ロリ花騎士になった団長   作:イッチー団長

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ついに始まった決戦。
しかし私の文章力が追い付かない!
書いていて楽しくはあるんですけどね……。


9話 難敵

(落ち着け……今までの攻撃も何とか耐えられている。決して勝てない相手ではないはず)

 目の前の敵を見据える。黒と黄色の、分厚い鎧のような外骨格。まずこれに傷を付けられなければ、核を壊すことなど出来ない。

 

「うぉぉぉ!」

「やけくその攻撃か、笑止!」

 雷鳴の手の中からバチバチと音が鳴り響く。その瞬間、頬に僅かな刺激を感じた。

(ここか!)

 辛うじて電撃を避け、そのまま敵の懐に入り込む。その脇腹に剣を突き立てたが、敵の身体には傷一つ付いていなかった。

 

「何だ、今のは? 蚊に刺されたかと思ったぞ。斬撃とは……こうやるんだ!」

 どこから現れたのか、雷鳴の手には彼の身体程の大剣が握られていた。

 一振り、それだけで空気が渦巻くのが分かった。

 

「が……ぁぁ!」

 剣で受け止めた……はずだった。しかし全身が悲鳴をあげている。バラバラになってしまうのではないかと思う程の痛みを感じる。

(当たってもいないのにこの威力……!)

 

「はぁ……はぁ……。ぐぅっ!」

 あまりの痛みに、その場にうずくまってしまう。

「団長さんっ!」

 イキシアの声も遠く聞こえる。雷鳴が一歩一歩距離を縮めているのに、逃げることも立ち向かうことも出来ない。

 

「待てぇぇ! とりぁっ!」

「むっ……!」

 圏とナイフが雷鳴に襲い掛かるが、雷鳴はそれらを簡単に打ち緒としてしまった。

 

「団長はやらせないんだよ!」

 ポーチュラカ達が私の前に立ち塞がる。いや、彼女達だけではない。

 

「女性を傷付けるなど、戦士の風上にも置けないですね」

「間に合った。大丈夫? 女の子団長さん」

 ロザリオ騎士団とブリオニアも援護に来てくれた。

 

「嬢ちゃん、まだやれるか?」

「は、はい……」

 身体を奮い立たせる。まだ倒れるわけにはいかない。我々が負けたら、春庭は全滅する。

 

「面白い。来い! 全員まとめて相手をしてやる!」

 

 

 


「サントリナさん……」

 サントリナと同じ部隊の花騎士達が、不安そうに彼女を見つめている。

 本能で分かってしまう。目の前の敵、炎武が今まで戦ってきた敵とは比べ物にならない程強いことに。

「大丈夫ですよ」

 そんな彼女達に、サントリナはにっこりと微笑みかけた。

 

「……標的は私だけですよね? 場所を変えましょう」

「その必要はない」

 炎武が手をかざす。

「!?」

 サントリナは咄嗟に走り出した。炎武から放たれる炎魔法の軌道を変えるため、奴の右腕を切り落とした。

 

「おっと」

 炎は空を焦がす。斬られた右腕はすぐに再生した。

 

「おいおい、邪魔するなよ。せっかく雑魚どもを掃除して、戦いの場所を作ってやろうとしたのに」

「ふざけるな! 命を何だと思ってる!」

「そんな雑魚どもを生かしておいて何になる? 何の役にも立たないような弱い奴は、俺みたいな強者に殺された方が幸せだろう?」

 その言葉に、サントリナの脳裏に少女時代のことがフラッシュバックする。優しかった町の人々。それを殺した害虫。憎しみ。

 

「……もういい、お前は私が倒す」

 

 

 


「ほらほら、どうしました? 早く助けに行かなければ、お仲間が死んでしまいますよ」

「くっ……うっさいわね!」

 同じ頃、アブラナとオジギソウは氷雪と交戦していた。

 

(こいつの魔法攻撃、隙が無い。オジギソウのおかげで何とか避けられるけど、こっちから攻撃に移るのが難しい)

(ふむ、どうやらあちらの眠そうな花騎士によって、魔法がどこから来るのか予測されているようですね。では、あちらから先に殺してあげましょう)

 

「次は……私ですか!?」

 何とか横っ飛びで攻撃を避けるオジギソウ。

「避けましたか、しかし次はありませ……っ!?」

 次の攻撃へ移ろうとした氷雪の腕が切り落とされた。

 

「くそっ、核を狙ったのに!」

(あの金色の花騎士、凄まじい速さですね……これでは埒が明かない……しかし)

