下心バキバキトレーナーがトウカイテイオーに改心させられる話   作:散髪どっこいしょ野郎

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もうダメだこの投稿者












遠い日の記憶~スティルインラブを添えて~

X(マイナス)六十年後……

 

 

「スティル、どこか遠くに行かないか」

 

「はい。では準備を……」

 

「いい。どうせ行き当たりばったりの短い旅だ」

 

「……ふふ。それでは、行きましょうか」

 

 

 毎日が幸せだ──が、フラストレーションやストレスが溜まる時はある。彼女を連れていつかのようにどこかへ逃げてしまいたいと思う時がある。

 

 そんな場合は大体、逃避行……の真似事をする。

 

 着の身着のままで家を飛び出し、誰もいない静かな場所へ逃げる。

 

 

「手、いいか?」

 

「どうぞ」

 

 

 彼女の手を強く握り、何処行きかも分からない電車に乗り込む。幸い財布にはいくらかの金がある。こんな日のために多めに入れていた。

 

 

「……ふふふ」

 

「……」

 

 

 車内は俺とスティルの二人きり。微笑む彼女に理性が壊れそうになるがなんとか堪える。

 

 

「トレーナーさん」

 

「……なんだ」

 

 

 知らない場所、知らない道を二人で歩く。

 

 

「このまま、遠くに逃げてしまいましょうか?」

 

「……いいな、それも。けど、それじゃ胸張ってお前の元トレーナー名乗れないからな。これぐらいの現実逃避がちょうどいい。……って、一度逃げておきながら何言ってんだって話だが」

 

「……ふふ。承知しました」

 

 

 冷たいのに、温かい彼女の手。空を見上げると、雪が降り始めていた。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「おやすみなさい、トレーナーさん。……愛してる」

 

「ああ、俺、も──」

 

 

 意識が黒く沈んでいく。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 静かだ。今日ここの宿には俺と彼女以外誰も泊まっていないだとか。

 

 

「……?」

 

 

 非日常的体験を味わったためか深夜に目が覚めた。窓から眺めた外には牡丹雪が舞っている。

 

 スティルを起こさないようにそっと腕を解き窓際に佇む。夜の月明かりの中、漂浪と降る雪が銀色に映えていた。今日こうして逃げなければ知ることのできなかった景色。

 

 

「ん……トレーナーさん……?」

 

「……ああ、悪い」

 

 

 俺がいなくなったことに気づいたようでスティルも起き上がる。……たまに俺が早く起床することはあるが、年々俺がいなくなったことを気取るまでのタイムラグが少なくなっている気がする。

 

 

「外を眺めているのですか?」

 

「雪が綺麗でな」

 

「雪……?……まあ……」

 

 

 目を輝かせるスティル。しばらくそうして、二人で夜の景色を堪能していた。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

X-五十五年後……

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「お願いします!私のトレーナーになってください!」

 

「別にいいが……物好きだな」

 

「物好きって……だってあなた、トリプルティアラウマ娘のトレーナーさんじゃないですか!」

 

「俺の力なんて微々たるものだよ。アレはスティルが頑張ってくれたからにすぎない」

 

「謙遜も行き過ぎると嫌味ですよ……。……噂は本当だったんだ」

 

「噂って?」

 

「スティルインラブさんとトレーナーさん、卒業前から付き合ってたって噂です。私のクラスだと有名な話ですよ?」

 

 

 思わず嘆息し、頭を抱える。俺がロリコン野郎という現実は想像以上に大きいものだった。こんな時こそ一緒に逃げたくなる。

 

 

「……まあ、いい。それじゃ、これからよろしくな」

 

「はい!」

 

 

 俺には微弱ながら才能があったらしい。スティルの次に担当した子もGⅠ制覇させられたし、目の前のこの子の適性も一瞥しただけでうっすらと分かりかけている。

 

 

『……いつか、私以外のレース、あまねく闘争が貴方に喜びを(もたら)してくれる筈です。貴方には幸せでいてほしい。……トレーナーとしても』

 

「……本当だったな」

 

「?何のことですか?」

 

 

 破壊衝動はもう無い。両親の暴力がフラッシュバックすることも無い。今の俺は心の底から望んでトレーナーになれている。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「ただいま」

 

「おかえりなさいませ、トレーナーさん」

 

 

