下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話 作:散髪どっこいしょ野郎
主人公を……ひたすら曇らせてるよ!?
過去トップクラスに重い話……ってコト!?
俺はレースを見るのが好きだった。
走り終わった後の幸福そうな彼女達の姿を見るのが好きだった。
そして、敗北に終わり項垂れる子からも何故か目は離せなかった。
彼女達が夢に向かって駆け出していくのを支えたい、そして成就させたいという思いからトレーナーになった。
中央のトレーナーになれたと言えど俺はまだまだ新米もいいところなので、複数人のウマ娘で結成されたチームのサブトレーナーの任に就くことになった。
俺が就いた時はまだチームも出来たてだったこともあり特に大きな問題は無かった。
先輩からトレーナーとしてのノウハウを学び、彼女達のサポートをする毎日。
俺は仕事が楽しいと思えるような人間じゃないが、今の生活には
日々が過ぎていく。
最近は何かが物足りなく感じている。
あまり彼女達の走る姿をトレーニング以外で見られていないからだろうか。
とりあえず今は数日後に開催されるレースを楽しみにしながら参加する子の調整に専念することにしよう。
先輩と共に念入りに練ったトレーニングの成果もあってか うちのチームの子が見事一着に輝いた。
嬉しかった。
歓声に彩られたその笑顔は見てて とても心が満たされるものだった。
…………それにしても、
何故俺はチームと全く関係の無い しんがりに終わってしまった子も見ていたのだろう。
全く面識も無い、敗北に終わり項垂れて歩く子の姿が何故か一着に輝いた子の笑顔と重なって仕方がない。
最近、
他のトレーナーと話す時や彼女達と関わる時に自分がどこかズレているような気がしてならない。
ウマ娘は勝利と栄光を掴み取る為に努力を重ね、トレーナーはそんな彼女達を勝たせる為に心血を注いでサポートに回る。
俺も彼女達を支えるそんな指導者のひとりだというのに、他の
ウマ娘の走る姿、圧倒的な脚力、溢れんばかりの才能に恵まれた子への期待……
中央に来るトレーナーがウマ娘にかける情熱は人一倍のものだ。
だからといって俺のソレが他のヒトに負けているとは全く思わない。
ただ何かが食い違っているような気がする。
俺はどちらかというと走り終わった後の姿が好きだ。
激戦の末にレースを制した彼女達の幸せそうな笑顔が好きで、それを見ていると言いようのない満足感に包まれる。
そして────────、
──────────────?
それだけだっただろうか。
というより──────
──俺は本当にレースが好きなのか?
あのレースの日から自分が何故チームと関係の無い子も見ていたのかとぼんやり考え続けている。
力を出し切っても勝つことが出来なかった無念そうな表情。
俺はそれのどこに視線を釘付けにさせられていたんだ?
いや、そもそも俺は──────あれ?
一度湧いて出てきてしまった疑問は消えることなく俺を取り巻いていく。
あの暗い表情。
それを見ていた俺はどんな思いをして───?
そんな筈はない。
俺は彼女達の幸福そうな姿が好きで、
それを見ていると嬉しくなって
だからこの気持ちは
─────、
夢を叶えられずに陰っていく表情を見て───
それが
重なって見えて────────
連鎖的に
疲れているんだ。
俺は少し疲れているだけだ。
そうだ。
そうに決まっている。
時間が経つにつれて状況も変わってくる。
着実に勝ち星をもぎ取る子もいれば だんだんと勝てなくなっていく子もいた。
日に日に暗さを増していく表情を見ているとまたあの奇妙な感覚に襲われてくる。
それが何かと似ているような気がしていたのだがその正体を知ってしまうことがどうしても怖かった。
故障で引退せざるを得なくなってしまう子が出てきてしまった。
先輩も俺もその子が復帰できるようにと全力を尽くしたのだが、現実は甘くなかった。
泣きながら消えていった彼女の夢が脳裏にこびりついて離れない。
一着をとって幸せそうだったその子の姿と今の状況がまるで正反対の筈なのに同じように思えて吐き気がする。
うちのチームはかなりの大所帯だったため、名を馳せた子もいれば全く成果を上げられずに選手生命を終えた子もいた。
初めから分かってた筈だったんだ。
俺が見たかったのはレースでもなんでもなくて彼女達の───────
ひとりくらい
夢とかどうでもいいと思っている、カネや自分の欲の為に動いているような下衆なトレーナーやウマ娘がいるのではないかとそれとなく探ってみたりもしたが見つかりはしなかった。
みんなみんなが熱意と信念を抱いて前を向いている。
俺以外はみんな。
敗北や故障で挫折し、絶望する彼女達の姿を見てとめどない喜びと悲しみが脳内を埋めつくしていくのを感じた。
吐いた。
誰もいない部屋で、わらいながら
みんなに幸せになってほしい。
そんな願いが叶うことはないなんて分かりきってる。
勝者がいれば敗者もいる。舞台に立つことすらできずに破れる子もいる。
だからこれは、そんな現実から逃げる為の防衛本能からくるものだったのかもしれない。
どれだけ考えようと無駄にすぎないが。
俺は、自分がレースを見るのが好きなんだと思い込んでいるだけだったんだ。
カイチョーに勝ちたい。
今まではただ憧れてるだけだったけど、ボクはカイチョーに……皇帝に勝ちたい……!
