オーバーロード ~堕ちし聖女と黒き騎士~   作:赤猫project

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遅くなってしまい申し訳ない……!

身内がコロ助に掛かり、一家全員診断したら見事に全員コロ助に掛かってました……。
幸い一番に治ったのは私でしたが、その後のコロ助看病やら手続きやらなんやらあり遅くなりました……!


これからも不定期な更新が続きますが、よろしくお願いいたします


2章 騒乱・侵蝕・決起
第10話


エ・ランテルの騒動から翌日……。

モモン達は宿の一室にて先程貰った報奨と新たなプレートを確認していた。

前回のアンデッド騒動を救った救世主として、ギルドに大きく評価され一気にランクが上がりオリハルコンへと昇級することが出来た。

いきなりの昇級に回りの冒険者が突っかかってきた奴らも多かった。だが大抵は拳一発で沈められるので物理的に黙らせた。その光景をみた他の冒険者達もモモン達の強さに納得し、これ以上突っかかってくることは殆ど無かった。

 

「それにしても、オリハルコン止まりとは……あのミジンコは御方を見る目が無い。アインズ様、やはりノミ蟲共の国で評価を貰うのではなく我らナザリックの力を示す為に侵攻するべきなのでは――」

「――馬鹿を言うな、この世界に我々と同じ世界から来た者がいないとも限らないのだ。急げは滅ぶのは私達なのかもしれないのだぞ」

「そのような事!ナザリック全軍をもってすれば……!」

「ハァ……ナーベ、確かに我々の力は人間の国と比べるまでも無く強い。だが世界一では無いのだ、その余裕はいずれ治さないと……身を亡ぼすぞ」

「っ、畏まりました」

「……あれぇ?」

「どうしましたラピュセルさん?」

「いやぁ、未だに分体と連絡付かないんですよねぇ……」

 

ラピュセルは昨日から分体であるヴリトラへと連絡をしようと<伝言>を飛ばそうとしているのだが全く反応がなく、返事が返ってくることが無い。

 

「んー?何してるのかしら、向こうの私」

「もう分体戻ってるんじゃ無いんですか?」

「いや、それだと自分に譲渡したスキルや種族が帰ってくるはずなんです、けど未だ帰ってきて無い…まだ活動中みたい」

「となると、何かしらアクシデントが?」

『そうみたいだぞ』

 

モモンとラピュセルの元にオルタから<伝言>が飛んでくる。

オルタとグレイは別行動でナザリックに戻っておりオルタは留守中の間に問題が無いか確認を、グレイは情報収集に長けた者に冒険者活動で集めた情報を伝えこの世界についての資料を纏めてもらっている。

 

『オルタさん、問題とは?』

『ああ。今しがたシャルティアの従者である吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)が一人帰ってきてな、私達が墓地で暴れていた裏の様子を聞いた』

『なんといっていました?』

『ああ、吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)の報告だとな――』

 

オルタは吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライト)から聞いたアンデッド騒動の裏、ヴリトラ部隊で起こった事を全て話す。

ガゼフと互角の戦いをしたブレインという男、シャルティアの<血の狂乱>による暴走、冒険者チームとの遭遇と一人逃がしたという失態……そして――

 

――法国の強者、ワールドアイテムを所持した部隊との邂逅を。

 

『……やっぱりこの世界にもあったんですね、ワールドアイテム』

『今回はアインズの慎重さが良い方向に転んだな』

『それで?なーんで私の分体は<伝言>出ないんですか~!ワールドアイテム持ちはシャルティアが倒したと言うんなら返事できますよねぇ?』

『……お前、<伝言>分けてないだろ』

『……あれ、わけないと返信できませんでしたっけ?』

『忘れてたなお前……』

『それにラピュセルさんが<伝言>渡してたら、本体が使えなくなりますよ?』

『あ~~~~~~~~‼完全に忘れてましたぁ~~~~‼‼』

『大丈夫かお前……(呆)』

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

オルタから連絡があった日の翌日、案の定私達にギルドの組合長から招集が掛かった。

モモン達はその招集に応じ組合の組合長専用の会議室に案内された、部屋の中には以前話した組合長のアインザックと、魔術師組合長のラケシル。

そして私達以外に召集されたミスリルの冒険者チームの代表さ3人が座っている。

 

