オーバーロード ~堕ちし聖女と黒き騎士~   作:赤猫project

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GW中に出す予定が投稿ボタン押し忘れてそのまま放置、しかも自分は出したと勘違いし気づかない始末、遅れて申し訳ありません

あと4期&新規劇場版製作決定おめでとうございます!


第4話

――エ・ランテル 冒険者組合 モモン(アインズ視点)――

私達は冒険者組合の扉を押し開けた。

組合に足を入れると奥にあるカウンターが目に入る。そこでは組合の受付嬢が数人、笑顔で我々の先輩であろう冒険者らの相手をしている。皮の軽装鎧に剣を持つ者や、神官衣に十字の装飾が付いたネックレスを掛けた者など様々な人達が集まっている。

 

「わぁ、人がいっぱいですねアルトリアさん」

「そうですねグレイ」

「人が多いという事は、それほど冒険者が必要な者が多いってことなんでしょう」

「いい仕事の取り合いになりそうだ、少し急ごうか」

「畏まりました」

 

そういい私達は受付に向かう為歩き出した。幾多の視線が私達の姿格好に集まっているのが感じられる。それもそうだ、この組合の中で私達の姿はかなり浮いている。それに私達は今日冒険者になりに来た者で首には冒険者を示すプレートが掛かっていない。周りには金や銀のプレートを付けた者ばかりで若干アウェー感を感じる。

 

「拙達、すごい見られていますね…。」

「チッ、ゴミムシ等が…」

「こらナーベ!そういうこと言わない。」

「も、もうしわけありません!じy…」

「ラピュセルよ、ラ・ピュ・セ・ル!」

「ラピュセルさー…ん」

「んーたどたどしいですが、まぁカワイイのでいいです♪」

「貴女のそういう所は変わらないのですね」

「ハハハ...おっと皆さん。もうすぐカウンターですよ」

私達が話ながら歩みを進めるとカウンターの前までやってきた。するとタイミングがよくちょうど一組が終わったようで、手の空いた受付嬢が居た。その受付嬢は私達に気づくと私達に声をかけてきた。

 

「ようこそ冒険者組合へ、今回は何の御用でしょうか」

「えっと、拙達は冒険者への登録がしたくて」グレイがひょっこりカウンターに顔をだし受付嬢の質問に答える

 

「わかりまし……えっ貴女も冒険者になるの?」

「はい…えっと、年齢の方は一応大丈夫かと…」

「そ、そうなの…わかりました。では手続きをしますが何名のパーティーですか?」

「拙達はこの方々と3人で組むつもりです」アルトリアとラピュセルを指さし答える。

「えっと、後ろの方々は違うのですか?」

「あぁ、彼らとは旧知の仲ってだけでパーティーは別々です。私達三人で1パーティーということでお願いします」

「そうですか、わかりました。ではそちらの方々も同じく冒険者登録を?」

「ええ、別々で二人パーティーを組みたいのですが」

「わかりました。では三人パーティーと、二人パーティーでこれから登録しますのでこちらの冒険者組合の規約の確認と必要事項を記載ください」

「わかりました」

私達は受付嬢から渡された羊皮紙とペンを受け取り記載された規約に目を通そうとしたがここで重大な事に気づいた。

文字が読めない!

日本語や英語などではない見たこと無い文字がずらりと並んでいる。これじゃあ何て書いているのか読めたもんじゃない…

 

『やばい、これ読めないんですが…。』

『ああ、これは困った。必要事項も何を書けばいいのかわからんぞ』

『そうですね…そうだ!ねぇお二人共、このアイテム使えませんかね?』

そういいラピュセルがアイテムボックスから取り出したのはモノクル型のアイテム、これはアイテムの鑑定や鍵開けなどの技術に補正をかけてくれるアイテムだったはずだが…

 

『それって、この前モモンがセバスに渡したアイテムですよね』

『なんで今それを?』

『このアイテムの説明欄に、「かの眼鏡、失われた言語を自動で翻訳する」とフレーバーテキストが入ってたんですよ』

『そうか…フレーバーテキストの部分も反映されてるかもしれないな』

『はい、ではさっそく使ってみますね』

そう言いラピュセルは取り出したモノクルをかけて受付嬢から貰った羊皮紙を覗いてみる、するとみるみる文字が日本語に翻訳されていった

 

『よかった!ちゃんとフレーバーの部分も反映されて、文字が翻訳されてますよ』

『それは良かった!あ、でも私達がこの字を掛けなきゃ読めても…』

『その点も大丈夫そうです、眼鏡の端っこに自分の名前の書き方等が出てきます』

『よかったぁ、ではラピュセルさんがメッセージで翻訳部分を伝えてほしいんですがいいですか?』

『わかりました、このまま進めていくんですね。ではまずは…』

ラピュセルが翻訳し、必要な部分を羊皮紙に記載していく。そういえば偶然ラピュセルが今アイテムを持っていたから今何とか乗り切れたが、もし何もなかったら今頃どうなっていたのか…受付嬢に任せることができたのか…そんなことを各々頭に思いながら書類を書き進めた。

 

「拙にはこの文字は読めないんですが…ナーベさんは読めます?」

「まったく……でも至高の御方々はスラスラ書いているわ…流石はモモンさん」

「えぇ、ほんとすごいですね!」

やめてくれ二人共、自分達は内心とんでもなく焦ってるんだ…。

なんとか危機を乗り越えて、書類(難敵)の方は記載が終わった。名前と役職、現在の所在地など簡単な物しか記載してないがこんな簡単な物で大丈夫なんだろうか

 

「拝見しますね。ふむふむグレイさんにアルトリアさん、ラピュセルさんで1パーティ……。モモンさんとナーベさんで1パーティーですね!確認しました、少々お待ちください」

スラスラと全ての書類を確認すると受付嬢は、カウンターの奥の棚から何かを手に取り持ってきた。手元には人数分の胴のプレート付きネックレスのような物を持っているように見えた

 

「では皆様こちらのネックレスを必ず身に着けてください。こちらは皆様が冒険者だという事を証明する物ですので絶対に無くさないように」

「それと、冒険者は依頼を多くこなすことでプレートのグレードが上がります。プレートが上位の冒険者ほどより強大な敵と戦うことになりますがその分報酬も高くなりますので頑張ってくださいね」

「わかりました、ではさっそくですが依頼を受けたいのだが。現在のランクで一番高難度の物を見繕ってくれないか?」

「い、いきなり高難易度ですか?冒険者という仕事はとても危険な物ですので最初は簡単な物の方が…」

「心配してくださりありがとうございます。でも大丈夫ですよ。ナーベ、彼女は第三位階の魔法が使えます」

「私も信仰系の第三位階魔法が使えます」

「せ、拙も使えます…!」

ざわりと大きく空気が動く感覚を感じ後ろを見てみると、驚愕の視線がナーベ、グレイ、ラピュセルに移っている。どうやらこの世界は、第三位階の魔法は魔法詠唱者(マジックキャスター)として大成した者が扱う領域と聞いた。そんなものが一度に3人も、しかも新人としてこの組合に来たのだからそれはとんでもない話なのだろう。

