オーバーロード ~堕ちし聖女と黒き騎士~   作:赤猫project

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第12話

 

――ナザリック第八階層――

 

フィールドの9.8割が荒野で構成された階層。この階層に入れる人物は私達プレイヤー以外許可なく入る事はできず、当然許されない立ち入り禁止区域――

 

そんなところに一人荒野を歩く私、オルタは何の為にこの場所に居るのかという疑問。それは、この階層に存在する"あれら"を見に来たのと、私が創り上げたNPCの様子を見に来たのだ。そのNPCは私達がこの世界にやってきた時の集合や、時折開催される会議の際も私達の前にやってきた事は無い。

 

その理由は決して我々に忠誠を抱いていないから来ていないわけでは……いや、それもあるのか?ま、まぁそれはいい。

そのNPCが来ない理由は、この階層の監視兼守護の為この階層から出なかった、いや…出さなかったのだ。その訳は、この階層にある。

 

「着いたな。まったく、この広さで転移できないのは面倒だな」

 

階層の端、一面茶色い荒野の大地に唯一存在する緑。その山に自制する緑の樹々と桜、その中心に古ぼけた幾つもの赤い鳥居を通る階段が続く『桜花聖域』。

100段以上はあるであろう階段を上りきると、そこにあるのは立派な本殿。そう、此処は神社――この階層を管理する為に置かれた唯一の建物だ。その近くに立っているのは、私の存在を待ち律儀に頭を下げて待つ一人の巫女。

 

「お待ちしておりました。ようこそ桜花聖域へ」

「顔を上げよ、オーレオール・オメガ」

「はい」

 

顔を上げるオーレオール・オメガ。赤と白の巫女服を身に纏い、長く整った黒髪をなびかせる彼女*1は、このギルドで唯一の()()()。といっても只の人間種ではない。その身に不死性を宿らした人間種でありながら、異形種に近い性質を宿らせた"異人"と表現できる存在。

プレアデスの一人でもあるが、彼女は他のプレアデス達とは違いレベルは100もある。詳しいステータス等は知らないが、彼女はこの桜花聖域の転移装置の管理や重要なアイテムの管理等を任されている。ちなみに彼女が目的のNPCではない。

 

「今日来た理由は把握しているな」

「伺っております。転移門を通り、かの場所に向かわれるのですね」

「ああ。私が創りあげた()()()がどうしてるか、確認したくてな。あと……"あいつら"の様子も見ておきたい」

「畏まりました。では、こちらへ」

 

オメガの案内についていく。山の岸壁に創られた大きな木造の門。そこに描かれているのは右に雷神、左に風神、そして中心に鬼の形相をした閻魔が描かれている。この先が、この階層が封印されている理由へと繋がる場所。このギルドの最大にして最悪の戦力――鈍い音と共に開かれていく地獄門。その先に広がる<転移門>の様な虚空の如き空間へと足を進めた。

 

 進んだ先に広がるのは、赤と黒の粒子が渦巻いてできた謎の空間。その粒子一つ一つがすべて生き物である。何億居るのだろうか、数えられることもできない無限に落ちる洞を気づき上げる、矮小な蟲の渦。その穴を浮遊している瓦礫が足場を形成している歪な空間だ。この虚空の洞を形成する虫の渦を一人で操り形成しているのが私が創り上げているNPCであり、"8階層のあれら"を隔離している張本人である。

 

その人物は、浮遊する大きな大理石の床に立ち、虚空の下を見下ろすように端に立っていた。黒い虫の羽に、ファー付きの服。鋭く豪壮な片手は黒く、まるで竜人の腕の様な形相をしている。なにより不気味なのは、彼の身体を漂い囲う黒い小さき粒子の渦。それはまさしく、この洞を形成している蟲そのモノ。私の存在に気付き、こちらに振り向く人物。その顔は片目以外がすべて様々な蝶や蛾で覆い隠されていて悍ましい*2。そして羽の隙間から覗かすその瞳は暗く、見るモノすべてを嫌悪している様であった。

 

「久しいなオベロン、いや……オベロン・"ヴォ―ティガーン"と呼ぶべきか」

「……。」

 

オベロンは何も答えない。彼は蟲の魔人種、コキュートス達に近い種族ではあるが、声帯が無いわけではないのだが…このオベロン、声を持つ器官が無いのか喋らないらしい。オメガからの情報でも、何か伝えようとするときは、すべて身振りと態度、そして唯一見れる片目から想像するしかないそうだ。

