オーバーロード ~堕ちし聖女と黒き騎士~   作:赤猫project

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あけましておめでとうございます (*- -)(*_ _)ペコリ

今年も無理せず自分のペースで更新しますので投稿はまばらですが、何卒よろしくお願いいたします!


※注意
今回は描写以外にもかなり"残虐な表現"に力を入れました。不快に思う方もおるかも知れませんのでご注意ください


第8話

 エ・ランテル西側地区、そこに大きな壁で遮られた共同墓地が存在する。

このエ・ランテルの敷地の4分の1を占めた巨大な共同墓地、帝国との戦場地が近辺に存在する為この地には戦死した者達を埋める為に大きく広大。

その後ろにはアンデットが多く湧くカッツェ平野が少し離れた所に有る他、墓地からアンデッドが出現し被害が及ぶ。其の為この国は他国でも珍しい広大な墓地を作りその周囲を壁で囲った。

墓地を出入り可能にする為、小規模であるが門の周辺に見張り台が設置されている。見張り台から墓地を監視し発生したアンデッドの対処を行っているのだが……今日の夜は地獄と化していた。

 

墓地を埋め尽くす程のアンデッド、そしてそれに対応する見張り役の兵達。だが戦力差はともかくその膨大な数による攻勢で見張りの兵達は撤退せざる負えなくなった。

 

「て、撤退だ!撤退しろ!」

 

そんな状況下で私達はやってきた、どうやら現場は想像以上にひっ迫していたようで、大型の低位アンデッドがいま城壁を跨ごうとしている。

 

「っ、冒険者……(だがカッパーでは……!)」

「お前達も逃げ――」

「――後ろをみろ」

「後ろ……っ⁉」

「ヒ、ヒィイイィイ……!」

 

見張り台から撤退してきた兵士達は城壁を超える巨体のアンデッドに恐怖する、隊長の男は他の者とは違いなんとか冷静になろうとしているが他の者達は恐怖に支配され腰が抜けて動けなくなっている。

あまりに情けない姿を横目に視つつアルトリアは巨躯のアンデッドに向け剣を振るう――

 

「武技……「斬空」!(スキル「空斬波」!)」

 

自身のスキルを武技と偽り、アルトリアは飛ぶ斬撃を放ち巨躯のアンデットの首を吹き飛ばした。そのあまりの光景に先程まで恐怖に染まっていた者達も驚愕の顔に変わる。

 

「私達は行く」

「な、なあ!?む、無茶だ!あのアンデッドの群れは」

 

バキッ‼バキバキッ‼‼

 

墓地に続く門から異音が響き、扉の中心が大きくひび割れ砕け散る……その壊れた個所から何百ものアンデッドがまるで濁流の如く流れこむ。

 

「ナーベ ーー」

「――畏まりました、モモンさん」

「グレイも加勢しなさい」

「了解です……!アッド、第一段階……限定解除!」「オウサ‼‼」

 

ナーべとグレイは死者の本流の前に立ち武器を構える。その後ろからはあの見張り台にいた兵士達の「無茶だ!」「早く逃げろ!」という声がかけられるが、アンデットが放つ不快な叫びにかき消され彼女達には届かない……。

 

「〈魔法二重最強化(ツイン・マキシマイズマジック)電撃球(エレクトロ・スフィア)〉!」

 

ナーベが放った電撃球(エレクトロ・スフィア)が死者の本流の中心にて炸裂し高圧の雷撃が辺りを照らす。

マトモに食らった正面のアンデッド達はその形を忘れ灰へと回帰し本流が崩れ中心に大穴が空く。その様子を狙ったのかグレイは死者の流れに空いた穴の中に向かい跳躍、大穴の中心に着地する。

アンデッドの群れは本流の中心に無謀にも単騎でやってきたグレイを逃すはずもなく、流れの向きが変わりグレイに向かい全てのアンデッドが襲い掛かる。

 

逃げ場を塞ぎ完全に包囲、全方向から囲われたグレイは死者の山に埋まる……が、グレイに飛びかかりできた死者の山の隙間から眩い光が溢れ始め、周囲のアンデットを吹き飛ばした。光の元はグレイが持っていた大鎌、あの一瞬で周囲を薙ぎ払いアンデッドを殲滅したのだ。

自分達より若い女性たちが圧倒的な戦いを見せるのを兵士達はすぐに理解できない、あれは本当に人間なのかと――

 

「アダマン……タイト……なのか?」

「よくやった二人共、ハムスケ!お前は急ぎ協会に行き状況を伝えよ。教会ならお前を知る者がいるから恐れられることなく話が出来るだろう」

「了解したでござる!」

「ナーベとグレイはこの場を続けて死守しろ」

「了解です」「畏まりました」

「ま、まて……お前達はどうするんだ!」

「……元凶を叩きに行く」

 

モモンとアルトリア、そしてラピュセルはグレイ達の反撃で空いた墳墓への道へと飛び込む。

門を超えた先に居たアンデッド達が待ち構える様に朽ちかけた剣を振り下ろすが、その刃が振り下ろされる前に3人は通り過ぎ……進路を邪魔するアンデットを粉微塵に斬り飛ばす――