「よく来たモモン君、アルトリアさん。空いている席に座ってくれ」

 

言われた通り空いていた席に座るモモン達、座った後簡単に他の呼ばれた冒険者達の説明を受ける。

ミスリルに見合った風格は持っている人間達、防具もモモン達にとっては初期装備に視える武具だがこの世界では上位に入る武具を来ている。

 

会議が始まる前、ミスリルの冒険者チーム「クラルグラ」の代表者のイグヴァルジが私達に突っかかって来たが組合長が丁寧に私達の凄さを丁寧に伝え一時的に黙らせてくれた。

今回の件の重大さもあり、組合長の言で一旦は黙って座るイグヴァルジだが、この感じだとまた突っかかってくる未来が想像できた。

 

「まず簡潔に。二日ほど前の晩、エ・ランテル近郊の街道を見回っていた冒険者達が吸血鬼と遭遇、その吸血鬼は遭遇した冒険者5名を殺害しました」

「今回集まってもらったのはその吸血鬼に関してです」

「(やっぱりシャルティアの件か……)」

 

ワールドアイテムを身に着けていた法国の者とは違いシャルティアが先行して出会ったエ・ランテルの冒険者達……どうやらヴリトラについての情報は渡っていないようだがシャルティアが暴れた事で討伐依頼が出た――

これは、上手く使えば更に冒険者としての地位を上げることが出来るかもしれない。

 

「その吸血鬼の特徴は?」

「生き残った冒険者に聞いたが、あまりの惨劇と恐怖にぼんやりとしか覚えてないらしいが銀髪に大口というぐらいだ」

「(まあ人間があの状態のシャルティアを認知したらそうなるな……)」

 

その後分かっている限りの情報を知らされる冒険者達。

吸血鬼は第3位階の魔法を幾度も使用していた事、プラチナ級の実力を持ち、軍に換算すれば万は行くだろう戦力を一体で確保していると思われる事実……。あまりに桁外れな化け物に周囲の冒険者達は怖気づく、この依頼は私達には手に余る――

 

――数人を除いて

 

「おい、そのヴァンパイアの姿はこれで間違いないか?」

「これ?……その本は」

「エ・ランテルの本屋で売られていた古い魔物の生態記録書の様だぞ、私も詳しくはしらない」

「その本、見せてくれないか」

「ああ、いいぞ」

 

この本、実際に本屋で買ったのだが実際はただ私達が仕組んだ蔵書。

吸血鬼やグール等のアンデッドだけを取り扱った本を簡単にでっち上げ本屋の奥に置かれていたと店主に嘘を付き買ったモノだ。

アインズには「自分達はこの吸血鬼を追ってこの地に来たと理由でも良いのでは?」と言われたが、それだと後々私達の素性に疑問を感じた者が出た場合の対処に困る、其の為邪ンヌに頼んで書いてもらった。

ナザリックで作りあえて劣化させたり損傷を作ったりした適当な本だが、内容が適当だとしても外見が古ぼけていれば貴重な本に視えるのが人間、簡単に騙せてしまう。

 

「ふむ、どうやらアンデッド等のモンスターを中心に書いた本の様だな、吸血鬼の欄も多くある」

「その欄に先程の証言に似た吸血鬼が書いてあるだろう」

「確かに、「銀の髪、大口が特徴的な吸血鬼:種族名不明」……確かに証言と似ている」

「名前は「カーミラ」、そう名乗ったバケモノらしいな」

 