特段そのような設定を創った覚えは無いのだが……これがオベロンの本当の姿ということなのだろうか。あのすべてに嫌悪し、あらゆるモノをその穴に沈めようとした、おちゃらけているようで、すべてが嘘で塗り固められたお調子者のような言葉が無いとは……ほんの少し残念である。

 

「"あいつら"はこの下に居るのか」

「……。(小さくこくりと頷く)」

 

この下に居ることを確認し、おそるおそる下を覗く。その下に居たのは、大量の停滞した瓦礫。その瓦礫軍一つ一つが巨大な鎖に繋がっておりあいつらを"拘束"している。

玉虫色と呼べるかも怪しい異様な輝きを放つ体表に、背後の巨大な円盤に繋がる異形の体は虫なのか、獣なのか、竜なのか、はたまた神なのか……何をモデルにされたのかすらわからない歪な構造。

 

そして一番恐ろしいと感じる理由…この化け物は眠り、動いていないというのに…まるで今まさにコイツに襲われ、殺されかけている瞬間だと錯覚してしまう程の強大な覇気とオーラだ。

 

これが、この第8階層に封印されているナザリック地下大墳墓最大戦力……"第8階層あれら"その正式名称は「One Radiance Thing(ワン・ラディアンズ・シング)」。その意味は…「究極の一」という意味だろう。それぞれの頭文字を取り、我々はこう呼んでいる――

 

 

 

 

 

 

 

 

ORT,と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつの恐ろしいと言わせられる所以、ORTが持つ強大な力とHP、そして不死とも呼べるほどの再生能力と適応能力にある。

 

この化け物、ユグドラシル内のルールを捻じ曲げ、死という概念がない。

ORTの外殻はユグドラシルのなにより堅く、柔らかく、気温差に耐え、鋭い。最低でもクレーターを起こすほどの墜落や攻撃をしても問題ない程の耐久性を誇る。

また体内では核融合反応によるエネルギー生成を行っている設定があり、その影響か周囲に有害な猛毒系デバフを放射し、本体内では常にMPが生成されている。

 

ORTの攻撃は巨大な爪や植物の根の様な糸をメインとし、糸は膨張・炸裂ができ、この糸にも致死量の猛毒系状態異常デバフが帯びている。

更に背部の発光と共に稲妻状の光線が雨の如く降り注ぐ超位魔法を超える威力とも呼ばれる範囲攻撃も可能。

 

他にもバトルフィールドに作用する能力を封じたり、暗黒物質を泳ぐ未知の微生物を使う(という設定)ことで相手のバフを奪うこともでき、さらにはデバフを付与されても高い自浄作用によってそれを自身のバフに変換されてしまう。

 

この超常生物には弱点など存在せず、レイドボスとしては次元違いの強さを持ち、さらに他の結界系魔法やスキルとは一線を画すワールドアイテムの効果に類似した能力をも使う。

 

そして異常なまでの不死性。ORTは生物エネミーでありながら、体の構造がゴーレム種やマキナ種等の機械に近いのか、どの臓器や体が破壊されても自己再生による治癒をすればすぐに再起動する。

いわば、爪が割れたのと心臓を砕かれたのがORTにとっては同レベルの「()()()()()()()()()()()()()()()()」ということなのだ。

 

これは全ての細胞が全ての機能を有しているためで、故に心臓や脳が無くても他のパーツがその代わりで補え、さらに独立して動ける。これによって、部位破壊による相手へのデバフというプレイヤーへのボーナスも無いようなモノで、壊したところでまた体が出来上がっている。

いままで上げた力の概要だけでも頭がイカれてると思うであろうORTだが、まだ驚嘆すべき点がある存在なのは、その修復を完全かつ自力で出来ること。

 

いや…修復するというより新造されるに近いだろう。言うなればパーツを破壊しても、暫くするとそのパーツがより改善されて修復するという、まさにキチガイじみた能力である。

ここから~ここまで・ここを失ったら死ぬ、という境界線が存在しない為、ORTを倒すには異常なまでの巨躯をすべて覆い、一撃で倒せせるだけの高威力、広範囲の魔法攻撃・スキル以外に方法がない。

 

ちなみに"あれら"と複数体呼称なのは、ORTの体は複数の形態のORTが分裂し、それらが合体したのが今封印されている形態。背中の円盤が本体であり、他は全て自身から分離させた分身体の様なモノで、本体と独立し襲い掛かってくる。つまるところ今のORTの姿は三位一体の状態と言う訳である。内わけとしては――

 

常に空に浮かび、黄金の触手とバトルステージの半分以上を埋め尽くす熱光を放つ円形の死神、UFO形態。

 