だから、
「これからよろしくね、トレーナー!」
「……おれ、が。──────ああ。分かった。俺がお前を帝王にしてみせる」
なんとなく戸惑ってる感じがしたけどこのヒトは もうボクのトレーナーだ。
ボクが帝王になれるように ちゃんとついてきてもらわなきゃ。
すっっっっごく順調。
トレーニングもイイ感じだしレースも勝ててるし。
でもまだまだ始まったばかりだ。
とりあえずこのまま頑張ろう。
────それはそうとして。
トレーナーって、なんか知らないけど会った時からずっと暗い目をしてる。
嫌なことでもあったのかな?
でもいつもどんな時でも暗いからなぁ……。
そういうヒトなんだ、多分。
俺はトレーナーに向いてなかったのかもしれない。
それでも辞めようとは思えなかった。
必死の思いで中央のライセンスを獲得して、これから頑張ろうと決めていた矢先に自分の本質に気づいてしまった。
そんな自分を認めたくなかった。
サブトレーナーではなく普通のトレーナーとしてウマ娘を受け持つことになった。
本当に何故今このタイミングでと愚痴を吐いても意味は無い。
トウカイテイオー。
彼女は挫折とは到底無縁そうな穢れを知らない無垢な少女だった。
俺がトウカイテイオーのトレーナーになった理由は彼女なら俺の汚れた本性を覆い隠してくれるのではないかと思ったからなのかもしれない。
彼女は才能に恵まれている。
上手くやればケガも起こさず敗北に終わることなく俺のあさましい部分をさらけ出すこともないままトレーナーとしての責務を全うできるのではないか。
彼女にそんな期待を込めているのは確かだ。
ただもう自分が分からない。
俺が彼女の専属になった理由すらも分からなくなってしまっている。
こんなんじゃダメだ。
もっときちんと感情を処理できるようにならなければ。
俺がどれだけ醜い人間なのかは理解している。
だから変わらないと。
テイオーの身体能力はウマ娘の中でも類まれなものだ。
ハードなトレーニングも悠々とこなしていけるポテンシャルが備わっている。
彼女の余裕やポジティブな性格はそれから来るものなのだろう。
だからこそテイオーは折れるということを知らない。
つまずくことを知らない彼女が、俺が見てきた子達のようにその綺麗で透き通るような瞳を濁らせていくのを──────
やめろ。
そんなこと望んじゃいない。
俺はそんな人間じゃない。
考えるな。
今日のトレーナーはあまり話しかけてこない。
ボクは猛烈にムシャクシャしていた。
カイチョーには会えてないし、朝から頭が痛かったし……とにかくイライラしていた。
言ってもいないのにトレーナーはそれを知っている。
いつもそうだ。
トレーナーはボクの調子だとか体調だとかを言ってもいないことを知り尽くしてる。
無性に褒めてもらいたくなった時、真っ先に気づくのはトレーナーだ。
毎回一番言ってほしい言葉をその時その時に迷いもなく伝えてくる。
もちろん褒められるのは嬉しい。
カイチョーに褒めてもらえたらなおさら。
でも、トレーナーの言葉は……なんだろ……
パパでもママでもないのになんでトレーナーはあんなにボクを理解できるんだろう。
それともトレーナーってみんなそんな感じ……?
近々走ることになるレースに向けて調整に専念させてきた。
トレーニングといい、調整といい、トレーナーは なんのためらいもなくあっさりと決断するものだからついつい聞いてしまった。
「ね、ねえ、トレーナーはさ、ほんとにボクが勝てるって……思ってるの」
テイオー様らしくない後ろ見な質問だったな〜……なんて頭のはじっこで考えながら。
「当然だろ。お前が負けるはずがない」
無表情で淡々と言われて、なんて返せばいいのかわからなくなってしまった。
シンライとかモウシツ的なものとかではなくて、トレーナーはボクが負けるわけないと本気で確信しているんだ。
いつも真っ暗な目をしてるけどその時のトレーナーは────どこかつまらなそうな
別にトレーナーは無感情ってわけじゃない。
顔をしかめることだってあるし、笑うことだってある。
トレーナーが笑ってた時、って……
たしかボクが1着をとった時と……カイチョーに褒めてもらえてすごく気分がよかった時と……あれ?
