下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話   作:散髪どっこいしょ野郎

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数ヶ月前から何度も書こうと試みてはその度に挫折し筆を折ってきた話です。

イブの夜に間に合わなかったし書いてる最中(これ冷静に考えておかしくね……?)って何度も我に返ったし投稿するか迷ったけどとにかく書きたかったので書きました(鋼の意思)




















紆余曲折あった後の元下心バキバキトレーナーとトウカイテイオーがその内に萌芽した湿度にやきもきしたりするけどいい加減めんどくさいからとっととうまだっちしろって話

終わった。

 

山場も過ぎて、困難も乗り越えて、いっぱい笑って、泣いて、それでも走って、それで……。

 

たくさん勝ってきたし、憧れの存在も超えてきた。本当に……嬉しかった。嬉しかったんだけど。

 

ここ最近どうにも気分が上がらない。

 

トレーナーは今のところまだボクのトレーナーだけど、他の子も担当しようか、なんて話も出てきているらしい。そんなまだボクが卒業する時期でもないのに。

 

というかボクは高等部に上がっても変わらずに走るって決めてるんだからトレーナーもそんな話に乗るわけ……ないよね?

 

や、でも、普通に考えてそれは当たり前だ。トレーナーがそういう仕事だってのはボクだって分かってる。トゥインクルシリーズと違ってボクに付きっきりになる必要も無いから他の子を受け持つ余裕だって出てくる。

 

……あのヒトがボクのトレーナーでなくなるのも別におかしい話じゃない。筈。

 

「…………」

 

「な、なんなんですの!?」

 

でもやっぱりなんか納得いかないから最近はマックイーンのほっぺたをモチモチして憂さ晴らししていた。

 

 

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「トレーナー、焼肉行こうよ。ほら、勝利祝いってことで」

 

「………………おし、行くか」

 

このヒトの目は相変わらず濁ってて奥がよく見えない。一瞬視線が泳いだのは多分財布の中身を気にしたんだと思う。

 

いつからこうなったんだっけ。初めて会った時はもっと、元気ハツラツ!──って感じだったのに。

 

それにしても、トレーナーはボクの頼み事を一切断ろうとしない。今だって唐突な誘いだったのに聞き返しもしてこない。一度くらい嫌がったっていいのに。

 

こうして寄りかかっていられる時間もいつか無くなる。……だから、今大切にしておかないと。

 

 

 

 

 

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「ん?どうしたの?」

 

「──────あ、いや、なんでもない」

 

待ち合わせ場所に八分前で合流してしまったが、そんなことよりも俺は彼女の姿に面食らっていた。

 

俺はファッションに疎いから詳しいことはよく分からないが──正直に言うと見惚れてしまった。

 

そしてとても──焼肉に行く服装だとは思えない。中等部……トゥインクルシリーズの頃に着ていたいつもの私服はどうしてしまったんだろう。

 

「あ、や……、いつもの、私服は?」

 

「……あー……あれ?いやぁ、せっかく久しぶりにお出かけするんだから、さ。たまにはこういうのもいいかなーって。やっぱり、変?」

 

「い、いや────」

 

そうだった。彼女が高等部に上がり、次のリーグに進んでからはあまり外出しなくなったんだ。しかしお互いに見慣れない姿ということもあり変にギクシャクしてしまう。

 

この着慣れていない様子から察するに、学友に見立ててもらったのだろう。とてもよく似合っている。しかし、

 

「焼肉行くん……だよ、な?」

 

「────あ」

 

匂い移りだとかを心配して声をかけたがどうやら彼女はすっかり失念していたらしい。

 

「……そうだった。────どうしよ」

 

「……よし、テイオー。今日は一日いっぱい付き合ってくれるか」

 

「………………え?」

 

そこで急遽予定を変更し、俺は今日一日をまるごと使って彼女に羽休めしてもらうことに決め込んだ。

 