 

「私達も彼女達の強さに匹敵するだけの戦士です」

「アルトリアさんの言う通りだ。私達は報酬目的ではない、高レベルな仕事を望んでいるんだ。なので我が儘なのは承知しているがレベルが高い仕事を見繕ってほしい」

「そうですか…、皆様がそこまで言うなら探してみます。魔法使いとしての実力がある事を考えると、よさそうな仕事は……」

 

そういい、受付嬢は手元にある依頼の羊皮紙を探り私達に合った依頼を探している。すると私達の横から若い青年の声が聞こえた、どうやら私達にむけて話しかけているようだ。

 

「よかったら私達の依頼を手伝いませんか?」

 

声の聞こえた方に視線を向けると四人組の冒険者がいた。そして声をかけたであろう者は帯鎧を着用している戦士風の男。この男が後ろのパーティーのリーダーだろうか

 

「その依頼とはやりがいはありますか?」

「うーん。まぁ、あると言えばあると思います」

『二人共どうします?』

『私は別に彼らの仕事を手伝いをするのに問題はないぞ』

『私も特に異論はありません、初の仕事ですので、仲間が多いのはいいですけど…もし私達が苦手な部類の依頼だったら』

『では彼らの話を聞いてから決める、そうしましょう』

『『さんせーい』』

「やりがいのある仕事ならぜひ一緒にやらせていただきましょう。しかし一応どんな仕事なのか聞かせていただけますか?」

「わかりました!」

 

男は嬉しそうな声を上げると、受付嬢に少し広めの部屋を用意させた。まるで会議室のような広さの部屋に行き、それぞれ席に着くと私達を誘った男が話し始める。

 

「さて仕事の話をする前に簡単な自己紹介を。私がこの『漆黒の剣』のリーダー"ペテル・モーク"と言います。そして左に座っているのがチームの目や耳であるレンジャーの"ルクルット"」

「よろしくぅ♪」

「そして私の右に座っているのが魔法詠唱者(マジックキャスター)であり、チームの頭脳。"ニニャ"――『術師(スペルキャスター)』」

「…よろしく。しかしペテル、その恥ずかしい二つ名やめません?」

「え? 良いじゃないですか」

「へぇ、二つ名持ちなんですか」

「こいつ"生まれながらの異能(タレント)"持ちで、天才と言われる有名な魔法詠唱者(マジックキャスター)なんだよ」

「ほぉ、タレント……」

 

『タレントって確か、捕まえた陽光聖典の奴らが言ってた情報の奴ですよね?』

『だな。たしか武技と同じくこの世界特有の能力で、二百人に一人程度の割合で生まれ持つんだったな』

『そうですね、このタレント保有者自体はこの世界では珍しくないけど能力は千差万別。手に持った物の温度が正確にわかるといった弱い物や、竜の魔法が使えるといった強大ものなど幅広いタレントの能力が確認されているって話でしたね』

「ニニャは"魔法適正"というタレントで、習熟に八年かかる魔法が、四年で済むんだっけ」

「ほーう」

「す、すごいですねニニャさん!」

「あはは……この能力を持って生まれたのは幸運でした。夢を叶える第一歩を踏み出せたのですから」

 

「まぁ、もっと有名なタレント持ちが居るがな」

「バレアレ氏であるな」

「えっと、拙達は聞いたことが無いですが何方なんでしょうか?」

「なるほど、知らないという事は皆様はこの辺りの人ではないんですね」

「えぇそうなんです、実は数日前に来たばっかでして」

「あぁ。じゃあ知らないですかね?この都市ではかなりの有名人なんですが」

「えぇ、聞いたことがありませんでした。よろしければお教えいただけますでしょうか?」

 

私達がそういうと、彼らは快く有名なタレント持ちについて話してくれた

 

「わかりました。名前は"ンフィーレア・バレアレ"、名のある薬師の孫にあたる方で、彼が持つタレントは『ありとあらゆるマジックアイテムが使用可能』という物で、様々な制限があるアイテムや異種族限定のアイテムなんかも使えることができるようですよ」

「なんと、それはすごいですね」

「その人物、危険かと…」「…わかっている。この都市に来るのは正解だったようだな」

「すごいタレント持ちなんですね」

「ええ、でもその分色々大変だったんでしょうね…」

「どういうことですか?拙には素晴らしいタレントだと思うのですが」

「よく考えてみてくださいグレイ。そんな大層な力、他国に知れ渡ってしまえば様々な者からその力を狙われるかもしれないのです」

「そのンフィーレアって方が自衛手段を持っていれば良いですが、もし魔法の才能も平凡で武器を扱う事もない一般の方だった場合、簡単に上位の者に連れ去られてしまう可能性もあるかも知れないということです」

「な、なるほど。たしかにそう考えると強いタレントというのは良い事ばかりって事はないんですね…。」

「さて、話がそれてしまいましたね。最後は彼、森司祭(ドルイド)の"ダイン"です」

「よろしくお願いする」

「よろしくお願いします。ペテルさんにルクルットさん、ニニャさんにダインさんですね。では漆黒の剣の皆様が自己紹介されたので私達も」

「私はモモン、見ての通り戦士をしております。そして私の左隣に居るのが魔法詠唱者(マジックキャスター)のナーベ」

「…よろしく」

 

「では拙も、拙の名はグレイと言います」

「私はラピュセル、信仰系魔法を得意としています」

「私はアルトリア、一応戦士職ではありますが後衛でも戦えますのでどうぞよろしく」

「はい、よろしくお願いします!」

「あれ、お三方はモモンさんと同じパーティーではないんですか?」

「私達は別なんです。モモンはナーベと二人でパーティー、私達は3人でパーティーですよ」

「なんとそうであったか!でも皆様かなり親しい仲なのであるな?」

「それは拙達は昔、皆で旅をしてた仲なんです。ね、ナーベさん」

「え、ええそうよ」今絶対付けた設定忘れてたな…。

「へぇそうだったんですね!」

「どこを旅してたんですか?」

「この大陸の反対の海を渡ってきましたので、結構離れた場所なんです」

「すげぇ遠いじゃん!わざわざこの大陸に来たのはなんでなんだ?」

「まぁ向こうでの旅が終わった後、色々ありましてね」

「へぇーなるほど色々ねぇ」

「ルクルット、あまり他人の詮索はするなよ」

「わかったよ、でも女性方に少し聞きたい!モモンさんとはどういう関係なんですか!!」

 

……ん?

