下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話   作:散髪どっこいしょ野郎

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前回降ってきた電波を一瞬だけど閃光のように頭決意の直滑降にして書いた結果できたようわからん文書です


今回出てくるもう1人のウマ娘ちゃんは特に誰とか決めてないんで自由にご想像頂けたらと存じます

設定がかなりフワフワですわ!





























出逢いでも別れでもない話

トレーナーと離れてどれくらい経っただろう。

 

ボクことトウカイテイオーとの契約を解除してトレーナーは ほかの子の担当になった。

 

ほんの少しだけ寂しかったけれど そこまで嫌だとは思わなかった。

 

 

トレーナーという立場上これから多くのウマ娘を受け持つことになるだろうし、ボクとの3年間は終わっている。

 

そこに感謝こそすれ抵抗感なんて湧くはずがない。

 

 

自分で言うのもなんだけど、ボクはだいぶ変わったと思う。

 

 

憧れだった会長は卒業してしまっている。

 

トレーナーも担当から外れている。

 

ボクは皇帝を超えた帝王だ。

 

 

今までみたいに会長にひっついたりトレーナーに無茶を言ったりすることはできない。しようとも思わない。

 

高等部のウマ娘として、帝王として、色んな子からの憧れと期待を背負える強くてかっこいい会長みたいなウマ娘でいなければならない。

 

そう決心して生徒会に入ってからどれだけの時間が経っただろう。

 

 

トレーナーとたまに廊下ですれ違うことがある。

 

軽く会釈をしてすれ違うだけの一瞬の時間。

 

だからといって()()()()が恋しくなることなんて無かった。

 

 

 

 

いつもと変わらずトレーニングを始めようとグラウンドで軽いストレッチをする。

 

 

色んな子がいる。

 

みんな思い思いに走っている。

 

そんな当たり前の光景がやけに幸せに思えてきて自然と頬は緩んでいた。

 

 

ストレッチも終わって足をポンポンと叩いてから立ち上がろうとすると───トレーナーと───あの子がいた。

 

あの子が新しい担当ウマ娘なんだ。

 

2人の話している姿が、いつかのボクとトレーナーに重なって見えた。

 

 

楽しかったこと、大変だったこと、つらかったこと、嬉しかったこと、笑いあった記憶、2人して必死になってレースに挑んだ記憶、子供みたいに泣いてしまった記憶、立ち直ったボクを送り出したトレーナーの顔、心配そうな顔、嬉しそうな顔、笑っていた顔、ボクを見ていたトレーナーの顔…

 

二度と繰り返すことのない思い出の景色が呆けているボクの頭にフラッシュバックしていた。

 

 

さっきまで組み込んでいた予定をすっかり忘れて2人に近づいた。

 

 

 

 

「トレーナー」

 

 

「あれ、テイ…「て、テテテ…!!テイオーさん!?」

 

 

「? うん。ボクがトウカイテイオーだけど」

 

 

「あ、あわ、……落ち着け落ち着け深呼吸

そ、その、サイ…ン…書いてくれませんか」

 

 

「…へ?」

 

 

いきなりのことに反応が遅れて反応に困ってトレーナーの方を見ると苦笑していた。

 

 

話を聞いてみると どうやらこの子はボクに憧れて中央(ここ)に来たらしく、この場を離れるまでずっとボクの一挙一動に目を輝かせていた。

 

 

なにかに憧れている純朴でまっすぐなその姿が───誰かに似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見ましたか!?生テイオーさんですよ!いやーやっぱ本物は違いますね〜!

テイオーさんのあの表情……!すっっっっごくかっこよくないですか!?あんなにかわいいのにどうしてあんなにかっこよくなれるんだろう…!

