下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話 作:散髪どっこいしょ野郎
トゥインクルシリーズが終わって、どこか行きたい所はないかと聞かれた。
前までのボクだったら遊園地にでも行って乗り物全制覇とかやってみたりするんだろうけど、それよりも聞いてみたいことがあった。
「トレーナーはどっか行きたいとことかないの?」
わかりやすく動揺していた。当然「お前のお祝いなんだからお前の行きたい所に行こう」と言ってきたけど、それでも何度も食い下がって最終的にはトレーナーの選んだ所に行きたいと言ったら困惑した様子で答えてくれた。
「静かな……ところ」
二人で電車に乗って、二人とも知らない場所に向かった。トレーナーはじっと考えごとをしながら窓の外を眺めていた。
着いた先はヒトの気配が全然ない場所。コンビニさえもなかったけど、あらかじめお弁当とか水筒とかを準備してたおかげで特に困らない。
トレーナーは一日中あまり喋らなかった。ボクはといえばこれが素の姿なのかなと考えていたりして。
この三年間、ボクを変わらず見てくれていたこととボクを帝王にしてくれたことへの感謝を帰りの電車を待っている時に伝えた。
それを聞くとトレーナーは一瞬だけつらそうな顔をして硬い口を開いた。
「俺……はさ、そんな”できた人間”じゃないんだ。テイオー……というか誰にも言えなかったんだけど、俺は……気持ち悪いやつなんだよ。お前が思ってるよりも、ずっと。俺……今まで俺なりに頑張ってみたんだけどさ、結局お前に辛い思いをさせてしまって…………上手くいかなかったんだ。だから……ごめんな。ハ、ハ……、……」
困ったように笑う。無意識なのかは知らないけど、右手で自分の左腕を強く掴んでいる。何かを憎んでるみたいに。
「いいよ。許してあげる」
だからボクも気持ちを隠さずに笑う。多分その時のボクの顔は本当に────醜かったと思う。
そんなのはどうでもよかった。
やっとトレーナーは心の内を明かしてくれた。
それで満足してしまっていた。
二人で出かけた日からしばらくはトレーナーについて悩んだりすることが少なくなった。
そんなだから心に余裕ができてきて、マックイーンと一緒に野球観戦してみたり、ダブ……ツインターボと並走してみたり、スペちゃんとご飯を食べてみたり、会長にちょっかいかけてみたりして、トレーナーから少しだけ離れられるようになった。
皮肉にもそうしたことで視野が広がって、改めて自分の気持ちを見つめ直す機会ができた。
ボクには友達だってたくさんいる。やりたいことだってたくさんある。
ボクの中であのヒトは特別なんだって。
それともう一つ重要なことを知れた。
ボクはあのヒトが好きで、あのヒトはボクが大好きなんだ。
リボンを渡したあの時、ボクが望むならボクだけのトレーナーになってくれるって言った。
それだけじゃない。あのヒトはいつだってボクをおかしいぐらいに心配していた。
ボクはあのヒトが”トレーナー”だから気遣ってくれるだけだと早合点してた。
実際は違った。夏合宿の時もそうだ。振り返ってみればあのヒトがボクを好きだった証拠なんていくらでも出てくる。それに気づこうとしなかっただけで。
でももし想いを伝えたとしても、きっとあのヒトは喜ばない。それはいけないことだってわかってるから。
ボクのトレーナーになったことを申し訳なさそうにしていた。そんな心配なんて必要ないのに。
それでも、それがわかっただけで嬉しい。ボクの”これ”が一時の迷いかもしれなくても、それがいつか本物になる時が来る。
ボクはまだ
じゃあそれが本物だって言えるようになればいい。その時までならボクは待っていられる。
連絡先を交換した。
トレーナーと担当ウマ娘は大体お互いの連絡先を持ってる。それでも今までボクは交換したくなかった。
電話やメッセージだけで全部済まされてしまいそうだと思って不安だった。
今はその心配もいらない。
迎えた卒業の日。
トレーナーはボクを見送りに来てくれた。
色々言いたいことをまとめて飲み込んで、一言だけ贈る。
「バイバイ」
手を振って歩き出す。
視界から外れる最後まで強く立ち続けていたあのヒトの姿を、瞼の裏に焼き付けて。
この後どうなるかはテイオーに委ねられますが、今回の話は個人的にはあんま気にいんないんで正史にするつもりはありません。前回の話も正史にするつもりはないっス。