この本の著者は現実世界で本を出しバカ売れしていた邪ンヌ。

キャラの設定も以前に漫画に使ったキャラクターの名前や特徴をそのまま引用しただけであるが、様々な本を読み漁りそれらしく表現するマンガ作家の一品はそれが偽物と気づかせることは無かった。

 

『流石私の一作、バレずに読み漁ってます……♪』

『実際、現実に魔物が居たら漫画作品の生態を確認したりするのかもな……』

「ふむ……謎多き吸血鬼ということもあり詳しい生態等は書かれていないか。よし、これを生還した冒険者の所に見せてみる。借りるがよろしいか?」

「いや、そのまま寄付という形でいい。ギルドが持っていた方が有用だろう(訳:そんな贋作ならいくらでも)」

「そうか、それはありがたい。それで吸血鬼討伐の件はどうだ?」

「もちろん、偵察もかねて引き受けますよ」「私もです」

 

「で、では他のチームは――」

「不要だ、足手まといは吸血鬼を増やすだけだ」

 

モモンは言葉を遮り、邪魔だと軽く手を振る。

オリハルコンクラスの冒険者二名が放つ一種の暴言、だがその暴言は一人を除き不快に感じることは不思議と無かった。

 

「なっ何を⁉」

「……それほどの自信があるのかね?」

「切り札はある、この魔封じの水晶だ。これには第八位階の魔法が込められている」

「なっ⁉魔封じの水晶だと⁉法国だと至宝とさえ言われているマジックアイテムだぞ⁉」

「そ、それに第八位階だと‼‼神話の領域ではないか⁉」

「くだらない‼嘘に決まっている‼‼」

「ほう、まだ鑑定はしていない。試してみるか?」

「グッ……‼」

 

モモンがヘルムの下で冒険者を睨む。一度の睨みだが、それを間に受けた冒険者達は威圧を間に受け言葉が出ずに怯んでしまう。まるで蛇に睨まれた蛙の様な感覚を肌で感じているのだろう。

 

「モモン、そんな余裕はないだろう」

「アルトリアさんの言う通り、そんな時間は無いハズだ。そうだろう、組合長?」

「――報酬は」「なっ組長‼」

 

組長は返答せず話を先へと進める。彼ら組合にとって最重要な案件、一分一秒でもこの異常事態を収めたいという意志の表れだろう。

 

「後で構わない。実際にその場に居るのかわからない存在なのだ、倒したらの話は終わってからでも十分だ」

「……チッ、俺はついていくぜ」

「邪魔になるだけだ、私達のパーティーだけで十分――」

「信じられるわけねぇだろうが、ぽっと出の新参者が‼‼」

「おいイグヴァルジ、止さないか‼‼」

 

イグヴァルジはアインザックの静止に聞く耳を持たず、感情的に叫び続ける。

この男、どうやら騒乱があった日に依頼で遠征していたらしく、実際に出来事がどうだったのか見ていないのだ。

それに踏まえ、数週間前に登録した新参者がいきなり自分達より上のプレートを身に着けている……長年積み重ねていまの地位に立った俺達よりも……!といった感情ゆえの愚かな行動だろう。

確かにユグドラシル時代、そういったプレイヤーに嫉妬した時も昔はあった。けれど数週間もすればそんな考えがいかに阿保らしいか理解できる、その人物が余程の"馬鹿"でない限りは――

 

「勝手にすればいい、一時間後エ・ランテル正門前に集合だ。先に偵察や地形を把握しに行く」

「あ?ああ、わかった。すぐに準備を整える」

 

ハッキリと伝わるモモンの苛立った声色にイグヴァルジは了解の意を告げるとは席を立ち、足早に会議室を後にする。アインザックはその姿を見て深いため息をつき手で顔を覆っていた。

 