……テイオーは、嫌じゃないだろうか。そこだけが心配だったが数秒後には快く返事をしてくれた。

 

 

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全くのノープランだったがまぁそれなりに楽しんでもらえた……と思う。いつもなら遊園地などだったところを背伸びして水族館にしたりだとか…………やっぱ嫌だったろうか。如何せん、俺は遊び慣れていない。こういう時どうすればいいか皆目見当もつかない。

 

「……」

 

「……」

 

日の暮れかかった川沿い?をふたりで散策する。いつもと比べて彼女の態度がやけにしんなりしているし、俺も俺でどうにも言葉が湧いてこない。

 

そろそろ腹もへってきたろうと思い声をかけようとして────

 

「あのさ。また今度、今度は──トレーナーの方から、誘ってくれない?今日はボクが付き合わせちゃったけど……トレーナーが、よかったらでいいから」

 

「……」

 

その言葉だけで一切の悩みが消え失せた。

 

安心した。今日は自分でも上手くいってない自覚があったが……それでもテイオーは「また」と言ってくれた。

 

「……ああ!」

 

無駄に威勢よく声を返す。そして────赤く染まった彼女の頬は、見えない振りをした。

 

 

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肉汁の跳ねる音が耳朶を打つ。

 

若干の押し問答はあったものの、「元々この予定で来たんだから」と言われて結局夕飯は焼肉になった。入店の際、『マジかこの男』みたいな視線を送られたことは言うまでもない。

 

なるべくスローペースを心がけたがそれでも胃にはよく溜まる。元はそこまで少食というわけでもなかったが、トレーナー生活を送るうちにすっかり萎んでしまったようだ。

 

「おいおい、俺そんなに食えないぞ」

 

「へーきへーき。……なんとかなるよ」

 

テイオーも大分食った筈なのに結構な量を追加注文された。散財する趣味も無いからカネのことは限度を越えなければどうとでもなるが、テーブルに積み上げられた肉はそうもいかない。頼んだ以上は一欠片も残さず喰らうのが礼儀というもの。

 

「そんな無理しなくてもボクが食べるよ。それに────今日はせっかくトレーナーの奢りなんだからじゃんじゃん頼んじゃうもんね!」

 

「────おっしゃ見てろよマジでお前以上に食ってやるからな……!」

 

とは言ったものの。

 

俺がそこまで食えるわけでもなく、テイオーが箸を進める速度もやけにゆっくりとしていた。

 

……まるで少しでもこの時間を引き延ばそうとしているかのように。

 

 

 

 

 

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あ〜……楽しかった。正直どこ行ったとか何をしたとか記憶はあんまり残ってないけど、それでもすごい満足して寮に帰ったのは覚えている。

 

そしてまた唐突に寂しくなった。寮に帰ればまたいつもの時間が戻ってくる。あの瞬間、トレーナーがボクだけを見ていた時間は次第に薄れて無くなってしまう。そう思うと無性にうずくまりたくなる。

 

あのヒトはあくまでトレーナーであって、『その日』が来てしまえば後はもう何にもならない。

 

そんな筈ないって考えようとしても時はジリジリ過ぎ去ってしまう。当たり前だと分かろうとしても分かりたくない。

 

だって、

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

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トレーナー室にこもって淡々と業務をこなしていると、どうしても新しい担当ウマ娘の話に気が向いてしまう。

 

そろそろ他の子をスカウトしてみてはどうか、と周囲のヒトに言われることが増えた。先輩だとか同僚だとかに。

 

勿論考えなくはなかったが今も俺はテイオーのトレーナーだ。最後まで集中して面倒を見たい。

 

……それに、最近の彼女は少し様子が変だ。以前のように悩みを聞いてやれるかどうかは分からない──俺は構わないが彼女がそれを打ち明けてくれるかが微妙なところだ──が、できるだけ……力になって……

 

なんて白々しい言葉だろうか。バカも休み休み言え。

 

俺は────俺が離れたくなかっただけだ。テイオーから目を離したくなかった。片時も。

 