その光景をみた隊長はまるで「竜の咆哮の様だった」と後に語り、最後にこうも伝えたという……「あれこそが、本当の英雄の姿だった――」

 

 

 

――

 

 

 

駆け出してから数分、共同墓地の中間付近まで掛け抜けた3人は前方に大きな建造物を目視する。

建物の作り的にナザリックにも存在する死者を弔う霊廟の様だ、だが霊廟に向かえば向かう程アンデットの数が増え3人の行く手を阻もうとしてくる……どうやら黒幕はこの教会にいる様だ。

 

「死者を弔う霊廟が、死者を生み出す場に使われるとは皮肉だな」

 

霊廟に向かうにつれ地面も舗装され、綺麗な石材で補装された通りに出る。そして……教会の入り口前に、堂々と謎の儀式を行っている集団を見つける。

その集団はみな黒い三角頭巾に手に共通の謎のマークが刻まれている木製のスタッツと思われる杖を握っている。その集団は後方にいる宝玉の様なモノを持った黒頭巾をしていない年老いた男を軸に円を作り何かの詠唱を行っている、一人の黒頭巾の男が我々が来た事に気づき宝玉を持つ男に語り掛けた

 

()()()()()、来ました……」

「(虚偽の可能性もあるが……敵前で名を言うとは、お粗末な連中だな)」

 

こんなたいそれた事をした連中にしては頭が足りないように感じる、が油断はしない。何か罠が無いかアルトリアが周囲を見渡す中モモンが男達に語り掛ける。

 

「やぁ、良い夜だな。こんなつまらん儀式をするには勿体なくないか?カジット……」

「ッ……チィ」「……あっ!?」

「ふん。儀式に適した夜か否は、儂が決める事よ。それよりお主は何者だ」

「とある少年を探すよう依頼を受けた冒険者でね……名前は言わなくても、分かるだろう?」

 

その答えを聞いた集団はかすかに身構えカジットは周囲に目を走らせる。どうやらこいつら全員がクロ、無関係な人間ではないと判断できる。

今の問答である程度この集団の強さが分かり心なしか落胆しつつ、モモンは続けざまに問う。

 

「お前達の中に"刺突武器"を持つ者が居るだろう、そいつは何処だ」

「……儂達だけ――」

「――ふーんあの死体を調べたんだ、やるねぇ~」

 

霊廟の奥から男達とは違う高い女の声が響いてくる。ゆっくりと歩いてくる女からは金属がこすれ合うような音が小さく聞こえてくる。

それが何なのか想像が付き、アルトリアは殺意が溢れ、再度飲まれそうになる。

 

「(こいつか……)」

「お主……」

「いや~バレバレだったからさぁ~隠れてもしょうがないじゃん?で、そちらさんの名前を聞いても良いかな?あ、私「クレマンティーヌ」よろしくね♪」

「……聞いてもしょうがないと思うが、モモンだ」

「……アルトリア」「私はラピュセルです」

「んー確かに聞いても意味無いか。ところでー……なーんでここが分かったの?わざわざ「地下下水道で待つ」とかいう手紙書いたのにー」

「お前のマントの下に答えがある」

「イヤー!変態エロスケベ―(棒)」

「……なんてね♪こ・れ・の・事?」

 

クレマンティーヌは歪んだ笑顔を見せマントを捲る、鱗一枚一枚が別の輝きを放つ鱗鎧<スケイル・アーマー>の様だ。

だがよく見るとその素材である鱗は従来の金属板は魔物の鱗ではなく、様々な冒険者達が身に着けたプレートで出来ていた……銅や銀、それに白金やミスリルのプレートまで存在する。

この女、数多の冒険者を殺しただけでなくそのプレートを戦利品、狩猟戦利品(ハンティングトロフィー)としている。

 

「私の仲間にはアイテムの位置を探る探知魔法が使える者がいてな、それがお前達の位置を知らせてくれた」

「ふーん……」

「……ラピュセル、お前はあの男達を任せる」

「了解です」

「クレマンティーヌ、私達は向こうで殺し合わないか?」

 

アルトリアはそれだけ言うとクレマンティーヌの返事を待たずゆっくりと歩き出す、その後を追うようにモモンもアルトリアの後を歩く。

 

「ふーん、オッケ~……」

 

クレマンティーヌも応え少し距離を開け後ろについていく。

これもアルトリアは計算済み、あの女の性格から考え私の投げかけに嫌とは言わないだろうと考察した。

わざわざ人間をもてあそぶように殺し、それを隠す事も無い。そして霊廟から現れる時の表情と余裕をもった態度……自身を強者とうぬぼれた者の特徴。

それを踏まえればどんな要求でも通るだろうと考えたアルトリアだが、モモンの後に続くもう一人の軽い足跡がそれを証明した。

 

「そーいや、あのお店で殺したのってお仲間?もしかして仲間を殺されて怒っちゃった~?」

「……彼らは一時協力した程度の中だ」

「ふーん。「よくも仲間を!」って激高してくれる子を嬲り殺すのが一番面白いのに……なーんで怒んないの?つまんないじゃ~ん!」

 

安い挑発、本来であればこんな挑発には乗らず自分のペースを保つのだが……

少しでも怒りを覚えたせいであの()()()が発動したのか、上手く心が抑えられない。

いま考えられる事はただ一つ……。

 