……とにかくボクが笑ってる時は大体嬉しそうにしてた。裏を返せばそれぐらいしか思い出せない。
なにか引っかかるんだよなぁ〜……。
ライバルであるメジロマックイーン。
憧れであり目標であるシンボリルドルフ。
その他数々の障壁を越えようと奮闘するトウカイテイオーを虐げよう、妨げようと思ったことは無い。全力で支えるつもりだし彼女が勝利するなら心からの祝福で迎えるつもりだ。
ただ、
その道が如何に前途多難で艱難辛苦に包まれているものかを俺はよく知っている。
彼女が走り抜いた末に夢を叶える瞬間。
苦しみ抜いた果てに折れてしまう瞬間。
正反対の結末を同じように待ち遠しく思ってしまう自分がいる。
そんな矛盾した我欲に頭が引き裂かれそうに痛む。
笑ってるテイオーが好きだ。
その「好き」は所詮俺の汚れた願望の表れでしかないんだと考えるだけでこんな自分に心底うんざりする。
どうせ俺はテイオーを想ってなんか────
トレーニングもすっかり慣れてきて、レースでも結構大差で勝てるようになってきて、
前までカイチョーに勝ちたいって意気込んでいたのが最近は落ち着いてきた。
簡単に言っちゃえば心に余裕ができてきた。
まあこういうのも帝王様らしいかな、なんて思ってみたりもして。
だけどその分たった一個だけの引っかかりが気になるようになってきた。
トレーナー。
トレーナーはボクがレースから帰ってくると大体は褒めてくれるし嬉しそうにしてる。
嬉しそうにしてるんだけど…………目が暗い。
それどころか顔色も悪い。
いつも青白い顔だけどレースの時はいつも以上に悪い。
ボクが勝てるか心配なのかなって最初は考えてたけど前話した時にトレーナーはボクが負けるなんて思ってないのがわかったから、余計に気になっちゃう。
……少し前にわかったことだけど、トレーナーはボクの見てないところで苦しそうにしてる。
上手く説明できないけど……思い悩んだ様子でひとりでじっとうつむいてる。
でもトレーナーが体調を崩して休んだことは一度だって無かった。
トレーナーの仕事は色々忙しいらしいけどボクのトレーナーは夜にはちゃんと帰ってる。
それどころかほかのヒトの手伝いをしてたりもする。
そんなトレーナーを見てると……なんかこう……モヤってする。
出会って最初の頃は無表情の時が多くてちょっと怖かったトレーナーだけど、最近はボクの前だとなるべく表情を和らげるようになった。
基本的にボクのしたいことには付き合ってくれるし、特に嫌そうにもしない。
レースの後とかダンスの練習の時とか色々気づかってくれてるのもわかる。
四六時中テンションは低めだけど話せば普通に応えてくれるし、ほかのヒトとも仲は悪くなさそう。
──だけど何かが
いつだってこんこんとした暗い目で、それでいて心の中には するりと入り込んでくる。
そんなトレーナーが少し不気味に感じる。
よく怒るヒトというわけでもないけど、近くにいるとちょっと怖くなる────のに妙に安心する。むしろ落ち着くまであるかもしれない。
誰にも弱音を吐かないでひとりで黙々と頑張ってるのを見ると……やっぱりモヤモヤする。
トレーナーといるとそんなヘンテコな感情が背中の後ろで回っていた。
テイオーが俺の本性を知ったらどうなってしまうのか。
自身のトレーナーがおぞましく澱んだ蜜を啜っていたと知らされた、テイオーの、
その時の彼女の顔を想像して──────
────────────。
こうして吐くのは何度目だろうか。
口の中に広がるなんともいえない酸味もすっかり慣れ親しんだものになってしまった。
最近のテイオーはよく俺を見ている気がする。
何かが気になるらしい。
別にこちら側が気にすることでもないといつもと同じように仕事をしていると、ある日唐突にそれがなんだったのかを知らされた。
「トレーナー、ボクに隠し事してない?」
端的に言ってしまえば心配されていた。
どうやら、俺が普段酷く辛そうにしていると感じていたらしい。
事実それは的中していた。
加えて
彼女からしてみると自分のことはなんでも知ってるくせして
なるほど確かにそうだろう。
学生にとっては長い三年間を共に歩んでいくパートナーが自分のことを頑なにさらけ出そうとしないというのは確かに鼻につく。
とはいえ当然言うわけにはいかないのではぐらかそうとはしたが全く上手くいかなかった。
「もしトレーナーが言ってくれなかったら、ボク心配してレースで負けちゃうかもしんないよ〜……なんて」
それは困る。俺のせいで負けるなんてあってはならないことだ。
口火を切った。
嘘を吐けばよかったのだろうが、感の鋭い彼女のことだからおそらく簡単にバレてしまう。
それに俺は嘘が下手だった。
……………………本当は、
本当は誰かに打ち明けたかったのかもしれない。
────ああ、それに────最悪にも程がある。
俺は打ち明けられた時の彼女の顔が見たくてたまらなかった。