 

「え、ええと、一応旅した仲間ですよ?」

「あ、ああ。それ以上ではないが」

「せ、拙もそうです」

「ミジンコが……私はモモンさー…んと共にいただけです」「ちょおま」

「最後の厳しい一言ありがとうございます!!それで皆さんはご結婚はされてるんでショッ…!!」ルクルットが言いかけるとペテルが彼の頭にゲンコツを入れる。

 

「ルクルット?私先ほど言いましたよね??」

「わ、わかったわかった…。もう聞かねぇよ…。」

「あ、あはは…」

「まったく…さて自己紹介も終わりましたし、仕事の内容についてお話しますね。」

「はい、お願いします」

「今回やるのは依頼では無いのですが、この町周辺に出没するモンスターを狩るのが目的です」

「モンスター討伐…ですか?」

「えっと依頼のモンスターを狩るとゆう事ではなくてですね、モンスターを狩るとそのモンスターの強さによって報酬がでるんです」

「なるほど…」

 

つまりユグドラシルでいうモンスターを狩って、ドロップアイテムや金銭を手に入れるのに似た物か。彼ら曰く飯の種になり、周囲の人間は危険が減るなど国的にも冒険者的にも損する事ではないらしい。昔は私達もよくモンスター狩り周回したことはあったしありがたみは何となくわかる気がする。

 

ちなみにこの制度は"黄金の王女"という王国の王女様の政策の一つのおかげらしい。私としては少しその王女様に会ってみたいと思うけど、冒険者としてランクを上げればいずれ会えるかな?

今回は王女様の制度を利用し、今回モンスター狩りによる資金稼ぎをしに行くという事らしい。向かうはこの都市を南下した所にある森周辺を探索しに行くとの事らしいが、この辺りはカルネ村があった場所だな

 

「なるほど、わかりました。共に行かせてもらいましょう」

「私達も同伴させてください」

 

そういうと漆黒の剣のメンバーは嬉しそうな表情でメンバー同士で顔を見合わせた。

 

「おっとその前に、これから共に仕事を行うのであれば一度素顔を見せておきましょう」

「そうですね、一度ヘルムを外して見せましょうか」

 

そういいモモンとアルトリアはヘルムを外す。モモンのヘルムの中の顔は、まぁまぁ年を取った男(イメージは漫画ベ〇セ〇クのガ〇ツ)になっており、モモンは幻術で素顔を偽ったようだ。

一方アルトリアの方は本来のセイバーオルタの容姿を大人にしたような姿で普段オルタ時の時にあった幼さがある容姿とは違い、大人の妖艶ともいえる顔立ちとなっている。そんな二人の素顔をみて漆黒の剣のメンバーがそれぞれリアクションする。

 

「モモンさんの黒目黒髪でその顔立ち、この辺りでは見ない顔立ちですが本当にはるばる遠方からいらしたのですね」

「ええ、そうなんですよ」

「アルトリア氏の方は金の髪に青い瞳とこの地ではよく見る顔立ちであるな」

「すごい綺麗な顔だよなぁ!もしかしたら黄金の姫君と同等、いやそれ以上かもしれないなぁ」

「ちょ、ちょっとルクルット王女様に失礼ですよ!」

 

「それにしても…アルトリアさんの顔立ちはラピュセルさんとかなり似ていますね」

「たしかになぁ、というかグレイちゃんも顔立ちにてねぇか?もしかして親戚とかか?」

「せ、拙はその…」

「いえ、私達は血の繋がりはありませんよ。偶然です」

「なんと!他人に似ている者はこの世に2~3人と言われては居るが本当なのだな!」 あ、その部分はこっちと同じなんだ・・・

「イッヒッヒ!こいつは顔立ちが似ているの気にしているんだがナァ!」

 

突然ガラの悪そうな声が私達の耳に聞こえた。だが誰もその声の主に覚えがないため漆黒の剣の面々は辺りを見回す。

 

「なんだ、誰の声だ?」

「私達の声じゃないですよ?」

「あ、アッド!?」

 

グレイはそういうと腰についていた金色の鳥籠を外し机の上に置いた。その籠の中には青や銀、金といった派手な色が目立つ四角いサイコロのような物が入っている。

だが、その四角い物はサイコロの様に面にダイス目は書かれておらず、細かい強面の顔のような装飾が施されていた。漆黒の剣が興味深々な顔でそのサイコロの様な物を見ていたら、突然正面の顔の部分が動き出し、ピョンピョンと跳ねながらしゃべりだした。

 

「イッヒッヒッヒッヒッヒ! よぉボウズ共!」

「うわ、何だこいつ!?」

「モ、モンスターですか?」

「あ、あぁ違いますニニャさん!アッドは拙の"武器"なんです」

「えぇ!!」

「これが武器…であるか!?」

「"コレ"とはなんだ!"これ"とは!」

「アッド!!」

 

グレイは鳥籠を持ち上げると鳥籠をめちゃくちゃに振り回す

 

「ナァ! アァイデデ イデデデデ!!急に振り回すな!やめ、グレイやめろォ!」

「ア、アルトリアさん。な、なんなんですかあれ?」

 

ニニャが振り回されるアッドを見て少し動揺しながらも、アルトリアに話しかける

 

「えっと…彼、アッドは一応魔法武器の一種なんですよ。名称は【魔術礼装<アッド>】と言います」

「この武器はグレイ専用の武器でして…いや見てもらった方がいいですね。グレイ、皆に伝えやすいように少しアッドの力みせてあげて」

「わ、わかりましたアルトリアさん。アッドお願い、【第一段階〈限定解除〉】。」

「チィ!さっきまで振り回していたのに、まったく人使いが荒いなぁ!」

 

アッドが不満を愚痴ると、アッドが入っていた鳥籠とアッド自身が突然バラバラと分かれ次々と集まり形を優しい光を纏いながら武器として形を形成していく。その姿は先ほどの鳥籠とキューブではなく、まるで死神が扱うような大きな鎌に似た姿に変形していた。

 

「えっと、これがアッドの武装基本形態の鎌です」

「なんだ!?さっきの四角いのがバラバラになったかと思ったらでけぇ鎌みたいになったぞ!」

「それだけじゃねぇけどな!」

 

アッドはそう言うと、鎌状態のアットが再度形を変え、片手剣のような姿に変形した。

 

「っと、これが拙が扱う武器なんです。他にも形は変わりますが…」

「なんと、先ほどの姿の鎌とは違い、また大きく形が変わっているのである!」

「これが魔法武器の力ですか!」

「すごいです、こんな幼い子がこれ程の物を扱っているなんて!」

「すげぇ!こんなもんどこで手に入れたんだよ!」

「えっと、アッドは代々拙の家系に引き継がれた家宝みたいなもんなんです」

「彼女は私達と旅する前は墓守でして、アッドを使い自然に発生したアンデッドやゴースト等を一人で対応していたんです」

「なんと、一人でですか!」

「とてつもない勇気をもった子なのであるな」

「い、いえ拙はそれしかやる事が無かったので…」

「あそこ、幽霊やゾンビがわんさかいて俺的には面白かったがな!」

 