「すまないなアルトリアさん。彼は何年も前から高ランク冒険者として行動していたせいか性格が変わってしまったようでな」

「気にしないでください、どこにでもああいった人間は少なからず存在しますので」

「ええ、貴方が気にする事では無い。私達は、この程度で苛立つような狭い心を持ち合わせていないので。(まぁ苛立ち関係なく、付いてくる奴は殺す予定だったがな……)」

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

街を出てシャルティアが発見された付近の森に入ったモモンとアルトリア、ここで行う事は……邪魔者の殲滅だ。

先に呼んでおいたマーレに幻術を仕掛けてもらい、そこにイグヴァルジのチームも招き入れた。

そして、慈悲を掛けることなく一人一人確実に殺していく…イグヴァルジ本人はアウラの能力により操られた無数の黒い蔦で木に巻き付け拘束、目の前で次々と仲間が殺されている瞬間を強制的に見せつけられていた。

 

「クソォ‼‼ちくしょぉ‼‼放せ‼‼話やがれぇぇぇ‼‼クソが‼てめぇらぶっ殺してやる‼‼」

「五月蠅い人間だ……」

「私達は警告したはずだ。そしてお前はそれに従わなかった……ならばこれがお前が選んだ選択肢の結果だろう?甘んじて受け入れろ」

「えっと……その、ごめんなさい!」

 

マーレが近づき持っていたスタッツを大きく振りかぶる。

可愛げなダークエルフの少年の姿が、周囲で眺めているバケモノ共と同じ様に……黒く歪な存在に見えた。

イグヴァルジはこれからどうなるのか悟り、命乞いをするが……。

 

「や、やめてくれ……‼‼やめてくれ……‼さっきまでの非礼は詫びる……!だ、だから……助けて……」

「う~ん……えぇぇいッ‼‼」

「やめろ……‼‼やめろぉぉぉぉぉっぉぉぉぉ‼‼

 

グシャッ.¨  .

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

ポタポタポタと、脳液と頭肉が付いたスタッツから赤い鮮血が滴り落ちる。

この人間達は、私達がでっち上げる任務で出た犠牲者として扱われる為の道具どして使う。それと部位だけ切り落としナザリックで蘇生、アインズの上位アンデット作成の媒介にできるかどうかの実験を行う予定だ。

 

「さて、ここから先は私達とアルベドで向かう。万が一に備えマーレは偵察魔法を使い警戒、ナーベラルとグレイは一度この場を離れナザリックに撤退しろ。こちらが終わり次第、さいど冒険者として行動する」

「畏まりました、アインズ様」

「は、はい。畏まりました」

「よし、では向かうとするか。ゆくぞアルベド」

「畏まりました、アインズ様」

 

アインズとオルタ、邪ンヌとアルベトは森を抜けシャルティアが発見された地へと進む。

森を抜けた先に視えた者は大きな青黒いキューブ、そしてその前に脚を組み、森から取ったのであろう赤く小さなベリーに似た果実を口に投げ入れる竜人の女性が居た。よく見ると、手元に山盛りの果実を抱えている。

 

「あぁ!ヴリトラ()~‼よーやく合えたわ!」

「んむ⁉ンッ!ンッッ‼(ゴクンッ) ん、んん……お、おお!アインズにアルトリア!それに邪ンヌ(本体)‼やっと来たようじゃな!」

「遅くなってしまい申し訳ないな……えっと……」

「んあ?わえの呼び名か?種族名で呼んでもらえは良い、ヴリトラじゃ!」

「そうか。ではヴリトラ、この場で何が起こったか全て教えてもらうぞ」

「うむ、結構複雑な事が起こったからな。しっかり聞いておれ!」

 

ヴリトラはあの晩に起こった事全てを話し始める。

盗賊達の殲滅、ブレイン・アングラウスの発見と確保失敗、それに焦ったシャルティアの暴走、エ・ランテルの冒険者チームの虐殺……そして法国の部隊との会話、その全てを。

 