何度否定してみてもどうしてもそれを望んでしまう自分がいた。
それを言ってしまったら取り返しのつかないことになってしまう、彼女に傷を負わせてしまう、俺は自分を完全に受け入れられなくなってしまうと、
必死に押さえつけていたというのに崩れるのはあっという間だった。
「…………いいんじゃない?それでも」
ショックを受けた様子でもなく彼女は そう言ってのけた。
話している内容を除けば、なんてことない いつも通りの軽い会話だった。
………………意外だった。
トレーナーがそんな悩みを抱えてるなんて思ってもいなかった。
不思議と嫌だとは思わなかった。
トレーナーはいつもボクに気を遣ってくれていて、そんな素振りを見せることはなかった。
……正直あんまりピンと来ない。
それでも話してる時のトレーナーは本気で思い詰めてる様子で、どちらかと言えばそっちの方が心配だった。
トレーナーには悪いことしちゃった。
元々言う気のなかったことを無理やり言わせてしまって、隠してた悩みをほじくり出してしまった。
心配だったから、とか、誰かに打ち明けた方が気分は晴れるよ、とか、そんなのはただの言い訳だ。
それにボクは、どこかで軽い気持ちでトレーナーの心に踏み込もうとしてしまってたんだ。
ごめん。
そんなのは本人に言わなきゃ意味ない。
……わかってるんだけど。
そういえばボクはトレーナーのことをなんにも知らなかった。
トレーナーがどんな思いでボクを見ていたか、一度だって考えたことなかった。
とは言っても
『ボクの幸せそうな姿と傷ついて苦しんでいる姿が同じくらい好きでどうしても見たくなってしまう』なんて悩みを、どう解決すればいいのか全然見当もつかない。
前まで引っかかってたことはなくなったのにトレーナーの……なんというか……生き方?を考えてるとそれに気が向いてしまう。
ボクがこうして聞いてなかった時……誰にもバレてなかった時もトレーナーはそれで悩んでた。
バレてないなら気にしないで自分のために色々やってしまえば──言い方は悪いけど楽なのに、どうして自分の願望が嫌だったんだろう。
とりあえず
今はマックイーンにもカイチョーにも勝たなきゃ。
トレーナーのことはそれから考えればいい。
…………それからって、いつ?
テイオーが嬉しそうにしていたり、笑っていたりしているのを見ていると嬉しくなる。
恐らく彼女が真逆の状態だったとしても同じことを思うだろう。
俺が彼女の幸福を喜ぶのは本質的には彼女の不幸を望むのと同じ。
いくら否定しても頭はそう分かってしまっているから自己否定することでしかそれを受け入れられなかった。
だから、俺は彼女を想っているのかという問いも答えられなかった。
「テイオーを想っている自分」すらも否定してしまっていた。
それを認めてしまったら、俺は自分が大切だと思う者ですら苦しめようとする人間だということになってしまうから。
そんなの人間として間違ってるじゃないか。
とっくにそうなのに何を言っているんだろう。
俺が打ち明けた時もその後も彼女は特に傷ついている様子は無かった。
本当によかったと胸を撫で下ろした。
のびのびと育っている彼女に余計な泥を被せることがなくて本当によかった。
どこかで期待外れだと思っているんじゃないのか。
洗いざらい吐き出した後、テイオーが困惑し裏切られたと実感しその瞳を曇らせていくことをあれだけ求めてたじゃないか。
頭の中に俺が何人もいるみたいだ。
それぞれがゴチャゴチャ喚いていて耳障りだ。
テイオーはあれ以降俺に何かを要求することが少なくなった。
気を遣われてしまっている。
それが彼女の態度に顕著に表れている。
結局、俺はトレーナーとしても人間としても半端者以下だったんだ。
繊細な時期におかれている彼女のメンタルケアをする側だというのに逆に心配をかけさせ、自分を偽ることすら満足にできない。
それに、
ここのところテイオーは俺といない時の方が笑えている。
テイオーの笑顔。
それを自分以外の誰かを通してでしか確認できなくなっている。
彼女が俺以外の誰かといる時。
彼女は楽しそうに普通の学生としていられている。
レースとウイニングライブの観客席から見る彼女の笑顔は本当に眩しくて…………遠い。
彼女は俺といる間は痛々しいぐらいに気遣ってくれる。
それを見る度に…………
考えたくない。
テイオーに泣いてほしくない。
彼女がいつも笑っていられるようにしたい。
そんなことも素直に求められないなんて。
俺は……テイオーみたいに強くなれない。
ひとりで立ち上がることなんてできないんだ。
いつだかにあいまみえた生徒会長……シンボリルドルフは、なんて言ってただろうか。
ウマ娘の誰もが幸福に──だったか……たしか……
それはとても素晴らしいことだと思う。
俺も同じことを望んでいる。
なのに。
床に無様に這い蹲る。