グレイがアッドを使いこなせるのには彼女特有のパッシブスキルが関係している。

【技術多様化】というスキルでアッドを使用して戦闘するときだけ彼女が持つ職業の中であればアッドが姿を変形すると同時にグレイの職業も共に変更されるのだ。

 

分かりやすく例えるならばアッドが弓に姿を変えた時、グレイは弓を扱うクラスにチェンジし、槍なら槍術の戦士職に、と言ったようにアッドの形態にあったクラスに自在に変更される。

そのため彼女の所持クラスは多様ではあるがレベルはほとんど中途半端である、だが取得しているクラスの多さで強さ、技量をカバーしているのだ。

 

「せっかくです、私の使う武器もお教えしましょうか」

「アルトリアさんの武器、ですか?」

「そのフルプレートの鎧を着ているので、剣では無いのですか?」

「確かに私は剣も扱います、ですがそれだけでは無くこちらも使うことがありますので」

 

そういいアルトリアは腰に付けていたホルスターから一丁の拳銃を取り出し机に置く。その拳銃は以前ナザリックの自室でシズと共に調整をしてたあの銃だ。

 

「これが武器…見た事ないですね」

「これは…近接って感じじゃねぇよな?」

「ええ、とはいえ魔法の杖というには不思議な形であるな。これまた珍しい品物である」

「もしかして、先ほど自己紹介の時後衛もと言ってましたがもしかして…」

「よくわかりましたね、これは"魔導銃"と呼ばれる物です」

「"魔導銃"・・・なんとも興味を惹かれる名前です」

「なぁなぁ、一体どんな武器なんだ!?」

「それは、後ほど見せて差し上げますよ」

「本当ですか、是非見てみたいです!」

 

『その鎧の姿でガンナー職って使えましたっけ?』

『使えんぞ?』

『えっじゃあどうやって?』

『フッ、まぁそれは見てからのお楽しみだ』

「さて、私達の事も伝えましたので早速お仕事に向かわれますか」

「そうですね、では早速行きましょうか」

 

そういい各々部屋を出ようと椅子から立ち上がり、冒険者組合を出ようと足を進め受付カウンターの辺りに差し掛かった。すると先ほど私達に対応してくれた受付嬢が私達をよんだ。何かあったのだろうか?

 

「あ、モモンさん!アルトリアさん!」

「貴女は先ほど対応してくれた受付嬢の、どうなさいました?」

「そのー。モモンさんとアルトリアさんに"ご指名の依頼"が今来ています」

「「!!!」」

 

漆黒の剣のメンバーが驚きの声を上げた、私達も内心驚いている。でも誰から? 私達がこの町に来たのは数日前、特に深く交流した人は居ないと思うが…私は受付嬢に聞いてみた

 

「私達への指名って、何方からでしょうか?」

「その……"ンフィーレア・バレアレ"さんからです」

 

まさか先ほど話題に出ていたンフィーレア本人からの直々の依頼だった。でも何故私達指名? 私達はそもそもあったことすら無いのに。

すると受付嬢の後ろから一人の男性が現れた。髪は金髪で目が隠れており、服装は白いシャツににた服装をしている、彼がンフィーレアだろう。

私が彼を観察していると後ろからとてつもない殺気を感じた。ナーベがとんでもない形相でンフィーレアを睨みつけているのだ。隣に居たモモンはすぐにナーベの状態に気づき周囲には見えない速度のチョップをナーベの頭に入れた。

 

「――!! ―――??」

 

ナーベは何されたのか分からないようで涙目で頭をさすり、困惑した表情を見せている。ナーベのポンコツっぷりはみていて可愛いものだが、内心ヒヤヒヤする。

 

「無闇やたらに殺気は出すなと言ったろう…」「も、申し訳ありません…」

「えっと初めまして、僕が依頼者です」

「あなたがンフィーレアさんですか、名指しの指名はありがたいのですがつい先ほどこの方々の仕事の契約をしてしまいまして…」

「あっ…そ そうですか……」

「少し待ってくださいモモン。漆黒の剣の皆様に少し伺いたいのですが、さきほどの仕事内容は依頼者がいない"エ・ランテル近郊に現れるモンスターの討伐"という仕事でしたが、報酬の方は大丈夫でしょうか?」

「それと依頼内容によっては同時に受けることもできるのでしょうか?」

 

「あ、はい。確かにラピュセルさんの言う通り、これから行く内容は正式な依頼者が居る仕事というわけではありません。こなせなければ依頼者が報酬を払わないといった事はないです」

「それに正式な依頼では無いので、依頼の重複ということにもならないと思いますけど…」

「そうですか、ではどうしましょう…」

「あ、あの少し提案があるんですけど。その、とりあえずンフィーリアさんの依頼内容を聞き、その内容が漆黒の剣の皆様と共に行えそうな内容でしたら皆様でその依頼を受けるというのはどうでしょう?」

「なるほど、その案は私は賛成しますが漆黒の剣の皆様や依頼者の方はどうでしょう、グレイの提案はどう思います?」

「僕の方は全然問題ないですよ」

「俺は複数の仕事ってのは全然構わないぜ」

「私も特に問題は無いですよ。ダインとペテルはどう考えてます?」

「私はグレイ殿の意見に賛成である。しかも依頼主があのンフィーレア殿であるのだ、願ってもない依頼と私は思う」

 

「そうですね、では私達漆黒の剣はグレイさんの提案を受け入れたいと思います」

「わかりました、良い案でしたよグレイ」

「あ、ありがとうございます!」

「皆の意見は纏まったようですね、ではこちらでお話をお伺いしましょう」

「はい、わかりました」

 

漆黒の剣の面々の了解をえると、私達は先ほどいた部屋に戻った。皆が部屋に置かれていた椅子に腰を下ろたのを確認した青年ンフィーレアが依頼について話し始めた。

依頼の内容としては"近くの森に自生している薬草を取りに行きたいためモンスターからの護衛と薬草採集への協力"との事だった。

仕事の内容については理解したが私達ナザリックの面々には少々不安要素がある、私達は索敵系のスキルや魔法防御系スキル等をあまり取得していないのだ。

 

その為索敵に少し不安があったが、今は漆黒の剣の面々と共にいる。レンジャーのルクルットは索敵に適しており、森の探索や薬草採集となると森司祭(ドルイド)のダインが居る。

そういう利点をモモンは漆黒の剣の面々に"私達に雇われるという形で共に仕事しないか"と提案すると彼らは快く受けてくれた。

 

その他補給や報酬についての話をした後、モモンがンフィーレアに幾つか質問をした。

内容としては1つ目はなぜ私達なのか、2つ目はどこで私達を知ったのか とこの二点を聞いた。ンフィーレアは特に理由を考えるそぶりもなく質問に答えた。

どうやら、宿屋兼酒場での件を見ていた冒険者が私達の事をンフィーレアの祖母の営む店で話しているのを聞き実力を知った事。

これから冒険者登録する事もお客で来た冒険者が話しており、これから冒険者になるカッパーの実力者依頼料も安くなるからとの事。

 