 切り落とされた腕はすぐさま再生する。

「互角の勝負なら人間に勝ち目はありません。このままじわじわなぶり殺しにして差し上げましょう」

 

「あぁ~もうっ! もどかしいわね!」

「アブラナさん、落ち着いて下さい~。どこかに隙があるはずです~」

「オジギソウは普段通りね」

「そんなことありませんよ~。怖くて怖くて仕方ないです」

(そうよね……本当はあたしだって怖いわ。団長もいないのに、こんな強い敵と戦わされて。でも……)

 アブラナの頭の中で、グリフィス団長との会話が鮮明に浮かび上がった。

 

◇◆◇◆

 

「アブラナ、敵と戦う時、君は怖くないかい?」

「……怖くなんてないわ。害虫が怖かったら花騎士なんてやってられないでしょ」

 本当は怖くて仕方がなかった。でも強がるしかなかった。あたしは花騎士だから。

 

「そうか。私は怖いな」

 だから団長のその言葉に驚かされた。

「はぁっ!? 良くそんな臆病で団長がやってられるわね」

「耳が痛いな……。だが、恐怖を知っているからこそ、人々の気持ちもより理解出来るのだと思っている。戦う力の無い人々は、我々の何倍も怖いんだ。彼らの恐怖を少しでも和らげるために、私は騎士団長になった」

「……」

 

「アブラナ、我々の力は牙無き者の牙だ。決して自分のためのものではない。君もそれを忘れないで欲しい」

 

◇◆◇◆

 

(分かってるわよ、団長。だからこそ)

「たぁぁぁ!」

「くっ、動きが更に……」

(こんな奴らに負けるわけにはいかない!)

 

「ふふ、無駄な抵抗は大好きですよ。どんどん弱っていくあなた達を見るのが楽しくて仕方ありません」

 そう。互角の戦いに見えても、実際は氷雪が有利なことに変わりは無かった。

 彼女と違って、アブラナとオジギソウには生傷や疲労が蓄積していく。彼女達が勝つには、核を破壊しなければならない。互角では意味が無いのだ。

 

(まずは彼女にまともな攻撃を当てないと、ですね。そのためにはもっと感覚を研ぎ澄まさないと……もっと……っ!?)

 オジギソウがふらついたところに、氷雪の魔法が飛んでくる。

「たぁっ! 大丈夫? まさかスタミナ切れなんて言わないわよね?」

 氷を弾き飛ばしたアブラナが、オジギソウの背中を支えた。

 

「だ、大丈夫です~……」

(今、はっきりと見えた。彼女が技を出す予備動作が分かった。ほんの一瞬の差だけど、それでもアブラナさんなら……)

 

 

 


「はぁ……はぁ……ポーチュラカ、後ろだ!」

「!? がっ……」

「ポーチュラカ!」

 あの巨体から放たれる斬撃の威力、そして巨体に似合わぬスピード。今までの敵とは比べ物にならない。これだけの花騎士を相手にしても、それを圧倒する程の強さ。

 決して油断していたわけではなかった。だが雷鳴の強さは、我々の想定を遥かに越えていた。こんな相手に勝てるのだろうか。心が折れかけたその時、

「まだ……だよ……」

 

 ポーチュラカの足下にはおびただしい量の血が流れている。

「ポーチュラカ……」

「だ、大丈夫……へっちゃらだよ……」

 何とか笑みを繕うポーチュラカ。しかし身体は限界を迎えているのが、端から見ても良く分かった。

 

(私は身体が小さいから、この出血量はまずい……でも倒れるわけにはいかないんだよ。ここで私が倒れたら、一気に崩れてもおかしくない)

 この人数でも押されているのだ。一人欠ければ総崩れもありえる。まるで綱渡りのような危うさ。

(息が……苦しい……)

 一秒も気が抜けない。気を抜いた瞬間、死がやってくるのが直感で分かる。

 

「まだ食らい付いてくるか……中々面白い」

(回り込まれた!? まずい……!)