奴に地獄を見せつけろ――

 

「私の名声を上げる為に使う為の者をこうも遊ばれては苛立ちを隠せぬものだな」

「……ん~?」

 

私は腰に携えた聖剣を抜き構える。

 

「我が名声を広める為の道具だったのに、それを壊し計画をめちゃくちゃにしたお前という存在は……不愉快だ

 

怒りを含んだその口調に何を感じ取ったのか、クレマンティーヌはニヤリと不気味に笑う。

 

「あそうだ、カジッちゃん所に残った美人さん多分信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)でしょ?それじゃあカジッちゃんには勝てないよ?まぁ私に勝てるのも無理だろうけどね♪」

「……クッ、ハハハハハハ!」

「……何が可笑しい」

「いや可笑しいとも、実力をまともに測れない凡愚風情が我々の実力を測った気でいる……これが笑わずには居れるか?ハッハハハハ!」

「あぁ?このクレマンティーヌ様に勝てる奴がそうそういるわけねぇんだよ。この国で私とマトモに叩けるのは「明けの雫」と「青の薔薇」に一人、あとはガゼフ・ストロノーフとブレイン・アングラウス。……でもさぁ、本気で私に勝てる筈がないじゃん……」

「テメーのヘルムの内にどんな顔があるか知らねぇが、この!人外――英雄の領域に足を踏み込んだこのクレマンティーヌ様が!負けるハズねぇんだよ‼」

 

下等に見られた事に対し激高するクレマンティーヌ、それが弱者特有の感情だというのに気づいていない。

この世界でも同じ……"強いと思い込んだ愚か者ほど弱く、()()()()"。

 

「そうか……なら()()()やろうか」

 

私がそう言うとモモンがその意図を理解し軽く頭を縦に動かす。

彼は今回は観戦者、ナザリックを統べる者として私達の行動を監視し見定める。

そしてモモン、いやアインズは大声で私とラピュセルに告げる。

この言葉はナザリックの代表たる私の声なのだと高らかに宣言する為に――

 

わが友"セイバーオルタ"、"邪ンヌ"よ。我らがナザリックが意を示せ!

「あぁ?」

 

モモン……いや、アインズからの名を受け、アルトリアは"本来の姿"へと姿を変える。

 

「了解した……我らが王よ――」

 

自身の周囲を赤黒い禍々しき暴風が身を包み周囲に吹き荒れる。そして暴風の中心に飲まれたアルトリアは本来の姿へと変貌する。

黒ずくめの禍々しい色に赤い侵蝕された闇が悍ましく光る甲冑、先程まで手に握っていた白き聖剣はその影すら消え甲冑と同様赤黒く異様なオーラを放つ魔剣へと変わる。

白き竜のヘルムは無くなり、その素顔があらわとなる。薄い金髪の髪はなびき美しい顔はその美しさもさることながら圧倒的な強者の風格すら漂わせていた。

あまりの変化にクレマンティーヌは一瞬反応できなかったが、オルタの姿が変わった後、強烈な違和感を感じる。

 

「(なんだ?あきらかに雰囲気が変わりやがったのに……まったく()()()()()()()?)」

「はっ見た目が変わっただけじゃない!?その程度でこの私がおじけづくと思って――」

 

クレマンティーヌが言い切る前に黒騎士は、指にはめた指輪の一つを外す――

 

「っ!?!?」

「探知阻害の指輪を外さんと力量を視れないとは……愚かだな」

 

先程まで全くと言っていいほど感じなかった強者の風格、それが指輪を外した途端クレマンティーヌに襲い掛かる。

肌で感じる常軌を逸している殺意の波動、死を実感できる騎士の眼光……あれはバケモノだ。

ガゼフ……いや、それ以上の強敵だとクレマンティーヌの全細胞が怯え始める。

 

「は、ははは……所詮は威圧!本当の実力は私の方が上なんだよぉ……!」

「ふむ、探知阻害の指輪を外してもなお"自分が上"と言えるか、では……来るがいい」

 

 

 

――

 

 

 

数分前、霊廟入口付近にて――

 

「あーもう面倒ですね!」

「グォオオオオオオオオオ!!」

 

ラピュセルはカジット以外の男達を殲滅し儀式の主導者へ攻撃に移ろうとしたが、カジットは自身が持つ「死の宝珠」の力を使い"骨の竜(スケリトル・ドラゴン)"を呼び出し防がれる。

"骨の竜(スケリトル・ドラゴン)"は"死の騎士(デス・ナイト)"並の物理防御力を持ち、スキルにて"魔法を無効化"する為とても厄介な敵だ。

特に本気を出せず第3位階魔法以下の魔法しか使う事が出来ないという縛りがあるラピュセルには。

ラピュセルは己の物理攻撃で叩くしか有効打がないのだが、ギルドでも下から数えた方が早いほど物理攻撃力に振っていない。

いまの縛りであればプレアデス数人がかりで来られれば負ける可能性があるほどに弱体化する。

其の為ラピュセルは本気出せば勝てるのに勝てないというもどかしさと共に苦戦を強いられている――

 

「武技《5連突き》!(スキル<槍連撃・5連>!)」

 