「……そうですか」

「また厄介事が増えたな。ここでさらに法国と事を交える様になれば、この世界存在するかもしれないプレイヤーが勘づくぞ」

「それよりも聖女の爆発って……()()が原因じゃないの?」

「何か気づいたのですか?邪ンヌ様」

「ほらあの時、私達が初めて公に行動したカルネ村よ。あの時も法国の雑兵達を一方的に殺したじゃない?」

「ああ、そんな事もあったな」

「その時、誰かが戦場を視ようとしていたでしょ?」

「たしか、そうでしたね」

 

実はカルネ村を守る為に戦っていた際、何者かが私達を偵察しようとしていた。

アインズの情報戦用の魔法が起動し我々の事等が知られる前に対策は出来てはいたが、その件と聖女の死がどう結びつくというのか。

 

「アインズ、"攻性防壁のカウンター魔法"は何だったかしら」

「カウンター魔法ですか?たしかー <爆裂(エクスプロージョン)>……あ」

 

今の一言で完全に答えが出た。そう、あの時偵察魔法を仕掛けてきていたのは法国の聖女だったのだ。そして聖女はアインズのカウンター魔法がある事を知らずのぞき見た結果……爆発四散した……と。オルタとアインズは膝から崩れ落ち手で顔を隠す、向こうの自業自得とはいえ結局はナザリック絡みだったのだ。

 

「あ、アインズ様⁉オルタ様⁉どうなさいましたか!」

「(クソデカ溜息)……おいアインズ、これは流石に……想定外だぞ」

「私だって、こうなるとは想像すらできないですよ……」

「ブッフフフ……悪い事したら必ず自分に帰ってくるとは本当だったのね♪」

「「お前/貴方にも関係ある事 ですからね⁉/だからな‼」」

 

アインズとオルタが声を揃えて突っ込む。何故邪ンヌはこうも緊張感が無いのか……不思議に思いながらもまずは目の前の事態に対処する為に動く。

 

「だ、大丈夫ですか?」

「あ、ああ。すまないなアルベド……」

「はぁ……とりあえず法国の件は後回しにしよう、まずはシャルティアだ。何処にいる?此処には居ないようだが――」

「――ああ、此処じゃよ」

 

ヴリトラは指を鳴らすと、正面の何もない空間がまるでガラスにひびが入ったかの様な高い音を立てながらヒビが入る。

そしてヒビが広範囲に広がると、バラバラと欠片が崩れて何もない空間から深い青色の立方体が姿を現した。

 

「なるほど、ヴリトラ()のスキルを使って隠してたのね」

「そうじゃ。これで完全に姿と気配を隔絶していた、このスキルなら第10位階でも探知は難しいゆえ第三者バレた可能性は無いはずじゃ……では、解除するぞ」

 

パチンッとヴリトラが指を鳴らし結界を解く。上からヒビが入りパラパラと結界の破片が粉雪の様に舞い散る――

 

そしてその結界の中からは、スポイトランスを片手に持ち顔を下に向けて無表情のまま佇んでいるシャルティアの姿がその眼に映る。

ピシピシッ、パリンッと結界が砕ける音が響き渡るがその音など気にする素振りすら起こさない、シャルティアの色白い肌も相まって、まるでマネキンである。

 

「……シャルティア、シャルティアよ。聞こえているか」

 

オルタが声を掛けるが全くと言っていいほど反応が無い。普通直立で立って居る人間は多少左右に揺れていたりするのだがそれすらしていない、本当にマネキンの様だ。

 

「やはり反応はないですね……」

「という事は……<鎧強化(リーンフォース・アーマー)>」

 

邪ンヌは自身に簡単な魔法を掛ける。目の前のシャルティアはその動きに反応する事は無く、呆然と立って居るだけ。

どうやら攻撃などシャルティア自身に影響がある行動をしない限り行動を起こすことが無いようだ。この反応はユグドラシルでも同じ仕様であった。

 

