下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話   作:散髪どっこいしょ野郎

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活動報告でいただいた話ん中で、主人公がテイオーを庇って車に轢かれて車椅子生活になってテイオーが……、というのがありましてそれを元に9話が生まれたのでありまして。

なるべく被害者を出したくないなぁということでその話では主人公が勝手に事故ったことにしたのですがもしも原案通りテイオーを庇って車に轢かれたらどうなるんだろうなぁってことで書いた話っス。

マジでそれだけの話なんで短めっス。あと9話とは違って主人公が車椅子生活になったりテイオーがそれに暗い喜びを覚えたりすることは無いっス色々違う話っス。

















身代わりになる話

「どわーっ!?─────ぐえ……っ、い……ッ、つ……っ!!」

 

そこまで急なわけでもない階段を思いっきり踏み外し、俺は派手にすっ転んだ。高い位置から転んだわけではないにしろ痛いものは痛い。腰も打ったしめっちゃ怖かったし最悪だ。

 

「だ、大丈夫!?……まったくもー、トレーナーはボクのトレーナーなんだからもうちょっとシャキッとしてよね!」

 

担当ウマ娘であるトウカイテイオーから声をかけられてなんとか「無事」のジェスチャーを返す。

 

どちらかと言うと大丈夫じゃないがでも彼女のトレーナーやれてるんだからこれぐらいでトントンなのかもしれない、だとかなんとか自分に言い聞かせて立ち上がる。

 

テイオーが担当ウマ娘になってからこんなことが増えたような気がする。いやこれは俺の不注意から来てるものだからアレかもしれないがとにかくなんか最近ちょっとした負傷が多い。

 

そんな俺とは裏腹に彼女はすこぶる好調だ。どんなハードなトレーニングも一切の不安要素無しにバリバリにこなしてみせるし調子も常に絶好調。夜更かしして寝不足になることなんてまず無いしレースで掛かり気味になったり出遅れしたりすることも皆無と言っていい。

 

なんといってもテイオーは俺の好みドストライクのウマ娘だ。彼女とえんやこらする為にトレーナーになったと言っても過言ではない。

 

いや、まあ、今んとこ「そういう事」は全くできていないが、顔が近くなっただけで心臓がバックバクになるが……とにかく。俺は彼女とイチャイチャしたいのだ。その為にトレーナーになったんだ。こんぐらいの苦難がなんだってんだ。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

……まったくトレーナーはおっちょこちょいだなぁ。それと引き換えボクは絶好調。なんだか最近どれだけ体を動かしても疲れないし足を挫いたりするコトも滅多に無い。

 

せっかくいい調子なんだからトレーナーにもちゃんとしてほしいよ。今日だってなんかボヤっとしてるし……。

 

「────はい、終わったよー」

 

「…………おー…………」

 

最近体力が付いてきたのを活かして一気に鍛えようってコトで用意されたキツめのトレーニングを頑張ってこなしまくったのに、全然褒めてくれない。それどころか今日は朝から反応が鈍いというか、うんともすんとも言わないというか……。

 

「もー!ボク今日頑張ったよ!もっと他になんか言うコトとかないの!」

 

「…………あー……そうだな……」

 

いや、なんか変だ。夕焼け空に紛れて分かりづらくなってるけど、今日のトレーナーいつもより顔赤くない?

 

「…………ん?テイオーどうし────なっ!?な、ちょ、なに、」

 

「ちょ、ちょっと暴れないでってば!─────うわ、熱……!?」

 

トレーナーの首元に指を当ててみたけど結構熱い。顔はますます赤くなりだしてるし、これは間違いなく風邪だ。

 

……いやそんなに驚かなくたっていいじゃん。

 

トレーナーったらめっちゃ仰け反ってる。というか倒れてる。

 

「まったくさぁ、風邪ならちゃんと休んだ方がいいよ?」

 

「……ごめん。ただなんか……その……心配で……」

 

「……ボクとかほかの子に風邪がうつったらどうするのさー」

 

「あ…………うん……そうだな……ごめん」

 

なんだろ……トレーナーって……天然?いやでも、風邪ひいてるのにわざわざボクを見に来るって────それだけ期待されてるってコトだよね!