ラピュセルもアルトリアと同じくスキルを武技と偽り攻撃する。高速の5連撃を骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の顔に集中し繰り出しその骨の体を砕く。

だが、後方で守られながら戦うカジットがアンデット系への回復魔法である<負の光線《レイ・オブ・ネガティブエナジー》>で回復させてくる。

 

「(私のスタイルは多種多様の魔法とスキルで翻弄する持久戦。其の為こういった戦いは得意ですが、今の縛り状態だと少し手間取りますね……)」

「……貴様、一体何者だ!何故骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の攻防をいとも容易くしのぐことが出来る⁉ミスリル?いや、オリハルコンクラスの冒険者か!」

「そんな大層な者じゃありませんよ、数日前に登録したばかりの冒険者です。もっとも、冒険者になる前はかなり死線をくぐっては来ましたが……」

「ミスリルじゃないだと?くだらぬ嘘をつきよって!チィ……!」

 

どうやら向こうも骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の攻撃を軽くいなすラピュセルが不思議でならない様だ。

このままでは押されかねないと判断したのか、カジットは骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に強化魔法を3~4重に掛け体制を整え反撃に備える。

 

「(今あの男が使ったのは<鎧強化(リーンフォース・アーマー)>、<下級筋力増大(レッサー・ストレングス)>に<盾壁(シールド・ウォール)>と……<死者の炎(アンデッド・フレイム)>ですかね?)……ならば」

 

ラピュセルも相手の強化魔法に対抗して自身に強化魔法を掛ける――

鎧強化(リーンフォース・アーマー)>、<盾壁(シールド・ウォール)>……そして<死者の炎(アンデッド・フレイム)>に対抗して

負属性防御(プロテクションエナジー・ネガティブ)>、そして聖属性を武器に追加する<聖なる光(ホーリー・ライティング)>を唱える

 

「ヌゥ……(対抗魔法を掛けられたか……これでは先程と変わらん。仕方ない……!)」

「死の宝珠よ……!」

 

今の状況では先程と戦況が変わらない、そう思ったカジットは死の宝珠を高らかに掲げ全ての負のエネルギーを放出する。

地面がひび割れ大地から無数の骨が噴火の如くあふれ出し、一つの大型アンデットへと姿を変え始める。

無数の骨は一つの竜の姿へと姿を変え……2体目の骨の竜(スケリトル・ドラゴン)がラピュセルの前に立ちはだかった。

だが今の二体目の召喚によってエネルギーを使い切った宝珠は光が消え只の水晶玉に変わる。

 

「はぁ~、二体目ですか」

「チッ、いまので負のエネルギーは空になってしまったが……まあよい、お前達を殺した後で街を死の国に帰れば多少元は取れるだろうよ」

「さーて……どうしますか」

 

流石に二体となると押さえていた力を少し開放しなければならない、どう対処しようか考えていた時――

 

「わが友"セイバーオルタ"、"邪ンヌ"よ。我らがナザリックが意を示せ!」

 

遠くから聞きなれた声が聞こえて来た。その意図を瞬時に理解したラピュセルは――

 

――蹂躙を開始する。

 

「了解……ではここからは冒険者「ラピュセル」ではなく、「邪ンヌ」として対処致しましょう」

 

ラピュセルは武器として振るう旗槍を地面へと突き立てる、槍は地面を砕きヒビから赤黒い火柱が渦を描きラピュセルを包み込む。

炎に吞まれたラピュセルのシルエットは徐々に形を変え、自身を包んだ炎柱を旗槍でかき消した……先程の美しい青いドレスの様な服と銀に輝く鎧とは正反対の黒くおどろおどろしいモノへと変わり、肩には魔物の羽で出来た物であろう灰色のファー付きのマントが風になびいている。

そして一番の変化は……先程の聖女が如き顔とはまるで違う、まるでクレマンティーヌの様に不気味で歪んた笑顔を見せる女――

 

「ん~……さて!ここからはナザリック地下大墳墓を纏める者として行動しましょうか♪」

「なんだ、何が起こった……まぁ良い。骨の竜(スケリトル・ドラゴン)よ、あの女を潰せ!」

 

カジットは今起こった状況がいまいち理解できずにいたが、あの女を殺す事は変わりない。

骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に指示を出すとそれにこたえる様に二体は前足を上げ勢いよく振り下ろす。

女は動きもせずその場に立って居るだけ……ドスン!と重撃が届き地面に前足を叩きつけた。

あの女を殺した!そう確信したのかカジットは笑みをこぼすが、それもひと時だけ……振り下ろした骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の脚がグラグラと震え始め徐々に持ち上がり……脚を掴み平然と持ち上げ歩み寄る邪ンヌの姿が見え始めたのだ。

 

「なっ⁉ば、馬鹿な!?」

「無駄よ無駄、<上位物理無効化>……私達この程度じゃダメージすらならないの」

「あ、あり得ん……!」

「あり得んって……今、目の前で、起こってるのよ?じ・じ・つ・よ♪」

「あり得るものか!骨の竜(スケリトル・ドラゴン)よ、もう一度――」

「――もういいわ」

 

邪ンヌは掴んだ脚を放り投げ、上空へと跳躍する。強引に足をどかされた骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は一瞬バランスを崩すがすぐに羽を使いバランスを保った。カジットは上空を飛んだ邪ンヌの目で追いかける、空を飛び月を背後に不敵に笑う黒い聖女がそこには居た。

