下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話   作:散髪どっこいしょ野郎

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やりたい話が全て行き詰まってしまったためとりあえずツナギとして書いた話です

ひたすら重っ苦しいです














なんかもう(自分のことが大大大大大嫌いな)いろいろだめな話(33人目のトレーナー)

 

 

トレーナーがいなくなった。

 

トゥインクルシリーズが終わった少し後に、唐突に。これからもよろしくって、お互い言ってたハズなのに。

 

 

その日、ボクはいつもみたいにトレーニング場であのヒトを待ってた。

 

でもなかなか来なかったからボクは『あとでちょっとだけ文句でも言ってやろ』なんて考えながら一人先に走り始めて。

 

それからもあのヒトが来ることはなくて。

 

次の日、たづなさんからトレーナーがいなくなったことを知らされた。

 

 

理由なんてわからない。ボクが最後に見たトレーナーはいつもと変わらない様子だったし普通に笑ってすらいた。

 

だったらなんで。

 

何か悩み事を抱えて?

誰にも言えない特別なワケがあって?

 

……理由なんてボクが知るわけないけど、いつも一番近くにいたボクにも何も言ってくれなかったって事実がしばらくしてからも胸の奥で引っかかり続けてた。

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーがいなくなって三日が経った。相変わらず携帯にも学園の方にも連絡ナシ。

 

 

今日もあのヒトはいなかったけど、いろんな子と併走して結構充実した一日だった。

 

そう、そうだよ。

 

トレーナーがいなくたってボクは皇帝を超えた帝王だ。ワガハイは一人でだって最強の、無敵の帝王様なのだー!

 

 

 

 

………………やめよ。なんか虚しくなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

いなくなって四日経った。

 

 

トレーナーがいなくなったことが学園内でちょっとずつ広まり始めてるらしい。ボクといえばみんな意外と気づくんだなーなんて他人事みたいに考えてたけど。

 

そういえば、今までこんなに長い間あのヒトと話さなかったことなんてなかった。

 

確かにそうだ。あの三年間ボクはいつもトレーナーの言うことを聞いて走ってきたし、色んなレースで戦ってきた。二人でテーブルを囲んで頭を抱えながら作戦を練ったことだって一度や二度じゃない。

 

 

実は思ってたより寂しくならなかった。

 

ただ『なんで?』って気持ちばかりが強くて、明日になればふらっと帰ってくるんじゃないかって期待したりもしてる。

 

 

それより四日も無断で休んじゃってクビにはなんないのかな?

 

せっかく帰ってきたのにまたサヨナラ、なんてなっちゃったらボクもどんな反応すればいいのかわかんないよ。

 

 

 

 

 

 

 

いなくなって五日目。

 

 

なんかだんだんムカついてきた。

 

どっか行っちゃうならせめてボクにぐらいは報告してほしいよ。

 

だいたいこれからだって一緒に走ってくハズだったのにさぁ、勝手に一抜けするなんてホントに信じられない。

 

もうしばらくは許してあげないもんね!帰ってきたらいっぱいワガママ言ってやるし、ボクのやりたいことには全部付き合ってもらうんだ!そうでもしてもらわないと割に合わない。

 

 

 

 

────だから、このまま帰ってこないことなんて、ないよね?

 

 

 

 

噂が広まったことでいろんな子から心配されて、ボクはいつもみたいに明るい声と明るい口調で『大丈夫だよ』、『すぐに帰ってくるよ』なんて、誰かに言い訳するみたいに返した。

 

あのヒトが戻る保証なんてどこにもないのに。

 

……どうかな。ちゃんと……笑えてたかな?

