下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話   作:散髪どっこいしょ野郎

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33話(なんかもう(自分のことが大大大大大嫌いな)いろいろだめな話(33人目のトレーナー))の続き的な何かです

ひたすら陰鬱としていて救いがありません

























壊死する(なんかもういろいろだめなエピローグ的)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が、嫌いだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんな。

 

許してもらおうなんて思わない。願わくば俺を憎んで欲しかった。

 

 

「え…………なんで………………」

 

 

まあ分かっていた。

 

彼女ならそう反応するだろうと、手に取るように分かっていた。

 

 

「なんで……………なんでだよぉっ………」

 

 

尚も黙りこくる俺に投げかけられる嗚咽混じりの問いかけ。稚児のようにぐずりながらなんでなんでと腕を動かす、彼女から俺に送られた衝撃。

 

それはあまりにも弱々しく優しいもので。俺の胸を締め付けるには十分すぎる程に痛々しかった。

 

 

「……」

 

「………………トレーナー?」

 

 

再度置かれた手に何を期待したのか。微かに光を灯した目でテイオーは俺を見る。

 

だが俺が言ってやれるのはこれだけなんだ。

 

 

「…………ごめんな」

 

 

まず浮かんだのは疑問符だった。

 

何故テイオーは俺から離れようとしないのか、そして何故俺の声はここまで平坦なのか。

 

 

「ごめんな。テイオー」

 

 

何故か止まない謝罪。いつの間にか彼女の姿はこんな至近距離にいながら判別もつかなくなっていた。この両目は痛いぐらいに乾いているのにも関わらず、だ。

 

はたして俺は泣いているのか。

 

それだけを疑問に抱えながら声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スキンシップは好きじゃない。

 

誰かに触れるという行為、それ自体が俺の下劣さを映し出すように感じて。

 

例えば、手に泥が付けば誰もが洗い流すことだろう。しかし日常生活を送る中で目に見えない細菌やウイルスが付着しようと誰も気に留めない。それに気づいている当人以外は。

 

汚してしまった。

 

俺から他者へ触れること。それはつまりそういうことだ。病気とかバイ菌とかの話じゃない。()が触れてしまったことがそもそもの問題なんだ。

 

分かっていながら望んでしまうなんて、ほら。

 

やっぱり俺は汚いじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「っ、ん……」

 

 

それは気紛れだったのか。

 

不意に伸びた腕。指に従い梳かれていく髪。

 

辺りに音は無し。牢獄のようにも思えるトレーナー室の中で看守(かのじょ)は撫でられている。

 

目を伏せ、ただその感覚だけに意識を沈み込ませていく「俺」に『俺』は冷めた視線を送った。

 

吐き気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ何をやっているんだ俺は何度同じ過ちを繰り返せば成長するんだ、とっくに学生の身分は終わったんだぞ。

 

またやってしまった。

 

俺は彼女に同じ場所まで墜ちてほしいのか。だったらそれは愚行以外の何物でもない。

 

 

トウカイテイオーが俺のようになることは無い。

俺は主人公になれないんだから。

 

 

あの三年間で何度も思い知らされただろう。思わず昔の自分にこの等号式を突きつけてやりたくなる。こんな至極当然単純明快な答えに辿り着くまで半生もかけてしまうなんて、どんな冗談だ。

 

 

触れていく程に多幸感と充足感と吐き気と嫌悪感と罪悪感と愛おしさが俺を満たしていく。

 

そしてその度に思う。

彼女を壊してしまえたらと。

 

そんなことは不可能だ。俺の良心がある限りまず実行には移せない。上に、彼女は俺如きが冒せるような存在じゃない。

 

 

だから俺はまたしても彼女を穢している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あのさっ」

 

「?」

 

 

この忌まわしい時間が『いつも』になってしまった頃。彼女は機嫌を伺うかのようにおずおずと言葉を紡ぎ出した。

 

 

「えーと……そのぉ……ぼ、ボクたくさん頑張るからさっ!だから……トレーナーも……えぇっと……あ、いやいや、やっぱ何でもないよ。……うん、気にしないで、全然!」

 

 

ああ、ああ。

 

俺は本当にグズでカスで……本当にどうしようもない奴だな。

 

彼女をこんな困らせて。なあ、彼女は今なんて言った?

