下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話 作:散髪どっこいしょ野郎
暗いですわ
重いですわ
湿りまくりますわ!
曇りますわ!!
ここまで来たらバクバクですわ!!!!
カキカキですわ!!!!!!!!
最近、変だ。
トレーナーといると落ち着かない。
だけどそれがイヤっていうわけでもなくて、むしろその時間が欲しくなっているというか…とにかく変なんだ。
気にするうちにだんだんトレーニングにも集中できなくなってきたから、同室のマヤノに色々相談することにした。
…うん。
そういうアレなんだ。
……………そっかぁ〜……。
別にそれがわかってもボクの悩みが完全に無くなったわけじゃない。
マヤノは「テイオーちゃんもとうとうオトナになったんだね〜」なんて言いながら目をキラキラさせてたけど、ボクは相変わらずモヤモヤしている。
…でも、このままトレーニングにも力を入れられずトレーナーと上手く話すコトも出来ずに終わってしまうなんてイヤだ。
言ってしまおう。
トレーナーは大人だから、ボクが何を言ってもいい感じにどうにかしてくれるハズ。
ボクの
1人で悩むなんてボクらしくない。
両手で頬をパチンと鳴らして気合いを入れてからトレーナーの所に向かった。
…マヤノが結構口が堅くてよかった。
前々からおかしいと思っていた。
テイオーのトレーナーになってからは散々うまい汁を吸っていたのだが、どことなく罪悪感…?を感じている。
まあそれで俺の性格や欲望が薄まったわけでもないので見て見ぬふりをしていた。
それに、どんなにクズな人間だとしても内面をバラさずに表面は真っ当なフリをしていれば誰も傷つけることはなく誰かに糾弾されることもないのでは、というのが俺の考えだったので
いつものように熱心なトレーナーを演じつつ自分の為に動いていた。
俺は誰かに理解してもらいたかったのだろうか。
それとも本当はまともな人間になりたかったのか。
はたまたこの生活を続けていきながら変わってしまったのか。
担当するウマ娘、トウカイテイオーが部屋にやってきて内に忍ばせていた思いを伝えてきた瞬間に目のくらむような感覚がした。
知らないつもりだった罪悪感。
それは決して消えることはなく延々と積み上がっているだけなのだと、
彼女の言葉でその全てが今、俺に刃を向けてきたのだと思い知らされた。
そして堰を切ったように自分の罪を告白した。
彼女は戸惑っていた。当然だ。
思いを寄せていた相手が突然そんなことを暴露してきて はいそうですかと受け止められる者はいない。
この告白は彼女の純粋な恋愛感情を踏みにじっているだけに過ぎない。自己満足に過ぎない。
俺はテイオーを想ってなんていない。
自分の為に、自分の罪悪感に耐えられなくなったから彼女の心を踏みにじった。
思いを伝えたら今まで自分をそういう目で見ていたことを暴露されたなんて。
ジョークにもならない。
「急にそんなコト言われたって…どうすればいいのかわかんないよ…!」
テイオーは部屋から走り去ってしまった。
俺には自分の欲以外にもシャーデンフロイデに近いものがあった。
テイオーのような少女が陰る姿を見たがっていた。
なあ、おい。
これが俺の見たかったものなんだろ。笑ってみろよ。
いつもみたいに裏っかわでほくそ笑んでみろよ。
くたばれ。
信じたくなかった。
ボクが好きになったヒトがそんな人間だったなんて、何かの間違いであってほしかった。
フラれてしまったとしても気持ちを切り替えてレースに向けて頑張ろうと思っていたのに、結果はもっと最悪だった。
辛かった。苦しかった。
何よりも辛く重く感じたのはトレーナーがボクを裏切っていたというコトだった。
前よりもトレーニングに集中できない。
誰に言う気にもなれず、自室のベッドに顔をうずめる。
枕が冷たくなった。
トレーナーと話せなくなった。
話したくなくなってしまった。
練習メニューの説明を受けて何も言葉を返さないでトレーニングに向かうボクを見つめるあのヒトの顔がイヤでも目に入ってくる。
最低なヒトなのに、ボクを裏切ったくせに、なんでそんな苦しそうな顔をするのさ。
ボクの方が辛いんだよ。
そんな顔するぐらいなら言わないでよ。
それじゃあまるで、キミが後悔してるみたいじゃないか。
レースで負けた。
気分も乗らなくて、頭の中は毎日最悪のコンディションだった。
普段のトレーニングにも身が入らなくてレースでも全力を出し切れなくて負けてしまった。
トレーナーのせいだ。
レースで負けたコトを誰かのせいにする自分になんてなりたくなかった。だからトレーナーのせいだ。
あのヒトへの怒りだとか憎しみだとか好きって感情だとかがごちゃごちゃに入り交じってぐちゃぐちゃにされて何もかもがイヤになる。
もし、このまま負け続けたら?
トレーナーはボクから離れる。
ボクをむちゃくちゃにしといて───初恋を壊しておいて───告白に答えないでおいて───ボクから離れる?
