下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話   作:散髪どっこいしょ野郎

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ちょっとした思いつきで息抜きに書きたくなった話っス


19話(アグネスデジタルの話)と同じくらいに明るく軽い話です。










ルドルフさんと桐生院さんが二人を頑張って改心させる話

週末、夜、行きつけの居酒屋。私の前には一人のトレーナーさん。

 

私、桐生院葵はこの時間が好きだった。

 

彼は数少ない同期のトレーナーさんで、現在はトウカイテイオーさんを担当している。

 

時折担当ウマ娘との向き合い方などで新人同士意見交換をするようになったのだが、彼から学ばされることは多い。

 

私の担当──ハッピーミークの為にもこの時間は大切にしたいと思っている……いた……のだが……、

 

 

正直個人的にこの時間が好きになってしまっている。

 

────だって私今まで友達とどこかに行ったりすることも無かったし!家柄的にもトレーナー関係のこと以外あんまり学べなかったし!

 

この仕事が嫌ってわけじゃないけど……ないけど……でも私、こういうのってすごい憧れてた、憧れてました。

 

はい。楽しいです。ただ飲み食いしながら話してるだけだけど私にとってはすっごい楽しいです。

 

言いたいことだってたくさんある。私の担当……ミークが、ミークがどれだけ愛らしいか語れる相手なんてそうそういない。ミーク可愛いよミーク。

 

彼がトウカイテイオーさんとの惚気話?を語るように、私もミークの魅力というものを毎度毎度余すことなく彼に叩きつけている。

 

桐生院家の者として男のヒトと一対一で飲みに行くのはどうなんだいいのかと一瞬考えたが、いいじゃん友達なんだから!と自分自身に開き直ることで色々吹っ切れてしまった。

 

というわけで私は今日も彼と一緒に意見交換という名のだべり会を開いていた。

 

 

「んでねぇ、マジでテイオーが可愛すぎてもう可愛いのなんのってもうふぇいぃぃう──」

 

 

いつものように彼は限界化(おかしく)なり始めた。こうなったらこのヒトは大抵「テイオーが可愛い」か「テイオーがかっこいい」の二言、もしくは個人的感情が入りまくった日常エピソードしか言わなくなる。

 

 

しかし彼はお酒を飲んでいない。

 

完全に飲めないというわけではないがかなりの下戸で、一度羽目を外して……外したとはいえジョッキ半分程のビールを飲んだだけで顔が赤くなり、呂律が回らなくなったことがある。それくらいにはアルコールに弱い。

 

が、飲まなくても彼は酔ってしまう。

 

雰囲気で酔ってしまうのだ。

 

そうなればもう後はトウカイテイオーさんのことしか言わなくなる……と思いきや意外と私の話も聞いてくれている。

 

ので、私は今日も彼と二人、自身の担当の魅力について存分に語り明かす。

 

程よく酔いが回ってきたのか、上気し始めた頬が思考回路をヒートアップさせていくのを感じる。

 

 

話を聞く限りでは彼とトウカイテイオーさんはかなり仲がいいようで、私もミークと仲を深める為に彼の意見を参照することがある。そういう意味では割と意見交換としての役割を果たしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイチョーカイチョー!それでね、トレーナーがね────」

 

 

私、シンボリルドルフは何も無い空き時間、生徒会室にて彼女──トウカイテイオーと時折話している。

 

生徒会の事務作業や自身のレース活動など、私にはやるべきことが多い。勿論自ら望んでこの立場に就いたのだから不満は無く、むしろ本望だ────がしかし、悔しいことに私も完璧ではない。疲労や鬱憤が溜まってしまうこともある。

 

そういった時に私はテイオーと談笑を交わす。彼女は私を慕ってくれる後輩だ。認めたくはないが私はどうも彼女に甘いらしく、生徒会副会長のエアグルーヴから注意されることもしばしば。

 

しかしどうしてもテイオーには態度が柔らかくなってしまう。それも彼女の人となりから来るものなのだろうか。

 

