下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話 作:散髪どっこいしょ野郎
俺は今、ものすごい浮き立っている。
それもその筈、俺はやっと、とうとう、ついに担当ウマ娘のスカウトに成功しそうなのだ。しかもその子は漆黒の長髪が綺麗なウマ娘。
ここまで来たら退くわけにはいかない。これから彼女の走りをとことんまで研究し尽くしてやる。
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”やめておいたほうがいい”
”あのトレーナーはなんか変”
何故か分からないけれど私の”お友だち”と”彼ら”はあのトレーナーさんのことを快く思っていないらしい。彼にスカウトされてからやけにそんな声を聞く。
……でもあのヒトは、私の言うことを否定もせず、恐れもせず……笑って受け止めていた。それどころか……、
……まだ話しただけ。
でも、もしかしたらあのヒトは私を──なんて考えている私がいる。
未だにスカウトの件を考えているのを見透かされたのか、お友だちが鼻を鳴らす音が聞こえたような気がした。
▫▫▫▫▫
なんだか最近妙なことが立て続けに起こる。
例の俺がスカウトしている真っ最中の子を見る度にどっかから妨害されたり、時にはパイプベンチが降ってきたりする。
かと思えば俺があの子の走りを研究している間は特に何も起きなかったり、何が何だか分からない。
そういや例のウマ娘は見えないお友だちがどうとか言ってたな……。
ってなると幽霊系のもんなのか?俺はそういうの全く分かんないが。
そうと決まれば話は早い。俺も霊感を強くすれば彼女のことをもっと理解して更に仲を進展させることができる筈だ。
というわけで俺は早速ビデオショップに向かった。
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渋々ながら、本当に口惜しそうでありながらもお友だちは私が彼の担当ウマ娘になることに賛成してくれた。
私のレースを見る目は確かに本物だった。と言われたものの正直どういう意味なのか私は分からなかった。
他にスカウトしてくるヒトもいなかったので数日真剣に考えた上で彼の元へ向うと────
「…………トレーナー、さん……一体、何、が…………何を……」
「へ?いやぁよく分かんないんだけど昨日から寒気が止まんないんだよなぁ……。やっぱ顔色悪いか?」
そうじゃない。そんなレベルではない程に、トレーナーさんの具合は深刻だった。
日が完全に登りきった時間帯にも関わらず彼一人のトレーナー室は薄暗く、胃が重くなるような湿り気を帯びた空気で満ちている。
それに加えてトレーナーさんの体にはおびただしい量の”よくないもの”が纏わりついていて、私があと一日遅れていたらどうしようもなくなっていた。
とにかく急いで契約を結び、その日一日はよくないものを振り払うのに全力を尽くした。
……私のせいで、このヒトはこんなにたくさんのものを受けてしまったのだろうか。もしそうだとしたら、これは……私の責任。
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なんだかよく分っかんないがとにかく俺は件のウマ娘、『マンハッタンカフェ』と晴れて契約することに成功した。
マジでずっと気分が上がりっぱなしだった。寮の自室に戻ってからも高揚感が抜けきらず、
「〜〜♪〜〜〜〜♪」
鼻歌うまぴょいしながら夕飯の準備に取りかかる。といってもコンビニで買ってきたもんをテーブルに並べるだけの作業だが。
今日は奮発して高い方の鯖缶まで買ってきた。まだまだこれからなのは分かっているがちょっとぐらい祝ったって罰は当たんないだろう。
「あれ?」
並べていたおにぎりやらサンドイッチやらがいつの間にか床に転がっている。どっかぶつけた?
拾い上げようとすると部屋の電気が点滅しだした。もう寿命なのか?
「…………」
面倒なことになった。明日にでも変えの──いや、とりあえず今は飯だ飯。
今度はトイレのドアが勢いよく開きやがった。ここは天下の中央だってのにいくらなんでも作りが────部屋のインターホンが鳴った。
「はーい」
返事をしながら出口に近づ、まさか。
これはあれか?マンハッタンカフェの言っていた”霊障”ってやつなのか?