既に吐き出すものすら無くなっていて、はらわたを痙攣させながらえずいた。
なんだ。
簡単な話じゃないか。
俺はトレーナーになんてなるべきじゃなかったんだ。
夜。
自室にいるとなんとなく落ち着かなかったので外に出た。
静まり返った道を歩いた。
ヒトの気配がまるで無い公園には俺ひとりを残して誰もいなかった。
街灯の下にあるベンチに座る。
じっとしているとどうしても考えてしまう。
なんで俺はこんな人間なんだ。
なんで俺はクズにも真人間にもなりきれないんだ。
なんで俺は──────
地面に拳を叩きつける。
痛みなんて感じない。
自分への怒り、憎しみ、疑問、困惑…………ある限りの感情を込めて何度も地面を殴りつける。
街灯の頼りなさげな光でも分かってしまう程に鮮明な赤色が散らされていく。
それでも止まれる気がしない。
両目から雫がこぼれ落ちた。
とめどなく滴り落ちるそれは目の前に広がる鮮やかな赤を淡く滲ませていった。
何分か、何十分か、何時間か。
何度も同じことを繰り返していた。
やったからといって特に気分が晴れるわけでもなく、どちらかと言えば血濡れた右手の後始末を──めんどくさいな、なんてぽつりと考えていた。
この日から俺の瞳は乾いたままだった。
トレーナーはあの日からボクの前で自分の暗い感情を完全に見せようとしなくなった。
悲しいとか辛いとか おくびにも出さないでボクに尽くすようになった。
そんなふうに我慢したってトレーナーが楽になることはないってわかってはいるけど、ボクはどうしてあげればいいのか迷ったままで。
「トレーナー──────?」
「ああ……悪い、ちょっと待っててくれ」
今日のトレーナーはいつもより不自然だ。
絶対にまた隠してるものがある。
でも下手に首を突っ込んでまた迷惑かけちゃうのも……。
……でもでもいつもメモする時は必ず右手で書いてたのに今日は右手で物を持って左手でペンを持つなんて、絶対におか────────右手?
詰め寄って強引に手を取った。
「これって……」
「……………………」
右手が傷だらけだ。
朝から隠してたかと思えばこんなことになってたなんて。
改めてトレーナーの顔を見る。
目に光が感じられない。
こんな状態なのにトレーナーはボクを頼ってくれないんだ。
ボクが子供だから?
…………やだな。
担当だから、
ボクはそっちの方が嫌だ。
そういえば前々から不思議だった。
なんでボクはトレーナーを思い浮かべることがこんなに多いんだろう。
まただ。
また過ちを繰り返している。
「これって……」
もう、
「え?」
もう嫌なんだよ全部が俺のこれまでの全部が価値が無いように思えるんだいや思うじゃなくて本当に価値が無かったんだ死にものぐるいでトレーナーになったのに俺は最初からトレーナー失格だったんだお前に迷惑かけないようにって頑張ってみても結局今こうやってお前に負担をかけさせてどっかで喜んでるんだよ俺はもううんざりだお前を帝王にするって約束したのに俺が先にこんなことになってしまって謝りたいのにこんな風にお前を困らせたがって────もう…………なんなんだよ本当に…………ごめん…………嫌なんだよ全部
「……それでも、さ。トレーナーは一度だってボクになんかしようとはしなかったじゃん」
そうは言っても俺は俺を信じられないんだ。
不意にお前を傷つけてしまうかもしれないんだ。
「確かめてみる?」
確かめる?
彼女は何を言ってるんだ。
「さあ、ほら」
両手が差し出された。微かに震えているのが分かる。
テイオーは平常心を装っているが緊張しているのが見て取れる。
それが何の証明になるというのか。
───────あ。
差し出された手を払い除けた、そうした時の彼女の表情を想像してしまった。
今ここで俺が彼女の手を払ってしまえば、彼女は差し伸べた善意を叩き落とされるということになる。
きっと彼女は俺が求めてしまっていた表情を浮かべてくれることだろう。
それを─────それを、──────それに、
────────
沈黙の一瞬を何秒にも渡って繰り返していた。
「ほら……ね。やっぱりそうだよ……トレーナーはトレーナーだって……そうに違いないよ……」
声が僅かに震えている。
……やっぱりテイオーは優しい子なんだな。
そんな彼女を本能の滾るままに壊してやりたいし守ってやりたい。
彼女の幸せそうな姿を見たいと思うのも、その純真な心を引き裂きたいと思うのも、俺自身の治しようがない本性だ。
どこまでいってもそれは変わらない。
誰かを幸せにしたいと言えば聞こえはいいが、どちらにしてもそれは欺瞞に満ちた私欲だ。
だとしても、彼女と一緒にいるうちに少なからず何かを思うようになった筈なんだ。
今まで俺は自分を拒んで否定することしかしてこなかった。自分の黒い部分を受け入れられなかった。
そうだ。
たしかに俺は最低な男だ。
それでもだ。