 

うんうん。トレーナーもやっとワガハイの凄さに気づいてきたんだなー。

 

 

 

 

 

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風邪ひいてる時はそれなりに辛い。体調もそうだが、何よりテイオーを見られないのが結構こたえる。

 

まあでも苦労のかいあってかここんところは彼女からの信頼をある程度勝ち取れたような気がする。

 

トレーニングして調整して出走しての代わり映えの無いようで激動の毎日だが、俺はそこそこに満足している。なんてったってうら若いウマ娘と合法的に関われるのだから……満足してる……筈なんだが……。

 

最近どうも変だ。前まではテイオーに対してめちゃくちゃあーだのこーだのしたいと考えていたのに、なんだかそれも薄れているというか、急にものすごく不安になるというか、

 

……一体なんなんだ?

 

「トレーナー、聞いてるー?」

 

「────ぁ、っ」

 

隣りを歩く彼女が、俺に話しかけていた。

 

そういえば今は新しく蹄鉄を買いに外出していた。俺は一度考え込んだら抜け出せないタチだから彼女の声にも気づきにくくなってしまう。

 

「また考え事ー?別にそれくらいはいいけどさー、担当ウマ娘のボクのコトぐらいは頭に入れておいてよ」

 

「ああ、いや、その────ちょうどお前のことを考えてた」

 

「え、なになに?なんの話?」

 

俺のバカ野郎。

 

半ば無意識に口から本音が飛び出しかけていた。言えるわけない。それはテイオーに対する裏切りだ。

 

「寒いな」

 

「……?そうだね」

 

季節が巡るのは早いもので、彼女との一年目も終わりを迎え始めている。なんだか物理的に痛い思い出が多いがそれでもまあまあ楽しめた方だと思う。

 

 

 

 

 

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一年目も終わってようやくボクとトレーナーも足並み揃うようになってきたけど、おっちょこちょいなところは全然変わってない。

 

というかむしろひどくなってる?この間なんか廊下の角に連続で小指ひっかけて悶絶してたし……。

 

見てるだけでうわ、ってなってくるからもう少しぐらい注意してほしいんだけど……

 

「……トレーナー、どうしたのそれ」

 

「ん?────ああ、折っちまった」

 

ある日トレーナーは左足を包帯でぐるぐる巻きにしてなんでもないような顔でやってきた。

 

……おかしくない?普通怪我するなら走ってる方のボクじゃないかなあ……いや怪我なんて絶対したくないし絶対イヤだからする気は無いけど、いくらトレーナーにドジなところがあるからってそこまでなる?

 

「────よし、今日はこれぐらいで終わりにしとくか」

 

「……ボクまだまだいけるよ。ちょっとぐらいなら無理したって平気だと思うし……」

 

「いや、ここらで打ち止めにしといた方がいい。それに……下手に無茶して怪我でもされたらと思うと──俺が怖いんだ。ごめんな」

 

「…………」

 

骨折してるヒトにボクの足を心配されるのはなんかすっごい変な感じだ。

 

なんかこのヒト前よりシンパイショーになってるような気がする。でも最近はホントに調子がいいんだ。いくら走っても鍛えても体が軽いというか、違和感なんてこれっぽっちも感じない。正直不完全燃焼感がトレーニング後も残ってる。

 

だから────

 

 

─────────────────────

 

 

「な……っ!おいテイオー!お前何やってんだ!」

 

「─────あー……」

 

バレた。隠れて夜に自主トレしようと思ったら初日でトレーナーにバレてしまった。

 

「…………」

 

「な、なにさ。そんな怖い顔したってボクは────」

 

「…………」

 

「ぼ、ボクは……」

 

「…………」

 

「……ごめん」

 

松葉杖をコツコツ突きながらボクの前にやってきて無言で責めてくる。こういうのが一番こたえるからボクもつい気圧されそうになっちゃったけど────

 

「────なんてねっ!」

 

「…………っ!」

 

トレーナーを()()()()()()()()もう一周だけ走ろうとする。した。したんだけど。

 

「あ、あれ?トレーナー?」

 

「────ケホっ、こ、ふ」

 

トレーナーは大袈裟なくらい簡単に倒れて咳き込んでた。そんな力も込めてないのに、ちょっと押しただけなのに。

 

