オーバーロード ~堕ちし聖女と黒き騎士~   作:赤猫project

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遅くなりました……。

個人的にかなり中途半端感がありますが、これ以上遅れるよりかは一旦この状態で出して、続きを次話に書こうと思います。

仕事しながらの執筆は余裕がある時と無い時の差が凄いので、ご了承くださいまし……。


第14話

<グレイ視点 王国・路地裏>

 

「すいません!」

 

息荒く、路地から飛び出してきたのは一人の青年でした。軽装…というより私服の装いで、腰には剣を備えています。かなり必死に走り追いかけてきた様子。髪は乱れ、顔には多量の汗が流れ続け、白い息は止まる事は無い様子。

 

「「……。」」

 

追いかけてきていた金髪の青年がこちらを振り返る。腰に備え付けたかなり汚れた剣や遠目でも目立つ岩肌の様に固く出張った豆が出来ている手を見た感じ、それなりに剣術が扱えるようです。

服装は一般的などこでも普及しているオーソドックスなモノであるのをみると騎士や冒険者ではないのでしょうか?もしや盗賊や野盗の類なのかとも一瞬思いましたが、それならわざわざ声を掛けるなどありえないだろうし、なら彼がセバス様を追いかけてきた理由は一体――

 

「…何用でしょうか」

 

考え込んでいるうちにセバスさんが()()()()()威圧的に声掛けに返答しました。それを聞き先ほどまで追いかけてた際にかいたであろう汗とは違う汗が顔の皮膚から溢れ、流れ出している青年。

……せ、セバスさん。人にとってセバスさんの"少し"の威圧感は"かなり"の威圧感に感じてしまうので、少し強すぎます…!

 

できればここからさらに押さえて欲しいんですが……と思ったのですが、あの威圧を受けたのに、生唾飲んだのちにこちらに歩き近づいてくる。その表情は固く強い決意を決めた力強い表情をしています。あ、あれ?普通の人からしたら精神的重圧にそうとうまいっているはずなのに、この人の精神力は他の人間とは違うようですね?

 

「(セ、セバスさん…少し威圧が強すぎませんか?屋根に止まっていた鳥も驚いて飛んで行ってしまいましたよ……)」

「(心得ております。ですが、ここまでして私を追いかけてきた方、どのような人物なのか見極める為にも、少し強めにしてみましたが…強い心の持ち主のようですね)」

「(わ、わざとだったんですね…)」

「(それに……ここに来る前から尾行者が5人程ついてきておりまして……)」

「(尾行…このあたりは治安が悪いですからね、裏社会の人間も多いですから、セバスさんの格好ですと狙われてしまったんでしょうか)」

「(……そうだと良いのですが)」

「(……?)」

 

調べ終えたのだろうか、セバスさんが放っていた威圧感がフッと消えていく。それに気づいて歩いてこちらに近づいてきていた青年の口から小さく息が漏れた。

まるで戦場に向かっているかのように険しかった表情が少し和らいでいますが、あの威圧でかなり警戒心が生まれてしまっている気がします……。こ、この後の応答大丈夫でしょうか?

 

「貴方は一体?」

「あ……わ、私はクライムというもので、この国の兵士の一人です」

「本来であれば私の仕事の代わりをやっていただき、ありがとうございました!」

 

どうやら先ほどのセバスさんのひと悶着を見ていた王国の兵士の人の様で、セバスさんに深々と頭を下げています。

これだけでもこの人がとても誠実で実直な人というのがうかがえます。拙も人と一緒に居る機会が増えたおかげでそういう感覚もわかるようになりました。

 

「…ああ、構いません。では、私はこれで――」

「お待ちください!もし…もしよろしければ、先ほどの技を、伝授してもらえないでしょうか」

「(先ほどの技…?)」

「……どういう意味でしょうか」

 