力になりたいのは本当だ。だがそれは結局俺のエゴだ。彼女に傷ついてほしくない。その原因が俺になるかもしれないとは何故考えられない。

 

ただ俺は尽くしたがっているだけだ。トレーナーという体のいい役目に縋って自分のしたいようにしてるだけに過ぎない。

 

彼女の笑顔が見たい。彼女に笑っていてほしい。俺が望んでいるのは結局それだけだ。だって自分が傷つけてしまったから。

 

気持ち悪い。

 

そんな自分に心から嫌悪感を抱く。

 

どうせ俺はテイオーを想っているわけでもなんでもなくて、贖罪がしたいだけだ。

 

だから、

 

こんな俺がテイオーに好かれている筈がないんだ。

 

 

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つまらない映画だった。あくびを何度も噛み殺したぐらいには退屈で、面白味のない映画だった。

 

せっかくの休みだというのにテイオーには申し訳ないことをしてしまった。

 

珍しく休日が出来たので彼女を映画に誘ってみたのはいいが、こうまでつまらないと反応に困る。

 

テイオーは断らなかった。彼女のことだ。一緒に外出する友達なんて山ほどいるだろうに、速攻で了承された。だというのに俺はまたしても選択を間違った。

 

「……」

 

「……」

 

何か気の紛らすようなことでも言わないとと思い、並んで歩きながら思案していると──────

 

 

────────────────────

 

 

「は──つめたっ」

 

「っ……どうしたんだ、いきなり」

 

「何が」

 

「……………………お前の手は、あったかいな」

 

「でしょ」

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

トレーナーが暗くなったのはボクがケガしてからのことだった。

 

その時のボクは誰かを気遣える余裕なんてなくてあのヒトがボクに近づいた理由をはいそうですかと許せるわけもなくて走れるわけでもなかったから山ほど八つ当たりしてそれでもあのヒトはボクを見放そうとしなかったからだんだんわけが分からなくなってきて心の中をぐちゃぐちゃにされて色々考えてそうしてたらいつの間にか走れるようになってたけど夢は叶わなくなっていてあのヒトはその日から泣きも愚痴をこぼしもせずにボクの前では絶対に感情を崩さなくなって表情も常に朗らかだったから不気味に感じて距離をとろうともしてみたけどあのヒトは徹底的に尽くしてきたから都合のいい存在として利用しようともしてみたけどボクの方が辛くなってやめてしまってそれでもあのヒトは嫌がる素振りを見せなかったから自分があのヒトにしてきた仕打ちを思い出して耐えられなくなって何度もごめんねって謝ってあのヒトはその度に笑って許していたけどそれからもボクは度々つらくなってその度にトレーナーはボクを受け入れてくれたからやっとボクもあのヒトの気持ちに目を向けるようになってそれで、

 

トレーナーはボクのことが好きなんだなって分かった。

 

だからってわけじゃないけど────多分、ボクはトレーナーのことが好き……なんだと思う。

 

本音を言っちゃうと、

 

誰にも渡したくない。あのヒトにはボクだけを見ていて欲しい。

 

ボクがそう言えば多分あのヒトは拒まない。でも、トレーナーをまた困らせたくなかった。

 

だから……これはボクだけの思いってことで、しまっておこう。

 

それに十分幸せ……うん。幸せだったから、このままでいいんだ。……このままで。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

テイオーの夢を殺したのは俺だ。誰がなんと言おうと全て何もかも俺のせいじゃないといけない。

 

今では全くの支障なく走れているが、あの日にはもう帰れない。

 

三冠達成の夢は未来永劫叶わなくなった。だというのにテイオーは俺をトレーナーとして信じ続け、認めてくれた。なら応えないわけにはいかない。

 

そう思って今日まで歩いてきた。疲れを感じないわけではないが俺が彼女に与えた傷と比べればあまりにも小さすぎる。

 

罪悪感。

 