 

 

いつものようにテイオーへの愛を語りだした彼女の言葉を半分聞き流して夕日が差し込む廊下を歩く。

 

 

彼女と出会ったのはテイオーと離れてからのことだった。

 

新しい担当ウマ娘をスカウトする為、3年前と同じようにしてぶらついていた俺の目に止まったのは奇しくもテイオーに憧れているウマ娘だった。

 

なにかに憧れている彼女が眩しかった。

 

その輝きをもう一度花開かせてみたいと思ったんだ。

 

 

テイオーとの3年間で俺は随分変わったと思う。

 

前がカス野郎すぎたということもあり一時期は辞めようかとも考えていたが、彼女のトレーナーとして経験を積み 彼女の純粋さに心を洗われていくうちに完全にトレーナーという職業に熱中するようになってしまった。

 

今ではこの仕事に生き甲斐を見出していると言っても過言ではない。

 

 

俺を変えてくれた子と離れることは…正直悲しかったが、成長したテイオーのこれからを個人的な感情で邪魔したくないと思えばスンナリ離れられた。

 

 

そして今はトレーニングが終わってからも彼女への情熱をぶつけ続けてきているこの子の担当になっているというわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナー室のドアがノックされる。

 

トレーニング後、俺はあの子のことや他の雑務などで1人部屋に残って仕事に打ち込んでいた。

 

 

「どうぞー…?」

 

 

別にノックする必要もないのだが…誰だろうか。

 

 

「テイオー…どうしたんだこんな時間に」

 

 

「生徒会の関係でちょっとね」

 

 

まだ寮の門限までには時間があるが、辺りはすっかり暗くなっている。

 

高等部ということもあり彼女は色々と忙しいのだろう。

 

しかし昼間といい、何故俺の所に?

 

ここに来る理由なんて生徒会関係にしても特に無いだろうに。

 

 

「…それって?」

 

 

「ああ、あの子のことについて書いた───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーはいつもこの部屋にいる。

 

他のヒト達よりも遅い時間まで1人でこの部屋にいる。

 

どうやら今も変わらないみたいだ。

 

 

あの子についてびっしりと端から端まで書き込まれたノート。

 

一瞥してから適当に椅子に座る。

 

 

何か話そうと思ったわけでも何かしようと思ったわけでもない。

 

来た訳を説明するには「なんとなく」という言葉がちょうどよかった。

 

 

30分くらい無言のまま時間が流れる。

 

トレーナーは落ち着かない様子でソワソワしている。

 

それもそうだろう。

 

いきなり前の担当ウマ娘が来たと思ったら何も言わないで座っているんだから。

 

…悪いことしちゃったな。

 

 

「ごめん。席、外そうか?」

 

 

「いやっ、……っ、そういうんじゃなくって……、こういうのはもうちょっと上手く聞いた方がいいんだろうが………どうしたんだ?」

 

 

ふっと気が抜ける。話し方も声色も、何も変わらなかった。年中濃かった目の隈でさえも。

 

 

「別に…なんにもないよ。───逆に聞くけどどうしたの?急にそんなすごい顔して」

 

 

「どうしたのってお前…目…」

 

 

「え?」

 

 

目に手をあててみると指先が濡れた。

 

 

 

 

ボクはもう泣けない。

 

いくらボクだってたまに泣きたくなる日はある。やりきれなくなる日だってある。

 

でも泣くわけにはいかない。

 

ボクは帝王なんだから。

 

そうやって毎日過ごしていきながら涙は枯れ果てたと思いこんでいた。

 

 

やっぱり、トレーナーにはバレちゃうのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テイオーの強さも脆さも、俺が全部知っている。

 

中央(ここ)でそれを知ってるのは今は俺しかいない。

 

だからなのだろう。

 

だからテイオーは会いに来たのかもしれない。

 

 

無言で見つめてくる彼女に言いようのない歪な不安を覚えた。

 

バカみたいな直球の質問をすると、なんでもないと答えてから流れ落ちた無自覚の涙。

 

 

心配でならないが こういうのは下手に踏み込んでいいものではないだろう。

 

とはいえこの状態の彼女を放っておく気はこれっぽっちも無かったので

 

 

「…俺はまだしばらく仕事が残ってるから」

 

 

「ん…」

 

 

それからは一言も言葉を交わさず、

キーボードを叩く音、鉛筆を走らせる音だけが室内に響いていた。

 

 

 

 

この日からトレーナー室へヒト以外に1人のウマ娘がちょくちょく来るようになった。

 

高等部になって生徒会に入ったテイオーだが、あの頃の弱さは残っている。

 

 

シンボリルドルフが卒業してからは強く在ろうと気張って気張り続けて彼女は変わっていった。

 

しかしまだ脆さを残した子供だ。

 