 

「何故だ、〈飛行《フライ》〉の魔法が使えるのに何故逃げない……?絶対的な魔法耐性を持つ骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に勝算があるわけがないというのに」

「フフッ、勝算なら星の数ほどあるわよ……でも折角だわ、魔法詠唱師《マジック・キャスター》の貴方の為に良い魔法を教えてあげる……授業料は貴方の命で♪」

 

邪ンヌは構えていた旗槍を解き、片手を天に向ける。

そして邪ンヌは魔法を詠唱を始める、天に掲げた手から何重にも重なり大きくなる魔法陣が展開される。

その光景はまるで神話の如く、無数の赤黒い炎を纏った槍が何百と出現しカジットと骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に狙いを定める。

 

自身の認知をはるかに超えた謎の魔法にカジットの目は大きく見開かれた。もはやその悍ましい光景に言葉も出なかった。

骨の竜(スケリトル・ドラゴン)も主の危険を察知したのかカジットの前に立ちふさがり巨体を盾とする。

それを思い出し、自身の脳で鳴り響く警鐘が心の声を叫ばせる。

 

「――ばかな、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)には魔法に対する絶対耐性が……!」

「絶対耐性……?それは第6位階以下の魔法の無力化でしょ?この魔法はねぇ――」

 

――10位階よ♪

 

第10位階――

人間だけでなく、神ですら扱える者は少ないと言い伝えられている幻想の魔法。

ありえない、そう言いたかったがそれがあり得るのではと思えてしまう魔法陣から溢れる強大な魔力の激流がその真実味を覚えさせてしまう

 

これは偽りではない、カジットの直感が認めた――

 

「何故だ、この儂が5年かけて作り上げた努力の結晶が……すべてがこの数分足らずで崩壊すると言うのか⁉⁉」

 

わめくカジット、今この男の脳裏には今までの走馬灯が一瞬で流れているだろう。

 

「<三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)怨嗟燃ゆる業炎の雨(レイン・オブ・グラッジルス・フレイム)>!」

 

標的を定めた50を超える怨嗟の炎を帯びた槍は、慈悲もなくかの男に降り注ぐ。

主人の盾となった骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は怨嗟の雨に貫かれ、その死体を動かす魔力ともども全てを焼き尽くし無に帰した。

盾が無くなれば次は男の番――

炎槍の雨が男を貫き、周囲に突き刺さる。突き刺さり動きを止めた炎の槍は次第に点滅し始め、竜を模した竜巻を呼び起こす。

竜巻の中心に取り残され、360度からその身を焼かれるカジット……彼の口からは悲鳴が聞こえる事は無く小さく何かを呟いた――

 

 

赤黒い業炎の竜巻が消え去った後、カジットの体は黒き灰へとその身を変えた。

 

「焦げた姿は素敵ね……エントマはこの状態の人間も好きかしら?」

 

人間を捕食するギルドのメイドを思い出しながら、闇に堕ちた聖女は笑みを浮かべた。

 

 

 

――

 

 

 

同時刻・共同墓地、霊廟のはなれ――

 

霊廟の方から悍ましい炎の渦が天に上った。

その渦は周囲を照らし、離れた場所に居たクレマンティーヌ達にも目に入る。

 

「あれは……」

「ラピュセル……もとい邪ンヌの魔法か、あれを使ったとなれば……あの男は死んだな」

 

カジットは死んだ。そう言い放つ黒騎士に噛み付こうとも考えたが、あの女が放つ覇気を考えると本当なのではと考えた。

 

「フッ、カジッちゃんは死んだところで、私の方が実力は上……アンタを殺す事ぐらいわけはねぇのよ!」

 

クレマンティーヌは激高し、身に着けていたローブを脱ぎ棄てる。

そして軽装の鎧の姿になるとクレマンティーヌはその体を深く沈めまるで獣の様な体制を取る。

 

「準備は出来たか」

「……〈疾風走破〉、〈超回避〉、〈能力向上〉、〈能力超向上〉!」

 

深くしゃがんだ状態でクレマンティーヌは4つの武技を同時に発動した、だがあの黒騎士が何かしてきたときの為に幾つか武技が使える余裕を残してある。

スティレットを強く握りしめ大きく息を吐き出すと、クレマンティーヌは突進する。

武技を使い姿が揺らぐ程の速度でオルタに近づくが、オルタは構えすら取らず武器を握ったまま動かない。

 

「(何を狙ってやがる、隠し武器か?それとも格闘戦?)」

「チッ、死ね――」

 

そう言い放ち強く握りしめたスティレットを突き刺す。

武技を同時使用し生み出されるこの一撃はどんな防具ですら貫く威力を誇る、その一撃で黒騎士の心臓を狙い――

 

――突き刺したハズだった

 

「……つまらん」

「は……?」

 

突き刺し確実に殺したハズの騎士が声を発した。

何が起こったのか理解が出来ず、すぐさま二撃目を入れようと動こうとしたが……スティレットを持つ片腕の感覚が途絶えた。

何か喰らったのか確認する為に腕を見ると、そこにあるはずの腕は無くただ自身の血が流れ出ていた。

 

「武技を使ってもこの程度の速度か……」

「あ、ああ、ああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼」

 

自身の腕が切り落とされた。それを目視し自覚してしまったクレマンティーヌに遅れて全身に激痛が駆け回る。

 

……痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!、痛い!!、痛い!!!、痛い!!!!