 胸元に飛びつくスティル。今となってはもう慣れたもので、玄関で十分程そうするのがルーティンになっていた。

 

 

「……知らない匂いがする」

 

「……ちょっと怖いぞその発言」

 

 

 ウマ娘はヒトより感覚が優れている。とはいえ、例の新担当ウマ娘と直接接触したわけではない。よく分かるなと、内心戦々恐々だった。

 

 

「スティル」

 

「はい?──んむ……っ!?」

 

「……っはぁ、風呂、入りたいんだけど、いいか?」

 

「……お背中流しましょうか?」

 

「じゃ、頼む」

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

X-五十年後……

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「……好きだ!トレーナー!」

 

「そうか。……悪い、俺には妻がいる」

 

「はい!分かってた!分かってた、けど……やっぱキッツいなぁ~……」

 

 

 俺は学園内でも中堅辺りのトレーナーになれた……気でいた。しかし担当ウマ娘からこのような告白を受けるということは、まだまだ正しい距離感を掴めていないのだろう。

 

 若輩だったあの頃のように一人のウマ娘にのめり込んでしまうのは、未熟の証ではあるが悪いことだとは思わない。そうすることでしか救えない者もいる。しかし恋心を弄ぶのはあまりにも悪辣で非道だ。

 

 だからといって粗雑に扱うのも違う気がする。……同僚にでも相談してみるか?

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「ただいま」

 

「おかえりなさいませ、トレーナーさん」

 

 

 ……相談相手がいない。俺は仕事が終わると真っ先にここへ帰ってしまう。スティルとの時間を何よりも大切にしていたから。

 

 そんなわけだから特別親交のあるトレーナーなどおらず、業務連絡や併走願いなど、ごく普通の用以外絡みがなかった。

 

 彼女に言うのもデリカシー的にどうかと思う。夫が教え子に惚れられている、なんて珍事を聞かされていい思いなどしないだろう。

 

 

「「いただきます」」

 

 

 ……参ったな。せめて交友関係ぐらい育んでおくべきだった。思えば俺は今はもういない『俺』としか関わっていなかった。手放しに友人と呼べる相手は一人もいない。

 

 ……これからは少しでもプライベートの付き合いを増やすか。……って、そんな打算的な付き合いは友人とは言えないか。はてさてどうしたものか……。

 

 

「トレーナーさん」

 

「ん?」

 

「……お悩みがあるようですね」

 

「……よく分かったな」

 

 

 こうなってしまえばもう終わりだ。俺は包み隠さずスティルに話してしまった。

 

 

「私が口を挟める話でないことを承知で申し上げますが……貴方は何も悪くないと、愚考します」

 

「いや、それは違うだろう。付き合い方を間違えて恋情を誘うのは大人として落第点だ」

 

「そうでしょうか。その方が貴方に恋慕を募らせていたとして、悩み苦しんだとしても──そうして伝えられたのなら後悔は無いと思います」

 

「どうしてそんなことが言い切れる?」

 

 

 意図せず威圧的な口調になってしまったが、スティルは俺の視線を真っ直ぐ見つめ返して、言う。

 

 

「私がそうだったから」

 

「…………。…………お前と俺の現担当ウマ娘は違う。お前は俺に惚れて、こうして成熟した関係になったけど、その子は初恋を実らせられなかったんだぞ?」

 

「はい。それを含めて、後悔は無いと思います」

 

「……」

 

 

 そこまで断言されて、改めて考える。考えて──

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「なあ、俺ってちゃんとトレーナーやれてるか?」

 

「どうしたんだよ急に」

 

「俺、お前と適度な距離感で接することができてなかったんだろ?だから──」

 

「ちょい待て、アタシの心を勝手に決めつけんな」

 

「……」

 

「アンタがスティルインラブの夫ってことは知ってた。アタシに特別な感情を持ち合わせてないことも分かってた。それでも止められなかった。どうしてか分かるか?」

 

「……分からない。教えてくれ」

 

「ハァ……ホント鈍感だな。──アンタが、純粋にいい奴だったからだよ。称号だとか立場だとか距離感だとか関係ない。叶わなくても、願っちまう。それが恋ってモンだろ?」

 

「…………」

 

「だからこの話はもうお終い!トレーナーもスティルインラブと精々幸せにな!」

 

 

 ……結局、どうするべきかは分からなかった。それでも、考えることはやめない。俺はそう決めた。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