 

 

 

 

 

 

 

六日目。

 

 

ボクがイヤになっちゃったのかな。

 

ボクのワガママにうんざりして、それで──

 

いやいや別にそこまであれこれ言ったことなんてないし。そもそもこれは完全にトレーナーが悪い。

 

こんなネガティブなことばっか考えるなんてボクらしくない。

 

……そう、思おうとしてるんだけど。

 

 

…………トレーナー。

 

ボク、初めの頃はトレーナーなんて誰でもいいって思ってた。誰にも負ける気がしなかったしカイチョーに勝つ気もなかった。

 

でもこれまでの三年間があって初めて、ボクのトレーナーはあのヒトしかいないって気づけたのに。

 

 

お願い。戻ってきてよ。ボク何も怒んないし何も聞かないからさ。

 

トレーナーがいなくなったらボク、どうやって走ればいいのかわかんないよ。

 

…………。

 

 

 

 

 

 

 

七日目。

 

 

トレーナーが帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間ぶりのトレセン学園だったが特にこれといって変わったようには見られなかった。

 

通常ならば二週間以上の無断欠勤で懲戒解雇らしいが、ウマ娘のトレーナーともなればたった一日でも大きな損失となり得る。

 

それが七日間ということで当然クビも覚悟していたが、現在は次のリーグに向けた準備期間だったことと受け持っているウマ娘が他にいなかったこと、重ねた功績によって解雇はなんとか免れた。……俺の功績ではないんだが。

 

その分給料は減らされたしこってり絞られた。トレーナーとしての信用もガクリと落ちたことだろうが、それはそこまで重要な問題じゃない。

 

ただ学園に戻ってくるにあたって担当ウマ娘(トウカイテイオー)に顔を合わせなければいけないことが待ち遠しいと同時に忌々しくもあった。

 

 

テイオーには何も聞かれなかった。色々思うことはあっただろうに、俺に気を遣ってくれたのか一週間ぶりの再会時以外は元気そうに振る舞っていて。

 

彼女のそんな気遣いが本当に鬱陶(うれ)しかった。

 

 

 

 

 

 

 

他人の噂も暫くすると風化してくるもので、時間が経つにつれて好奇心と猜疑心のこもった視線を向けられることも少なくなった。

 

今までと変わらない、いつも通りの日常。

 

テイオーの走りを見て、調整やトレーニングのことで頭を回して、寮に戻って眠る日々。

 

今までならそれだけでも手放しに幸福だと思えたことだろう。

 

しかしあの一週間を経てさえも、学園(ここ)にいると息苦しく感じて仕方なかった。

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこう、ウマ娘は皆して顔がいいんだろうか。

 

元々自分のみてくれには特にこだわり無かったが、こうも身近に美少女が揃っていると自分がハエにでもなったような気がする。

 

恐らくこれは俺の心境の変化によるものだ。少なくともトレーナーになりたての頃は学園の子たちを見てもそんな気分にはならなかった。

 

 

疲れる。

 

そこにいるだけでこんな疲労感を感じてるのだから、俺はとことんこの職業に向いてないようだ。

 

以前の自分の選択には呆れるばかりだがあの時の俺も間違いなく俺だ。

 

昔の自分を他人のように捉えて責任から逃れようとする浅はかさには本当に辟易する。まったく、俺という人間はどこまで情けないのか。

 

 

自分がそこにいるだけで周囲の空気を汚しているような気がしてならない。

 

吐く息、こぼれ落ちる皮膚片、抜け落ちる髪、連ねた言葉……

 

どれもこれもが神経に障る。どれだけ消毒しようが掃除しようが一向に満足できない。

 

周りは気にならないのか。テイオーは一度でも不快に思ったことはないのか。

 

そんな疑問を抱えても誰にも聞けない辺り俺は小心者だ。一丁前にプライドだけは高いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

今日も今日とてテイオーは素晴らしい走りを見せた。

 

彼女はトゥインクルシリーズが終わってからもなお成長を続けている。

 

対して俺はどうだ。ここまで生きてきて何かは得られたか。

 

そもそもこんな風に自分のことしか考えられない時点でヒトとして終わっている。

 

主役は彼女だ。俺じゃなく。

 

それとも、まだ自分に期待なんてしてるのか。

 

 

 

 

 

 

 

「はちみーはちみーはっちっみー♪」

 

 

彼女の上機嫌そうな声を聞いていると濁流のような感情に覆われる。

 

まずとても喜ばしく思うし、気分が和みもする。願わくばそのまま元気に走り続けてほしい。

 

 

「あしがーあしがーあっしっがー♪」

 

 