 

ボクもたくさん頑張るから?何を言うのか。お前はいつどんな時も頑張ってきただろ。俺なんかの努力とは全くもって釣り合わないぐらいに。

 

 

俺に今まで努力してきたことなんてあるのか?

 

 

あの快活なテイオーにここまで気を遣わせてしまっている時点でまず足を引っ張っていることには違いない。なあ、こんな状況を招いた俺の仕事に、今までに意味はあったのか?

 

頑張れ。頑張れよ。俺は役立たずなんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

年に四度のみ開催される、ウマ娘にとってもトレーナーにとっても重要な『選抜レース』。

 

まだ早いかもしれないがテイオーが次のリーグに進むとなれば俺が面倒を見る機会も少なくなっていく。完全に無くなるとは言い切れないもののトレーナーをやっていく以上新たな担当は見つけておかなければならない。

 

早い話がスカウトだ。

 

そして俺は選抜レースが行われる会場にやってきた。筈だった。

 

 

「…………」

 

 

続々と観客席へ向かうトレーナーたちを眺めながら(こいつ)は直立不動のまま動こうとしない。

 

 

「…………、…………」

 

 

心臓がやけに忙しない。あまりにも鬱陶しくて叫びだしてしまいそうなのに、頑として動かない体がなんだかアンバランスだ。

 

 

「……は、ぁっ、ハァっ、ハァッ……!」

 

 

動悸は落ち着くどころか悪化するばかり。たまらず跪いた俺を心配してくれる周りのヒトたちの声も、今は嘲りにしか感じなくて。

 

 

 

 

 

……いつから俺はこんなに頑張れなくなってしまったんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねね、次の休み一緒にゲーセン行かない?」

 

 

いつまでも調子を落としている俺に痺れを切らしたのか、持ちかけられた突然の誘い。

 

きっと彼女は100%善意で誘ってくれたに違いない。だのにああだのこうだの邪推してしまう俺はやはりひねくれ者だ。

 

本音を言うと気分が乗らない。遊ぶどころか出かける気にもなれない。結局あの日選抜レースは見られずに帰ってしまった。

 

それからというもの無気力な状態が続いている。何をするにもやる気になれず、毎日の仕事だけで精一杯。

 

そんな中でも彼女がわざわざ元気づけようとしてくれているというのに俺は行きたくないだなんて考えているのか。どこまでも自分のことしか頭にないんだな。

 

トレーナーとしても人間としても落第生。せめてその優しさぐらいには報いたらどうなんだ。

 

 

「分かった。行こう」

 

 

そこまで考えてから約束を取り付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ことゲームにおいて──というよりもありとあらゆる分野において俺が彼女を上回るものは無い。

 

今回もそうだ。俺が勝てるわけがないと思っていたのだが、変に気を働かせたのか彼女が選んだものは勝敗のつかないものが多かった。

 

しかしプレイスキルの差ばかりは誤魔化せるものでなく、俺にセンスが無いという事実はどうしたって変わらなかった。

 

そもそもゲームは楽しむのが大前提……でもないか?少なくともこんなことばかり考えている俺にはやはり向いていないのだろう。

 

そんな雑考に浸り無機質に体を動かす俺をチラチラと見てくる彼女がなんだかいたたまれなく、妙な気まずさと罪悪感を孕んだ空気がゲームセンター特有の煩音と相まって余計に息苦しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

次に行ったのはカラオケだった。

 

 

大して楽しめたわけでもないのに俺は愛想笑いと歌唱を止めなかった。それが誘ってもらったことに対するせめてもの務めとでも思ったのか。

 

ああしかしそれにしても────

 

テイオーと比べて俺の声のなんて貧相なことか。

 

上手くもなく、さりとて場を湧かせられる程音痴なわけでもない。本当につまらない男だな俺は。

 

彼女は盛り上げようとしてくれているのが目に見えてつらかった。こういった学生のノリは今までだったら普通に受け入れられていたどころか、楽しいとすら感じていたのに。できることならその場で謝りたかった。

 

謝る?どうやって。

 

折角誘ってくれたのに楽しめなくてごめん、とでも言うのか?それはただの自己満足だろうが。

 