 

今まで何度か深手を負った事はあったが、それ以上の強烈な痛みが襲い掛かる。

 

「喚くな、騒々しい」

 

ザシュッっとまた何かが斬り落とされたような音が聞こえすぐに距離を離そうとする。

が、何故か体は動かず頭だけ下に移動している

 

「えっ――」

 

頭が落ちた、自分の頭が落ちた。

そう考え理解してしまった瞬間、意識が一気に落ち始める。

目の前が黒くなり思考する事すらできなくなり自身の頭が地面に落ちた音が聞こえると同時にクレマンティーヌの意識はその手を離れた……だが

 

「あれ?」

 

何故かまた意識が戻り、クレマンティーヌはその場で座っていた。

何が起こったのかわからず、彼女は斬り落とされた筈の腕や首をペタペタとさわり確認する。

大丈夫繋がっている、私は生きている――

だが、さっきの生々しい死の感覚は何だ……?

 

「復活は変わらずか……」

「っ……!」

 

オルタの声が自身の横から聞こえ急ぎ距離を取る。

先程の謎の死の感覚が自身の呼吸を乱し冷静さを保てない。

はやく冷静になれ、早く戦闘態勢を取れ……そう思いながら地面を眺めて動けずにいると左から血が流れて来た。

何の血なのかと顔を横に向け確認すると、そこには()()()()()()()を着ている腕と頭が無い死体が転がっているのが目に入った――

 

「あ……れは?」

「お前だよ」

 

クレマンティーヌが死体を確認したのを見計らいオルタが声を掛ける

 

「私……?馬鹿を言うな!私は今もこうして――」

「――死ぬ直前の記憶があるだろう?」

「!?」

「お前を蘇生したのさ。面白い事に部体をバラした後()()()()を蘇生すると片方の死体を残したまま新たに蘇生を施した部位から()()()()()"新たな人体として蘇る"ことが分かったらしくてな」

「この身で確認した事は無かった為、今この場で試させてもらった」

 

何をいっているんだ――

クレマンティーヌはオルタが一方的に話す事への理解が追いついていなかった。

死体?バラす?体が産まれる?単語一つ一つが理解できない、狂っているとすら感じる

 

「テメェ何を分けわかんねぇことを――」

「――だからな」

 

話を遮ろうとしたクレマンティーヌだったが、オルタは聞こうともせず一瞬でクレマンティーヌの横を通り縦に切り捨てる。

クレマンティーヌは座った体制のまま頭から下半身までを縦に両断され血しぶきが舞う

 

「あ え? こん ろは な   に ――」

 

また何かが起こった、そう思った時にはすでに遅く視界が左右バラバラに倒れ、両断された体が頭の重さでバランスを崩し左右に分かれ地に落ち、意識を失い――

――再度意識を取り戻す。

 

「ガッ……!ハァ…ハァ…」

 

また訪れた死の体験と意識の消失……。

もしやと思いゆっくりと右を見ると、そこには切り捨てられたクレマンティーヌの右半身が血を噴き出して倒れている。

そしてようやく気が付いた……自身が何度も殺され、そして蘇生させられているという事に。

 

オルタは何度もクレマンティーヌを殺し、再度蘇生を繰り返すことで地獄を見せようとしてるのだ。

先程、邪ンヌの方が終わり合流してきたのを確認したオルタは自身のスキルの衝動に身を任せクレマンティーヌへの処刑を決行した。

オルタが殺し、確実に死んだのを確認した後遠くで眺めている邪ンヌが透かさず第10位階魔法<終わらぬ輪廻(エンドレス・リーンカーネーション)>を発動し蘇生させる。

 

終わらぬ輪廻(エンドレス・リーンカーネーション)>は超位魔法を覗く位階魔法の中でも最上位の蘇生魔法。

ユグドラシルでは蘇生には代価として経験値、つまりレベルダウンが起こる。第五位階魔法の〈死者蘇生(レイズ・デッド)〉のレベルダウンは15~20レベル分ダウンし、第七位階魔法の〈蘇生《リザレクション》〉は10~15と消費経験値が減り、第9位階魔法の〈真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)〉は5~10と大幅に減り、最高位の<終わらぬ輪廻(エンドレス・リーンカーネーション)>となると消費経験値は1~5と破格の消費量で復活が可能になるのだ。

 

MP消費はその分大きいが、そこはオルタが持つバイザーの能力でMPを回復させ、連続で使用を可能にした。

その繰り返しを数分行い、愚かな女への罰とする事を考えついたのだ――

 

 

「どうだ、2秒前に斬り落とされた半身を見る感想は……?」

「グッ……オボェ……ゴホッゴホッ……!」

「ふむ、精神の摩耗と自死体験の把握による嘔吐、といった所か」

 

無慈悲に私を殺すバケモノは表情を変えることなく無様に敵前で吐いた私の姿を視て考察する。

 

