下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話   作:散髪どっこいしょ野郎

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何も乾かねぇ…!
湿ったままだ……
どいつもこいつも狂ってやがる!!


4話みてえな話書きてぇなってなって書いたなんかです。

5、10、11、12、14、16話でやれなかったことを闇鍋の如くぶち込んだ比較的スタンダードな湿度強めの話です

過去最悪レベルのバッドエンドかもしれません。

4話みたいな(初っ端から出力最大展開ぶっちぎり)(オール主人公視点)話です
























ありふれた話

あれから随分経った。

 

人生初の担当ウマ娘トウカイテイオーは卒業し、俺は次の子を受け持った。

 

その子との数年間も終わり、現在は次に担当するウマ娘を探しながら仕事に明け暮れていた。

 

トレーナー生活というものは存外楽しいもので、彼女……テイオーに絆されていきながらくだらない欲望を封殺し心を入れ替えた後もそれなりになんとかやってこれていた。

 

本当にテイオーには感謝してもしきれない。

 

 

 

 

 

 

今日はとにかく運が悪い。

 

たまたま学園の外での仕事になったのだがちょうど台風が接近していたことで豪雨に襲われ、どこかに置いてきてしまったのか 傘を無くしてしまい どしゃ降りの雨の中逃げ込んだバス停で立ち往生していた。

 

無理やりにでも行くしかないと腹をくくろうとしたその時、絶対にいる筈のない存在がそこにはいた。

 

 

「や、久しぶり」

 

 

「───へ、──ぇ?─────は、いや、なんで、」

 

 

「……とりあえずここじゃアレだし、場所変えようよ。ほら、傘。入れてあげるから」

 

 

トウカイテイオー。卒業した彼女が何故ここにいるのだろう。

 

ぼけっとしたままの俺に話しかけてくるテイオー。

 

軽く微笑しながら傘の半分を分けようとするテイオー。

 

そこでようやく気を取り直し歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとまず彼女が住んでるらしい所に雨宿りさせてもらうことになった。

 

いくらなんでも男1人がずけずけと──元担当ウマ娘とはいえ──厄介になるのはどうかと考えたが、厚意で言ってくれているのだと思うと無下にはできなかった。

 

 

やけに強い香りのコーヒーを淹れてもらい、それを飲みながら話をした。

 

テイオーは依然変わらず甘党だった。何故コーヒーを常備していたのだろう。

 

積もる話に花を咲かせて暫くは時間を忘れていた。

 

それでもまだ雨は止まなかった。

 

 

「ふ───ぁ───」

 

 

(ぬく)いものを飲んで何時間も話していたからか、特大の欠伸をしてしまった。

 

 

「後で起こしてあげるから少しだけ寝てけば?まだ雨は止みそうにないし」

 

 

そこまでしてもらうのはさすがに気が引けるが、拒否するのもままならない程に強い眠気に襲われていた。

 

動くのもけだるかったのでテーブルに突っ伏してそのまま寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと目を開ける。

 

どうやら寝てしまったらしい。

 

とりあえず立ち上がろうとして────両腕が後ろ手に固定されて動かせないことに気づく。

 

 

「─────────?」

 

 

状況がまるで理解できず混乱しながら必死に腕を解こうとする。

 

 

「あ、起きた?」

 

 

「テイオー……これ、なんか、動けないんだが……え?なんで……?いや、あ、とりあえずちょっと助けてくれないか?そろそろ帰らなきゃ……」

 

 

完全に異常事態なのにテイオーは いやに落ち着いている。

 

 

「ダメだよ。キミはこれからずっとここにいるんだから」

 

 

……何を言っているんだ?

 

 

「キミはボクが好きだったんだよね?それなのに最後までボクに何も教えてくれなかったからさ、少しだけ不安だったんだ」

 

 

満身の力を込めて両腕を解放しようともがく。

 

よほど固く縛られているのか微動だにしない。

 

 

「ちょっと思い出話でもしようよ」

 

 

テイオーは つらつらと俺といた数年間のことを語り始めた。

 

俺をかつて占領していた劣情のことは初対面の頃から見抜いていたらしい。

 

だったら、何故俺を1度も責めようとしなかったのだろうか。

 

これはその時の復讐なのか。

 

 