俺は罪悪感に駆られているから今もテイオーのトレーナーという役割にしがみついているのか。だとしたらクズ以外の何者でもない。

 

犯した罪の重さに耐えきれないから俺は献身を続けているのか?ふざけるのも大概にしろ。

 

「トレーナー?」

 

「……」

 

手を引かれ街路樹の並び立つ道を歩く。

 

この頃テイオーと外出する時間が増えた気がする。よりによって何故俺となのか。

 

分かってた。彼女がずっと俺に気づいてもらおうとしていたことなんて、ずっと前から分かりきってた。

 

認めたくなかった。自分のようなクズが、誰かにそんな感情を向けられるなんて。何かの()()()夢であってほしかった。

 

俺は今もテイオーを騙し、その思いに背を向けているのか。本当に……本当になんなんだ俺は。死ねばいいのに。死んでくれ。本当に。

 

「なあ、テイオー。俺さ──」

 

「──知ってる。それよりもほら、早く行こ」

 

「…………そうだな。行こう」

 

────。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

トレーナーは何も言わない。当たり前だ。自分の担当ウマ娘に「好き」と伝えるヒトなんてそうそういない。

 

ボクの方から言ってしまえばあのヒトは何も言わずにいつものように受け入れてくれると思う。でもそれはボクが頼まれたから応えただけで、あのヒトの気持ちは蔑ろにされたままだ。

 

そもそもトレーナーの『好き』がボクのそれと同じとは限らない。

 

そんなことばっかりグルグル考え続けて、時間だけが無駄に流れていく。

 

いや、別に何か変化が欲しいわけじゃない。今の関係が続くだけで、ボクは……十分……なんだよね。それで十分な……筈。

 

……トレーナーの担当ウマ娘は、ボクだけなのに。

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

 

担当ウマ娘をスカウトする気概も起こらないままトウカイテイオーのトレーナーとしての日々が過ぎ、気づけば早■年。卒業までは少し遠いが着実にその日は近づいていた。

 

俺もそろそろ本格的にテイオー以外の担当について考えなければならなくなった。

 

だが、

 

怖い。また誰かを俺のせいで追い込んでしまうのではと思って、どうしても後ろ向きな思考に辿り着いてしまう。

 

もうこれ以上誰かを苦しめたくなかった。俺はトレーナーになんて向いていなかったんだ。

 

そうか、なら、続ける意味も無い。

 

────辞めたら彼女の歩んだ軌跡はどうなる?

 

それだけじゃない。俺がトレーナーになるまで支えてくれたヒトたちの思いはどうなるんだ?

 

俺は歩み続けなければならない。どれだけ道を踏み外そうが、これからも彼女たちウマ娘を支えていかなければならない。トレーナーとはそういうものだ。中途半端に責任をとったつもりになるな。

 

────だから、

 

テイオーがいなくなった後も、俺はトレーナーで在り続けないと、いけない。

 

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

「あ、あの……」

 

「……」

 

マックイーンのほっぺたをむにむにしながら考える。

 

トレーナーは悩み事があるらしい。

 

上手く隠しているようだけどボクには分かってしまう。伊達に何年も一緒にいない。

 

だからトレーナーがそうしたように、ボクも真正面からぶつかることにする。あのヒトが悩んでるようなら、ボクがなんとかしないと。

 

……だってボクは、帝王様だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナーさ、最近なんか一人で悩んでるみたいだけど、どうしたの?」

 

「え?」

 

 

 

もう学園に残っている生徒も数える程しかいない時間帯、いきなり部屋(トレーナー室)に彼女がやってきた。

 

何事かと思いながら数分程無言の時間が流れたが、何かを決意したかのようにテイオーは話し出した。

 

 

 

「悩み、事?いや……特に」

 

 

 

やっぱりどれだけ経ってもこのヒトは嘘をつくのが下手だなあ。本当に……色々分かりやすい。

 