暗き青い煙炎を吹き散らし、大陸を蹂躙する白銀の外殻と蒼き怪光を放つ異形の蜘蛛、星獣(せいじゅう)形態。

 

星獣形態の琥珀色の胴体中心部にあるコアに眠り、小型ながら異常な力を宿しすべてを蹂躙する人の形をした星の神、星神形態。

 

……そんな化け物が何故このナザリックの地下に存在し、この場所に封印されているのか。それは、このナザリックにORTが封印されていたから。

ナザリックにプレイヤーが襲い掛かってきた時には、阿鼻叫喚の悲鳴と、運営への罵詈雑言と共にナザリック制圧を目指していた傭兵NPCなど合わせ計1500人というユグドラシルサーバー始まって以来の討伐隊の大軍が第八階層にて全滅した。

 

敵に回したくない化け物、こいつの対処の方法は簡単。

この怪物が近くに居る時に"戦闘行為を行わない"事。このORTは自身の身を守ろうと周囲で戦闘を行ったモノを自身が眠るエリア、つまりこの第八階層で戦闘行為を行った存在が()()()()()蹂躙をやめない。

 

その為、この場所では極限までNPCとの戦闘を行わないように配属しているNPCを極限まで減らし、少数のNPCの戦力は最高峰の者達を配置する。

そういう理由もあって、アインズはこの場所を立ち入り禁止としたのだ。万が一自己意識をもったNPC達がこの階層にやってきて、戦闘行為を行ったとあれば……最悪ナザリックが消滅しかねないから。

そんな恐ろしい化け物を何故今になって見に来たくなったのかというと、この化け物がユグドラシルから違う世界にやってきて、何か性質が変わっていないか自分の眼でチェックする為。

報告はオメガから随時受けてはいるが…やはり直接この眼でみておくのが一番安心する。拘束されたORTが動く気配は無く、どうやらユグドラシル同様のORTの状態な様だ。

 

「だが安心はできない…か」

「オメガ、オベロンよ。この化け物が暴れ、我々のナザリックが消滅しないよう、これからもしっかり監視を行う事を忘れるな」

「畏まりました」「(睨んだ瞳で小さく頷くオベロン)」

「お前たちを他の階層や、外に出せないのは私も少し思う部分はあるが、ナザリック1重要な役目を担っているのだ。申し訳ないが、これからも頼むぞ」

「勿体無きお言葉です、アインズ様方に創造されし我らは、偉大なる御方方の為に存在するのです。この命尽きるまで、あなたに仕えさせていただきます」

「…………」

 

オルタの言葉に頭を下げる2人のシモべを前に、オルタは内心では安堵していた。オベロンの睨みを聞かせた視線には、小さい敵視にも似た感情が乗ってはいたが、それでも一応創造主として完全に嫌だと感じていない様で安心した。

…この感情、まるで反抗期に入った子供を心配する親にも似ていて、心の中で微妙な感情が渦巻いているオルタであった。

 

 

 

 

 

玉座の間に戻ったオルタ。ユリが私が扉の前にたどり着く前に、玉座へ続く重厚な大扉の開閉の合図を唱えた。それに呼応し、重く響いてくる金属がきしむ音と共に扉が開かれた。毎度これがあって扉で待たされることも無く、スムーズに行動が出来るのだから嬉しいモノである。

だが……少しでも気づくのが遅れ、私の足が止まった瞬間土下座して必死に謝り、そしてなぜか死で償おうとするのだけはどうにかならないものなのか。

 

玉座へ続くレッドカーペットを歩むオルタ。玉座前の階段付近には、王が通れるだけの幅を広げたまま頭を下げて私が玉座へ座るのを待っている守護者各員。その周辺の空には、オレンジ色のデジタルウィンドウと共に、各重鎮とも呼べる立場についたNPC達が画面越しに頭を下げている、これはリモートで会話している様なモノだ。どうしても役職のせいで離れられない者達への対応策だ。

 

小さき階段を上り玉座の前に立つ。現在アインズと邪ンヌはここには居ない。アインズはエ・ランテルにてせっせと名声稼ぎというなの依頼中、邪ンヌはというと…休暇としてグレイ連れて王国以外の国にプチ旅行中だそう。

 

正直私としては他国へ行くのは現状控えて欲しいと思っているのだが、以前の墳墓で無理させた件もあったし、なにより元が自由奔放な人だから諦めた。だが、なるべく遠くの国へ行かない事を条件にはさせておいたので、いざというときは大丈夫だろう。

 