たとえ彼女を傷つけたい俺が本物だったとしても、彼女を想う俺が偽者なわけがない。
それは俺が生まれ持ったものとは違うかもしれない……絶対に違う。
今は──────────、
「……トレーナー?」
──────
何の不安も憂いも背負わせずに走らせてやりたい。
彼女の夢を終わらせたくない。
そこに俺がいなくたっていい。
ただほんの少しだけでも多く彼女の幸せが壊されないように、自分を裏切っていたい。
やっと分かった。
是が非でも否が応でも、俺は彼女を
目の前にいる彼女は心配そうに見てくる。
伝えようとしても口が開かない。唇がわなないている。
尚も彼女の瞳を曇らせている今に暗い喜びを覚えてしまう自分がいる。
俺の涙腺は機能しない。
枯れたそれに流すものはない。
正しい泣き方、涙の流し方を忘れた奴ができることは乾いて錆びていくことだけだ。
─────────。
「…………………………………」
テイオーは何もせずに黙って傍にいてくれた。俺がそうしたように。
…………お前は、
「……」
お前はまだ子どもなんだから、好きなだけ駄々こねて我儘言って頼って迷惑かけりゃいいのになんで俺を心配してくれるんだ。
「頼るよ。これから先も
俺はずっとひとりで抱え込んできたから誰かに頼ることなんてなかった。
その矛先が彼女か。
気づいてしまえば腑に落ちる。
長い間一緒にいて情が湧かないわけがない。
俺がいつか
テイオーに望んだのは…………
バカバカしいくらいに愚直な想いだった。
分かってる。
彼女に俺は必要ない。
俺が足枷になってることも、此処では俺だけがヒトとして指導者として「間違っている」ということも、俺よりも彼女のトレーナーに相応しいヒトなんて数えきれないくらいにいることも、俺が一番分かりきってる。
だから
走り終わった後
夢が終わった後に
俺がテイオーの隣にいることはないんだろうな、と。
思った。
何が変わったというわけでもないがちょくちょくテイオーに思ったことや辛いことを話すようになった。その分彼女の悩みも聞いたし、色々と厄介事をこなしたりもした。
それでも俺自体が治ることはなく、彼女に余計なものを背負わせてしまったという慚悔の念だけが腹の
されど腹は決まった。
俺は、俺の心の全てを殺し尽くしてトレーナーとして自分を使い潰す。
それが俺にできる唯一の生き方で、今まで
たとえそれが人間として間違っていようとも意志は既に固く定まっている。
俺が
そして、彼女が帝王になれるように、
俺は二度と倒れはしない。
この意志はこれから先何があろうと絶対に曲げることは無い。
そう決めた後は一度たりとも心が感情に押し潰されることは無く、自分がひたすらに冷たく固くなっていくのを感じた。
皮肉にもテイオーの足に異常が発覚したのはそのすぐ後のことだった。
それなりに早くから発見できたけど、ケガっていうのはそう簡単に治るものじゃない。
もしかするともう二度と走れなくなってしまうかもしれない最悪な事態なのに頭は不思議なぐらいに落ち着いていて、横で今にも死にそうな顔をしてるトレーナーの姿がひどく目の奥に焼き付いた。
「これが見たかったの?」
あのヒトの瞳が揺れる。
責めるつもりは全然無くて、聞いてから「ああ傷つけちゃったかな」なんて少しだけ罪悪感を感じた。
すると突然向き直って視線を合わせてきて、
「俺が絶対にお前をもう一度走れるようにしてみせるから。だから────信じてくれなくても恨んでくれても構わないから…………だから………………だから俺をもう少しだけお前のトレーナーでいさせてくれ。俺の全部をかけてお前を帝王にしてみせる。
そう言ってきた。
思うことは色々あったけど頷くことしかできなかった。
なんて言葉にすればいいのかわからない。
真正面十数センチの間から見たトレーナーは誰よりも頼りなさげなのにボクには大きく見えていて、
今にも消えてしまいそうなトレーナーの目にボクは縋ることにした。
ゆっくり考え事をする時間が増えた。
思わないようにしていたトレーナーのことを考えるようになった。
ボクは今まで自分の夢しか考えてなくて、それに向かって走ることしかしてなかった。
誰かのために走るなんて考えたこともなかった。
トレーナーは自分を押し殺してまでボクを勝たせようとしてくれていた。
トレーナーがどんなヒトだったとしてもそれは変わらないと思う。
ボクはあのヒトみたいに強くない。
自分じゃない誰かのためにひたすら頑張り抜く。
自分の心をねじ伏せてまで他人に尽くす。
自分のやりたいことを我慢し続けてそれでもがむしゃらに頑張り通すなんて、ボクだったら多分できない。
あのヒトがやけに大きく見えた理由はそれから来たモノなのかもしれない。
恋──がどんなのかなんてわからないけど、
トレーナーに対してドキドキするとか、そんなんじゃなくて、
…………よくわからない。
カイチョーへの憧れみたいなモノ……?