理解してやれるヒトもウマ娘もこの学園にはもういない。契約解除した俺を除いて。

 

 

それ故に彼女にはたまに寄りかかられる場所が必要だった。

 

それが今の俺ということか。

 

 

別に構わない。

 

担当でないにしろ俺はテイオーには憂いなく生きてほしいと思っている。

 

現在受け持っているあの子をそっちのけにしてまで助けてやることは出来ないが、これぐらいの負担なら喜んで背負うつもりだ。

 

 

いや。

 

この際嘘は いらないだろ。

 

俺は今でも──トウカイテイオーに惹かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に走ってみない?」

 

 

「えっ…ッ、、、えええええぇぇえッッ!?!?!?!?」

 

 

あの夜。

結局トレーナーとの間に会話らしい会話は無かったけど、立ち去ろうとせずに門限ギリギリまで部屋にいた。

 

 

遅くまであそこに残っているのは決まってあのヒトだけだ。

ボクが度々会いに行くようになった理由なんてそれで充分すぎるぐらいだった。

 

放課後にそれとなく顔を出す程度だったので日常生活に支障をきたすことは無かった。

 

 

そして今日、

 

またしてもグラウンドであの子とトレーナーを見かけた。

 

悩んだ挙句あの子に声をかけた。かけてしまった。

 

 

「嫌だったなら別に──「いやいやいやいや!そんなことないですぜんっぜん!!!逆に、こっちから…!お…、お願いします!お願いします!!」

 

 

数時間一緒に居ただけで分かった。

 

この子は素直で、正直で、まっすぐなウマ娘だ。

中央に来られただけあって素質も十分にある。

 

トレーナーが選んだのも納得できる。

 

 

嫌いじゃない。むしろ好きかもしれない。

 

憧れを寄せてくれる、素直でかわいらしい後輩。

 

その芽を潰さないように健やかに育ってほしいとも思ったぐらいだ。

 

 

以降、放課後にトレーナーに会いに行き、時々あの子と一緒に走ることが生活の一部になっていった。

 

あまり肩入れしすぎるのも考えものなのであくまで時々になるように留めておいた。

 

 

 

 

そんな形でボクはトレーナーともう一度関わるようになった。

 

 

 

 

放課後。

 

トレーナーと2人であの子について話すことが増えた。

 

話しながら思ってしまった。

 

 

──あの子がトレーナーの担当ウマ娘じゃなかったら、ボクは一緒に走ろうと言えていたのかな。

 

 

後ろめたくなる。

 

でも、

 

仮に()()()()()としても、

 

 

幸せだったんだ。

 

 

ボクを慕ってくれる後輩がいて、契約を打ち切った後も変わらず接してくれるヒトがいて。

 

 

だから、────だから。

 

 

今のボクはこれでいい。

 

 

うやむやでも幸せなんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時々テイオーが忙しい合間を縫って昼間も来るようになってから、あの子は普段のトレーニングにも更に精を出すようになった。

 

中等部の頃と違って後輩を引っ張っていくようになったテイオーと、嬉しそうに尻尾を振りながらついていこうとする あの子は見ていて微笑ましかった。

 

真剣に鍛錬を重ねる彼女らを眺めて、凍えた手で心臓を掴まれたような痛みが胸を走った。

 

 

俺は今でも自分を赦せていない。

 

 

くだらない自己嫌悪なんかで業務を疎かにする気は無い。

 

ウマ娘達の青春の為にこの身を削ろうと何度も決意した。

 

 

それでも俺は自分を赦せていない。

 

 

構わない。

 

悪夢にうなされようがどうなろうが彼女達が心晴れやかに走ることが出来るのなら問題ない。

 

俺はトレーナーなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつものように2人きりの部屋で話す。

 

 

それだけでよかったのに

 

求めてしまった。

 

ボクの意志とは関係なく

 

いつの間にか言葉になってしまっていた。

 

 

「また前みたいにさ、何処かに…」

 

 

口を噤む。

 

ボクはトレーナーと何の繋がりも無い。

 

こうして夜に話しているのも、ボクの空いた時間がトレーナーが1人になってる時間とたまたま重なってるだけであって…───そもそもトレーナーはボクに気を遣ってここに来ることを許してくれているだけで───ボクは───