話を聞くと、彼クライムさんはとある重要な方の護衛騎士らしいが、自分の非力さを誰よりを自覚し、その人を守れるように強くなるために修練に明け暮れているそう。

そんな自身の成長に伸び悩んでいる中、今日の騒動ですさまじいう動きで暴漢を鎮圧したセバスさんの動き、それを見てしまいどうしても学びたいと思い追いかけてしまったそうだ。

 

「ふむ……では、まず手を見せてください」

「えっ、は、はい……!」

 

セバスさんに言われたように手の平をみせるクライムさん。その手は所々豆とこぶが出来ており一目見ただけで普通とは違う分厚い手だと分かります。この感じだとクライムさんはかなりの努力家なんだろうなと、拙でも何となくわかる手でした。

 

「ふむ…厚く、硬い、戦士の良い手です」

「いえ、私など戦士の端くれ程度でしかありません」

「そんな謙遜しすぎですよ!クライムさんの努力がとても伝わる、良い手だと、拙は思います!」

「あ、ありがとう……。ところで、君は――」

「――では次に、剣を見せてもらえますか」

「あぁはい!」

 

偶然ではありましたが話を遮るようにセバスさんの次のお願いが届き、クライムさんも急ぎ剣を手渡しました。……セバスさんの優しい雰囲気があるとはいえ、他人においそれと自分の武器を見せる為に渡してしまうのは、ちょっとどうなのかなと思うのは拙だけなのでしょうか……?

 

「なるほど…これは予備武器ですね」

「なっ⁉どうしてそれが!?」

「なに…この部分に小さいですが凹みがありますし、所々に刃こぼれも見られましたので」

「っ!こ、これはお恥ずかしい所をお見せしました!」

「恥ずかしがることはありませんよ。今日は非番だったのでしょう、すこし気が抜けてしまうのはよくある事です」

「……///」

 

自身の恥ずかしい部分を見られてしまい顔が赤くなるクライムさん。なんか……この人は他の王国の兵士の方や町の人達よりも、少しだけ良い印象を感じます。偉い方の護衛を任される人なのですし、本当に根底の部分から善人な人なんでしょう。

 

「…貴方の性格は大体掴めました。戦士にとって手や武器はその人物を映す鏡です。貴方は非常に好感が持てる方の様ですね」

「わかりました、貴方に少しだけ訓練を付けましょう」

「ほ、本当ですか!」

「い、いいんですかセバスさん?何か急いでいた事があるんじゃ……」

「……何、いづれ対処する事ですので今すぐでなくても大丈夫です」

「あ、あの……所でこの女の子は一体?」

「あぁ、自己紹介をそもそもしておりませんでしたね。私はセバス、とある方の執事をしております」

「で、では拙も。拙の名前はグレイといいます」

「グレイ……グレイ?(その名前、つい最近聞いた気が……)」

 

……?何故か拙の名前を聞いてから、クライムさんが少し考え込んでいる様な気がします。拙がエ・ランテルに来たのはここ数週間前ですし、この王国で私を知っている人は教会の人達ぐらい。その教会の人もエ・ランテルでお会いした人が多かったり、その教会で知り合った人ぐらいなのですが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

【回想】

 

数日前 リ・エスティーゼ王国のとある酒場にて

 

 

 王都を歩くクライム、とある酒場にいるハズの二人にある方から伝言を頼まれ、その使いとして歩いていた。話で聞いた酒場にたどり着くと、すぐには入らず身だしなみを確認しておく。どんな時でも失礼が無いように気を付けなければならない。

護衛騎士だからという理由もあるが、これからお会いする方達は自身が命に代えてもお守りしなければならないこの王国の宝、リ・エスティーゼ王国()()()()である「ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ」と交流する人物達なのだから。

 

 

実たしなみに問題ない事を確認し、意気揚々と酒場の扉を開ける。中の賑わいは昼前だというのにそれなりに人が酒を楽しんでいる。そんな酒場の左奥、テーブルに大きなエールを注文した深紅の鎧を身に着けた大柄の女性と、同じく深い深紅のローブを身に着けた仮面の小柄の人物が話し合っている姿が目に入った。