なるほど、話の内容に偽りは無いように見えるから特に話は嘘という事では無さそうだが……とりあえず理由を聞いたモモンは納得したようでこれ以上質問はしなかった。

そして一通り話が済んだことを確認したンフィーレアは声を上げる。

 

「では皆さん、準備を整えて出発しましょう!」

 

 

 

 

――エ・ランテル郊外 森周辺――

私達は今現在、カルネ村に向けて馬車を走らせている。馬車の運転はンフィーレアが担当し、荷台周辺を私達が囲うような形で警戒にあたっている。

途中馬を休めたり、ルクルットの質問でナーベがアルベドの名前をポロっとだしたり、途中の道のりでこの世界独自の"第0位階魔法"についてや歴史についてニニャと話し合ったりした。

 

この世界の事を知る度にもっと興味をそそる話がボロボロと出てくる。この世界特有の生産系の魔法が多いユグドラシルには無かった"第0位階魔法"や、この世界のおとぎ話に出てきた"八欲王"なる者達、話を聞くたびに私達の頭は同じ考えをはじき出す

 

『『『それ、プレイヤーじゃね?』』』

『やっぱ同じ考えですよね⁉』

『やっぱり私達より前みたいですが同じプレイヤーがこの世界に来てたんですね』

『確信ではないが、ほぼプレイヤーだろうな』

『それにしても、欲がすごいというか。話を聞けば聞くほど強欲の塊みたいなプレイヤー達ですね』

『……なんか"ゲーム内イベントをとことん楽しんでいた時の私達"に似ているような気がしました』

 

『ゲーム内イベント……まさか八欲王はこの世界の転移に気づかず"ゲーム内の隠しイベント"だと思ってたとでもいうのか?』

『でももし八欲王のプレイヤーが"クエスト進行中にこの世界に来た"としたら…?』

『可能性は無くは無いでしょう?』

『確かに、私もクエスト中にこんな事が起こればイベントだと思ってたかもしれません』

 

『あと思ったことが一つ。話を聞くとこいつらの思考、ゲーム初期の"異業種狩り"の思考が大きく出てません?』

『まさか"異種族狩り"が流行ってた時のプレイヤーとは思えないぞ、なぜならあの時代はレベル上位者はほとんどいなかったし…』

『ですがユグドラシルはレベリング自体は簡単でしたよね…?』

『『『・・・・・。』』』

『よし一先ず保留だ』

『『異議なし』』

 

「ど、どうしましたかモモンさん方?」

「あぁい、いえ何でもありません。少し考え事をしていまして」

「にしてもその八欲王の話っていつの頃できたのでしょうね。よくある英雄譚とは全くちがうお話でしたし」

「そこまではわかりません、ですが古くても200年前には伝わってたのではと言われていますね」

「そんな昔の…」

 

私達はもし八欲王は皆死んだと聞いたが、その八欲王が創ったNPCが居るかもしれない、そのようにユグドラシルの関係者と思われる者に対しての対応をこの先考えようと思った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

エ・ランテルから出て数時間、目の前にうっそうと茂った原生林が見えてきた。今のところここまで戦闘は無く比較的平和で話しながら行動できるほど余裕のある道行であったが、森が近づくと漆黒の剣のメンバーは少し堅い表情を見せた。そるとリーダーのペテルが少し堅い声で私達に話す。

 

「モモンさん方、この辺りからちょっと危険地帯になっていきます。念のため少しだけご注意ください」

「了解しました」

「ああ、ではルクルットさん。索敵の方お願いしますね」

「おう!美しき姫君の為だ!バリバリはたらきますよぉ!!」

「もうルクルットったら…」

「アルトリア氏の素顔をみてからずっとあの調子であるな」

 

「ははは、でも大丈夫ですよ皆さん。ここから先の森は「森の賢王」と言われている強大な力を持つ魔獣のテリトリーなんです。ですのでめったな事ではモンスターは姿をみせないんですよ」

「森の賢王ですか」

 

たしかカルネ村のエンリという娘から少し聞いたことのある名前だ。森の奥を根城としており姿を見た者は少ないが、存在は昔から語り継がれており、一説では数百年生きている蛇の尾を持つ白銀の獣とか言われていたな……。

 

『会ってみたいですね森の賢王、どんなモンスターですかね』

『ひさしぶりにモモンのコレクター魂に火が付きかかってますね』

『収集家だからな、昔から』

『だってもしかしたらユグドラシルに居なかったかもしれない魔獣かもしれないんですよ。楽しみじゃないですか』

『はいはい…。』

『少し落ち着きましょう…。』

 

「皆一旦止まれ! お客さんだ…。」

 

突如、ルクルットの緊張感を多分に含んだ声が飛ぶ。その声に気づいた漆黒の剣のメンバーはすぐさまルクルットの視線を向ける方向に武器を構えた。

 

「どこだルクルット?」

「あれだよペテル。」

 

そういいペテルの質問に対してルクルットが指さす方向。その指先には深い森が広がっているが敵影は見えない。多分隠れているのか、遠目で見えたのか。

索敵が得意なルクルットが警戒しているのだ、それを疑う物はいない

 

「どうするよ?」

「無理に突っ込むわけにはいかないのであるな」

「そうですね、この森のモンスターに無理するのは得策ではないですね」

「なら、森から出てこないなら無視して先に…」

「いや、ご登場のようだぜ!」

 

そんな話をしているうちに森がざわめき、ゆっくりとモンスター達が姿を見せる。小さな子供ぐらいの身長をした生き物ゴブリンが約30程、それに取り囲まれるように巨大な生き物オーガが8体現れたのだ。

ゴブリンの方は襤褸切れで作った袋を持っている。どうやら長距離移動を考えていると思われる雰囲気だ。モンスター達は一行を見渡すと、醜悪な顔に敵意の感情を浮かべながら草原に足を踏み出し始める。

 

「…やけに数が多いな。こりゃ戦闘確定だな」

「モモンさん!」

「…はい何でしょう?」

「組合での話では半分受け持つとの事でしたが、どのように分けましょう」

「私達は正面から向かい打ちますよ」

「えっアルトリアさん大丈夫ですか!?」

「私も彼らと共に正面にいきます。馬車の守護の方は皆さまにお任せしたいと思っています」

「ラピュセル氏の自信あふれる声、これは敵は任せてもいいと思うのだな!」

 

「私も正面から行きます。ナーベとグレイ、漆黒の剣の皆様はお互い左右に分かれ横手から攻めてください」

「は、はい!」

「畏まりました、モモンさん」

「モモンさん…お任せして大丈夫でしょうか?」

「心配してくれて有難うございます。でも私達は大丈夫ですよ」

「ええ、これでも以前の旅では困難など日常茶飯事でしたしね」

「そうですね、それにオーガごときに苦労してたら、単なる大口叩きになってしまいます。オーガを容易く屠る所を皆様に見ていただきましょう♪」

 