 

 

「…そろそろあの子に休みをやろうと思ってるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下を歩く。

 

普通に歩こうとしても何故かステップを踏むように足が跳ねてしまっている。

 

酷く落ち着かない。

 

 

こんな時はいつも通りに 買っておいたはちみーを飲もう。濃いめ固め多めの。

 

 

…やっぱり最近、ちょっと甘すぎる気がする。

 

 

少し前から舌が甘さに慣れない。

 

もちろん大好きなんだけど。

 

 

 

 

そういえば──前から気づいてたけど、トレーナーはまだ引きずってるんだ。アレを。

 

 

 

 

幸い廊下にはボクしかいなかった。

 

トレーナーのことを考えてようやく歩調を落ち着かせられるようになりながらも、4割程残っている容器の中身を早速もてあましていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プライベートの彼女は、最後に遊園地で見た時よりも大人びていた。

 

中等部の頃のようにゲーセンに行ったりはしなかったが、彼女が何処に行ったら喜ぶか、何をしたがってるかは不思議と手に取るように分かった。

 

 

断れなかった。

 

 

いくらあの子が休みだからといって こうして外に繰り出す理由にはならない。

 

誘われたからなんて言い訳にもならない。

 

ならないが…今日の彼女は楽しそうだった。

 

だったらそれでいい。

 

 

 

 

 

「ごめんね。無理言って付き合ってもらっちゃって」

 

 

「いや…別に」

 

 

テイオーは僅かに目を伏せている。

 

彼女も若干後ろめたく思っているのだろうか。

 

 

かと思えばうっすら笑い始めた。

 

 

「…?」

 

 

「ボク達が離れてから しばらく経ってるのに、こんなにトレーナーがボクの好きな場所を知ってるなんて思ってなくってさ…思わず笑っちゃった」

 

 

「まぁ…伊達に3年間担当やってきてないからな」

 

 

「うん……トレーナー、いっつもボクを見てくれてたもんね…」

 

 

辺りはとても静かだ。

 

おかげで互いの声がよく聞こえる。

 

 

「あのね……ごめん、ボクこういうのは上手く言えないんだけど──────トレーナーはさ、今も今までもボクやあの子の為に頑張って…頑張ってくれたから…だからトレーナーも楽になっていいと思うんだ」

 

 

穏やかな表情。

 

全てを見透かしているかのような温かな視線。

 

まさか、

 

 

「まさか…知ってたのか?全部」

 

 

「うん」

 

 

「はは、ハハハハハ…そう、か、マジかそうか。は、ハ…───ごめんな。謝って済む話じゃないが…本当にごめんな」

 

 

「いいよ」

 

 

今でもテイオーと話す毎にいつぞやの自分を思い返しては心のしこりになっていた。

 

それを見透かされていたんだ。

 

バレてたのは俺もだったか。

 

 

俺は自分が憎かったが…彼女は全部知っていながらも俺を赦してくれていた。

 

赦されてしまった以上俺が俺を責められるわけがなかった。それは彼女への冒涜だ。

 

 

つまり、俺はテイオーに楽にさせられてしまったということだ。

 

 

ああクソ…俺が助けられてどうすんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーと寄ったお店でコーヒーを飲んでみた。

砂糖とミルクを少し入れて。

 

苦い。正直好きにはなれない。

 

会長みたいにブラックで飲むのはまだ無理そうだけど…それでもこの香りがやけに落ち着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後。

 

並走終わりの2人を見てふと思い立った。

 

 

「俺も走るか」

 

 

「「え?」」

 

 

 

 

 

 

 

「ぜェ…ぜェ…ゼェッ…」

 

「どうしたんですかいきなり…?」

 

 

「流石にボクもちょっと驚いたよトレーナー」

 

 

「ぜェっ…いやっ…ハハハ…」

 

 

走りながら自分でも何やってんだろうなとは思った。

バカなんじゃないかと何度も我に返った。

 

しかしまぁ、汗と一緒に何かを振り払っていくような感覚はなかなかどうして悪いもんじゃなかった。

 

 

 

 

 

 

その後も特にアクシデントもハプニングも起こらず、あの子はメキメキと頭角を現していった。

 