誰も居ない空虚な玉座の一つへ腰を座らせる。そこから眺める景色、すべてのNPCが私への忠誠を示すため、指示があるまで頭を下げ続けている。本物の王の様な光景、普通であれば慣れる状況では無いモノゆえ戸惑うだろうが、私の心はとても平静そのものだった。……かの光景はオルタ()にとってさも当然といった心持ち、(オルタ)は王であるのだという自覚、この世界にきて歪んだ精神、今の私だ。

 

「面を上げよ」

『『『はっ』』』

 

私の声に呼応して、全NPC達が顔を上げる。彼らの表情、偉大なる御方のご尊顔を見られたことに対する感謝と、これから話すことへの期待が目に見えて露わにしている。

 

「良く集まってくれた。今回はアインズも邪ンヌも居ない、故に私が代理でお前たちへ話そうと思い集めさせてもらった」

「今回の議題は、デミウルゴスが考案した「英雄化計画」、そして私が考案した今後のの方針を改めて伝える」

「ではデミウルゴス、そして守護者統括アルベドよ」

「「はっ」」

「お前たちが考えた「聖光・漆黒英雄化計画」の仔細を分かりやすく伝えよ。ずれが起こらないように疑問は全て無くすように」

「畏まりました。デミウルゴス、詳細を」「ええ、では…計画の詳細を話そう――」

 

デミウルゴスが語りだす。私やアインズ、邪ンヌは事前に二人から作戦の大まかな概要を事前に聞かされている。その内容は…"人"から見れば残酷、我々から見れば良く練りこまれた作戦だと感じた。

その時の内容は粗削りな作戦だったのでまた詳細な内容は変わってはいるのだが、それでもまだ完全じゃないと言う作戦で遂行しても問題はなさそうな程洗練されていた。

だが、その内容をこなした先に待っているのは……他国との戦争である。彼らは良くも悪くもナザリック至上主義、人間やナザリックの加護、庇護下に無いものは悲しく愚かな愚物と思っている。だから他の者は殲滅、ナザリックの威光をこの大地に…この考えの元行動している。

 

彼らはそれでいいと思っている…だが、そんな空虚な椅子に誰が喜ぶ?王が君臨する大地に、統治する人民が居ないなど、それではただ廃墟をわが物顔で占領する間抜けにしか見えない。ナザリックという面々がいるとは思うが、彼らは民ではない。

それをさらに超えた、家族と呼ぶに近い仲間なのだ。彼らをカウントするのはいささか違う。なので、此処から先の方針について、つい先ほど考えた案を伝えることにした。もちろんアインズや邪ンヌ達にも連絡済み、正直アインズがしっかり理解しているか至極不安だが……。

 

「――と、これが私が考えた作戦の概要です」

「ご苦労だったデミウルゴス。さて、皆が聴いた通り我々がこれから進む道は各国への反感を多く買うだろう。だが、お前たちの戦力であれば大きな問題はないだろうと思っている」

「我々の力を表に出せば、我らの威光は全世界に知れ渡るだろう」

「――だが、それではつまらない」

 

同様の声を漏らす各員。それは先ほどの作戦に不手際があったのだろうか、それとも我々に不備が……などとあらゆる不安が渦巻いているのだろう。

 

「力でねじ伏せ、世界に恐怖を与えたうえで成り立つ王国……それではあまりにも、つまらないではないか」

「瓦礫を山に積み、真なる意味で我々を畏怖し尊敬するお前たちが国の根幹を担う、そして我々の庇護下に入れなかった愚かなモノ達は排斥し、敵対者は全て殺す……人間からみれば暴君とも捕らえられる王政、それではただ退屈だ」

 

静かに言葉を聞き入れていく各員、オルタが話す一言一言を聞き逃さないように真剣な表情で私の言葉を聞き入れていく。彼らにこれから話す事に対して受け入れるだろうか、小さい不安が心の中で黒く広がっていく。

 

――何を不安に思う事がある。

 

彼らにこの世界を本当の意味で、統治する…それを受け入れる意志があるのだろうか。

 

――私が目指す道こそ、我が王道へと繋がるのだ。

 

……心の中で、深い闇へと誘おうとしてくる甘く冷たい声。これは、私ではない、オルタからの声だろう。本来の彼女とは精神の構造が異形種の歪な感情に汚染された、歪んだ私の騎士王からの誘い。

そうだ、こうあれと願ったのは私だ、これが私が理想として虚像を現実に表現した私のオルタ。なら……その通りに進むべき……本当にそうか?いや違う、違うはずだ……今の私は"創り上げたオルタ"でも、"プレイヤーの私"でも無い……歪に歪んで混ざり生み出された"新たなる(オルタ)"のはずだ。