X-四十年後……

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「ただいま」

 

「おかえりなさいませ、トレーナーさん」

 

 

 あれからも担当から告白されることはあった。しかし俺も歳を重ねた。流石にこんなオッサンに惹かれる物好きはそういないだろう。

 

 

「ふー……」

 

 

 風呂から上がり、上半身だけ裸で寝室へ向かう。最近は食事前にやってもらうことがあった。

 

 

「それじゃ、頼む」

 

「かしこまりました。……えいっ」

 

「グオ……ッ」

 

 

 この歳になるとデスクワークの連続で腰や肩や首がこる。それを解消するためにスティルからマッサージを受けていた。

 

 

「……トレーナーさん?大丈夫ですか?」

 

「大丈……グオ……ッ」

 

 

 思わず声が漏れるがそこに苦悶は無い。凝り固まっていた体がほぐされていく感覚は言いようのないものだった。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「散歩にでも行くか。スティルはどうする?」

 

「では、お供させていただきます」

 

 

 とある休日の朝。なんとなく思い立ち散歩することに決めた。スティルは律儀に付き従う。ちょっとぐらいエゴ出していいのに。

 

 

「いいのか?お前もやりたいことあるだろ?」

 

「貴方のお傍にいられるのなら、私は何でも何処でも構いません」

 

「……そうか」

 

 

 久々に(嬉しい意味での)衝撃(クリティカル)を食らった。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「風が気持ちいいな」

 

「はい。……貴方と来られてよかった」

 

 

 小丘で一息。持ってきた水筒には緑茶が入れてある。

 

 

「ふふふ……」

 

「ご機嫌だな」

 

「貴方が心地よさそうで、つい私も」

 

「…………」

 

 

 籍を入れてかなり経ったが、やっぱり俺はスティルにとことんまで惚れているらしい。彼女の一挙手一投足から目を離せなかった。

 

 

「ああ……幸せ」

 

「……」

 

「トレーナーさん?」

 

「…………」

 

「ああ、トレーナーさん……」

 

 

 思わず抱きすくめる。彼女への思いで脳が蕩けそうだった。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

X-二十年後……

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「……手伝ってくれてありがとうな」

 

「いえ」

 

 

 両親の葬儀が終わった。上京してから今日に至るまで顔を合わせていなかったが、俺の知る両親像から遥かに老けていた。

 

 二人揃っての老衰死。苦しみはあったのだろうか。少なくとも二人が俺に与えた虐待よりかは楽な死に様だったろう。

 

 これから、これからだ。両親の呪縛から解き放たれた感覚。

 

 これからの人生で、これまでの記憶を塗りつぶせられれば、それが一番いい。

 

 実家は取り壊すことになった。そうすることで少しでも刻まれた呪いを癒やせればいい。

 

 

「トレーナーさん」

 

「……なんだ?」

 

「……貴方は、私に祝福をくださった。永遠に溶けない、甘い祝福を。だからこそ私からも──貴方を呪わせてください」

 

「……ありがとう」

 

「はい。これからもずっと、いつまでも一緒ですよ、トレーナーさん」

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

X-十年後……

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「ただいま」

 

「!……今日まで長い間、お疲れ様でした、トレーナーさん」

 

「ああ。……本当に、長かった。そして……幸せだった」

 

 

 今日は俺のトレーナー人生最後の日だった。かつて担当したウマ娘たちから退職祝いをしてもらうという、なんとも嬉しいサプライズもあって実に理想的な円満退職だった。

 

 ……今になって、ずっと学園にいたい。この熱狂を逃したくないと、思ってしまった。だが俺は老いた。

 

 それに、願い事は叶わないくらいがちょうどいい。

 

 

「今日はいつもより豪華な食事をご用意しました。お風呂は焚いてありますから、先にどうぞ」

 

「……本当に、今日までも、これからもありがとう、スティル」

 

 

 今日まで真摯に支えてくれた彼女。その感謝を込めながら、抱きしめる腕をできるだけ強くした。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 

 俺たちは互いに食事のスピードが遅い。今日はいつもより腕によりをかけて作られていたこともあり、完食にかなりの時間が経った。

 

 しかしもう明日の出勤時間を考える必要はない。これからだ。これからもきっと、俺とスティルならなんでもできる。

 

 

「トレーナーさん」

 

「ああ。なんだ?」

 

「私は貴方と出会えて、幸せでした」

 