となると俺の作戦は見事成功したってことだ。ホラー映画しかり心霊映像しかり霊感を鍛える為に恐怖モノを見続けた成果が出たってことだ。
となると今俺の部屋の前でインターホン鳴らしまくってるのも幽霊の類のもの、ここはトレセン学園、つまり────
────上手くいけばウマ娘の幽霊とくんずほぐれつできるってことだ!
俺は勢いよく扉をあけ
……レー……さ……
どっかから声が聞こえる。なんだかやけに心配したような声だ。
……ト……ナ……さ……
そういやどうなったんだっけか。そもそもまだ飯食ってない。
……トレーナー……さん……!
というか寒い。いい加減風呂にでも入って、
「トレーナーさん……!」
「………………ぁれ?」
目を開けたら辺りには夜の帳が降りていた。それどころか、
俺は野外にいた。
三女神像の前、大きな噴水の横で俺は寝ていた。
「よかった……何だか胸騒ぎがして……飛び出してきたらあなたがここにいたもので……」
俺を起こしたのはマンハッタンカフェだった。何が何だか覚えてるわけないが、俺は自室からここまで来ていたらしい。…………あれ……?俺部屋で何してたんだっけ……?
いやいやそれより、そんなことよりも、
俺は彼女に抱えられている。もうそれだけで心臓が爆発寸前だった。
状況がまるで飲み込めないが正直なところめちゃくちゃ満足だった。そんなことを考えていると何処かから
▫▫▫▫▫
あのヒトはとんでもないことをしていた。
私と同じものを見る為に色々なモノ──恐怖系から怪談話といったありとあらゆるものまで──を見て、”あの子”が寄ってくるどころか、自分から呼び寄せていた。竜巻の中に体一つで飛び込むような行為。
注意をしたら素直に反省してくれたのが幸いだった。とはいえ、彼を一人野放しにしておくのは……危険すぎると思う。
二人を会わせてしまったのが失敗だった。タキオンさんは彼に躊躇うことなく薬を飲ませ、あのヒトもそれを易々と受け入れていた。
それだけではなく、私と違って見えていないのもあるけれどあのヒトは何故か悪いものが多い場所にふらふらと行ってしまう傾向がある。あのヒトは私の身の回りにいる”彼ら”や”お友だち”からは嫌われていても、”あの子たち”からは好かれてしまっていた。
トレーナーさんは私を理解しようと歩み寄り続けてくれている。だからこそ、私が見守っていないといけない。
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「わぁ……トレーナーさん……琥珀玉です……」
「…………?」
彼女がコーヒーを淹れているところを見ていると不意にそんなことを言われた。俺はどちらかというと嬉しそうに小さく微笑んでいるカフェに目が行きそうだったが、視線がドリッパーの方に固定されて動かせない。
俺はまだまだ彼女について知らないことが多すぎる。そう思って彼女の趣味や嗜好をなるべく知られるように取り組んだ……のはいいものの、
琥珀玉ってなんなんだ。またカフェについて調べることが増えた。
コーヒーと……あとアグネスタキオンから聞いた話では登山が好きらしい。
アグネスタキオンからは時々実験?をされることがあり、大抵なんらかの薬を飲まされる。
カフェからはやめておいたほうがいいと強く言われてしまったが今のところ体に異常はなく、寧ろ調子がいいくらいだ。
俺が初めて飲んだのは『肩こりが治る代わりに首筋が痒くなる薬』だった。正直助かったのでこれからもよかったら飲ませてくれと頼んだらアグネスタキオンはなんか変な笑顔を浮かべていた。
そして今日貰ったのは『右腕に黒い蛇のような模様ができて左親指が重くなる薬』だった。飲むまで効果は分からないから全く役立たないものを掴まされることもあるが……そこはまあしょうがないんだろう。
一方カフェはとても静かなウマ娘で、近くにいるととても落ち着く。たまにどっかから視線を感じることもあるがそんなのは些細なことだ。