「会ったばっかりの頃はやけにボクを見てたよね。嫌でもわかっちゃったよ。だんだん変わってきたのか知らないけど見えないところで苦しそうにしてたの、ボク全部知ってたんだよ?でもね、何年も通して変わらなかったことは……あはは、キミがボクを好きなんだなってことは……ずっと変わってなかった。本当にわかりやすかったなぁ……」

 

 

罰なら甘んじて受け入れるつもりだった。

 

しかし、そんな生ぬるい地獄が俺に与えられるわけがなかった。

 

 

「別にそれでもよかったんだよ。キミが見てくれるならなんでも」

 

 

「ちがう……違う!!俺はっ、そんなことをしたいんじゃない!俺は、お前に傷ついてほしくないからトレーナーでいようって思えたんだ!お前だから俺は変われて……っ、こんな、こんな……!」

 

 

俺はたしかにクズだった。それでもテイオーがいたからトレーナーで居続けようと決意したのに。

 

なんでこんなことに。

 

 

思わず彼女に視線をぶつける。

 

目が合う。

 

ほんの僅かに彼女の目の中に後悔と懺悔の念のようなものが見えた──────気がしただけだ。

 

 

「……ごめんね。ボクはキミがトレーナーでいられなくなってもいいんだ。見てくれるならどうなってもいいんだ。……ボクもね、キミが気遣ってくれたみたいに なるべくキミを傷つけたくなかった。そうしていればいつかトレーナーは我慢しないでくれるって──何にも縛られないで自由に気持ちを伝えてくれるんじゃないかって妄想に甘えてた。キミはトウカイテイオーが好きなんだって何年も前からわかってたから

……────しょうがないじゃん。これ以上は抑えられないよ。

キミといた間、トレーナーでしかないあのヒトを好きになるわけない、そんなのよりレースに集中しなきゃ、とかとか色々自分に言い訳を並べ立てて気づかないふりしてみてもあのヒトにはもっとボクを好きになってほしいだなんて呆れるぐらいに思ってた。おかしいよね、こんなの。別にいいよ怒ってくれて。

終わる頃になって ようやくわかっちゃったんだ。トレーナー──っ、……好きなヒト、は最後までトレーナーのままだったから、ボクへの気持ちを隠したままで もうボクを支えてくれないんだって、学園にいないボクとは二度と関わってくれないんだって…………………………いやだ。いやだ!やっぱり耐えきれない……!キミが近くにいてくれないなんて考えられないよ……!キミを、ずっと前からボクだけのヒトにしたくて、欲しくて欲しくてそれでもいけないってわかってるから叶わなくて頭がおかしくなりそうで……!だから……!お願いだから……見捨てないでよ……ひとりにしないでよ……!…………。………………。……………………。──────────────────────────────────────────────ごめんね。なんにもしなくていいから。ここにいてくれたらそれだけで」

 

 

僅かに垣間見えた不安定な精神状態。余裕そうな態度は心を鎧う為の演技に過ぎず、実際は俺がいない間に手遅れな所までひしゃげて脆弱に成り下がってしまっていた。

 

 

「あ、……ああ……」

 

 

叫んでいた。本当に?

 

現実から逃げ出す為に現実で喉を枯らしていたのか、なり損なった自分自身の慟哭が内側で鳴り渡っているだけなのか。

 

 

テイオーを取り巻いていた幸福は俺のそれとは遥かに遠い。

 

トレーナーを張り続けることでしか自己を確立できなかった俺と、憧れと夢を持っていた彼女は何もかもが違う。

 

テイオーは色々と分かりやすかった。それらしき兆しはいくらでも見えていた筈だ。

 

俺みたいな奴が誰かに好かれ(ていい)筈がない。

 

いつだってそう思っていた。

 

だから気づいてやれなかった。

 

 

仮に。仮に俺がいなかったとしても……いなかったら、テイオーの笑顔は決して消えなかった。

 

俺に無かったもの、求めてやまなかったもの、それら全てを持ち合わせていた彼女は今、俺の前でそれら全てを失っている。

 

もうトウカイテイオーは、俺がいないと笑えない。

 

 

出逢った時点で決まってたんだ。あの時点から俺は、永久に、みんな(ウマ娘)の輝きに(たか)るだけのゴミ虫だったんだ。

 

それだけならまだなんとかなったのかもしれない。

 

俺が彼女を染めてしまった。

 