結局その後はボクの方が根負けして大人しく帰った。というか、それよりも頭の中に引っかかってたのが一つ。

 

人間ってあんなに弱いんだ。

 

軽く押しのけただけで倒れるくらいに脆くて弱い。それなのにトレーナーはボクが躓かないようにってずっと見守っていたんだ。

 

ボクのトレーナーに限った話じゃない。ここのヒトたちはみんな、ボクたちより弱いのにボクたちが走れるようにいつどんな時でも忙しなく動いている。

 

なんかくすぐったい感じがするけど、ボクは守られてたんだ。ボクよりずっと弱いトレーナーに。

 

……うん。だから、ボクもちょっとぐらいはトレーナーを気遣ってあげよう。なんたってボクはテイオー様なんだから。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

トレーナーって仕事は年がら年中忙しいってのに、左足を折ったせいでしばらくは不便な生活を強いられてしまった。

 

もうあんなことは起こすまいと心に固く誓ったというのに、何故か俺は再び左足を負傷した。

 

「え゛……またぁ!?」

 

「おお……また」

 

目ん玉ひん剥いて驚くテイオーにギプスで固定した片足を見せる。彼女はそれをまじまじと見つめながら信じられない、とでも言ったような目つきでこちらを見てくる。だよな。俺も信じられないよ。

 

いやまあ、テイオーが怪我するくらいならこっちの方が幾分マシなもんだがこんなことってあるか?

 

それと近頃はテイオーが心配で仕方ない。就いたばかりの頃はまあなんとかなるだろくらいの軽い気持ちだったのにこのごろはテイオーの体調だとか予後不良だとかへの不安がとてつもなく湧き上がってくる。

 

俺とは真反対に彼女は元気そのものだからそこまで憂う必要は無いんだろうが、それでもやっぱ不安だ。

 

…………怪我は痛い。色々と面倒だ。ストレスも溜まる。けれど、彼女が無事に健やかに過ごせているのならそれでもいいかと考えている自分がいる。

 

待て待て、俺はいつから聖人を気取るようになったんだ。元々彼女を自分のものにする為にトレーナーをやってたようなものなのに、これじゃあまるで俺が────

 

 

 

 

 

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何か特別なコトがあったわけじゃない。でも毎日あのヒトと一緒に走ってきて……ボクもなんというか、その……色々考えたりもする。

 

()()()の骨折をしながらもトレーナーは相変わらず心配性で、おっちょこちょいで、ヘンテコで。これじゃあ無茶してるのはトレーナーの方じゃん、なんて陰でぶつくさ言ってみたりして。

 

ホントに、なんとなくなんだけど。

 

だからたまにはボクを支えてくれたヒトたちの為にも頑張ってみようかな、なんて、チラリと考えた。

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

何か特別なことがあったわけではないけれど、彼女に笑ったり怒ったりヒヤヒヤさせられたりしながらそれなりの時間を送ってきてふと気がついた。

 

俺は自分で思っている以上にトウカイテイオーが好きなのかもしれない。

 

これだけ聞くと頭のおかしい奴のように────いや、実際頭は異常だったか。それに俺は割とどうしようもないタイプのクズだった。

 

でも()()()()()()()()()()()

 

ただ純粋に、彼女を支えたいと。彼女の行く道が、どうかこれからも温かな光と安らかな幸福に包まれているようにと。そう思ったんだ。

 

唐突にも感じるが……多分、俺は最初から彼女が好きだったんだと思う。もっと、こう……単純な意味で。

 

俺は自分がもっと賢い人間だと思ってた。トレーナーぐらい簡単にやってのけられると……自惚れてたんだ。でも違った。

 

皆誰しも歳食ったから大人になれるってわけじゃないんだ。

 

傷つき、悩み、それでも考えながら進んでやっと、「成長した」と言えるんだ。俺はそのスタートを切ったばかりの、青臭いガキだった。

 

それなりに悩んだ。俺みたいな奴がテイオーのトレーナーになってていいのかだのなんだのと無駄に苦しんで勝手に自分を責めた。

 

それでも、彼女は無事に進んでいる。毎日変わらず元気であどけない彼女のまま、ちゃんと歩けている。

 