それからは彼女に分けてもらったコーヒーを二人でちびちび飲みながら休憩時間を送った。俺の体は豆の香りとなんともいえない満足感に満たされていた。
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あのヒトと歩むようになって様々なことに気がついた。彼は不思議なヒトで、私を知る為ならどんな手間も惜しまない。かと思えばこちらが傍に寄った──私は影だから、彼に気づいてもらえないこともあるため──だけで耳を真っ赤にしている時もあった。
よかったらと思い珈琲を差し入れしたところあのヒトは大袈裟なくらいに喜んでいた。気に入ってもらえたようだったのが少し嬉しい。ユキノさん以外の誰かに飲んでもらうことなんて中々無かったから。
お友だちは相変わらずトレーナーさんを怪しんでいる……?ようだったけれど、トレーナーさんはお友だちの存在を疑うどころか何をされても受け入れていた。我慢というわけではなく、不快とは微塵とも感じていないように。
私のトレーナーになってから身の回りで起こる不審な出来事も一度や二度では済まなくなっている筈なのに、あのヒトは寧ろ楽しんでいる節すらあった。それが私の”世界”を無条件で認めてくれているようでなんともなしに安心できた。
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色々と前途多難ではあったものの俺は概ね満足していた。たまに彼女が淹れてくれるようになったコーヒーは美味いし、何より彼女が走る姿を見られているだけでめちゃくちゃ幸せだった。どつかれる頻度は増えたが。
にしても中々疲れが取れない。やっぱ中央勤務って大変なんだなぁと身に染みて分からされた。
つっても多少疲れた程度どうにだってなる。俺は働き盛りの年だし、ちょっと仕事が大変だろうがモチベーションは常に最高。こっからもバリバリトレーナー生活やってってやる。
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トレーナーさんはいつも私を見ていた。何があってもそこだけは変わらなかった。
トレーナーとしての彼は頼りがいのあるヒトだった。失敗することはあっても私が求めた大抵のことは何があっても応え、私が突き当たった障壁は何があっても一緒に乗り越えようと支え続けてくれていた。
なのに少しでも目を離せばまた一人で危険な所へ行ってしまう。まるであの子たちが彼を求めているようだった。
……あのヒトは、良いものも悪いものも全て受け入れてしまう。
タキオンさんの実験も、あの子の呼びかけも、私の趣味も、言葉も、何もかも。境界なんて初めから無かったかのように。
だから私が──彼を守る。彼が私にそうしてくれたように。
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「ハーっ、ひーっ……」
「……大丈夫ですか……」
「は、は、こんなの、ぜんぜんへいきに、ぜえっ、きまって、るって」
俺は『山』を侮っていた。完全に、
俺が興味を持ち始めたのを察してか、カフェが休みによかったらと誘ってくれた山登り。
完全な初心者の俺に合わせて比較的簡単な所を選んでくれたにも関わらずこの体たらく。トレーナー業にかまけて運動を疎かにした結果がこれだ。
ああもう不甲斐ないやら情けないやらでいっぱいだ。それでも一歩踏み出そうとして、
「……あれ?」
耳元で呆れたようなため息が聞こえたかと思えば急に体が軽くなった。まるで誰かが支えてくれているみたいだ。
カフェの方を見ると目をまん丸にして驚いていた。そんな彼女を見てなんだか朗らかな気持ちになっていると頭を軽くはたかれた。
山頂に辿り着いた後は彼女が予め淹れてくれたコーヒーを二人で飲み、俺が持ってきたインスタントラーメンを二人で啜った。休日ということで年配の人も多く、とても穏やかな時間を過ごせた。
………………………………あれ?