許さない。
そんなの絶対、絶対に、絶対に許せない。
ボクだけが傷ついて終わるなんて、あの”人”がのうのうと他の誰かのトレーナーになるなんて。
キミも同じ分だけ傷ついてよ。
だから絶対に終わらせない。
何がなんでも走り抜いた。
心が裂けそうになっても体が追いつかなくても意地で走り通した。
勝ちたかった。あの人を逃がさないために。
そう、そうだよ。
あの人はボクのトレーナーなんだ。
この怒りも、「好き」も、誰にも渡さない。
あの日からテイオーは俺から離れるようになった。
必要最低限の会話以外しなくなった。
さもありなんと思われる。
俺は何がしたかったんだよ。
後悔と罪悪感と自分への嫌悪感とテイオーへの何かと────
俺にそんなものを感じる資格はない。
分かってる。
分かっていながら自暴自棄になりかけて自己嫌悪と後悔と悲しみの渦に呑まれた。
死ねばいいのに。
阿呆のようにリフレインしながら脳に貼り付けられた事実を確かめさせられる。
テイオーに嫌われた。俺が苦しめてしまった。
寝る前、起きた後、それを確かめて独り言ちる。
「はは、気持ち悪いな、俺って」
昔からそうだった。今更何を言っているのか。
みぞおちが痛む。
テイオーは1度負けながらも がむしゃらに走り勝ち進んだ。
そんな彼女が怪我をしないわけがなく、病院で説明を聞きながら洞々とした目をしている彼女の傍らで叫びたい強烈な衝動を堪えていた。
テイオーの喪失ぶりは誰が見ても心配する程に深刻だった。
俺はテイオーの足を治す為に文字通り寝ずに昼夜問わず駆け回り続けた。
彼女が走れなくなってしまったら。
そのもしもさえ考えられない。
考えてしまったら俺は俺でいられなくなる。
「…ボクの足なんて本当はどうだっていいんでしょ」
久しぶりにテイオーが話しかけてきた。
その衝撃にしばらくの間動けなかった。
「────その筈なんだけどな。まあ期待しないで待っててくれよ」
どうせ自分の為だ。
自分の為に過去の過ちをぶちまけて、明るかったテイオーをこんな状態にさせた。
だから俺が彼女の足を治そうとするのも、自分の為。
みぞおちが痛む。
結論から言うと、トウカイテイオーは再び蘇った。
それからまたかなりの時間が経ち、夏合宿の時期がやってきた。
眠れない。
結局あの時以外に会話らしい会話は無かった。
当然の結果だ。
それは別にどうでもいい。
俺が何をしようとどう生きようとそれは自分の為でしかないんだという勝手な結論に身悶えしていた。
あまりにも眠れないので合宿所の外庭に足を運ぶ。
ちょうどよくベンチがあったのでそこに座った。
──テイオー。
ごめん。
俺の謝罪になんて何の価値も意味も無いんだろうが、俺が悪かったよ。
贖えたつもりにもなれない。
ごめん。本当に最低なんだけど、俺、お前が───────────
みぞおちが痛む。
体を丸める。屋外照明に仄明るく照らされた地面が
朦朧としながらもテイオーがそれを見ていないことに甚く安堵して、意識は落とされることなく薄まっていった。
誰かの足音が聞こえる。
あの人は何がしたかったんだろう。
思い返せばキリがない。
ボクが走れなくなった時点で見放していれば、少なくともあの人はこれ以上傷つきはしなかったのに。
あの人が
あの人がいなかったら。
ボクはこんな辛い思いをしなくて済んで、レースで負けるコトもたぶん無くて、怪我から復活するコトも無かった。
あの人が好きで嫌いで、それでももしかしたらあの人はボクが好きなんじゃないのって期待してた。
ボクにそういう目的で近づいただけなら、その分、ボクを裏切った分苦しんでいてほしかった。
たとえボクを嫌いになっていてもボクはあの人が好きで憎かったから逃がさないつもりだった。
だけど、あの日から足りなくなってしまった。
期待しちゃったんだ。
眠れない。
足りないんだ。
あの人が苦しんでいても、レースで勝てていても、何か足りない。
外庭をフラフラ歩く。
あの人が見えた。
猫背になって地面にうずくまったかと思うと、真っ赤な何かが広がった。
ビックリして駆け寄って体を抱えると、視線を宙に泳がせながら壊れた機械のように呟いていた。
「ごめ、ごめん……おれ、ご、テイオー、ごめん。テイ…おれ、ご、お…」
ああ、
ボクは、
救いようがないこの人に
って、ようやく欠けてたピースが見つかったような気持ちになれた。
あれからのことは断片的にしか覚えていない。
意識が途切れそうになりながら病院に運ばれて、それからは…。
思い出せないが、幸いにも大事には至らず2週間程度入院するだけで済んだ。
開け放たれた窓から吹き込む風が頬を撫でる。
その心地よさに微睡み目を細めていると、病室のドアが開く音が聞こえた。
誰が来たのだろうか。