だったらもういいかと思った。自分を許すとか許さないとかではなく。こんな悩みがバカバカしく感じて。

 

それに気がつけただけでも十分だ。

 

これからもやることは変わらない。いつも通り、俺にやれることを貫き通す。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

少し前から高等部に上がってたけどなんだか実感が湧かない。カイチョーがいて、ほかのみんなもいて、いつも通り走ってるだけの毎日。

 

ああでも、一個だけ楽しみ?みたいなのが増えた。

 

レースが終わって、ボクが帰ってきた時のトレーナーの反応を見るのが結構面白いというか……なんというか……。

 

あんな自分のコトのように嬉しがってるのを見てるとこっちが笑ってしまいそうになる。

 

そりゃあね?カイチョーに褒められるのはそれよりもめちゃくちゃ嬉しいしレースで勝つのが一番好きだけど、

 

トレーナーが喜んでるのもそれはそれで嬉しいなって……思った。

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

「どうだったどうだった!?ボク、凄かったでしょー!」

 

「…………ああ」

 

嬉しくてたまらないとでも言うようにスキップして俺の周りをチョロチョロ駆け回るテイオーがなんだか微笑ましく思えて、つい笑みを浮かべてしまう。

 

現在、トウカイテイオーはトゥインクルシリーズ最後のレースであり開催されて初となるURAファイナルズを一着という華々しい成績で終え、帰路についている真っ最中だった。

 

ボキボキ折れた俺の足もようやく治り、今は松葉杖とも晴れておさらばとなっている。

 

……本当にこの三年間、何事も起こらなくてよかった。

 

これからも俺はテイオーのトレーナーなんだ。こんな俺でも彼女が信じてくれるのなら、その支えとなろうと強く思った。

 

「ほらほら、早く行くよ!トレーナー!」

 

「……っ、とと」

 

感傷に浸る俺の手を彼女が引くのと、

 

空を裂くような音を立てて一台の車両が迫ったのは、ほぼ同時のことだった。

 

「危ないっ!」

 

「──────え?」

 

止まらない車体を認識した俺の体は考えるよりも早く渾身の力でテイオーを弾き飛ばしていた。

 

困惑しながら俺を見つめる彼女の表情が、グラつく視界によく映る。このままではテイオーは道路脇に転んでしまうだろう。ああごめんなちょっと力強かったよな。

 

衝撃。

 

そういえばさっきからやけに世界が遅い。俺だけ速くなってしまったのか?

 

学園に戻ったら何をするんだったっけ。これから色々忙しくなる。矢継ぎ早にやってくる取材を上手く捌いたりだとか、今日の夕飯を買いにいったりだとか。

 

視界がどうにも動かせない。宙に浮かぶんじゃテイオーを見てやれなくなってしまう。今は一月後半。まだまだ冬の冷気が厳しい季節だ。うん。やっぱりお前にはマフラーがよく似合ってる。そこそこに金をはたいた甲斐があるってもんだ。

 

テイオーにマフラーをあげたのはいつのことだったっけか。あれは確か────

 

「──────」

 

あれ?

 

空が見える。点滅を繰り返しながら────あ────そういうことか。

 

俺は轢かれたんだ。道理で耳鳴りがするわけだ。

 

彼女は無事だろうか。俺に突き飛ばされて怪我でもしてないだろうか。

 

「──、────、」

 

上で髪がゆらゆら揺れている。見慣れたものだ。そうか、よかった。お前は無事だったんだな。

 

どうしよう。こんな姿を見せては、きっと不安にさせてしまう。

 

心の底から安堵したけれど、どうしても彼女に心配をかけさせたくなくて、でもどうしても体は動いてくれなくて、何か安心させることを言わないとと思いながら、明減する空に手を伸ばして、震える喉を絞った。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

「危ないっ!」

 

「──────え?」

 

一緒にいるのが当たり前だと思ってた。これからもトレーナーはボクのトレーナーで、いつも通り変わらないんだろうなって、思ってて。

 

いきなり突き飛ばされて転びそうになってしまった。体幹はバッチリ鍛え上げてたのに、もの凄い力で。

 

「──────?」

 

顔を上げると冗談みたいに宙を舞っているあのヒトの姿が見えた。

 

なんで?