▫▫▫▫▫
「……、……!」
廊下を歩いていると思わず小走りになってしまう。授業を受けている間や誰かとの用事がある場合、あのヒトの傍にはついていられない。いつの間にかあのヒトを一人きりにしていると気が気でなくなってしまった。
階段を上がって、角を曲がって、もうすぐ──
「────、──」
「────」
入ろうとしたトレーナー室から声が聞こえてきた。一つは勿論彼の声、もう一つは…………タキオンさんのものだった。
また何らかの薬品を飲まされている。止めようと思ってドアに手をかけようとして────
「君の所為でカフェが前ほど構ってくれなくなったじゃないか〜どうしてくれるんだよ〜…………ほら、次はこれだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。てかお前自分のトレーナーはどうしたんだ」
「ああ、モルモット君は別の実験のために10km程走ってもらってるよ。安心したまえ。今君にさせているものは私のモルモット君のソレより軽いものさ。これで君に何かあったらカフェに何を言われるか分かったものじゃないからねぇ」
「……カフェと、仲良いんだな」
「当たり前だろう?私たちは共に
驚いた。確かに、私はタキオンさんとそれなりに交流が深い。半分腐れ縁のようなものでありながらも多分お互いの知人の中では一番話している方……かもしれない。
ライバルとは思っていた。でもまさか、あのタキオンさんが”私”を望んでいるとは思いもしなかったから。
────少し、血が騒いだ。
▫▫▫▫▫
「…………」
「…………」
今日も変わらず、二人でコーヒーを堪能する。
最近になってやっとカフェの指導に慣れてきた。お友だち?が何を言ってるか俺にはまだ分からないが割といい感じの付き合いができてきたと思ってるし、長所も短所も伸ばしどころも把握した。
カフェはなんやかんやでアグネスタキオンといる間は生き生きしている(ように思える)し、二人の時間に割って入るようなことはしないように……ん?
なんか俺……あれ?
「トレーナーさん……お疲れのようですね……」
「……そうか……?」
暫くの間カップの中で揺らめく自分を見ていると彼女に心配されてしまった。
確かに最近体が重い。俺の寮部屋はいつも暗いし寒いしで寝付きもすっかり悪くなってしまった。
自分の中で処理できる分にはいいがそれが表に出てしまったらトレーナーの名折れだ。もっと上手く体調管理できるようにならないと……と思いながらもコーヒーを飲む手が進まない。
「……少し、眠りましょう」
「え、いや、でも」
放課後とはいえここは学園内で、しかも俺はトレーナーだ。生徒の前でおちおち寝るなんて……と思いながらもやっぱり体は誘いに乗りかけている。
「大丈夫です。私がついてますから……」
「ㅤㅤㅤㅤㅤㅤぁ」
やんわりとソファに倒されて、抗う力も湧かず、彼女の穏やかな眼差しを感じて、彼女の手が俺の瞼を閉ざ
▫▫▫▫▫
思った通りだった。トレーナーさんを一人にしていればあの子たちは直ぐにでも彼を取り巻いてしまう。隙を作れば奪われてしまう。
もうトレーナーさんは私が傍にいないと満足に眠ることすらできない体になってしまった。
あの子やよくないものからは好かれ、また自分から飛び込みやすく、私のお友だち周りからは嫌われている。つまり、このヒトを守っていけるのは私だけということ。
何故かその事実に悲憤できない私がいる。
そして彼がそれをどう捉えているか、私は未だに知らない。
トレーナーさんは私に歩み寄り続けてくれた。その本心が如何なるものなのか、不意に恐ろしく感じて堪らなくなった。