「やっぱり、強化魔法にも反応しない。ユグドラシルの時と同じね」

「その辺は同じなのか……少し安心だな。よし、そろそろシャルティアに声を掛けるとしよう。ヴリトラ、傾城傾国(けいせいけいこく)を」

 

オルタの言葉に頷きヴリトラは肩に掛けていた白い服を投げ渡す。傾城傾国(けいせいけいこく)、持ってみた感じは普通の服と大差ないように感じる、こんな服だと言うのに世界を揺るがしかねない超大物アイテムというのだから恐ろしいモノである。

 

「シャルティア、シャルティアよ。聞こえているか」

 

傾城傾国(けいせいけいこく)を手に持ったオルタが声を掛ける。すると、先程までの無反応ぶりとは打って変わりすぐさま声に反応し勢いよく顔を上げた。その声の主を瞬時に理解したからか、見えた表情はいつもと変わらず恍惚とした表情である。

 

「っ⁉オ、オルタ様!あぁ、オルタさまぁ……♪」

「(ヒエッ……)ウウンッ……シャルティアよ、目覚めたか」

「はいぃ♪至高なるオルタ様の美しき声にて、ばっちりこの通りでありんす♡」

「そ、そうか……(オルタ(今の私)でも流石に引くレベルの顔していたな……)」

 

あまりに不気味なシャルティアの表情をみて引き気味のオルタであったが、すぐさま切り替え洗脳を受ける前の情報を聞き出そうとする。

 

「シャルティアよ、お前はここで何をしていた?」

「何を……?確かあの洞窟で人間共を襲って……誰かを追いかけてて……それで……」

「……朧気か」

「は、はい。申し訳ございません」

「アインズ様、この症状は?」

「洗脳による影響だろう。ワールドアイテムクラスの洗脳だ、記憶が混濁している」

「(だとしても、そんな前の所から朧気になるモノかしら?それこそワールドアイテムの強さゆえ……なの?)」

「それじゃあ、お前が覚えている一番新しい記憶を思い出してみろ」

「一番新しい、でありんすか?」

「えっと……たしか……冒険者達を殺し……その後……誰かと、戦った?うッ!あ、頭が……痛む?」

「そうか、無理にとは言わん。楽にしろ」

「は、はい……」

 

やはり記憶の乱れが激しく洗脳を受けた戦闘に関しては殆ど無いようだ。それにしても法国……ワールドアイテムすら保持する強大な国、この世界にきて最も重要になるであろう場所が見つかったのは良くも悪くも貴重な情報だ。

 

「最後だが……()()()()は誰だ?」

「主……そ、それは偉大なる御方であらせられる恩君、()()()()でありんす!」

「……そうか」

 

いつものシャルティアなら今のセリフ、私では無くペロロンチーノと100%いうだろう問いであった筈だ、それを「オルタ様」とは……やはりワールドアイテムは恐ろし、いや……シャルティアなら私と言う可能性もありそうだぞ?

 

「シャルティアよ、お主は今洗脳に掛かっておる」

「せ、洗脳?この私が、でありんすか?ま、まさかそんな……」

「本当の事よシャルティア。それとも偉大なる御方のお言葉が間違っていると?」

「アルベド……。い、いえ……そのような事は――」

「アルベド、余計な口出しは控えろ」

「はっ、申し訳ありません。オルタ様」

 

「謝る必要は無い。シャルティアよ、お前に非はあるわけでは無いのだ。なにせ、かのワールドアイテムが関わっている。だからそう恐れるな」

「ああそうだぞシャルティア、むしろよくやったと褒めたい所だ」

アインズ様!オルタ様!それはあまりにもシャルティアを甘やかしているのでは……⁉」

「いーや、アインズの言う通りよ」

「じゃ、邪ンヌ様まで……⁉」

「まぁ待てアルベド、順を追って説明する。だが、まずはシャルティアの洗脳を解くのを優先しよう」

 