やはりウマ娘の本能ということか、テイオーの圧倒的な走りを見せつけられる度にあの子は闘志を燃やすようになった。

 

次第にテイオーはあの子の「憧れ」から「目標」へ、「目標」から「ライバル」へと変わっていった。

 

 

そうやって走って走って──同じように日は過ぎて──年を跨いで──あの子とトウカイテイオーの勝負の日がやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーとあの子と代わり映えのない毎日を過ごした。

 

毎日、毎日。

 

 

あの子がボクを超えたいと言ってくれた時は…嬉しかった。

 

今日、今、こうしてレースが始まる前でも柔らかな喜びがボクを包んでいた。

 

 

憧れていただけのボクがトレーナーと一緒に追いかける側になって、今度はトレーナーとあの子に追いかけられる側になった。

 

スターティングゲートに向かう。

 

 

 

 

「あのっ!」

 

 

「…なに?」

 

 

「負けませんから!…絶対!」

 

 

「──ふふっ」

 

 

ゲートに入る。

 

リラックスしながらも集中できている。

 

脚の調子もいい。

 

手加減はしない。

 

”帝王”として全力で迎え撃つ。

 

 

負けるつもりは微塵も無い。

 

メイクデビュー前の会長とのレース以外負けたことは無い。

 

 

負けたくはない。

 

だけど、ボクに憧れていたウマ娘がボクを超えることを、その素質があるウマ娘と死力を尽くして競い合うことをどこかで待ち望んでいたのかもしれない。

 

会長もこんな気持ちだったのかな。

 

 

ゲートが開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボクの持てる力の全てを出し切った。

 

あの子は本気のボク以上に速かった。ハナ差だろうと大差だろうと関係ない。それだけ。

 

 

トウカイテイオーとしての初めての敗北だった。

 

 

悔しさはあった。

 

けど どこか清々しい敗北で。

 

レース後のあの子の元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

トレーナーがいた。

 

 

感涙に咽ぶあの子と祝福するトレーナーを見て、嬉しい筈なのになんとなく切なくなる。

 

 

涙は流れない。

 

 

ボクはもう、泣けなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に…っ!やったんだ…!テイオーさんに…!テイオーさんに勝ったんだ…!」

 

 

「ああ、お前が1着だ。お前は、帝王を超えたんだ」

 

 

「〜〜〜っっ……!やった…!や゛った゛ぁ…テイ゛オ゛ーさん゛に…っ───あ゛り゛がとう゛トレーナーさ゛ん…ほん゛とに…」

 

 

感極まって汗と涙でクシャクシャになった彼女を用意していたタオルでわしゃわしゃと拭く。

 

 

トレセン学園に入る前からの憧れだったトウカイテイオーを超えた。

 

担当をやっていた俺から見ても本当にすごい子だと思う。

 

涙をとめどなく流し続ける彼女を純粋な気持ちで讃えた。

 

視線を感じて顔を上げると、立ち去るテイオーの背中が見えた。

 

 

追いかけようとはしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見ないようにしていた。

 

会長と同じようにボクも卒業してしまう。

 

いつか2人の傍から離れる日が来てしまう。

 

あの子とのレースが終わって、考えないといけなくなってしまった。

 

 

トレーナーが担当を外れた後も、トレセン学園に通っていたから関われていた。

 

そのおかげであの子とも走ることが出来た。

 

 

卒業してしまったら?

 

2人とは会えない。

 

 

怖かったから未来から目を背けた。

 

それでも時間は止まらない。

 

すぐそばまで迫ってきている。

 

 

「そんなの嫌だ」って思い切り叫びたかった。

 

だけどあの子に負けた日から、ボクは泣けなくなっていた。

 

トレーナーに寄りかかることが出来なくなった。

 

心を置いてけぼりにしてボクは大人になってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テイオーはもうじきトレセン学園からいなくなる。

 

俺のやることは変わらない。

 

彼女を見送って最後まであの子の面倒を見て、

 

また誰かの夢を叶える。

 

それだけなんだ。

 

これが、俺の仕事なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今思い返すだけでも震えてくる。

 

あれは夢だったんじゃないのかって繰り返しすぎてほっぺたがヒリヒリしている。

 

これまで生きてきた中で1番楽しくて心が燃えて何もかもが最高のレースだった。

 