「て、テめェ……なンで……ゴンな…ゴど……ゴフッ、ガフッ……!」

「何で?そんなの、只のお前の真似事さ」

「お前はあの時、冒険者の少女を殺さずいたぶり続け、苦痛と恐怖を自分が満足するまで与えていたんだろう?」

「それと同じさ、私が満足するまで"死と再生"を繰り返す……ただそれだけだ」

 

クレマンティーヌは「何度も蘇生できる」実力があるだとか、そんな事が頭の淵に入らない程に恐怖を覚える。

 

「ごの゛……ばげも゛の゛‼‼‼‼」

「クッ、ハハハハハハ‼‼」

「その化け物の憎悪を引き出したのはお前だ……!」

 

クレマンティーヌは絶望する。

あぁ、自分は相手にしてはいけないモノを相手にしていしまったのだと――

 

「は、はははは……はははははははっはは」

「ふん、狂ったところでやめるつもりはないがな。さぁ、最低でも2~30回は死んでくれ」

 

そして、クレマンティーヌは黒き悪龍の憎悪をその身で浴びる――

頭を引きちぎられた、首を落とされた、ねじ切られた、燃やされた、串刺しにされた、またねじ切られた、今度は裂かれた、今度は、今度は、今度は潰された、今度、今度、…………

 

 

 

――

 

 

 

 

…繰り返すこと67回、何もなかったこの場所はわずか5分で一人の人間の死体が散らばる処刑場へと変貌していた。

左を見ればあり得ぬ方向へねじ切れた女の腕が、右を見れば頭蓋を踏み砕かれ鼻から下の顔しかない肉塊が、前を見れば乱斬りにされ無数のブロック塊にされた"女だったモノ"が、後ろを見れば心臓に風穴が空き、恐怖を絶望に囚われた狂気の表情をみせる女の死体が散らばっている。

その光景はまさに地獄、現場を見ていなければこの光景が一人の「女の遺体だけで作られたこと」、そして「遺体の女はまだ生きている」という事にすら気づかないだろう……。

 

「……。」

「ふむ、こんな所か」

 

惨劇の舞台の真ん中には、黒い甲冑が月夜に照らされている美しき騎士と、地面に膝を着き次にくる恐怖に恐れを抱く女が座っていた。

 

「はぁ、ようやくあのスキルが収まったか。あのスキルのデメリットはこうなるとは思わなんだ……」

「ようやく落ち着いた?まったく、私の蘇生魔法があるとはいえ60回近く第10位階の蘇生魔法使わせないでほしいわ」

「すまない。MPの補填の為にお前に私のバイザーを渡してはいたがそれでもきつかっただろう、後ほど対価は必ずはらう」

「ええ、この依頼の対価は奮発してもらわないと割に合わないわ!」

「……善処する」

 

「お二人共、終わりましたか?」

 

オルタが処刑と言う名の遊戯を行っている間、アインズは一人霊廟の地下にはいりンフィーレアを連れ戻ってきた。

謎の透けた儀式用衣装に身を包み、目からは血が流れた後がある。

 

「戻ったか、済まぬな」

「仕方ないですよ、異業種はスキルのデメリットが強いですし……」

 

先程から出てくるオルタの()()()、それは彼の種族固有スキルである<悪龍の炉心>というスキルの事だ。

このスキルの効果はステータスの大幅加算と単純シンプルなモノだがそのデメリットが大きい。

デメリットは「カルマ値の暴走」、ユグドラシルではカルマ値の上限は+300~-500が上限ではある、だがこのスキルは特定の条件を満たすとそのカルマ値の限界値を突破し変動させてしまうというモノ。

この上限を突破したカルマ値は大幅なステータスの強化の恩恵と共に、一時的な「バーサーク状態」を引き起こし魔法やスキルを自由に選択できず選択したモノとは関係なくランダムに振るい、理性を失った獣……いや龍の様に暴れまわるのだ。

 

ユグドラシルでは「大幅なレベルの変化」がトリガーだったが、この世界で使用が変質したのか発動のトリガーが「強い感情の起伏」へと変わっていた。

その為、"漆黒の剣"の事を知り大きく感情が揺さぶったせいでスキルのトリガーが掛かり、一時的に暴走に似た状態になっていたのだ。 

 

「(ユグドラシルの様に暴れる様な事は無く制限できるのは幸いだったな……)」

「それで、この後この女はどうします」

「折角の武技の使い手だ、ナザリックに連れていく。そうだな……サリエリのスキルを使い吸血鬼にでもして手駒にするのが良いだろう」

「成程、それは良い案ですね」

 

自身の事を話しているのだろうが女は聞こえていても反応する気力は無い。

脳裏に移る自身の死んだ記憶……その光景で何度発狂しても魔法で精神を補強される――

苦痛を絶望が女を襲い、黒騎士が嘲笑うその光景は地獄の悪魔による処刑はこのようなモノなのか、これが自身の罰なんだと……自身の犯した過ちに後悔する。

 

「さて、クレマンティーヌよ……」

 

女は答えないが体が少し震え反応を示す。

 

「お前に最後の選択だ、このまま"68回目の死を迎える"か、我が軍門に下り生きるか……後者を選べば貴様のこれ以上の苦痛は起こらないだろうな」

「……に……。」

「うん?」

「本当に……もう死なない?」

「ああ。我がナザリックの為に働くと誓うのならばこれ以上の苦痛は起こさない、ナザリックを統べる我々が保証しよう」

 