……そして、その声を力の限り歪めてみたいとも。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあこれが終わった後は適当に流しといてくれ」

 

「あ、うん。わかった」

 

 

残りのトレーニングメニューとその後クールダウンをすることを言いつけてから俺は場を後にした。

 

今日は風が気持ちいい日だった。蒸し暑くもなく肌寒くもなく外で運動をするには最適の日和だ。

 

そして俺はトレセン学園を出た。

 

 

 

 

 

 

 

まず商店街にでも行ってみようか。

 

何もしないというのも手持ち無沙汰なのでその場で買ったコロッケを囓りつつ適当に散策する。

 

 

ここに来る機会はさほど無かった。テイオーが行きたがる所はゲーセンだったりカラオケボックスだったりが多かった上、俺は基本部屋に籠もりっきりだったからだ。

 

そんな努力に意味は無かったというのに。

 

 

学園を抜け出して正解だった。

 

近頃はテイオーとの時間が苦痛でしかない。彼女が悪いわけじゃない。俺の性根がひん曲がってるだけだ。

 

俺はテイオーのトレーナーになれる器じゃないんだ。どうして誰も彼も言ってこないんだ?口に出さないだけで誰もが内心そう思ってるんじゃないのか?

 

 

いつからこんな風になってしまったんだろう。それさえ知れたらもっと上手くできるだろうか。無理だろうな。こんな奴には。

 

 

あの頃は何もかも上手くいっていた。だから俺も自分がトレーナーでいることを疑いもしてなかった。

 

レースにはさほど興味を持っていなかったがオブラートに包んで言うとウマ娘、とりわけトウカイテイオーのことが好きだったので激動の毎日も気楽に過ごせていた。

 

ターニングポイントとなったのが彼女の故障だ。

 

 

足の負傷で引退へと追い込まれる選手は多い。ウマ娘だけでなく他のスポーツ選手にも言えることだ。

 

手は尽くしたが再度の骨折、レースの欠場によって俺たちは次第に追い込まれていった。

 

世間からの(プレッシャー)、周囲の『自分はそうならなくてよかった』という安堵混じりの同情、変わらない現実。

 

俺はもうダメだと思った。このまま彼女は潰されていくんだろうと。

 

だから彼女が望むならどこまでも一緒に墜ちようと決意して。

 

いっそ二人して破落してしまえばいいと思っていた。でも違った。諦めていたのは俺だけだった。

 

テイオーは逆境の中でも諦めずに前を向き続け怪我を乗り越え──そしてとうとう、夢を掴み取ってみせた。

 

 

彼女は復活を遂げた。

 

自身を阻む運命さえも乗り越えて。その残骸に取り残されたのは俺一人だけだった。

 

俺は彼女のトレーナーなんかじゃなかった。

 

 

 

 

 

 

 

河川敷に辿り着くと辺りは赤みがかっていた。

 

ここに来るまで多くのヒトとすれ違った。無邪気な子供たちや、手を繋いで帰る親子たちと。

 

そうやって俺とテイオーも二人で歩いていくのかと決め込んでいたのだが、今考えると嘲るような気持ちしか湧いてこない。

 

自惚れにも程がある。担当を信じてやれなかった(バカ)がトレーナーだと?冗談も休み休み言え。

 

 

俺は、俺はただのバカだった。彼女たちのような情熱も無く、矜持も無く。

 

だけど彼女を見ていく内、蝉の鳴き声と朝霜の景色を繰り返す内に考えが自然と変わってきていた。だから変わろうとした。俺なりに、俺のできる限り。

 

俺は彼女を支えられるトレーナーになりたかった。だけどダメだった。最後の最後まで信じてやれなかったから。

 

俺は主人公になれなかった。

 

 

本当に愚かなことに俺はテイオーに対して劣等感を抱くようになっていった。そもそも対等だと思うこと自体が間違いだというのに。

 

彼女の輝きに当てられる度に嫉妬や愛情、羨望といった諸々が混ざり合ったドス黒い感情が心を支配していく。そうして少しずつ俺は腐っていった。

 

 

眩しかった。あまりにも。

 

 