もうあれを超える幸せは味わえないと思うぐらいに。

 

でも、

 

テイオーさんは卒業してしまう。

トレーナーさんもいつか離れてしまう。

 

一緒に走って鍛えてくれたテイオーさんはお父さんみたいで。

 

陰で支えてくれたトレーナーさんはお母さんみたいだった。

 

寂しい。

 

それでも、2人にもらった”足”があるから、歩みを止める気にはならない。

 

テイオーさんとトレーナーさんには数えきれないぐらいお世話になってきたから、今日もこれからも2人がいなくなった後も、ありったけの感謝を込めて頑張って走ろうと思う。走るんだ。

 

 

いや〜ホントに…

最っ高に…

楽しかったなぁ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日はやってきた。

 

最後までテイオーは涙を見せなかった。

 

 

卒業式後、トレセン学園正門前で彼女からの感謝の言葉を受け取った。

 

 

俺は担当でもなければ寄り木でもなくなる。

 

 

彼女は振り返って歩き出した。

 

 

 

 

終わる

 

全部

 

思い出を残して

 

消えてしまう

 

 

「なぁ、テイオー…!」

 

 

俺は何を言おうとしているのだろう。

 

頭は真っ白になっているのに体はひとりでに何かを口走ろうとしていた。

 

言わなければ。

 

言わなければ俺は終われない。

 

 

「俺さ──「分かってるよ。だから、次に」

 

 

 

 

「─────あぁ、じゃあ、また」

 

 

「うん。またね」

 

 

俺が言おうとしたことを俺は知らない。

 

テイオーはそれを知っている。

 

だったら次会う時に聞けばいい。

 

彼女は次を望んでいたから。

 

その時に俺はようやく歩き出せる。

 

 

この関係の決着がどうつくのかまるで想像がつかないが、1つだけ確信できることがある。

 

俺達はもう一度会う。

 

それがいつになるのか、どこになるのか決まってすらいないが、

 

俺達は必ずまた会う。

 

何を言おうとしたのかも、出したかった答えも、その時に分かる筈だ。

 

 

 

 

瞬いた。

 

瞳は乾いていた。

 

踵を返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーが何かを言おうとしている。

 

それを聞いてしまったら…終わってしまう。

 

その一言で何の未練も後悔も残さず綺麗に終わらせられてしまう気がする。

 

ダメだ(嫌だよ)

 

ボクは卒業するんだから…このヒトはトレーナーなんだから…

 

遮っちゃいけない…縛りつけちゃいけない…

 

 

これから先

 

隣りにトレーナーはいないけど、

 

ボクを守ってくれるヒトはいないけど、

 

それでも進まなきゃ…いけない……すすまなきゃ…………トレーナー……

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんね。

 

ボクは、最後の最後(まで)、会長みたいにはなれなかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナー

 

もしさ

 

ボクが走れなくなってたら(ウマ娘じゃなくなってたら)

 

負けていたら(キミの努力と期待に応えられなかったら)

 

1人で歩けなくなってたら(本当は弱かったら)

 

どうしてた?(ボクの傍にいてくれた?)

 

 

それは

次会ういつかに

 

確かめてみよう

 

 

トレーナーは きっといつもみたいに笑って──何かを──()()()くれる

 

 

あのヒトは(ボクらは)

 

たぶん

 

きっと

 

変わらない(同じだ)から

 

 

 

 

 





































12、13話投稿時

オ……オレは…オレは……………
主人公を曇らせたかったんだ!!!
残忍で冷酷なメリバビターエンド暗い話書き書き野郎のオレに 戻って
なにも気にせず 主人公を徹底的に追い詰めたかったんだ!!!
気に入らなかった…
知らないうちにトウカイテイオーの影響をうけて ハ…ハッピーエンドになっていく怪文書が……
オ…オレとあろう者が純愛を書き…わ…わるくない気分だった
…居心地のいい共依存もスキになっていてしまったんだ……
…だ…だから今日の勝利の女神に支配され…もとの曇らせ勢に戻る必要があったんだ…!
………おかげで
いまはいい気分だぜ…

………………ほんとにそうか?(14話




しゃあっゴル新陰流、ドロップ・キック!(今

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