「了解しました。とはいえ私達も敵の突進を見逃すわけにはいきません。できる限りの支援はさせてもらいますよ」

「モモンさん方は、支援魔法はいりますか?」

「私は大丈夫です」

「ええ、私も大丈夫ですよニニャさん」

「お気遣いありがとうございます。ですが私も神官系の魔法は使えます。ニニャさんは漆黒の剣の皆様を優先して助けてあげてください」

 

「は、はいわかりました!でもどうします、このまま進んでも森に近いので逃げられる可能性があるけど?」

「なら、いつもの手で行こうぜ? カメの頭を引っ張り出してな」

「わかった、敵の突撃はモモンさん達がブロックするとして、抜けてきたゴブリンの足止めはダイン!」

「了解したのである!」

「オーガの足止めは私が武技<要塞>を起動させ私が抑える!ニニャは防御魔法を私に」

「わかった!」

「ルクルットは弓でゴブリンを狩っていってくれ、オーガが抜けてきたらブロック!」

「オーケー!」

「それでは、戦闘開始します!」

「それじゃまずは俺からだ」

 

そういいルクルットが弓を引き絞る。ギリギリという音が止むと、弦が空気を切り裂く音が鳴り矢が放たれる。

矢は空中を一直線に走り抜け、草原を歩いていたゴブリン達から数メートル以上離れた所に突き立った

 

「ンン? ギッヒヒヒヒィ‼」

 

ゴブリン達は放たれた矢が大きく外れたのを見て、ルクルットをあざけり笑いながらゴブリン達は何も考えること無くルクルット目掛けて走り出した。

その後を追うようにわずかに遅れてオーガも走り出す。ルクルットの作戦に引っかかったとも気づかずに――

 

「かかったなァ!」

 

もう一度弓の弦を引き絞り、矢を放つと、一直線に戦闘のゴブリンの頭目掛けて飛んでいき見事ゴブリンの頭を射抜いた。

射抜かれたゴブリンはその場で倒れ、後ろから来た仲間の軍に潰されれ絶命する。

仲間の死など気にせず突き進むゴブリン軍団。ニニャは後ろで強化魔法を発動し仲間のサポートに入る。

 

「《鎧強化(リーン・フォース・アーマー)》!」

「ありがとうニニャ、ダイン、オーガ一体がこちらに来たぞ」

「了解した、《植物の絡みつき(トワイン・プラント)》!」

 

ダインが魔法を使うと接近してきたオーガの足元を中心に草原の植物がざわめき、鞭とかしてオーガに絡みつき動きを止めた。

漆黒の剣が奮闘しているそんな中、モモンとアルトリア、そして私の三人は中心をのんびりと散歩のような足取りで歩き始めている。

左側には左にモンスターを逃がさないようにナーベとグレイが後ろから付いていく。目の前には戦闘を走るオーガが3体、もうすぐ目の前に来るというのに、恐怖すら感じていないのか足取りを変えることなく歩みを進めている。

 

「こんな風に敵と戦う何ていつぶりでしょうね」

「全くだな、しばらく戦う事も無かったからな」

「ええ、ほんとうに久しぶりです。とくに仲間と共に戦うのはね」

「フッ」

「フフ、そうだな」

「さて、やるか」

 

そういうとモモンは両手を後ろに回し剣の柄を握り、ラピュセルはすでに持ち歩いていた槍を警戒に回し構え、アルトリアはマントの下に手を入れ鞘から剣を引き抜いた。

モモンの持つ武器が大きく、大きく、弧を描くようにゆっくりと引き抜くと、二振りの剣がその姿を見せた。

モモンが握る1mを超えているであろう二振りの大剣は、まるで芸術品ような美しさを放っているような、そんな見事な武器だった。

 

一方アルトリアが鞘から引き抜いた剣は一般的な剣の大きさだがこちらも(つば)から柄の辺りに芸術品のような美しき金と青の彫り物がなされている。

この剣は、かつてアーサー王が引き抜いたとされる聖剣の一つ<勝利すべき黄金の剣(カリバーン)>である。

 

ちなみにラピュセルが今扱っている槍は邪ンヌの時に使っていた槍と同じもの。本来旗が掲げられていた部分にあった旗は流石に外している。

デザインは槍の刃の部分が少し特殊なぐらいで特別煌びやかな装飾などはされてはいない、だが漆黒の剣の面々はこの3点の武器はとんでもない業物であると直感的に感じ取っていた。

 

モモン達が武器を構えていると、一体のオーガがモモンの目前へと詰め寄っていた。オーガは攻撃をしようと雄たけびを上げながら、手に持った棍棒を大きく振り上げる!

 

「ウォォォオオオオ!!」

「さて…フンッ!」

 

先手はオーガかと思われたとき、モモンが強く踏み込む。その動きはまるで疾風の如く、右手に握りしめられた剣が白銀の輝きを残し空間を断つかの如くオーガに向けて走った。

その白銀の一振りでオーガの胴は一刀両断、腰から上の部分が滑り落ちるように地面に付した。

 

「うっそだろ、なんだ今の!?」

「なんと!!」

「信じられない…!」

「オーガを一刀両断…貴方は一体!?」

「ふっ、まだ驚くのは早いぞ」

 

一体のオーガがやられたのに気づいた後ろのオーガは少し足を鈍らせるも、そのまま私達の方に突進してきた。

 

「やれやれです…ねッ!」

 

次はアルトリアが踏み込み切りかかる。アルトリアの速度はモモンを超えており、その速さは疾風を超えもはや光速と言えるだろう。

そのスピードに一瞬アルトリアの姿が消えると、オーガに向かって閃光が走り、オーガを腰から肩にかけて一閃。斜めにオーガを一刀両断したのだった――

 

「はっ速えぇ!!なんだ今の速度!?それに女性のアルトリアさんもモモンさんと同じ様にブッタ切っちまったぞ!!」

「アルトリア氏が一瞬消えたように見えたのである!」

「これはミスリル、いやオリハルコン以上…まさかアダマンタイト!?」

「す、すごい……次元が違う」

 

「ふっ、相変わらず早いなアルトリア」

「お前も、意外と戦士として戦えるではないか」

「いやいやハッハッハ…」

「お二人共、お話は終わってからですよ~」

 

二人の元にラピュセルが駆けつける。いつの間にかラピュセルもオーガを一方的に倒しており、首から上にあるはずの頭がなくなっていた。おそらく槍を薙ぎ払う様に振るい首を飛ばしたのだろう……。

 

「おいおい、ラピュセルさんもいつの間にかオーガの首を飛ばしてるぜ…」

「彼らは、我々の想像をはるかに超える力を有しておったのだな」

「と、じっと見てる場合じゃない、モンスター達もモモンさんと強さを感じて怯えている。今のうちに仕留めよう!」

 