それからも粘り強く問い詰めて、やっとトレーナーは話し出してくれた。

 

 

 

「……次に担当するウマ娘について、考えてた」

 

 

 

何となく予想はついてた。このヒトのことだから変に気負って一人で悶々としていたのかもしれない。

 

 

 

「俺……また同じことを繰り返すと思うと怖くて、お前は知ってるかもしれないけど、俺は……!」

 

 

 

今まで誰にも言えなかった。こんなくだらない、バカバカしい悩みなんて誰に言うつもりも無かった。それが、一度切り出したら止まらなかった。

 

俺はバカで、どうしようもないクズ野郎で、無能で、だからお前を裏切って、壊して、それで、

 

 

 

「何度も直そうとしたんだけど……俺……やっぱりダメで……!」

 

 

 

今だってそうだ。みっともなく泣き喚いて、取り繕うこともできやしない。

 

 

 

「別に、直す必要なんてないよ。そんなところも含めて”キミ”なんだし、それに──」

 

 

 

彼女は全部知っていた。俺の下劣で浅ましかったところも、俺が罪悪感(自分自身)に押し潰されていたことも、全て。

 

 

 

「──ボクは、キミがトレーナーでよかったって、思ってるから」

 

「─────あ」

 

 

 

その一言で、完全に救われてしまった。

 

 

 

「そう、か。そうか。────よかった」

 

 

 

不格好な泣き笑いでトレーナーは呟いている。

 

この調子なら大丈夫だよね。もう……何も……未練なんて……

 

 

 

「トレーナーなら大丈夫だよ。他の子の担当になったって、普通にやっていけるって」

 

 

 

これでもう全部解決したんだ。トレーナーも吹っ切れて、ボクがいなくなったって、

 

 

 

「イヤだ」

 

「……テイオー?」

 

 

 

……あれ?なんでこんな、言おうとしてることも話せないんだろう。

 

 

 

「トレーナーがボクから離れるなんてイヤだ!トレーナーはボク、ボクの、ボクだけのトレーナーで、だから────誰にも渡したくないって、思って、だけど、それだと」

 

 

 

分かってた。テイオーが俺にどれだけ深く、重い感情を向けていたか、全部分かってた。それに応えてはいけないことも。

 

教え子にそんな感情を向けるのはおかしいのは分かってる。俺がおかしいのなんて分かりきってる。

 

それでも、俺は、

 

 

 

「大丈夫だ」

 

「ぁ…………」

 

 

 

お互いに顔がくしゃくしゃで、テイオーは前がよく見えていないようだった。その目からは大粒の涙がはらはらと流れ落ちている。

 

俺も泣き腫らした顔で、それでも笑って、

 

 

 

「これからもずっと、俺はお前だけのモノだ。絶対に離れないから。もう何があったって、ずっと」

 

「ぇ────あ、でも、ボク、ホントは」

 

 

 

分かってる。その”好意”がヒトより少し強いところも、俺には無い輝きを全て持っているところも、お前のいいところも悪いところも全部ひっくるめて──

 

 

 

「好きだ。テイオー」

 

「ぁ……あ……!」

 

 

 

ボクも、トレーナーの、キミの、不健康な目も、不器用な気遣いも、優しくしようとしないと優しくできないところも、そんなところも、何もかも、全部、

 

 

 

「────」

 

 

 

言葉だけじゃ伝えられないから、強く、解けないように強く、お互いの指を絡ませて繋ぐ。

 

何度視線を合わしても頬を伝う熱さしか感じられなくて。だからもっと強く、その背中に腕を回した。もう二度と彼女を悲しませないと固く誓って。

 

 

 

 

 

 

 

あったかい。

 

脆くても大きな両腕に、胸に、包まれて、守られて、温かさに満たされていく。

 

トレーナーはボクのことが好きで、ボクはトレーナーのことが大好きなんだ。

 

だからもう絶対に離さない。

 

ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずーっと、ボクだけを見ていてね。トレーナー。

 


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