それも違うと思う。
トレーナーはカイチョーみたいに速く走れるわけじゃない。
それにトレーナーを見てると心配になる。
いっつもグラグラしてて、ちょっと押せば倒れてしまいそうな様子でボクをサポートしてくる。
カイチョーとトレーナーは全然違う。
ただあのヒトが辛そうにしてるとこっちまで辛くなってきてどうしても気になっちゃって、あのヒトが嬉しそうにしてると……、
………………?
……もうわからなくたっていい。
それでも
ボクは
カイチョーみたいなウマ娘になりたい。
無敗の三冠ウマ娘になりたい。
それは今も変わってないけど、
ボクも────あのヒトみたいに、
あのヒトに…………応えたい。
想定よりも早くケガは完治した。
ちゃんとした調整はできていないがレースにはとりあえず出走可能。
「見ててね、トレーナー」
出走直前、声をかけられた。
もとより目を離すつもりは無いが……しっかり返事はした。
それからも特に変わりはなかった。
出走直前に『見ていて』と声をかけられるようになったこと以外問題や変化もなく円滑にやってこれていた。
そうして三年間の集大成、
”皇帝”
シンボリルドルフとの勝負の日を迎えた。
テイオーの調子は良さげだ。
多少緊張はしているがそこまで大きなものではない。
「見ててくれる?」
いつもと違う、不安げで儚げなその微笑みと問いかけにゆっくりと頷き返した。
おそらく俺が担当でなかった場合テイオーはこのレースを勝利に収めるだろう。
トウカイテイオーが負ける。それは俺の存在がそうさせたということだ。
いらないものを背負わせてしまったから。
このレースの結果。
どちらに転ぼうと、それは彼女に俺は必要ないということの証明に過ぎない。
「は────、ぁ─────、─────」
掛かってしまった。
脚だけじゃなく、体全体が重い。
息が切れ始める。
ゴールまでにはまだ距離がある。
一歩進めるほどに強烈な疲労感が腕も脚も地面に沈めようと重さを増す。
苦しい。
いつもならここまで掛かることはなかった。
でも、そうでもしないとこのレースは勝てない。それぐらいに今回はレベルが段違いなんだ。
ボクの限界以上を出し切らなきゃここにいるみんなには…………”皇帝”には勝てない。
そうやってひとりで先走った結果がこれ。
今にも体力を切らして目指した夢ごとこの場に倒れ込んでしまいそうだ。
いや、でも。
これが今のボクの全力なんだ。
これが現実だったんだ。
…………勝てないとしても、せめて最後まで走りきらなきゃ─────
「────────ッ」
踏み出した脚が少しだけ──普段のボクだったら気づかなかったくらいに本当に少しだけぐらつく。
今のこの極限状態じゃなかったら決してわからなかった。
たったそれだけの、最後のひと押しで。
あ。ダメだ。
そう思ってしまった。諦めてしまった。
ごめんね。■■■■■。
あ、れ。
誰に謝っているんだっけ。
なにかすごく重要なことを置いてきてしまったような気がする。
思い出さなきゃ。はやく、早く─────
頭の中が目の前の光景を置き去りにして走り出す。
今までのことが
あの時のセンセンフコク、トレーニングの日々、マックイーンとの一騎打ち、そして、
ああ。分かった。
俺がお前を帝王にしてみせる。
約束、した。
トレーナーと約束したんだ。
諦める、なんて言葉はとっくに抜き去ったハズ────────
「──────────!!」
どこから湧いてきたのかもわからない、脚が爆発すると錯覚したほどの強い力で地面を蹴る。
そして一歩前に進むと
空に飛び出したような感覚がした。
体が軽い、というより
剥き出しの心が芝の上を走っているような気さえした。
さっきまでの足枷は外れている。
風の中に溶けていくような解放感に包まれて、数百メートル先のゴールが今ならハッキリわかる。
まだだ。
ここで揺らいだらその時は本当に終わってしまう。
体はギリギリまで限界に近づいている。
もっと踏み込むんだ。もっと。
極限まで絞り出さなきゃ、
そうしないと、ボクは、
違う。
ボクは二度とつまずかない。
倒れることなんてない。
忘れてたモノは もう拾った。
それがこの
それが
ボクが走ってきた道が後ろにある限り────
────ボク達は絶対に止まりはしない………!