そういいオルタは右手に握っていた傾城傾国(けいせいけいこく)を空へと掲げる。すると握られた傾城傾国(けいせいけいこく)の竜紋様が光り出し、眩いオーラの竜が天へと昇って行き……砕けた。

そして龍が砕けるのと同時にシャルティアはフッと意識を失いその場に倒れかかる。すかさず邪ンヌが彼女を抱きかかえ容態を確認する、彼女からはスゥスゥと寝息が聞こえ無事洗脳が解除されているのを確認し、軽く微笑み、彼女の髪を優しく撫でた。

 

「お疲れ、シャルティア」

「解除は出来たようだな。さて、ではアルベド。お前はワールドアイテムについてどれほどの知識を持っている?」

「……私が知っている限りではございますが、"世界の理"その根底から覆しかねない程の力を秘めたアイテム……という事ぐらいです」

「正解だ。だがその効力の強さに関しては……実際に視た事は無いな」

「はい、モモンガ様方はユグドラシルでの冒険において何度か目撃していると、タブラ・スマラグディナ様がお話しているのを聞きました」

「そう、私達はそれの脅威を知っている。その脅威は言葉の通り法則を捻じ曲げる力だった」

 

今思えばあまりにもクソゲーになりかねない要素である。耐性を無効化し強制的に状態異常を与えられたり、固有ステージを塗り替えこちらの有利な環境に置き替えたり……やりたい放題できるアイテムばっかであった。

二十と呼ばれるアイテムなど運営に頼み、効果を発揮させられるモノがあったり等まさに公式チート、公式が病気と言われてもおかしくない要素……。

ぶっちゃけレベル1のプレイヤーが偶然入手したなら、100レベプレイヤーとも戦えてしまうのだから……みな血眼になって探査した事である。

 

「完全無効化を無視しデバフを押し付ける七色の水晶、溶岩地帯"全てを"ジャングルに変えてしまう白紙のキャンバス……でたらめな効果は正に天変地異と呼べる光景だったさ」

「そ、それほどの力だったのですか……」

「ああ、そんなアイテムを保有した相手をシャルティアは相打ちという形ではあるが確実に倒し、そしてアイテムをこちらが入手できた……これ程の功績を誉めずいつ褒めるという話なのだ」

 

シャルティアは素晴らしい事を成し遂げた、彼女が目覚めたら叶えられるレベルの最高の報奨を約束しなければ。

 

「おっと、話し過ぎたな。成す事は終えた、後はこの場での激しい戦闘を行った証拠をでっち上げ退散するとしよう」

「畏まりました。それで、証拠の偽造はどのように」

「アインズ、超位魔法を1発放って欲しい。地形に係わるタイプのだ」

「地形に係わるタイプ……<失墜する天空(フォールンダウン)>ですか」

「ああ、私の剣や超位魔法でもいいが……如何せん範囲が直線状ゆえ、余計なモノまで巻き込みかねないのでな。お前に任せたい」

「了解です、その前に……<|伝言≪メッセージ≫>。マーレ、周囲に人間等の反応はあるか?」

『い、いえ!人一人感知できていません。だ、大丈夫だと思います!』

「そうか、ならば問題なく放てるな。皆、私から離れぬようにな」

 

アインズは杖を地面に突き立て詠唱を開始する――

アインズの頭上に大きな魔法陣が展開され、その周囲を囲う様に無数の魔法陣が円を描きながら回っている。超位魔法、10位階より上の魔法……この魔法は他の魔法、スキルとは一線かけ離れた力を持っているがその分詠唱が必要になり、使用制限も設けられている上、同パーティー同時に発動する事も出来ない。

まぁ専用アイテムがあればある程度デメリットを消せるが、それでもかなりデメリットがある。

それを踏まえても強力な魔法であるため"諸刃の剣"と呼べる魔法だ。

 

 

「超位魔法<失墜する天空(フォールンダウン)>――」

 