なんにせよこの時間は私にとっては数少ない心のオアシスとなっていた。

 

 

「トレーナーったらボクが勝ったっていうのに顔隠してプルプル震えてるばっかりでちっとも褒めてくれなかったんだ────」

 

 

ここのところテイオーはあのトレーナーくんの話をすることが多い。彼とは選抜レースの際に少し話しただけであり、彼がテイオーの専属になることは個人的に心配だったがこの様子なら良い関係を築けているのだろう。

 

それに担当と仲がいいというのは喜ばしいことだ。仲が中々──────いや、さすがにこれは無いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近あいつ俺が桐生院さんと飲み行ってることに気づいたらしくってすっごい問い詰めてくるんですよねー。…………俺がテイオー以外見るわけないのに」

 

 

彼がまだシラフの時、唐突にそんなことを言い出した。

 

……なんというか、このヒトは思っていたより担当ウマ娘に向ける感情が重いのかもしれない。

 

話を聞いてみるとどうもトウカイテイオーさんはそこそこに独占欲が強いみたいで、彼が私と週末に出かけることをあまり快く思っていないらしい。

 

しかし彼は彼でそれに気分を害することはなく、話しながらどこか光を失った目で笑っていた。

 

……………なんとなく嫌な予感がしたが二人とも少し束縛しやすいタイプなんだなーと割り切って自分を納得させた。

 

そんな私の不安を察してくれたのか、ミークが心なしか以前より話しかけてくれるようになった気がした。ありがとうミーク。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……トレーナーがねー、ほかのヒトと二人っきりで出かけてるみたいなんだー……。たしか名前は──桐生院さん?だったっけ?それでトレーナーに聞くとね、『あのヒトはただの友達だよ。それにお前も会長と二人っきりで話してるじゃないか』って言われたんだ……」

 

 

ある日、いつものようにテイオーと限られた空き時間を過ごしていると想像以上に重い話が飛び込んできた。

 

桐生院と聞けば覚えがある。彼と同期であり名門家の一族、桐生院葵トレーナーだ。新人でありながらも中々に優れた指導力を持ち合わせているようだ。顔を突き合わせたことも数える程しかないが、噂はよく聞いている。

 

うーむ…………彼も一人の男性だ。テイオーからすれば複雑かもしれないが、そういった間柄の相手がいてもおかしくはない。

 

なにせ相手は名門トレーナー家の一人娘。彼らのようなトレーナーが早いうちから関係を築くのも珍しい話ではない。

 

そう考えていたのだが────どうにもそういうわけではないらしく……。

 

 

「……でもどうしても気になっちゃったからもっと聞いたんだ。どこに行ったの、とかどんな話をしたの、とか。そしたら『俺が!テイオー以外見るわけないだろ!』って言われちゃってさぁ、その後もボクをどれだけ想ってるかトレーナーは何度も何度も言ってきてね────あはは、言われちゃったんだぁ……!」

 

 

何も無い宙を眺め、彼女は笑いながら話していた。

 

……………………んん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺、トレーナーになったばかりの時は本当にどうしようもねぇゴミみたいな奴だったんですよね。それでテイオーの担当になって、あいつに──変えてもらったんです。だから俺、あいつの為に俺の全部を使い尽くそうって思ったんですよ」

 

 

トレーナーさんは最近昔話?をよくするようになった。細かいことは言ってくれなかったが中央に入った頃の彼は最低な男……だったらしい。

 

何がどう最低だったのかは言ってくれなかったが、テイオーさんと出逢い心を入れ替えたようで、それをきっかけに彼女に対して重々しい感情を向けるようになったみたいだ。

 

…………いや私にどうしろというんですか。

 

そんな話されても私何もできませんよ。なんかテイオーさんの束縛が日に日に強くなってる……みたいな話もしてきますけど私にはどうにもできませんよ!

 

というか話してる時の顔が怖い!明らかに病んでるヒトのそれ!