そもそも私がトレーナーさんの前に現れなければ少なくともここまでの状況にはならなかったのかもしれない。もしかしたら好意的に思っているのは私だけで、心の奥底では私を恨んでいるのかもしれない。彼にとって私はただの担当ウマ娘に過ぎないのでは。
何れにせよ怖かった。このヒトがいるから私は私で在り続けられる。このヒトは既に”私”を解き放ってしまった。しかし彼にとっての特別が私であるという確証はどこにもない。二人で珈琲を楽しむ時間も、今に至るまで費やされてきた時間も、あくまで『マンハッタンカフェ』というウマ娘を『トレーナー』として理解する為のものであってと、そこまで考えて──ありえないことだと悟った。
今までのトレーナーさんを思い出せばそんな不安は杞憂でしかないと直ぐに分かる。
私の世界を拒まなかった。私を拒絶しなかった。私が近づいただけで分かりやすく顔を赤く染めていた。私に笑いかけてくれた。どんなことがあっても私を見ていてくれた。今、私の見ている中で心から安心したように眠っている。そして私の淹れた珈琲を美味しいと言ってくれた。
ともなれば確かめるべきことは一つしか無い。
▫▫▫▫▫
ある日、カフェに真剣な顔で呼びつけられた。トゥインクルシリーズもいよいよ大詰め。これからのことについて彼女も話し合いたいのかもしれない。
そう思って部屋に踏み入れたのはいいが彼女はといえばいつもと変わらない様子でコーヒー豆を炒っていた。
「カフェ?」
「座っていてください……そう長くはかかりませんから……」
カフェがそう言うならと思い暫く待っていると、彼女はいつも通り二人分のカップを──運んではこなかった。
「……すみません急に。聞きたいことが、あって」
「ああ」
彼女にしては珍しく会話の最中でありながらも目線が逸れている。よっぽど切り出しづらい話題なんだろう。別に俺は構わなかった。このまま何時間だって待つつもりだ。
「あなたと出逢って……そろそろ、三年が経ちます」
「……ああ……」
そういえばそうだった。あの頃の俺は……なんで彼女のトレーナーになりたいと思ってたんだ……?いや、今はそんな疑問なんてどうだっていいか。
「トレーナーさんがこれから……その……他の方の担当になっても……これまでと変わらずに接してくれますか?」
そう言うと彼女は今日初めて顔を上げた。不安げに瞳が揺れている。
「?俺は元々カフェのトレーナーなんだし何も変わることなんてないぞ」
「それでは……私が引退した後は……、……」
「──────────あ」
考えもしなかった。カフェとこうやって一緒の時間を過ごすことが当たり前だと思っていた。
無言の時間が続き、いくつもの視線を受けながら思考を張り巡らせる。
「…………イヤ……だな。お前が引退した後も……俺は……お前と………………」
心からの本音だった。今初めて自分の気持ちを見つめ直して気がついた、俺自身の本心がそれだった。
「……よかった」
安心したように、満足気に、カフェは笑っていた。
▫▫▫▫▫
「────、────」
「……」
私はいつも寮に戻る際はトレーナーさんに付き添ってもらう。というのも、彼を一人にしていたら何が起こるか分からないというのもあるから。
今日は偶然用事が重なり、あまり彼を見守ってあげられなかった。連絡を取りトレーナーさんが迎えに来るのを待っていたものの中々やってこない。
何かあったのではと思い部屋に急ぐと、あのヒトは疲労からか机に突っ伏して眠っていた。
「……」
起こさないといけないと分かっていながらも体は彼を見つめたまま動かなかった。
あの日の問答以降、一つの疑問が頭から離れない。
このヒトは自分の本心を包み隠さず曝け出してくれた。では、私は?