閉じかけた瞼を開いて頭を上げると、俺の担当しているウマ娘がいた。
眠気が一気に覚めた。
「テイ…!「もう、落ち着いてよ。あんまり無理したら治らないよ?」
起こそうとした体をベッドに沈められる。
「なんで…」
「ボクもキミに聞きたかったよ」
彼女が何を求めているのか推し量ろうとしても何も捉えられない。
「話して。キミが思ったコトを全部聞かせて」
「…」
そういうことなんだろう。
思考の一切を打ち切って俺の全部を語りかけた。
「じゃあさ、ボクに会えないのは寂しい?」
「…ああ」
「キミってお見舞いに来てくれるヒトとかいないの?」
「……ああ」
一応桐生院さんとたづなさんは来てくれたが、2人とも忙しいということもあり心配してくれながらも帰っていった。
ここから地元までは遠く、両親にはメールで状況を知らせた。
特に重症というわけでもなく父も母も暇人というわけでもないので来なくてもいいという趣旨の文を送った。
したがって俺の見舞いに来るのはテイオー1人ぐらいしかいなかった。
「へぇ…それじゃあ、ボクだけだね」
何を言いたいんだろうか。
「そうだな。お前しか、いない」
彼女しかいなかった。
「もう、お前しか、いない」
「…やっぱりキミってボクが好きなんだね」
「………………………まあ、そうかもな」
「ねぇ、キミのせいで今までボクがどれだけ辛かったか知ってる?」
「キミがいなくたってボクは勝てるんだよ。でも、キミがいなかったらボクは走れなかった」
「ずっと辛かったんだよ。
どうすればよかったんだろうか。
「なら俺は…どうすれば──「どうもしなくていいよ。ボクのお願いを聞いてくれるなら。だから
「「ボク」を見て。「トウカイテイオー」じゃなくて「ボク」だけを見ていてよ。そうしたかったんでしょ?
あははっ、同じだね。ボクもキミに言いたかったコトやしてほしかったコトがたくさん──本っ当に……たっくさんあるんだよ」
「………っ」
「痛い?ボク以外のところで痛がらないでよ。傷も、感情も、ボクだけで確かめてほしいんだ」
掴まれた腕が音を立てる程に強く握られる。
「だからまず最初のお願い、聞いてくれるかな」
頷いた。
「今度はボクにキミをちょうだい」
なあ、
これで満足かよ。自己
基本的にテイオーの『お願い』には逆らわない。そんなつもりもない。
笑ってしまいそうになるぐらい簡単なものが多い。
レースで走る自分を応援してほしいだとか、ウイニングライブでも全力で声援を送ってほしいだとか、自分以外を見ないでほしいだとか。
自分を責める気にはならない。
飽きた。
自分の為に思考のリソースを割くより、テイオーの為に命をすり減らしている方が何倍も満足できる。
俺達は喰み合うことでしか繋がれなかった。
だが理解し合う、分かり合うっていうのは案外こんな感じなのかもしれない。
レース場を走り抜けるテイオーを応援しながら、またよく分からない感情が芽生え出す。
走る彼女は不覚にもかっこよかった。
はたして俺の虚に灯ったのは熱く滾る炎か、それとも───────
ここから先はただの蛇足
「ハァッ…ハァ…ッ」
今日のレース場は雨模様で、走り終えた時には足も勝負服も泥だらけだった。
息を切らしながら観客席の方に顔を向ける。
1着を掴み取ったボクに浴びせられるみんなの声。
息を整えて意識を集中させてみても大きすぎる祝福にさらわれてあの人の声は聞こえない。
不安になる。
あ。
いた。
あの人はちゃんとボクを見ていた。
なぜかあの人の顔だけはすぐにわかった。
目が合う。
こんなにたくさんのヒト達がいるのにボク達2人だけが今この場所で視線を絡み合わせている。
それだけでジメジメとまとわりつく泥のイヤな感触もなんだかもうどうでもよくなって。
ボクを見てくれたヒト達とあの人に向けて思いきり手を振った。
そうか!主人公は心が穢れて他にとりえがないから自棄になることでしか自尊心を満たせないんだね かわいそ…もう…散体しろ!
ウマ誑しが!!このウマ誑しがァァァ!!
いや…トレーナーさん。今のはちょっと言いすぎた。すまない ただちょっと共依存ものが欲しくて…
書いてる最中に
「湿りもせず曇りもせず円満に3年間が終わり、トレーナーが他の子の担当になることにも抵抗感が湧かず、彼と離れてしばらく高等部の先輩として日々を送りめちゃくちゃ大人びてきて落ち着いていたのだがある日トレーナーが他の子の担当になっているのを目撃して特に嫉妬心も覚えなかったが以前の思い出がありありと蘇ってきてなんとなく彼と再び関わるようになったテイオーと、完全に100%改心したけどそれはそれとしてテイオーへの感情は依然変わらないトレーナーの話」
という電波が来たので
モチベーションがあったらそれを書こうかなと思っています。