1人の女の子を、俺を生かしてくれた子を、俺がどうしても走らせて(■■に■■)やりたかった子を、永久に結びつけてしまった。

 

 

どの言葉を選んでも届かない。求められたのは説得でも対話でもない。

 

 

テイオーは喜んでいたんだ。

 

 

抵抗する意思を無くした俺を確認して、欲しいものが手に入った子供のように無邪気に充足感に呑まれていたんだ。

 

 

熱に浮かされたような眼差しに抱きすくめられて身じろぎひとつできない。

 

この叫びも聞こえちゃいない。同じようにして俺の耳にも聞こえてくるものはない。彼女の息の音も、激しさを増し続ける雨に紛れた鳥の声も、悲鳴に似た男の囀りも。

 

あの日から変わらない綺麗で澄みきった目はあの日より黒く染まって見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふたりはただ不器用だった。片や自分の想いに目を背けては心に蓋をして、片や相手を一方的にしか想えず理解してやれない。彼と彼女はただ不器用なだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は帰ってくると俺に欠かさず”おかえり”と、恍惚とした表情で確かめるように言ってくる。

 

おかえりってなんだよ。帰ってきた側が言う言葉じゃないだろ。

 

俺にそう言ってほしいのか。なんなら今まで思ってたこと洗いざらい教えてくれよ。なんで何も言ってくれなかったんだよ。

 

 

なんでよりによって俺だったんだよ。

 

 

俺が選んだから、何も言わなかったからに決まってる。こうなったのも、遡ってしまえば俺が原因じゃないか。

 

 

 

 

その気になればすぐに出ていける状態なのに彼女は俺を拘束しなかった。

 

今の俺が逃げ出そうとはしないと知っているからだ。それは長く共に歩んできて培った信頼からではない。

 

赤の他人から見ても分かる程度には単純に明確に逃げ出す気力を失っている。それ以外の何物でもない。

 

 

 

 

不思議なことにそれ以降は1度も自分を責める自分は出てこなかった。

 

テイオーはしたいようにしているので、俺もしたいようにする。彼女が帰ってくるまで虚ろな頭で時間が流れるのを待っている。

 

彼女が帰ってきても何もせずただ部屋にいる。幸い彼女は俺がここにいるという事実さえあればいいらしく、何も要求されない。

 

 

無気力な状態が続く。トレーナーでもない俺が彼女の為にできる事を見つけられない。

 

自由な両腕のやり場を探して適当に家事や料理やらやってみてもこの部屋からは出られないし砂を噛むような味がするのみ。

 

椅子や机に触れる度に消毒を施す。何分もかけて手を洗う。そんなことしたってテイオーから俺は取り除けないのに。

 

 

 

 

 

テイオー。

 

俺は今罪悪感とか責任感とかこれっぽっちも覚えていないんだ。

 

いろんなことを考えてみたけど、最後に残ったのは後悔だけなんだ。

 

どうせこんなことになるのなら、身勝手に我儘にお前を好きになっていればよかった。

 

ごめん。俺は自分で思っていた以上にクズなのかもしれない。

 

 

「え?」

 

 

しまった。知らぬ間に口から溢れ出していたみたいだ。

 

 

「そんなことないよ。キミがこうやっていてくれるだけでボクは……」

 

 

そうじゃない。

 

そうじゃないんだと言おうとしても喋る気力が俯いた視線の先に沈んでいる。

 

割れ物を扱うかのように そっと撫ぜられて言葉を奪われる。

 

いくら彼女が俺を肯定してくれても否定してくれても────ヒトは自分を受け入れられない限り誰に褒められようと讃えられようと受け止めることはできない。

 

よって彼女の言葉は俺には届かない。

 

 

俺が自分の欲求以上にテイオーを想っていたと証明してくれるヒトはいない。彼女でさえもそれは知らない。

 

 

 

 

 

眠れない夜もいつものように彼女が寝付くまで近くで座っている。その後はうるさい脳が黙るまでじっとしている。

 

静けさが戻るのは決まって明け方だ。

 

厳密に言えば頭は常に混雑している。疲れきった脳みそが意識を閉ざして誤魔化してくれるだけだ。

 

 

数年ぶりに幸せな(ゆめ)を見た。

 