 

彼女はこの一日中色々と気を揉んでくれたというのに、俺はその優しさを反故にしたばかりか自己嫌悪に浸っているだけ。

 

俺は彼女と違って友人もいないのに。こんなことで独占していいわけがないんだ。

 

畜生。

 

畜生畜生畜生畜生、畜生────。

 

うんざりだ。

 

何度自分に失望しようと劣等感は消えない。

 

彼女への劣等感が消えてくれない。

 

ゲームだろうが歌だろうが、どんな小さなことでも嫉妬心は逆巻き続ける。(おまえ)は彼女のようになれやしない、(おまえ)は彼女のトレーナーなんかじゃないとその度に毒づいて。

 

いい加減にしてくれ。しつこいんだよ。

 

もういいだろ、もう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は主に筋力を鍛えていく方針にした。

 

まずは軽い筋トレから始め、それからダンベルスクワット、デッドリフトと徐々に負荷を上げながら体を慣らしていく。今日のメニューは大体そんなところだ。

 

 

「ふんぬぅううう~~…………!」

 

「…………」

 

 

必死にトレーニングをこなすテイオーを見ていると少しだけ頬が緩む……ような気がする。彼女が全力で取り組んでいることは分かっているが、やはりどことなく微笑ましい気持ちにさせられる──そんな愛嬌があるというか。

 

高等部に上がりますますファンも増え、テイオーは確かな存在感を放つようになった。

 

小さな体、幼い顔つきでありながら観客に『かっこいい』と思わせる、絶対的な走り。

 

──そしてあまりにも多くの心を掴んだ復活劇。

 

元々の人誑しじみた性も相乗効果となり今や『王子様』的人気も確立され始めている。しかしそれでも尚残る子供らしさも、きっと彼女の魅力なのだろう。

 

 

「ふー……っ、よし……何セットだっけ……?とにかく終わり終わり~……」

 

「よくやったな。それじゃ一旦休んでくれ」

 

「キツかった~……」

 

 

一時期は瓦割りなども行っていたが、拳を痛めるリスクがあるということで現在は学園内のジム施設を使用している。あそこまでハードな練習は体が出来上がっていた時期ならまだしもこのオフシーズンにはさせられない。

 

……なんだか感慨深い。

 

出逢った当初は無理矢理背伸びをして体中を痛めていた彼女が、このウェイトトレーニングもすんなりこなせるようになって。

 

本当に、お前は、

 

 

「……成長したな……」

 

「ん?なに?」

 

「いや……なんでもない」

 

 

本当にテイオーは強くなった。いや、彼女は最初から強かった。俺が隣に立つ前からも。

 

テイオーのことだ。俺がいなかったとしてもきっと自分を伸ばし続けて夢を掴んでいただろう。

 

だって彼女は俺と違うから。

 

 

「よし、休憩終わり!次はどうするの?」

 

「…………」

 

 

なんで俺がトウカイテイオーのトレーナーなんだ?

 

そも、そも。

 

あの怪我は俺じゃなければ予測できたんじゃないか?俺がいなければ、

 

 

「おーい、聞いてるー?」

 

「…………」

 

 

トウカイテイオー。

 

彼女は俺の担当ウマ娘だ。

 

俺よりも歌が上手くて、顔がよくて、身体能力が優れてて、人気があって、友達がいて、誰にも負けない強さがあって、『キラキラ』していて、

 

 

「……トレーナー?」

 

「────、」

 

 

選抜レースの日から、ずっと、せめて、トレーナーの仕事くらいはと、空元気を押し通してきた。けど、

 

やっぱり俺は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ?え、急にどうしたの……?」

 

 

笑う。

 

 

「トレーナー……?ホントになんかヘンだよ。

 ねえっ」

 

 

笑う。

 

 

「ちょっ……!だ、大丈夫!?ね、ねえ!トレーナー!トレーナーったら!」

 

 

彼女の声も遮って狂ったように笑っている。

 

次第に人目が集まってきても笑い声は止められず。それでも彼女は離れようとしない。

 

大声を上げて笑った。随分と久々に涙が流れた。

 