 

……そんな感じで、私は私でお酒の量が増え、ミークは頻繁に気遣ってくれるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でねでね!ちょっと前からトレーナーが練習の後とかレースの後とかにすっっっごく褒めてくれるようになったんだ!イヤートレーナーモヤットワガハイノスゴサニキガツイ────

 

 

雲行きが怪しくなった時もあったがどうやらトレーナーくんとのいざこざはなんとかなったようだ。

 

以前一瞬テイオーの眼がドス黒く見えたような気もしたがきっと何かの間違いだったのだろう。私は少し疲れているのかもしれないな。

 

私は疲れているんだ。きっと。

 

 

「まったくトレーナーもシンパイショーだよねー、ボクが寮に帰る時以外はずっと付きっきりなんだよ?まぁボクもあのヒトに会いにトレーナー室へ行く事が増えたんだけどさ、ちょっと暇なんだー。だって部屋に行ってもあのヒトお仕事しかしてないからその姿を眺めてるぐらいしかやる事が────」

 

 

………………いやいや。

 

え?これって私だけ?これが正常なトレーナーとウマ娘の付き合い方なのか?

 

どう考えてもおかしい気がするんだ。暇と言ったって結局トレーナーくんを眺めてるってテイオー、キミ、ちょ、え?

 

 

誰かに聞いてみようかと数瞬悩んだが取り消す。こんなこと誰かに打ち明けて広まりでもしたらとんでもない事になりそうだ。

 

彼もテイオーも少し距離が近すぎる……と思う。

 

いや……下手に口を出して事態を悪化させるようになったらどうする……?

 

 

と、思案を張り巡らせるばかりで私は結局何もできなかった。理事長。私は無力だ。許してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーさんは元気をすっかり取り戻し、いつものようにテイオーさんとの話をありえないぐらい流暢に語っている。

 

それ自体に問題は無い。ただおかしいのはその内容だ。

 

 

「で、あいつ『トレーナー(ヒト)の力じゃボクには勝てないんだよ……?』とか言って押さえつけてきたもんだから『んだとコノヤロー!』って思ってガッ!!って腕掴み返したらすーぐへにゃへにゃになっちまってですね!いやホント愛らしすぎてmy毛細血管で東京タワー作れそうになったぐらいですよ!」

 

 

息を吸うように地獄生み出すのやめてください頼むから東京タワーが赤い理由ってそういうのじゃないから。

 

 

とにかく聞いてるこっちが胃もたれしそうなぐらいに強烈な日常の記憶を叩きつけてくる。

 

なんですか?(カルマ)で蠱毒でも行う気ですか?

 

 

あとトレーナーさんはよく食べるようになった。筋肉量も心なしか初対面の時より倍増してるように思える。

 

担当ウマ娘に負けない為?いや、考えるのはよそう。脳細胞はクーリングオフできないんだ。

 

…………嗚呼、それでもいい加減なんとかしなければ。この調子がいつまでも続くようだったら少なくとも私はもたない。

 

嗚呼胃が痛い。こんなんじゃお酒も飲めない。

 

私の精神状態を察してくれたのかミークは定期的に抱きしめてくれるようになった。ホントにありがとうミーク。今のところ癒しはあなただけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイチョーカイチョー!それでね、トレーナーがね!ボクのどんなところが好きかっていうのを電話で五────」

 

 

おかしいな。オアシスが泥だまりだ。

 

どうしよう。いやほんとにどうすればいいんだろうか。誰か────いや、駄目だ。生徒会長としてテイオーは私がなんとかしなければ。

 

そうは言っても解決策が思いつかない。

 

とりあえず頭を撫でたらとても嬉しそうにしていた。以降私は彼女とどこかに行ったり頭を撫でたりする頻度をなるべく増やせるように努めた。のだが。

 

 

 

 

 

 

「カイチョー!聞いてるー?最近トレーナーがボクとあんまりいられなくなっちゃったからってすっっっごい好きーって言ってくるようになってね?いやボクも言わなかったわけじゃないけど────」

 

 

────────────誰か。

 