俺に執着することなくその心を曇らせることなくレース場を駆けるテイオーを必死になって、それでも晴れやかに過去を吹っ切って声を張り上げて応援する自分の夢。

 

皮肉にも以降は夢を見なくなった。気を失うように眠って3、4時間程度で起きる。

 

 

トレーナーという器を失った俺は無力で無意味だ。そこに価値を見いだせるのはトウカイテイオー1人だけ。

 

 

 

 

 

 

ある日、語りかけながら考えた(考えながら語りかけた)

 

 

今になって知った(「あの……さ)。俺は空っぽではなかった(なんかじゃなかったんだ)トウカイテイオー(お前)が帝王を目指していたように、俺には夢があったんだ。

 

他者(みんな)と自分への苦悩なんかに気を取られないで、他を想い他の為に尽くせる、そんな”優しいヒト”に……なりたいって──────

 

彼女(お前)の担当にならせてもらったおかげで夢を持てたんだ。だけど(だけっ……、)彼女の担当(…………)になってしまったことで(…………)絶対に叶わなくなっていた(…………」)

 

 

誰に嫌われてもよかった。たとえ彼女に嫌われたとしても優しいヒトに────誰かの為に死にたかった。

 

右手で自身の──側頭部辺りの──白が侵食しだした──頭髪を掴み、左手で顔を覆う。視界が滲んで世界から色が削ぎ落とされる。その場にひざまついて嗚咽を……。

 

テイオーはそんな俺に対して何をしてたっけ……。

 

 

 

 

 

この先どうすればいいのか、どうしたらよかったのか、どうしたかったのか、どうしてほしかったのか、1つとして答えられない。

 

気まぐれに何か話すと彼女は嬉しそうに応える。話すほどに考えがまとまらなくなる。こんな現実(いま)でも満足してしまう。

 

寵愛の鳥籠の中で揺れている木偶の坊を許してしまう。

 

俺はトウカイテイオーが好きだったのかもしれない。真偽は永遠に投げ出されたままだ。

 

 

 

 

 

 

 

芯から凍えるような冷気が包む冬の日。

肩を寄せてきた彼女の瞳を覗いてみた。

そこには俺が落ちていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

〈了〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨が降っていた────ので、ここに来てから初めて外に出た。

 

傘も差さずに彷徨って、ヒトの気配が無い河川敷で仰向けに寝っ転がった。

 

分厚い雲と雨粒で構成された青さのひと欠けらも無い空が見える。

 

冷たい雫に顔を打たれて全身の力が抜ける。

 

体も衣服も余すところなく濡れて次第に底冷えの寒さが駆け巡るようになった。

 

寒い。

 

立てばいいのに動けない。

 

しばらくするうちに完全に力が抜けて苦痛と冷たさがどこかに去っていってしまった。

 

水たまりを踏み締める音が迫ってくる。

 

その間隔や強さだけでも近づく誰かが相当焦っているのが理解できる。

 

それが誰なのか、とっくに知り尽くしているのに声が届いてくるまで姿を視界に捉えられるまで考えるのをやめていた。

 

 

「大丈夫!?そんな、急にいなくなるなんて……っ、なんで……!────なんで

 

 

頭と上半身を両腕で抱えられて焦燥した様子の彼女の表情が確認できた。

 

よほど心配だったのか肩で息をしながら呼びかけてくる。

 

 

「……り……た」

 

 

「え……?」

 

 

「帰り…………帰ろう……」

 

 

「……そうだね。帰ろう……一緒に。…………大丈夫?立てる?」

 

 

 

 

どこに帰りたかったんだろう初めから居場所(そんなもの)なんてどこにも存在しないのに

 

 

 

 

彼女の顔には水滴が流れていた。それが──やって来る直前から急激に勢いを増してきた──雨()()であることを願いつつ震え始めた指先で彼女の目元を拭った。

 

仲睦まじい兄弟のように、絆で結ばれた親子のように、想いを寄せ合う恋人のように、穢れを知らない子供のように、固く固く手を繋いで歩き出す。

 

全身を這いずる悪寒でさえも白昼夢じみてうっすらとしか感じないというのに、彼女から伝わる温もりだけは(どうしようもな)く鮮明だった。

 

 

 

 

 

 
































どうしてだよぉ…!

どうしてこんな話しか書けない!!

ど゛お゛し゛て゛だ゛よ゛お゛お゛!!!





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