 

アインズが詠唱を終える。

いくつもの展開していた魔法陣が巨大な魔法陣の中心へと集約され、一粒の小さな光の雫へと変貌。優しい雫の輝きは徐々に広がり、光を増す。そして2秒後には……私達を除く効果範囲内の"全て"を純白に染め上げた。

僅か5~6秒程度ではあるが、かの天へと上る光柱は、万物全てを灰塵へと変え、瞬く間にアインズを中心とした半径効果範囲内の全万物を一片の塵の欠片すらも逃さず平らげた――

 

光が収まり、見える景色は半径20メートル程はあるだろう巨大なクレーター。

クレーターの奥、効果範囲外の森の樹々は先程と変わらず青々とした緑が見え草木が風にたなびいている。だがすぐ下を見ればそこは地面が数メートル抉れている死んだ大地。この場所は今後数年は雑草一本すら生えない土地になったハズだ――

 

「これで、良いだろう。これ程の規模であればあの水晶を壊し暴発させたという嘘も信ぴょう性が高まる」

「流石はアインズ様です!」

「あとは……この水晶を――」

 

オルタはアイテムボックスからあの時陽光聖典が使っていたモノと同じ魔封じの水晶を取り出し、中心部分から少し離れた場所で思いっきり剣で砕いた。足元に先程までの水晶だった残骸が散乱する。

 

「後で調査が入られても違和感が無いようにしておこう。念のため大き目の破片は手元に残しておくとするか」

「あーあ、勿体ない……」

「ぐずぐず言うな。どうせ宝物庫に未使用品500以上ため込んでいただろう」

「よし、アルベド。後ほど殺した冒険者達の死骸の一部を周辺にばらまいておいてくれ。リアリティと言うのは大切だからな」

「かしこまりました、後ほどインプ達に配置させておきます」

「よし、では夜になったら私達は戻るとしよう。アインズ、邪ンヌは一応戦闘があったように見いせる為に傷、つけておくように」

「わかりました、オルタさん」

「えーーー!あの鎧カッコカワイイし気に入ってるのよ~!」

「文句言うな、なんならお前だけ死んだ扱いでも良いんだぞ?そうなったら気軽に町に出歩く事も出来ないだろうn――」

「――傷でも何でもごじゆーにどうぞ♪」

 

手平クルリと回転させ自身の鎧を差し出す邪ンヌ、ここら辺は原作というよりかは本人っぽさが出ている。

そんなこんなあり、転移して以来一番の多忙な日であった今日はこれにて一段落。

だが"今"が収まっても、"これから"の問題がまだ収まっていない。そのうえ新たな問題までも出て来てしまった……。

この問題はどうするべきか解決策をすぐに模索しなければならない、オルタ達の気が完全に休める日が来るのは、まだまだ当分先である――




簡単キャラ設定

オルタ&邪ンヌの精神変化度合について (低・中・高 三段階にて評価)

オルタ『精神変化レベル:高』

オルタの中の人が考えた"自分好みの設定"、「こうあってほしい」「こうなら素敵」といった"キャラへの願望"が強かった為に精神も自身の設定や願望に大きく引っ張られています。
変に頭の回転が速かったり、自身の考えを通そうとするのはキャラ設定の願望が強くでてるから


邪ンヌ 『精神変化レベル:小』

邪ンヌは設定等を付けて遊んだりしていますが、他の仲間達とは違いそこまで強くこだわっているわけでも無く、「自由気ままに遊んでキャラになりきる!」といったスタイルのプレイヤー ――

その為、キャラ設定による口調や思考は多少変化が起こっていても中身は結構中の人のまま。割合でいうなら7:3で自我が強く残ってます。
無類の美少女・美女好きや、おちゃらけた性格なのも本人の部分が強いから。キャラのメイン種族であるニャル様特有の変幻自在な神性も関わっているのかも……?

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