 

私が思い悩んでいるのを察したのかハルウララが心配しに来てくれた。ありがとうウララという思いを込めて彼女をしばらく愛でていた。お日さまのようにあたたかかった。

 

彼女も少し前まではハルウララにも負けないぐらい可愛らしかったのに、どうしてこんなドロドロとした目つきになってしまったのか。

 

三女神様。どうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺……思ったんですよ。テイオーは俺と長い間一緒にいるようになって、どんどんその時間も増えて、心地よくて仕方なかったんです。……でもそれはただ依存してるだけで、こんな関係は良くないんじゃないかって。だからなんとかして打ち切った方がいいのかって思ったんです。彼女の為にも」

 

 

今更なんですかインスタント背徳感かなんかですか、と喉まで出かかったが堪え、彼の話に耳を傾ける。

 

これは二度と訪れるかも分からない好機だ。この期を逃す手はない────!

 

 

全力で応援した。正しい関係性もとことんまで彼に教示する。脳が溶けそうになるまで根を詰め、徹底的に彼を泥沼から引っ張りあげる。

 

ここで油断してはならない。彼がなんとかなったとしてもテイオーさんが黒いままなら意味が無い────だが、私からテイオーさんにできることはない。

 

 

────だから、彼女に全てを託す。

 

シンボリルドルフ。皇帝を、私は信じる。

 

彼女がテイオーさんをなんとかすることを信じて、私はトレーナーさんの矯正に尽力する。

 

話したことすらないが、彼女も二人の異常性は知っている筈だ。

 

向こうがテイオーさんを変えてくれることを信じて、私は心を鋼にする────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カイチョー……。ボクね、思ったんだ。トレーナーはボクを絶対に拒んだりしないけど、それはダメなんだって。ボクが望めば多分一緒に()()()くれるんだろうけど……でも、本当にトレーナーを想うなら────こんな関係は止めたほうがいいんじゃないのかな……って」

 

 

雷が落ちたような衝撃が私の脳内を駆け巡る。

 

これはまたとない僥倖、マチカネフクキタルも吃驚するぐらいのチャンス!

 

 

決して動揺を悟られないよう冷静に、それでも必死に彼女の気づきを伸ばしていく。その通りだテイオー。キミの思ったことは全て正しい。

 

肯定の意を込めて彼女を諭す。皇帝だけに。

 

 

それでも、トレーナーくんが彼女に執着したままではどうしようもない。しかし私から彼に働きかけることはできない。彼を変えられるほどに深い関係性ではないからだ。

 

 

────故に、桐生院トレーナーに全てを託す。

 

桐生院トレーナーの指導者としての心構えを信じ、彼を変えてくれるようにと祈る。

 

どうか、よろしく頼む。テイオーは私、シンボリルドルフが全てをかけてなんとかしてみせよう。

 

私は信じる。そしてテイオーを在るべき姿へと戻す。

 

────────汝、皇帝の神威を見よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達(私達)は勝利した。無事、トレーナーくん(テイオーさん)は心を改め、仲を違えることなく依存することなく良い関係に戻った。

 

ありがとう、桐生院トレーナー(シンボリルドルフ会長)。私達は、勝ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下を歩く人影が二つ。

 

 

 

 

彼女は桐生院葵。あのトレーナーくんと同じくして入った新人トレーナーだ。

 

話したことは全く無いが彼女のことはよく知っている。

 

 

 

 

 

 

彼女はトレセン学園生徒会長にして”皇帝”シンボリルドルフ。あのトレーナーさんの担当であるトウカイテイオーさんが慕っているウマ娘。

 

話したことは全く無いが彼女のことはよく知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

向こうとほぼ同じタイミングで右腕を上げる。

 

そして────勢いよくハイタッチを交わした。

 

カラリと乾いたいい音を祝杯にして、私達は何事も無かったかのようにすれ違っていった。

 

 

 













【ある日】
会長と桐生院さんをハイタッチさせてぇなー




で、コレが生まれたってわけ。


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