「ペテルよ、こっちのオーガの拘束がそろそろ限界である!」

「拘束されたオーガの後ろからゴブリンも来たよ!」

「了解、ルクルット剣に切り替えて共に対処してくれ!」

「オーケー! 俺達もアルトリアさん達に良いとこ見せてやろうぜ!」

「「「了解!」」」

 

漆黒の剣のメンバーの連携は素晴らしくいい動きだ。各々の技術や不得手などを互いに理解しているからこそできる適格な判断だ。彼らを見ていると昔のナザリックを思い出す……。

 

「いいパーティーだな、互いに連携が取れている」

「ああ、彼らならある程度実力が付けばもっと強力なモンスターにも挑めるかもな」

「二人共、彼らを眺めるのはいいですが、まだオーガ残ってますよ」

「そういえば、アルトリア?銃は使うんですか?」

「ああ、少し見せるって話したからな。少し待て」

 

そういうとアルトリアの周囲に光りと風が吹き荒れ纏い、鎧が姿を変えた。その姿は先ほどの竜をモチーフとした純白のフルプレートとは大きく変わり、青いドレスに白銀の甲冑を纏ったような姿に変わっている。

 

先程までの鎧は戦士職専用、今着替えた鎧はガンナー職対応の鎧装備である。彼女が着ている「早着替えのローブ」の効果によって、あらかじめセットしていた装備セットと入れ替わったのだ。

 

「これで使える」

 

そういいアルトリアはオーガに向かい銃のホルスターに手をかけ拳銃を引き抜き、剣を持つ手の反対に手に装備した。そんな中、残ったオーガが私達に恐怖したのか私達に背を向け森に逃げようとしていた。

 

「逃げる気か」

「させませんよ。グレイ、ナーベ出番です!」

「はっ、《雷撃(ライトニング)》」

「はい! 行くよアッド!」

「おうさ、この距離はこいつだなぁ!」

「撃ち抜け―」

 

アルトリアは抜いた銃をオーガに向け発砲する、逃げるオーガの一体に直撃。心臓部分に大きな風穴を開けオーガが崩れる。

ナーベはアルトリアの弾の着弾を確認し、その奥の3体のオーガの位置を確認すると、貫通力のある《雷撃(ライトニング)》を発動し、二体のオーガの胴を雷が貫く。だが先頭を走っていたオーガは位置がずれており《雷撃(ライトニング)》は命中しなかった。

 

「ちっ、ズレた…グレイ残りは任せましたよ」

「りょ、了解ですナーベさん!」

 

変形を終えたアッドを掴んだグレイがさかさず走り込み、先頭のオーガに近づく。そして、勢いよく振りかぶって、ブーメラン型に変形したアッドを投げつけた。

アッドが回転しながらオーガに直撃し脇腹を抉る。だが致命的なケガとはならず、抉れた傷を手でふさぎ、よろけながらもオーガは逃げようとする。

だがブーメランは投げると戻ってくる物、前方からオーガを追い抜いたアッドが戻り、胴に深々と突き刺さり地響きと共に倒れた。

 

「ギギィ、オーガヤラレタ!」

「ニゲロ! ニゲロ!」

「あ、ゴブリンが逃げるぞ!」

「逃がすか!」

 

オーガが全滅したのに気づいたゴブリン達が逃げようとしたがすでに遅く、漆黒の剣とモモン達に挟まれるような形になりゴブリンは逃げ場を失っていた。その後は一体ずつ確実にゴブリンを仕留め、オーガとゴブリン軍団はあっという間に壊滅した。

 

一通り戦闘が終わったのを確認すると、それぞれ仲間を回復させたり、モンスターの部位の剥ぎ取りなど行動に移る。

ラピュセルは最後の追い込みで負傷した漆黒の剣のメンバーをダインと共に回復魔法で治療していた。

 

「「《軽傷治癒(ライト・ヒーリング)》…」」

「まったく、二人共。最後の追い込みで無茶しすぎである」

「フフ。最後少し急ぎ過ぎましたねお二人共♪」

「イテテ……面目ない」

「イツツ…ちょっと無茶したなハハ」

「さて、治療は終わりましたよお二人共」

「ありがとうございますラピュセルさん」

「いやぁ、こんな美人に治してもらえるとは…できれば恋の病モ゛ッ‼(ゴンッ)」

「お前は…組合で少しは懲りたかと思ったら!」

「っ―――‼せっかく直してもらったのにゲンコツするかよったくぅ!!」

「アハハハ、本当に仲が良いのですね皆様。おっとアルトリアの方も見てきますので一旦これで」

「了解したのである、治療の協力感謝する」

「いいんですよお礼は、では」

 

一方ニニャは討伐したモンスターに寄り、耳などモンスターの一部を切り落としている。

 

「モモン、アルトリア。ニニャさんは何をしているのですか?」

「これですか? こうやって倒したモンスターの一部を組合にだしますと報酬がもらえるんだそうですよ」

「なるほど、ギルドに見てもらって換金という事ですか、となると多くのパーツを持っていかないとですね」

「そうだな、ニニャさん。私達も剥ぎ取り手伝いますよ」

「えっ本当ですか、ありがとうございます!」

「では、どの部分をはぎ取りましょうか?」

「そうですね……オーガは耳を切るとして、ゴブリンの方は――」

 

ニニャの指示を聞きながら私達は初仕事完遂の為、ゴブリンのパーツを切り取り始める。その光景を遠間から見ているペテル達と近くにいたンフィーレアが私達について話し出す。

 

「なぁペテル、あの人達だけどよ…」

「ああ。俺達より断然上。もしかしたら王国戦士長クラスに感じたよ」

「だよなぁ!あれが新しい冒険者、到底そうは思えない戦い方に見えたぜ…」

「ナーベ氏も、モモン氏が仰っていた通りの実力。第三位階の魔法を使いこなしていたのである!」

 

「ふっ当然です…!」

「ナ、ナーベさん…」

「モモンさん達の実力もそうだが、あの剣だよなぁ」

「あの大きな剣を二本、しかも片手で扱いオーガを真っ二つにするなんて…」

「アルトリアさんの剣も、モモンさんのと似たような一品だろうぜ」

「それにアルトリア氏の魔導銃という武器、とても強力な一撃を放っていたのである」

「ありがとうございます」

 

「あ、アルトリアさんモモンさん。剥ぎ取りの方は終わったのですか?」

「ええ、回収できる物は全て回収しましたよ」

「ありがとうございます」

「皆さーん、大分日も暮れてきました。今回はこの辺りで休みましょう」

「「「はい」」」

 

ンフィーレアが言う通り辺りはどんどん暗くなってきた。私達は森とは反対側の草原に焚火とテントを立て野宿することにした。

 

 

――野宿 ラピュセル(邪ンヌ)視点――

 

 