その二人が今回目標の人物達、伝言を伝える為に歩みを進めるとこちらに近づく足音に気付いたのか大柄の女性の方が近づいてくるクライムに気付き、此方に振り向き笑顔を見せて手を振った。

 

「よぉ、童貞!」

「……お久しぶりです」

 

第一声が「童貞」なのはどうかと思うが、豪放磊落な性格は以前合った時と全く変わっていない。彼女がガガーラン、この王国のアダマンタイト冒険者チーム「蒼の薔薇」のメンバーだ。その隣にいるローブの少女も同じくメンバーの一人、イビルアイである。

そう、我が主ラナーの知り合いというのは、「蒼の薔薇」のリーダーである「ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ」。ラナーとの交流があり、時折冒険者が請け負ってはいけない、裏方の仕事をラナーから請け負ったりしているのだ。

 

裏方の仕事というのは、この国に蔓延る犯罪組織「八本指」に関する仕事。「八本指」はあらゆる犯罪を行い、王国を裏から操り支配しようとする者達。麻薬に奴隷売買、密輸、暗殺……あらゆる犯罪を請け負うこの国の汚点だ。

そんな汚点を掃除する為に、ラナー協力のもと、八本指殲滅の為にラキュース達は王国各地を奔走し、拠点を潰し、構成員たちを始末し、麻薬を焼き払ったりと、大々的に敵対していた。今回の連絡もその八本指がらみの連絡である。

 

「なんだぁ?俺に抱かれにきたのか?」「いえ違います(キッパリ)」

チッ…即答かよそれで、何の用だ?お前さんがここに来るなんて珍しいな」

「アインドラ様から伝言を預かりました。「至急動くことになりそうだ、詳細は戻り次第。ただ即座に戦闘に入れるように準備を整えておいてほしい」…との事です」

「おう、りょーかい。にしてもそれだけの為に此処に来るなんざ、ご苦労なこったな」

「いえ、これも護衛騎士である私の仕事ですので」

 

その後しばらく二人と話し合ったクライム。先日ガゼフ戦士長と手合わせをした事、イビルアイに頼んでいた魔法の修行についての話し合い、その際に浮かんできた魔法の歴史についてや、蒼の薔薇のリーダーラキュースについてなど……。

自分には才能が無い事を知っている為、このようなたわいない様な会話の中でさえ、一言一句危機のふぁすことなく、全て聞き覚え自分に蓄えようとしていた。そんな中、ラキュースの話をしていた際、何かを思い出したようでイビルアイが突如話の話題を少し変えた。

 

「あ、ああ!ガガーラン、そういえばエ・ランテルに()()()のアダマンタイト冒険者が生まれたらしいぞ」

「何?初耳だな。……ってか待て、()()()?エ・ランテルにいた元々のアダマンタイト冒険者は2組だけだろ?」

「それが、エ・ランテルに生まれたアダマンタイト級というのが、二組なんだ」

「マジかよ!同時に二組の冒険者がアダマンタイト級に選ばれたってのかよ!そんな話前代未聞じゃあねぇか?」

「そうだな…どうやら一方は黒色、もう一方は白色らしいぞ」

「うーん、黒はともかく白色かぁ……スレイン法国よりじゃなきゃ嬉しいがな……」

「そうか?私はスレイン法国寄りでも気にはしないがな。私自身命を狙われている身ではあるが、あの国の方針には多少共感できる部分があるぞ」

 

二人が法国について話し合い始めた。そんな中エ・ランテルで生まれたアダマンタイト級冒険者の事が気になっているクラインは二人の話を遮るように、イビルアイに冒険者の件を聞いてみることにした。

 

