ラステルもヤンデレにして生存させようかと思いましたが、寄り道になるので未登場。最初は登場する姫は全員ヤンデレヒロインにしようとか思ってた。
さすが工業都市ペジテだな、各種資源は元より鹵獲品の種類が凄まじい。
品数も下手な中小国よりありやがる。
まぁ、掘り出し物からガラクタまでごっちゃになってるから分けるのが大変だが。
「参謀殿、こっちの航空用エンジンはいかがいたしますか?」
「ウチのバカガラスとコルベット用の予備エンジンは確保してあるから残りは全部本国へ送っちまえ」
占領したペジテ市の中心にあるセンタードームで、本国用・第3軍用・袖の下用・自分用と鹵獲品の仕訳をしつつ部下の質問に答える。
トルメキアの正規生産品もいいが、やっぱり鹵獲はロマンがあっていいねぇ。何より自分達の懐が痛まないし。
まぁ、奪われた側からしたら堪ったもんじゃないだろうが。
捕虜となったペジテ市の兵士や強制徴用された市民が荷役として汗を流しながら働く姿を横目にそんな事を考える。
「よろしいので?」
「エンジンだけ何個もあってもしょうがないだろ。時間がありゃ機体その物を作りたい所だがそんな時間もないだろうし」
「はぁ……」
重要な戦略戦術物資であり、その数が軍事力に直結するにも関わらずあっさりとエンジンを本国送りにする俺に納得がいかないのか、歯切れの悪い兵士。
「それにな、金とエンジンをしっかり送っておけば本国のお偉いさん方は満足してくれるんだよ。他のモノをウチがせしめていても……な」
「ッ!!なるほど、さすが参謀殿」
悪人面でニヤリと笑みを浮かべてみれば、こちらの言わんとする事を理解した兵士は納得した様子で目を輝かせていた。
そして2人して川のようにずらりと並べられた銃火器や山のように積み上げられた弾薬、燃料、更に今は無言で佇む兵器群を眺める。
これがあれば次の戦は楽が出来そうだ。
規格はあまり揃っていないが歩兵がもつ小銃や突撃銃は言うに及ばず、重機関銃に火炎放射器、迫撃砲、榴弾砲、数輌の突撃砲と戦車、そして大型貨物艇のブリッグが2艇、飛行ガメが4機とそれらが全力で3回は戦える程の弾薬燃料があり第3軍の大幅強化が可能であった。
またこれ以外にも戦闘によって損壊した兵器や故障したまま放置されていたりスクラップヤードに転がっている兵器がかなりあり、それらを修理したり改造すれば更なる拡充も夢ではなかった。
加えてここには置かれていない消耗品や食糧の類いも第3軍全軍が長期的な作戦行動を可能とする程の量が徴発によって確保出来ていた。
「──精が出るな、クロトワ」
笑いが止まらねぇ!とニヤニヤしている事が出来るのもそこまでであった。
地を這うような不機嫌なその声にぎょってして振り返れば、明らかに近寄りたくないオーラを発している我らがクシャナ殿下の姿があった。
付き従う親衛隊もクシャナ殿下の瘴気に当てられたのか、いつものようなキリッとした様子が失われ疲れ果てた時のように肩を落とし歩くのがやっとのような体たらくであった。
「話がある、私の部屋に来い」
「ハッ!」
脊髄反応的に直立不動で敬礼を行った俺はクシャナ殿下を刺激せぬよう細心の注意を払いながら部屋へと連行される事となった。
「これを読め」
「ハッ」
人払いがされ2人だけとなった部屋の中で、投げ渡された豪華な封筒を開け2つ折りにされていた中の紙を取り出す。
「遂にお母様までお前を返せと言ってきよったッ!!私の部下だぞ!?どうしてどいつもこいつも私からお前を取り上げようとするのだ!!」
俺が手紙を読む前から我慢が出来なくなったのか、クシャナ殿下がバンッと机を叩き怒りの声を張り上げる。
荒れてるなぁー。えーと何々?