その夜、皆で夕食をいただきながら火を囲み談笑する。あいにくモモンはアンデッドの姿なので食事ができない。其の為モモンは宗教的な理由で食べられないという事にしようとしていた

 

「あれ、モモンさんは頂かないんですか?」

「えっと…すいません。宗教的な理由がありまして"命を奪った後、4人以上で食卓は囲んではいけない"というのがありまして」

「ほぉ、モモン氏は変わった教えを信じておられるのだな。しかし何故4人なのである?」

「え、えっと…それは……」

 

「"4(よん)"という数字は"4(し)"とも言いますよね?其の為、"命を奪った後に死を連想させる4人での食事は控える"ということだそうですよ」

「まぁ私達はその宗教には入ってないからこうして食事を楽しんでいますがね」

「なるほど、そういう意味が込められているとは…!」

「え、ええ…アハハ」

 

『設定考える時は、もっと練ってからにしましょうね♪』

『は、はい…』

『設定付けには変に厳しい時があるよなお前…』

 

「あそうだ、皆様に聞きたい事があるんですが。皆さんのチーム名、何故「漆黒の剣」なのですか?」

「ああそれ、それはニニャがー」「やめてください!若気の至りですぅ…///」

「恥じることは無いのである」

「勘弁してくださいよ本当にぃ…」

「アハハ…えっと"漆黒の剣"というのは昔存在していた"十三英雄"の一人が持つ剣が由来なんです」

 

「「"十三英雄"?」」

 

ラピュセルとアルトリアが口をそろえて言う。"十三英雄"、初めて聞く名称だ。

 

「な、なんですか?その"十三英雄"って?」

「ああ、遠方から来たラピュセルさん達は知らないんですね」

「えっと漆黒の剣とはその"十三英雄"の一人、「黒騎士」という人が持ってたとされる4本の剣のことです」

「そ、そうなんですね!」

「ま、それを第一に発見するのが俺たちの目標ってわけさ」

「本物が手に入るまでの間は、この黒塗りの短剣が私達の証なんです」

「へぇ、良い目標ですね」

 

「冒険者の方々って普段こんなに仲が良いのが普通なんですか?」

「ええ、互いに背中を預ける仲間ですからね」

「それに、うちのチームは男だけだからなぁ。あ、女がいるとよく揉めたりするって聞くぜ」

「あはは…それにチームとしての目標もシッカリした物がありますからね」

「皆の意志が一つに向いていると全然違いますからね」

「そうですね…」

「ああ…」

「モモンさん達もチームを?」

 

「……冒険者では無かったではありませんでしたがね。私がアルトリアさんと出会う前、弱くて一人だった私の命を救ってくれたのは純白の聖騎士でした。彼に案内されて初めて仲間と呼べる人達ができたんです……素晴らしい仲間達でした、そして最高の友人達でした」

「"でした"ではないでしょうモモン、私達は今でも最高の友人です」

「…そうでしたね、すいませんラピュセルさん」

「いつの日か、そんな人達に匹敵する仲間達ができますよ」

「そんな日が……くればいいですね」

 

モモンがつぶやいたその一言はとても悲し気だった。

 

「モモンさん…?」

「すいません…ナーベ、私はあちらで食べる」

「では、ご一緒させていただきます」

「…そうですか」

 

そういいモモンは彼らから離れた位置に離れた。その歩く後ろ姿には大きな悲しみがヒシヒシと伝わっくるようだった。

 

「…悪いことをいったようですね」

「気にしないでくださいニニャさん。彼がいつもあんな感じなんです」

「何か…あったのであろうな」

「ええ、少し私達の事についてもお話ししましょうか…私達はかつて長き旅をしていました。モモンや私達を含めた43人で」

「その旅は苦難や仲間との衝突も多くありましたしたが最後は皆笑い合う、そんな旅仲間でした」

 

「でもそんな旅も長くは続きません、故郷の異変で離れた者や、病で倒れた者。そして亡くなった者……」

「様々な理由で仲間は少しずつ減り…最終的に私達3人だけになってしまいました」

「…そんな」

「なんと…」

「モモンはその後、ナーベと出会い共に旅を続けていたそうですが、彼が旅を続けたのは"心の穴を埋める「なにか」"を探していたのかもしれませんね」

 

「そんなことが……」

「そんな経験があったんじゃあな……難しい話だ」

「…発した言葉は元には戻らないのである。ゆえにその言葉を塗り替えるだけの何かを、かの御仁に抱かせるしかないのである」

「……そうします」

 

この場の空気が重く悲しいように感じた。このままの空気ではまずい、そう思い何か話題を変えようとした時ンフィーレアが気を利かせてくれたのか話題を変えてくれた。

 

「…それにしても、今日のモモンさん達の戦闘すごかったですね」

「ええ、あれほど強いとは思いませんでした」

「そ、そうですか?」

「ありがとうございます」

「ちなみに、オーガを両断というのはどれほど卓越した技なのでしょうか」

「あ、それは気になりますね」

「皆さんから見て私達はどれほどでしょうか?」

 

「そうですね、はっきりいってアルトリアさんのチームとモモンさんのチーム。どちらも王国戦士長クラスだと思います」

「えっそれって!"アダマンタイト級"、つまりは最高位の冒険者に匹敵するという事ですか」

「そうです!」

 

他メンバーもうんうんとペテルに頷く、最高峰クラス…今まであった人間の中では一番強いと感じたガゼフがアダマンタイトクラスとは。まぁ異種族でレベル100の私達がレベル2~30程の人間より実力がないとあっちゃあ面目が立たないし当然だろうな

 

「すごいんですね…」

「モモンさんアルトリアさんに初めてお会いした時、着用している見事なフルプレートをみて嫉妬しました…」

「でも、相応しい実力を見せられれば納得するしか無いですね…」

「モモン氏のあの外見、ペテルより時長く鍛えているのである」

「モモンさんのヘルムの下を見たんですか!?」

「ええ、この辺りの人種ではありませんね」

「何処の国の人とか言ってましたか⁉」

「そこまでは言ってなかったですが…?」

「どうなさいました、ンフィーレアさん?」

 

妙にモモンの事について知ろうとしている気がした。なにか気になる事でもあるのか、それともカッパーの冒険者だから詳しく知りたいだけなのか、はたまた……ンフィーレアにどうしたのか聞くが本人は「何でもないです」というだけ。あまり深く聞くのは依頼者の彼に失礼か…

その後、私達はンフィーレアの行動に少し疑問を持ちつつも皆と交友をかわし、各々恋バナや冒険譚などを少し話し合いながらその日の夜を明かした。

 




おまけ

ア「ところでお前、さっきの過去設定、勝手に数人殺したな?」

ジ「べーつに良いじゃないですかぁ!「引退」はゲームキャラ的な死亡っぽいですし~。それにー、そのほーが今のモモンの雰囲気的に合ってるから良いんです~!」

ア「この場にいないからって、好き放題だなお前……」
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