潰してやろうと握りしめたのは自分の肩。その上から覆うように柔らかな感触とほのかな湿り気が包み込む。止まろうとしない涙とこんな現実がおかしくっておかしくて、嘆く声は喜色を帯びた。

 

彼女の腕に抱かれながら、何もできない役立たずのゴミは笑っていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の日のこと。

 

トレーニング場の端に座って彼女の走りを見ていた。アドバイスを出すわけでもなければノートを取り出すわけでもなく。

 

ただ彼女の走りを見ていた。

何もせずに、ずっと。

 

 

然るべき医療機関で診断を受けるべきだ、という声をチラホラ寄せられたし俺自身もそう思う。

 

なのにどうせ行っても無駄だ、怠け癖の無能との烙印を押されて帰ってくるだけだという根拠の無い諦念がグルグルと巡回するばかりで、体はこれっぽっちも動いてはくれなかった。実際無能なことに変わりはないのに。

 

 

見かねた同僚が今度無理矢理にでも連れて行くと約束してくれたが、はたしてそれからどうなることだろう。実家に帰されるならそれでもいい。どうせ俺にはやりたいことなどないし、今更見出せる気もしない。

 

一つ心残りがあるとするなら最後まで彼女を見届けてやれないことくらいか。

 

 

テイオー。

 

お前は本当にすごいウマ娘だよ。

 

才能もあって、努力もできて、俺に無いものを何もかも持っていて。お前にしかない輝きもたくさんある。

 

だから、

 

俺がいなくたって変わらないだろう。なんでこんな(やつ)を切り捨ててくれないんだよ。

 

どうしてお前は、俺を。

 

 

「トレーナー?終わったよー……?」

 

「────」

 

「わ……っ」

 

 

常識的に考えて指導する立場の人間が年頃の少女に触れるなんて言語道断。ましてや男性トレーナーが担当ウマ娘に対して日常的なスキンシップを図るなど、いつ問題にされてもおかしくない行為だ。事実として周りの生徒たちからは僅かに距離を置かれ始めている。

 

だがもういい。考えるのも億劫だ。どうせ俺はクズのまま変われなかったんだから。

 

自分でも何故こんなことをしているのかあまり分かっていない。ただくすぐったそうに目を細める彼女が愛らしいな、とだけ思う。

 

彼女の心が俺に向けられることはない。それでよかった。もし惚れられでもしていたら、俺はきっと自分を抑えられなくなっていた。

 

内に燻る衝動を癒す術など無い。俺はこのままトレーナーを演じて戯れに彼女を撫でて、腐りながら惨めに終わりを待ち続けることだろう。

 

 

 

 

なあ、テイオー。

 

俺がトレーナーでいる意味はあるのか?

 

結局走るのはお前なんだ。

 

俺がお前のトレーナーでなければならない理由がどこにある?

 

 

 

 

そんな問いすらこぼせずに撫でているだけの俺。

 

目の前には誰よりも輝く少女の姿。

 

右手に残されたものは小さな温もり。

 

 

俺は彼女を見ていた。

 

ただ見ていた。

 

 

 

 

 

 







































今は嘲りにしか感じなくて→全然そんなことはない

……いつから俺はこんなに頑張れなくなってしまったんだろうか→普通にめちゃくちゃ頑張ってる

いつまでも調子を落としている俺に痺れを切らしたのか→単にめっちゃ心配されてるだけ

俺はテイオーと違って友人もいないのに→視野が狭くなってるから気づけてないだけで普通に大人になってからも気にかけてくれるぐらいの奴はいる

事実として周りの生徒たちからは僅かに距離を置かれ始めている→二人だけにしてあげようと気を遣われてるだけ


Q:なんで直接嫌いって言われてるのにテイオーは一緒に出かけようとしてるの?

嫌いって言っておきながらめっちゃ撫でてきたら『あれって嘘なんじゃ……何か他に悩みがあるんじゃ……』って思うかなーって……

Q:テイオーは主人公のことをどう思ってるの?

分からないし決めてないけど少なくともトレーナーのことを汚いとは全く思ってない




こっからネイチャに出会う展開も一瞬考えたのですが年齢を初めいろんな設定が狂いまくる上にそういう修羅場的な話は書ける気がしなかったので空中分解しました



♢この話の目的は……?

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