怒り心頭のクシャナ殿下を他所に開いた手紙に目を通し内容を読み解く。
なるほど。
女王陛下からクシャナ殿下へと送られた手紙に書かれている美辞麗句の言葉の羅列を要約すれば、巨神兵の確保を切っ掛けに開始される事となった対土鬼諸侯国連合との戦争に触発され、トルメキアが征服してきた国々の地域で反乱の兆しがあるため、それの押さえとして俺の派遣を要請する文であった。
「まぁ元々自分をトルメキアに引き抜いたのは女王陛下でありますから」
他人事のようにそう言って手紙を封筒に戻しながら当時の事を思い出す。
先生との修行の旅の終盤にトルメキアで開かれていた武術大会に気まぐれで参加して優勝。
その強さを見込まれて当時宮廷内のゴタゴタで味方を欲していた女王陛下の護衛を少しの間だけ担う事になったまでは良かったものの、転生特典の能力がバレた途端に取り込み攻勢が激化。
普通では考えられないような好条件で護衛役の期間延長を呑ませられたかと思えば、あれよあれよという間に士官学校へ入学させられ軍大学院にも進級。
卒業後には正式にトルメキアへの帰属を求められ風の谷への便宜を図る事やいくつかの条件を飲んで貰えた事、軍隊の空気が体に合っていた事もありトルメキア軍に従軍し、女王陛下の懐刀として各地の戦線を転々としていた。
「あぁ、そうだ。お前を私に紹介したのもお母様だが、今は私の部下だ。私の騎士だ」
初めて会った時はあれだけ嫌われていたのになぁ……。
オモチャを取り上げられそうになっている子供のようなクシャナ殿下の姿に初対面時との扱いの温度差にギャップを感じずにはいられなかった。
凛々しく気高く孤高の姫でありながらも、当時はまだ10代前半であったため母親のお気に入りであった俺の事が気にくわず女王陛下にクシャナ殿下の護衛を行うように命じられ時は随分とキツく当たられたものである。
仲良くなった切っ掛けは幾つもの戦場を共に駆け常に結果を残した事や殿下の窮地を幾度も打開した事。
そして、決定打はクシャナ殿下の暗殺を未然に防いだ事であろう。
……尤も暗殺を防いだと言っても、それはただの偶然であったのだが。
あるパーティーでベロンベロンに酔わされ、酔っ払った状態でクシャナ殿下が持っていたグラスを奪って酒を口にしたらそれに毒が入っていたというだけの話である。
自分では酔っ払っていたから何も覚えていないが、周りからはクシャナ殿下を守るために酔っ払ったフリをして毒の酒を飲み殿下を守った忠臣者として評され、女王陛下と殿下からは家臣の枠組みを越えて遇される事となった。
ちなみに毒を飲んだためにぶっ倒れ一時は生死の境をさ迷っていたらしいが、2日後には普通に回復。
毒の後遺症による手足の痺れなども全く無かったが、これ以降どれだけ酒を飲んでも酔えなくなってしまったのは残念である。
「……何がおかしい?」
あ、不味い。
「ハッ、少しばかり昔の事を思い出しておりました」
ついつい昔の思い出に浸り過ぎて口元が緩んでいたのをクシャナ殿下に見咎められてしまった。
取り繕っても嘘を見抜かれ更に怒られるだけなので正直に答えたものの、みるみるうちに殿下の眉がつり上がっていく。
「貴様は私が悩んで──ッ!!もうよい!!下がれ!!」
「し、失礼致しますッ!!」
ぶちギレたクシャナ殿下の怒気に肝を冷やしながら部屋を転がり出る。
いやー失敗失敗。こりゃまた閑職行きかな?しかしまぁいい機会かもしれんな。
原作の事をほぼほぼ知らないからなんとも言えないけど、そろそろ物語が始まる頃だろうし。
クシャナ殿下には親離れしてもらわないとな。
そんな事を考えながら俺は怒られた事を一ミリも気に止めず、呑気に廊下を歩くのであった。
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「このままではアイツを奪われてしまう……なんとかしなければ。だが、どうする?どうやって対抗する?……そうか……国を作れば良いのか。ハハハッ、どうしてこんな簡単な事を思い付かなかったのだ。そうすればアイツとも……フフッ、フフフッ、兵は皆私に付いてきてくれる。武器も揃った。拠点も得た。トルメキアはこれから土鬼との一大決戦で私達に構ってはいられない。フフッ、アイツと私の王道楽土を作ろう。フフッ、フハハハハッ!!」