 大剣が振り下ろされる直前、衝撃波が私と雷鳴を吹き飛ばした。

 

「……新手か?」

「皆さん、遅れてごめんなさい」

「クマツヅラさん!」

 雷鳴がクマツヅラに気を取られた次の瞬間、

「わっちょーい!」

「ぐぉっ!?」

 紫色の炎が彼の背後から襲う。コオニタビラコの鬼による攻撃だった。

 

「ふふ、良い攻撃だ。中々効いたぞ」

 焦げた外骨格はすぐさま再生されていく。

 彼らの再生力は、基本的に強さに比例して高くなっていく。四天王の雷鳴はその再生力も他の戦士とは比べ物にならない程速かった。

(やっぱり、このくらいの攻撃じゃ足止めにもならないか……)

 

 

 

「変身!」

 クマツヅラがアイテル・ドレスに身を包む。それと同時に他の花騎士達にも根源の世界花の加護が付与された。

 

(助かった……何とか脈も安定した……)

「怪我が酷い人は私が回復します」

「ポーチュラカ、イキシア、君達は回復に専念しろ。その間は私達で足止めする!」

 

 少しでもダメージを与えなければ。根源の加護を受けても、このままでは恐らく奴の防御を上回る攻撃は出来ない。

 必要なのは加護の力を適材適所に集中させること。以前、サントリナから聞いた話が思い浮かばれる。

 

◇◆◇◆

 

「加護の力の、その先……?」

 サントリナに戦いを教えて貰った時、一つだけどうしても理解出来ないことがあった。

 

「はい。世界花の加護はそれだけでも私達を遥かに強くしてくれますけど、効果的に使うことが出来れば、その力は飛躍的に伸びていくんです」

 

「例えば、速く走りたい時は脚に、敵の動きを見極めたい時は目に……そして硬い敵に攻撃する時は剣先に意識を集中するんです。そうすると、加護の力は私達に合わせて変化してくれる」

「私が思っているよりも、加護の力は自由ということか。それで、その力を発揮するにはどうトレーニングすればいいんだ」

「そうですね……まずは身体の先にグワァッて力を溜める感じですね」

「?」

「ん~……グググッて感じかも?」

 サントリナは他人に教えるのが絶望的に下手だった。

 

「ご、ごめんなさい、お役に立てなくて……他の花騎士さんにもうまく伝わらないんですよね……」

「いや、気にしないでくれ。サントリナは天才肌なのだろう。私なりに工夫してみるよ」

 

◇◆◇◆

 

(サントリナは硬い敵も難なく切り刻んでしまう。それは加護の使い方が上手いからだ。私は彼女のような天才じゃない。それでも……やらなければ。花騎士達を守るためにも!)

 

 全身を流れる血管の一本一本に集中する。指先に、剣先に、加護の力を張り巡らせていく。

 

(何だ……急に動きが良くなった)

 雷鳴の攻撃を潜り抜け、奴の間合いの内側へ。そして剣を振るった。

(傷が……付いた!)

 かすり傷程度の小さな損傷。すぐに再生されるだろう。しかしそれでも大きな一歩だ。

(何千、何万と繰り返せ! 奴の核を破壊するまで!)

 

「小賢しい……」

 雷鳴の剣が頭上から振り下ろされた。視力を集中させてそれを見切る。そしてもう一撃、奴の胸に斬撃を加えた。

 

「団長さんを援護する!」

 レッドジンジャー、ブリオニア、エキザカムの必殺技が次々と雷鳴を襲う。そして、

「アイテル・オブ・アイテル!」

「喰らえ、痛快! ツー回転斬り!」

 回復したポーチュラカ、そして彼女の治療をしていたクマツヅラも攻撃に加わる。

 

「このまま一気に決めるよ!」

 根源の加護で強化された花騎士の攻撃に、流石の雷鳴も押され始めている。

「うぉぉぉぉ!」

 そして私も更に加護の力を高めていく。少しずつ、本当に少しずつだが、勝ち筋が見えてきた。

 

 

 

 しかし、希望というのは脆いものだ。もっと大きな絶望によって、簡単に塗り替えられてしまう。

 

「ふふ……ふふふ。良い、良いぞ! お前たちを雑魚だと侮っていたのは訂正しよう。その詫びとして……俺の最大の必殺技を見せてやる。果たして耐えられるかな?」

 

「!? 雷鳴の身体が光り始めた! 何か来る!」

 肌に感じる刺激が今までの雷撃とは比べ物にならない。早く逃げろと本能が叫ぶ。

 

「天地……雷鳴!」

「まずい! 皆離れ……がぁぁぁっ!」

 しかし私の叫びは花騎士達には届かなかった。

 

 身体が光に包まれる。何も見えない。ただ全身が焼け焦げるような激痛だけが私を襲い、意識はだんだんと遠のいていった。




雷鳴の必殺技を受け、果たして花騎士達は無事なのか。
次回もご期待下さい。
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