 

あのヒトが倒れた。なんで?だってトゥインクルシリーズ最後のレースも最高の勝ちだったし、あのヒトの体も完全復活してたし、今は学園に帰ってる最中。だから、帰らないといけないのに。

 

なんで?そこ車道だよ?ほら、今は横断歩道渡ってたんだから、そんな所にいちゃいけないよ?

 

ほら、立ってよ。

 

「トレー、ナー?」

 

ボクが駆け寄ってもトレーナーは動かない。目だけはぼんやり開かれてて焦点が定まっていない。

 

ちょっと押しただけで倒れるくらい脆くて弱いのに。なんで?どうして?

 

「…………なに?」

 

口元が震えている。なんとか聞かないといけない気がして、耳を近づけた。

 

「…………よ、か……っ、た」

 

よかった?何が?なんで何もこたえてくれないの?

 

周りの音がどんどん増えている。ボクたちは帰らなきゃいけないのにここから離れられない。

 

知らないヒトから声をかけられたけど今はちょっとお断りだ。だってこのヒトを起こして帰らないといけないから。

 

ちっとも働かない頭の中で疑問符だけがグルグル回る。

 

うるさく喚き立てる世界の中で、トレーナーだけが安心したように、笑っていた。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

あれから大変だった。話を聞いたところどうやら車の故障による事故だったらしく、俺の体にも後遺症は見受けられなかったので示談交渉も手早く済んだ。こちらとしても事を荒立てたくなかったからそこだけは助かった。

 

しばらくは退屈な入院生活を送ることになってしまい、その間はたまにテイオーが見舞いに来てくれたが精神的に傷を負っていないだろうかと内心ヒヤヒヤさせられた。

 

これがちょうどトゥインクルシリーズの終わり際でよかった。真っ只中にこんな事故があったらテイオーにどんな悪影響を及ぼすことか。……想像もしたくない。

 

「────あれ、トレーナー!?体──体は大丈夫なの!?」

 

「ああ。もうすっかり元通りだ」

 

久々に学園に戻ったが思っていたよりテイオーは平気そうだった。念の為たづなさんにも聞いてみたが学園内での様子は元気そのものらしい。

 

……本当によかった。

 

 

────────────────────

 

 

「ここ暑くない?クーラー下げてよー」

 

「いやいやこれ以上温度下げたら絶対風邪ひくって」

 

最近トレーナー室で仕事をしているとよくテイオーが顔を出しに来る。なんだか珍しい。いつも大抵誰かといるはずなのに。

 

「────あれ、トレーナーどこ行くの」

 

「ん?ああ、ちょっと飲み物買おうと思って」

 

「…………じゃあボクもついてくよ」

 

「へ?」

 

ついてくと言っても自販機はトレーナー室からすぐそこにある。わざわざ席を立つ程でもないのに。奢ってもらいたいのか?

 

「いや、自販機すぐそこにあるから────「ダメだよ」────っ、あ」

 

歩いているのに素早い速度で距離を詰められた。目線を下げたすぐそこに彼女の体がある。いつもとは様子が明らかに急変していた。

 

「ダメだよ……トレーナーは弱いんだから……だからボクがついて(まもら)ないと……」

 

彼女の指先が掴まれた二の腕にほんの少しだけ食い込む。僅かに痛むがそれよりも────

 

やっぱり、表面上では無事に見えても心の奥底では深い傷を負っていたんだ。

 

当然だ。目の前で一緒に歩んできたパートナーが轢かれてトラウマにならない方が珍しい。俺はバカだ。正真正銘の大バカもんだ。

 

「……そうだな。一緒に行こう」

 

「────うんっ!ほらほら、早く行こうトレーナー!」

 

もう二度と悲しませたくない。もう二度と、悲しませたくない。だから俺はこれからも彼女を支えよう。彼女がこれ以上傷つかないように、心も体も全て守りきれるように。

 

二度と離れてしまわないように、彼女の小さな手をしっかり握ってから、俺は部屋のドアを開けた。

 

 

















やめてください!!!!!!
人間の弱さを目の当たりにして「人はこんなに弱いんだから自分が護ってあげないと」ってなるウマ娘概念は人類の夢なんだ!!!!!!
どうしてわかってくれないんだ!!!!!!!!
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