……クレマンティーヌはすぐに決断する、あの化け物……いや、"我が主"の気が変わらぬように

 

「私、クレマンティーヌは……ナザリックを統べる……御方々に」

「忠誠を……誓います――」

 

クレマンティーヌがオルタの前に跪き頭を下げる、悔しさも後悔もない。

彼に忠誠を尽くせば生き残れる、これ以上の地獄を体験する事はない……生きる喜びを知る為に、彼らに永遠の忠誠を捧げるだけだ――

 

 

 

――

 

 

 

一連の騒動が終わり、撤収の為に整理するアインズ達。

転移門(ゲート)〉を使い幾つかの配下を霊廟前に集めさせ残党の捜索や戦利品の捜索などを指示する

 

「サリエリ、主に呼ばれここに」

「ふむ、よく来たサリエリ。早速だがお前に仕事を頼みたい」

「我が主の名であればなんでも……」

「ここにいる女、この者を吸血鬼へと変え配下に加えよ。"始祖(オリジンヴァンパイア)"であるお前ならばシャルティアより上のヴァンパイアへと変えられるだろう」

「お安い御用だ、我が主」

 

サリエリは、クレマンティーヌの首元に噛み付きスキルを発動する。

クレマンティーヌから小さく声が漏れ、体の欠陥が浮き出る。そしてドクッドクッと心音の音が聞こえ、人間の体から吸血鬼の体へと変貌する。

爪は鎧を容易く切り裂く鋭利な爪へと変わり、鋭い歯が生え、背中から赤いオーラで形成された羽が生え完全な吸血鬼へと変貌した。

スキルの効果が終わり首元から口を放すサリエリ、吸血した牙から赤い雫が垂れ艶めかしさを感じる。

 

「お前は今"操血の吸血鬼(ブラッドレーション・ヴァンパイア)"となった。これから己が命を捧げ忠を尽くせ」

「……畏まりました」

 

"操血の吸血鬼(ブラッドレーション・ヴァンパイア)"……確か血を操作するスキルが豊富の吸血鬼だったな。レベルは30程だが、死から生まれたヴァンパイアではないクレマンティーヌならもっと上、おそらく40後半か50前半程は行っているかもしれない。

 

『アルトリアさん!』

『(グレイからの"伝言(メッセージ)"か)グレイか、其方はどうだ?』

『こちらは結構な量のスケルトンが来ましたけど合流した兵士の人達と防衛し、町への被害なく無事落ち着きました……!』

『よくやった、これで我々の名声が加わる。分割し黒幕の確保と街の防衛をこなした冒険者として知られるだろう。本当によくやった、ナーベにも称賛すると伝えるように』

『はい、わかりました!……あ、これから兵士の方と状況を整理する為の話し合いをしますのでこれで』

「アインズ、邪ンヌ。グレイの方も無事防衛が終わったそうだ」

「そう、後で二人に頭ナデナデしなきゃ♪」

「そ、それは後ででお願いしますね……」

「え~なんでよアインズ~」

 

「まったく……クレマンティーヌよ、後ほどお前には過去の事など含めすべて話してもらう。サリエリと共に我がギルドに戻れ」

「かしこまりました……」

「了解した主、周囲に飛散した血と肉は集め持ち帰る。残った原型のある死体は報告に使うと思い残していく」

「ああそれでいい、ご苦労」

「では失礼する」

 

サリエリとクレマンティーヌは〈転移門(ゲート)〉をくぐりナザリックへと帰還する。

私達は人の原型が残っているクレマンティーヌの死体とカジットだった炭を抱え町へと戻る、それと念には念を押しアインズの魔法で死体に蘇生時、記憶を消去させる条件付きの魔法を付与してもらった。

これで万が一蘇生させられたとしても情報が漏れる事も無く、戦力としても役に立たない人間となるだろう。

 

「さて、あとはこの炭と化した|骨の竜<スケリトル・ドラゴン>だが……」

「これ持ち帰るとなるのは文字通り骨が折れるわよ……」

「また冒険者モードになると本気を出せませんからね、ナーベ達に連絡して馬車かなんか持ってきてもらいましょうか」

「そうするしかないか……何匹かシャドウ・デーモンを置いてよそ者に取られない様見張らせておこう」

「「賛成~」」

 

「では――」

 

悪意の具現化ともいえる三人は青い光に包まれ、再度冒険者へと姿を変える。

人間達は気づくのだろうか、己の町に世界を揺るがす力を秘めたバケモノたちが潜伏しているというのを……いや、気づかない方が幸せなんだろう。

 

「――凱旋と行こうか!」

「ええ♪」「ええ、行きましょう」

 

正義の皮を被ったバケモノは一かけらの悪意を持たず凱旋に向かう。これで一件落着、全て順調元通り。

仮面(朝日)の下で、悪魔()が笑う ――――




新年色々な作品を読み漁り表現方法等を個人的にこだわって書いてみました……。



ですが自分ではどうだかあまりわからないので、ご意見を"優しく"教えていただければ嬉しいです <(_ _)>
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