「……申し訳ありませんイビルアイ様。アダマンタイト級の冒険者が生まれたとの事でしたが、その方の名前はなんと?」

「ん?ああ、そうだったな――」

 

「1組は「漆黒」と呼ばれているチームだ。モモン、「漆黒の英雄」なんて呼ばれている戦士がリーダーで、「美姫」と呼ばれるナーベという、魔力系魔法詠唱者(マジック・キャスター)の二人組だ」

「ほぉ~!二人だけとは、こいつはかなり隠し玉持ちだな」

「……もう一組の方は?」

「もう一組は「聖光」。「アルトリア・ペンドラゴン」と呼ばれている純白の鎧をまとった騎士がリーダーだ。メンバーは、「聖女」と呼ばれている信仰系魔法詠唱者(マジック・キャスター)の「ラピュセル」、そして――」

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

<グレイ視点 王国・路地裏>

 

 

 

「もしかして……「聖光」の?」

「あれ、拙のチームの事を知っているのですか?」

 

どうやらクラインさんは私達の事を知っているようです。王国では冒険者としての行動はしていないはずですが、エ・ランテルでの評価がこちらにも広まっているのでしょうか?冒険者としての武勇を広めるという作戦目標、この王国にも広まっているという事は、作戦は順調そうですね。最初は拙にこんな大役務まるのか不安でしたが、順調に作戦を遂行できてるようで少し安心しました。

 

「おや、彼女の事をご存じで?」

「はい。エ・ランテルのアダマンタイト級冒険者チーム「聖光」のメンバーの一人、様々な武装を扱い敵をかく乱するアサシンとして登録されている方ですよね!まさかこんなに幼いとは……!」

「あ、あの……拙はそこまでの人間では……///」

「ご謙遜を!エ・ランテルで発生したアンデッドの大量発生事件、墓所の扉を破壊するほどのアンデッドの濁流を「漆黒」のナーベさんとの二人だけで対処し、北の山脈から飛来したワイバーンの群れ50頭の内の13体の単機討伐、貴重な薬草の採取に貴族の護衛の完遂……この偉業の数々、素晴らしいの一言に尽きますよ!」

「あの…その…… /////

「クライン様、それ以上は止めてあげた方がよろしいかと、彼女すっかり赤くなってしまっておりますよ」

「あ、あぁ……!すいません、私としたことが興奮しすぎてしまい…!」

「い、いえ…大丈夫です……!」

 

褒められる事に慣れていないのもあって、拙は純粋な誉め言葉が大の苦手です……。普通の人間であるクラインさんですらこの調子だと、もし偉大なる御方々に褒められると、私どうなってしまうんでしょうか……うぅ、想像することもできません……。

 

「そういえば、そんなすごい方がどうしてセバスさんと共に?もしや、師匠と弟子といった関係なのでしょうか?」

「えっ?あ、ああ…そ、そういう関係ではないんです!拙とセバスさんとは、以前セバスさんがお仕えするお嬢様の護衛として冒険者依頼をだしていまして、そこで数週間護衛をした際に、仲良くなったといった感じでして」

「ええ、皆様方の護衛は気の難しいお嬢様も、大変お悦びになっていましたよ。今日この場で会ったのも、完全に偶然なのですよ」

「な、なるほど……そういう関係だったのですね」

 

勿論今の話は先ほどすぐに考えた嘘です。いざというときにすぐ嘘を考え、それが事実の様に話し信じ込ませる……邪ンヌ様が教えてくれた技術です。あのお方の様に上手く騙せたのか不安ですけど、現状変に思われている様な様子はない様なので良かったです。

さすがに他人の成り立ちに深く聞きに来るような状況ではないですし、そんなデリカシーに欠ける人ではないのは知っていたので、この人だからこそ上手く騙せた……のでしょうかね?

 

この後、セバスさんがクライムさんにこの場でできる簡単な修行を行うのですが、まさかその修行があんな事になるなんて、拙には思いもしませんでした……。

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