それから彼女以外にも学園のウマ娘やトレーナーと比べて自分が如何に卑小で醜い存在かと捉えるようになってしまった。事実、俺のような動機でここに来た者はそういない。

 

 

半端者。

 

 

俺を表すのにこれ以上最適な言葉はない。

 

どちらに振り切ることもできず悪性と良心の間で気まぐれに揺れ続けた俺にはお似合いの称号だ。

 

 

身体能力も容姿も精神性も特技もセンスもプライドも俺がテイオーに勝る所は何一つ無い。

 

彼女の側にいるとどんどん自分が無価値だと思えてくる。

 

 

トウカイテイオー。彼女のことはここにいる誰よりも好きだし、誰よりも嫌いだ。

 

彼女を愛おしく思う反面、再起不能になるまで叩きのめしたい衝動にも襲われる。実行する気は毛ほども無いとはいえ。

 

分かってんだよ。俺のこんな思考がクズ以下のそれだってことぐらい。分かってるからもう嫌なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

俺は俺が思ってる以上に無価値で、そんな自分の命にも殊の外無頓着な人間だった。

 

別に自分が嫌いだからとかではなく、元より命を投げ出すことにこれといって抵抗感はなかった。だからトレーナーをやってこられたんだろうが、それもそろそろ限界が来たのかもしれない。

 

ハッキリ言ってここから“続ける“理由も無い。

 

だからもう。

 

 

 

 

 

 

 

『もしもしトレーナー?』

 

「ん、どうした?残りのメニューは言っといてあったろ?」

 

『とっくに終わらせちゃったよー!まったくもー、ボクを見くびんないでよね!』

 

「…………ハッ」

 

『もー!何笑ってんのさー!』

 

「くふッ……いや、なんか……お前が担当ウマ娘でよかったなって」

 

『え、あ…………そ、そんなこと言われたって誤魔化されないもんね!』

 

「フフッ……」

 

『…………あはは…………』

 

『…………………ねぇ、トレーナー』

 

『────今、何処にいるの?』

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

泣きじゃくる声が聞こえる。

 

何かを訴える声が聞こえる。

 

俺の大好きで大嫌いな子が、俺の腕の中で震えている。

 

 

そこまで確かな意思があったわけじゃなかった。

 

ただフラフラと動き出した体を止めようとしなかっただけで。

 

彼女から電話が来た時は素直に嬉しいと思ったから、向こうが切るまではこちらも話していようと思った。そしてとうとう通話が途切れることは無かった。

 

 

 

 

なあずっと聞きたかったんだが。

 

何でお前は俺を必要としているんだ?

 

分かるわけがない。聞けるわけがない。

 

誰かを引き留める(こんな)状況は初めてなのだろう。どもりながらつっかえながらもテイオーは俺にしがみついて離さない。痛々しいくらい必死に。

 

とりあえず落ち着かせようと思考を張り巡らせた結果、自然と右手は彼女の頭を撫でていた。

 

思えば俺からテイオーに触れるのはこれが初めてだった。

 

 

視線を落とすと──いつの間にか転がっていた──携帯端末の画面が確認できる。

 

通話中のままになったそれは、まるで何かを繋ぎとめているかのようで。

 

 

『────』

 

「………………」

 

 

サラサラとした髪の感触に、どこが場違いな落ち着きすら感じる。できることならこのまま────

 

 

 

 

 

 

 

と、

 

 

 

 

 

 

 

一瞬でも思った自分自身を、

心の底から軽蔑した。

 

 

 

 

 









































もう今は残っていないのですが去年活動報告の方で

『各話のトレーナーたちが反省会する話が見たい』

という趣旨のコメントをいただきまして、元は13話の後書きに書く予定だったのですがその時の私は本文だけで力尽きてしまい載っけられませんでした。

というわけでモチベがあったら書こうかな、なんて今頃になって思ったのですが


(主人公たちが判別つかないため)台本形式

会話のみ

メタネタ

人数が多すぎるので1~20話まで


という感じでこれまでの話とは結構異なってくるためアンケートをとらせていただくこととしました。

よかったらお願いしますっス……

主人公たちの反省会

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