頭の中が晴れていく。
勝ちたいという思い、片隅にあった緊張、あの時の憧れ、全部を何もかも忘れて──────
「──────え?」
気がつくとゴール地点は過ぎていて、ゆっくり勢いを抑えながら小走りで進んでいた。
なんだか夢を見ていたような気がして観客席に目をやると、いつも欲しがっていた歓声がこれでもかというぐらいに叩きつけられた。
「……………………勝ったんだ。ボク」
数秒遅れてその事実が頭の中にやってきた。
─────────────────。
遊園地に来るのなんて何年ぶりか。
それとも初めてだっただろうか。
思い出せない。
ああ────
疲れた。
少し疲れたな。
今日ぐらいは……自分の為に過ごしても……罰は当たらないだろう。
最後までレースに何かを見いだすことはできなかった。
───────────でも。
彼女は今日も
こうして笑えている。
誰にも汚されていない、綺麗なあどけない心のままで、屈託のない笑顔で俺の
本当によかった。
俺はそれを見たかった。
もうとっくに俺の願いは叶っている筈だ。
上ってきた何かが喉が焼いた感覚がする。
反射的に体を くの字に曲げそうになるがその頃には腹の奥に熱が引いていた。
あとどれくらいで彼女はいなくなってしまうのだろうか。
彼女が俺の前からいなくなっても、多分俺はそれに悲しむことはあれど引き止められはしない。
テイオーは俺の担当ウマ娘で、共に理解しあいながら今日までやってきた子だ。それだけだ。
俺にとって彼女は大切な存在だ。
彼女は俺のことを理解してくれた。
笑顔を向けてくれた。
はたして次に会う子にはちゃんと自分を隠せるだろうか。
それまでにはこの性分を切り落とせるだろうか。
まあ今はそんなこと気にする必要はない。
彼女が卒業するまでにはまだまだ時間がある。
彼女は笑ってくれている。
それだけで心は満たされている筈だ。
自分のこと以上に誰かを尊ぶことができた。
彼女が俺から離れていくその時を待ち遠しにできている自分がいる。
自分以上に誰かを大切にする。そんな想いを、たとえこの
それだけで本当に満足だ。
あとはもう何も要らなかった。
だから、今はそれだけで十分なんだと、
いつかの自分と、今の自分を、思いきり嘲ってやろう。
遊園地なんて全く行ったことなかったが、今日彼女と一緒に過ごして……
正直たのしか─────────────え?
あ。
そうか。
なんで、そんな、
今になって。
テイオー……。
今更、こんなこと言ったって、
また彼女の心に無駄な不純物を残してしまうだけだ。
今の俺はどんな顔をしているだろうか
彼女と同じようになれているか
鏡を見れば簡単に分かる。
分かることだというのに。
この喜びが
テイオーと今日こうして過ごして浮かんできたものだとするなら、
俺はどうすればいいんだ。
どうして今になって気づいたんだ。
ようやく彼女の為に離れようと思えたのに。
──────テイオー。
俺は今どんな顔してる?
先程飲んだジュースで存分に潤った筈の喉は震えるばかりで音を縫おうとはしない。
その機会は失われてしまった。
あの日掲げた意志は揺るがない。
固く張り詰めたソレは微塵も揺らぐ素振りを見せない。
それでも
もし
この思いが許されるのなら、
その時は
テイオー。
ごめんな。今になってやっと気づいたんだ。
俺がやりたかったのは
誰かを幸せにすることでも誰かを不幸にすることでもなかった。
俺は
おれは
ただ
みんなと
おまえと
同じ尺度で笑いたかったんだ。
ちょっとだけ…………安心した。
トレーナーは……きっと、
寂しがり屋なだけなんだよ。
だから……ほら…………。
………………。
思い返してみれば悩んだことは よくあったし、不安になったこともあって、苦い記憶は数えきれない。
その中でも
塩水を飲んでるのと同じだ。
それでも、いいかげんボクもトレーナーも解放されていいんじゃないか。
あのヒトといたらボクがおかしくなってしまうとして、あのヒトがボクに対してホントに何も思ってなかったとして、あのヒトから離れてしまえばボクは前みたいに笑える……?
出逢わなきゃきっとこんな風には…………もう遅いよ。
ボクの中で あのヒトは……重い。
本人は気づいてないようだけどトレーナーはボクに依存するようになってきてる。
大きな問題を乗り越えてカイチョーに勝って夢を叶えた後も、いつもと変わらずにボクにたくさん関わってくれている。
トレーナーが変わる必要なんてない。
そのままでもトレーナーはトレーナーだって。
あとほんのちょっとなんだ。
あとほんのちょっとであのヒトは自由に笑えるようになるハズだから。
完全にボクに依存しきったその時に、この────よくわからない思いを、よくわからないままでも伝えてしまえば……きっと、
そうすれば……きっと……これからもあのヒトと繋がっていられるハズだから。
ボクはあのヒトにどうしてほしいんだろう。
ボクだけを見てほしい?
ボクだけのトレーナーになってほしい?
多分そんなんじゃなくて、もっと普通の単純なことだと思う。
あのヒトがボクの支えになってくれたように、ボクもあのヒトの────。
あのヒトが自分を痛めつけてまでボクを想ってくれたように、ボクもあのヒトに────。
わからない。
わからない、けど、
それがいつか
いつものなんでもない話みたいに軽い口調で言い出せるようになるまで、この気持ちは大事にとっておこう。
「これからもよろしくね、トレーナー」
「ああ。よろしく」
今回の話はこれで終わりですが、この後ふたりはどうなると思いますか
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ハッピーエンドになると思う
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バッドエンドになると思う
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どちらでもないと思う
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超究極ハッピーカムカム心うまぴょいエンド