なら、過去に創り上げた設定も、人間だった時の私でも考えなかった、今の私だからこその理想を創り上げる。私が望む、理想の世界を――

 

「お前たち、この世界に存在している信仰を知っているか?この大陸に六大神と呼ばれ崇められている者達だ。以前私は、この者達が何百年も前に到来した者達、同じプレイヤーだと結論付けたと、お前たちに報告していたな」

 

邪ンヌの分身体であるヴリトラが接触したという法国、かの国は六大神と言われる数百年前君臨したプレイヤーと思われる者たちを神と讃え信仰している。それ以外にも、八欲王と呼ばれ恐れられた。こちらもプレイヤーと思われる者達が暴れ、魔王や魔神として恐れられ一部の文献に記されている。

つまりだ……この世界でただ王を名乗り、この世界のかの大陸に君臨すること自体は、前任者が居ることから考えおそらく可能なのだ。だが…それだけなら簡単に終わる、故に私達は――

 

「なら、このまま予定通りに国を創り上げ王となる…それで終わりにするのか?」

「前任者達が神として君臨したというのに、我々は只の一国の王となる……それでは、あまりにも退屈ではないか!」

「「っ!?!?」」

「私達プレイヤーはこういう言葉を知っている、現人神という存在を」

 

現人神――それはこの世に人間の姿で現れた神。そう、超常的な力を有し、大地に君臨した人の身であって人ではない次元を超えた存在。

この存在を思い出し、闇に澱んだ私の思考はこう思ったのだ……我々に相応しいのでは、と――

 

「私は、この大陸を統一し…あらゆる種族が信仰の元となる存在、今を生きる現人神となろうではないか」

「すべての生命が我らが威光に頭を下げ、その寵愛を受ける為にナザリックを信仰する……フッ、これほど愉快で面白き事があろうか」

 

配下達各員から驚嘆の息が漏れている。守護者各員の表情はそれこそ本物の神を見たかのような感激に溢れ、顔から自然と笑みがこぼれ、声が出ないのかうわごとのように口から途切れ途切れの弱い声を出している。

 

「故に私はこの世界において、我らがナザリックの至高なる43人の中で残りし我々――」

「私、セイバーオルタ・邪ンヌ・アインズ……いや、モモンガを…この世界の神として確立させる」

「世界が知るのだ、この大地において我々こそが全てを支配するモノだと。故に我々の最終目標は、我ら三柱を神へとすることだ!お前たちなら――容易いだろう?」

 

不遜なる笑みと共に、黒龍の翼が背中から伸び羽搏く。偉大なる御方であらされるオルタから語られた壮大な目標。玉座の間は彼ら偉大なる御方々を讃え、その永遠なる忠誠を再度示すための雄たけびと歓声で満たされた。

 

その光景を出先で見ていたアインズと邪ンヌはオルタの王としての姿と、それに見惚れ歓声を上げるNPC達の姿を一人は白んだ目で覗き、もう一人はこれから起こるであろう退屈しない日々を幻視し不敵な笑みをこぼしていた。

 

「デミウルゴス、そしてアルベドよ。我々の新たな目標を掲げた事によって、お前たちが考えた作戦も新たに修正を加えて欲しい…できるか?」

「っ!お任せください!このデミウルゴス、偉大なる御方々がこの大地に神として君臨する為の足掛かり、その第一作戦…心して計画を練らせていただきます!」

「我々の忠誠が必ず御方々を喜ばし、その気高き理想を実現できると……証明して見せましょう‼」

 

「ナザリックに栄光を‼‼」

 

『『『ナザリックに栄光を――‼‼』』』

 

「アインズ・ウール・ゴウン、万歳‼‼」

 

『『『アインズ・ウール・ゴウン、万歳‼‼』』』

 

歓声が鳴りやまないナザリック地下大墳墓、そんな中オルタ達に心酔し、さらなる忠誠を示す彼らを見て…複雑な心持ちを抱えたまま除く一人の"吸血鬼"が居た。

 

「ナザリック……か」

 

真夜中の王都、その町の屋根に一人赤い血で形成された羽を縮め、複雑な表情でオレンジ色のモニターを眺める紅き瞳の吸血鬼「クレマンティーヌ」がそこにいた。

*1
デザインは"killsheepsama"様から頂いております

*2
こちらのデザインもTwitterから許可を頂き真似させていただきました




ちょっとオリジナル展開になりそうと思った方、オリジナルというよりスマホゲーのストーリー展開に近い目標なので、実はそこまでオリジナルではないですよ(小声)

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