分からなかった。自分がこのヒトをどう思っているのか、どうしたいのか。
「…………」
このヒト──私のトレーナーさんは、純粋なまでに実直で、それ故に危うい。私が見ていないとどんなところにでも飛び込んでしまう。しかしながら私のことを誰よりも分かっていて、私のことを第一に考えてくれる。私を導いて、解き放ってくれる。
そんな彼がとても愛おしく思えた。
ああ。
噛み締めるように復唱する。
私は彼を愛おしく思っている。
何も難しい話ではなかった。
私はこのヒトを守りたくて、私はこのヒトに守られたい。
「…………ぁぁ、」
手を合わせた彼の背中から、その鼓動を感じ取る。穏やかで弱々しい、彼の音を。
▫▫▫▫▫
マンハッタンカフェのトゥインクルシリーズが終了したことで俺は書類仕事に追われまくっていた。もう大変ったらありゃしない。
「──っっっ、疲れた〜……」
「……お疲れ様です」
ようやく一段落ついたので椅子に思いっきり身を投げ出した。いつの間にかカフェの前でもそんな姿を見せるようになっていた。
隠しても付き合いの長い彼女にはバレてしまう。ならいっそのこと、ということでカフェの前では素の自分でいることが増えたのだが、やっぱり一言でも労ってもらえるだけで人間楽になれるんだな。お疲れ様ですの一言がかなり身に染みた。
登山のために体を鍛えるようになったことで肉体は活力に溢れていたものの、長時間紙とにらめっこしてれば頭が疲れる。
「今日は羽目外すっかなー……」
カフェも無事優勝したことだし、一人祝賀会もしよう。それがいい。
「トレーナーさん」
「んー?」
そんなことを考えながら呼び掛けに顔を上げる────何かの音がした。
「…………今日は一緒に、夜更かししましょう。外泊届けは出してありますから……」
白い肌をほんのり色づかせ、彼女は微笑みながらそう言った。
俺はといえば腕を引かれながら寮の自室に戻る間、あの音の正体を頬に残った感触から逃げるように考え続けていた。
お友だち「面白いこというなぁこの
元々ナイスネイチャの話→25〜27話(前中後編に分けたやつ)→マンハッタンカフェの話という手筈だったのですが、25〜27話に時間がかかりすぎてカフェがアプリに実装される前に投稿するのが間に合わなかったため完全に糸が切れてました。申し訳ないっス。
供養した話以外にも
ミスターシービーと出会って人生エンジョイ勢になる話とか
なんかの間違いでシンボリルドルフのトレーナーになってうじうじする話とか、
逆にシンボリルドルフの担当になってトレーナーとしても人間としても逞しく成長していく彼と幼児退行(ルナちゃんモード)は決してしないがそれはそれとして彼に寄りかかっていくようになるルドルフの話とか、
序盤はタマモクロスのレースと家族にかける思いとオカン属性に心打たれるトレーナー、
中盤で13話並の敏腕っぷりと1話並の玉鋼メンタルと20話並の確固たる意思を備えたトレーナーと一蓮托生となったタマちゃん、
終盤ではトレーナーに対してパパみ(父ではなくパパ)とバブみ(母ではなくママ)を長女として産まれたことで実の親にあまり自由に甘えられなかった分めちゃくちゃ抱いてしまうタマちゃんの話とか
逆風に吹かれるライスシャワーに「たとえヒールと呼ばれても俺だけのヒーローになってくれ」という呪いをかける話とか
ビコーペガサスと組んででっかいでっかい壁とぶち当たるもヒーローになるため運命に抗うために魂燃やしまくってたった二人のa crowd of rebellionとなる話とか
書きてぇ話はたくさんありますがそれを打ち出すには足りないものが多すぎるので望みは薄いっス申し訳ないっス
一応今書きたい話としては
トレーナーがなんかエロい話(テイオーの話
トレーナーがなんか闇深い話(テイオー
爽やかなバッドエンドの話(テイオー
ちょっと変な扉を開く話(テイオー
トレーナーの家族関係にちょっと問題があった場合の話(個人的に今一番書きたい話だがテイオーでやるか他ウマ娘編でやるか樫本理子ちゃんの話でやるか悩んでいる
なんかがありますが、とりあえず次は
トレーナーに兄弟とか友達とかの理解者がいた場合の話(物語開始前に亡くなっているものとする)
を書きたいなぁなんて思ってたりする感じっス。