になる……か」

 突き抜けるような空の青を見上げながら、レッドジンジャーはその白い長髪を風になびかせている。

 

「丁度いいじゃねぇか。今こそバナナオーシャンの底力を見せる時だぜ」

 彼女の後ろに立つのは、身長190cmはあろうかという大柄な男。鍛え上げられた筋肉が、白いTシャツをはち切れんばかりに押し上げている。

 

「団長は相変わらずだね。ちょっと安心するよ」

「そんなに褒めるなって。がっはっは!」

 白い歯を見せて豪快に笑う男。そんな彼を見て、レッドジンジャーの表情も柔らかくなっていった。

 

 

 

 各国の団長は、花騎士たちは、果たして春庭を守ることが出来るのか。

 それぞれの想いを乗せ、今運命の歯車が回ろうとしている。




さて、ここまでがプロローグみたいなものです(長い!)
次回から新章「バナナオーシャン戦線編」が始まります。
是非お楽しみに。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
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