「……っ」

 

 

 歳を取ると涙腺が脆くなるのか、その一言に思わず泣いてしまった。

 

 そうだ、これからは彼女のためだけに生きよう。残り期間は少ないかもしれないが、俺のできる範囲で。

 

 ……それにしてもスティルは老けないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

X+三年後……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 光に包まれたとあるレース場にて。

 

 

「なあスティル」

 

「はい、なんですか?」

 

「久々にお前の走りが見たいな」

 

「そう、ですか。では誰か併走してくれる相手を──」

 

「相手ならここにいるわよ」

 

「……ッ!?貴方は──」

 

 

 その場にいたのは彼とスティルインラブ、そしてもう一人の、スティルインラブ。しかしどこか様子が違うように見受けられる。

 

 

「そう、ワタシはアナタ」

 

「スティルが……二人……?」

 

 

 妖しげに笑っていたもう一人のスティルインラブは、彼を視界に入れると慌てたように視線を逸らした。何か思うことでもあったのだろうか。

 

 

「走るのでしょう?なら、脚で語りなさいな」

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 そのレース場には彼ら以外誰もいなかった。しかし、スターティングゲートは使用可能。ここは、そういう場所だ。

 

 

「ちゃぁんと準備しておいて?せっかくのレース、ありのまま全てを喰らえないなんて勿体ないから」

 

「──譲らない」

 

「……へぇ?」

 

「私は、トレーナーさんのために勝つと誓った。だから絶対に負けない……!」

 

「フフ……フフフ……!ええ、それでこそワタシ!もう、言葉は要らないわね」

 

 

 奇しくもそれは生涯のライバル(アドマイヤグルーヴ)が放った言葉に似ていた。相対するは愛と本能。

 

 二人は駆け出す。その結果は、彼のみぞ知る──

 

 

 

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

???

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

 

 

 

 ズルいなあ、と思う。

 

 私にはトリプルティアラを獲ったお母さんと、数多くの名ウマ娘を育てたお父さんがいる。

 

 もちろん、私も期待された。トリプルティアラウマ娘の子供ともなれば、埒外の羨望を浴びたこともある。

 

 だけどレースの世界は厳しかった。私は二勝だけして引退。そそくさと逃げるように大学生になった。まあ勝てただけ十分すぎるのかもしれないけど。

 

 お父さんとお母さんは、どこまでも二人だけの世界で生きていた。

 

 勘違いされそうだけど、私への愛情は確かにあった。勝てなくて落ち込んでる時も精一杯支えてくれたし、家族としての時間も確保してくれた。

 

 けど、それを踏まえても二人はアツアツだった。見ているこっちが恥ずかしくなるくらいに年がら年中イチャイチャしてたし、どれだけ歳を重ねても想いが風化することはなかった。

 

 そんでもって二人はほぼ同時期に亡くなった。長生きと言えるくらいには生きていたけど、やっぱりズルいなあと思う。

 

 私もそれなりに生きた。子供もいるし、仕事でもそれなりの地位についた。

 

 ……ハッキリ言うと、二人が羨ましかった。あんな風に誰かを愛せるのが不思議でもあったし、私もそうなりたいと思うこともあったし。

 

 ん?私の名前?私は結構気に入ってるよ。お父さんとお母さんの愛の結晶だと思えば、誇らしくもあるし。

 

 私はジューダ。スティルインラブの娘。

 

 そろそろいいかな?私も歳だし、眠くなってきちゃったよ。ところで、この質問はなんだったの?え?インタビュー?月刊トゥインクルに載せる?

 

 ……………………。

 

 え、ちょ、ちょっと待って、インタビューだと分かってたなら言えないこともあったしこんな赤裸々な気持ち吐き出すつもりもなかったよ!?

 

 待って!お願い待って!『これなら飛ぶように売れる』じゃないよ!私もうおばあちゃんウマ娘だよ!?ちょっとは手心ってものを────

 

 

 

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

X+α年後……

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

 

 

 

 スティルインラブはそこにいる?分かりました。ありがとうございます。

 

 はぁ……二人ともお互いに今でも愛してるんだろうなぁ……。流石に人前でイチャイチャするのはないと思うけど、見てて恥ずかしいんだよなぁ……。

 

 えっと、ここのレース場かな?あ、歓声と実況が聞こえる。お母さんの名前も聞こえるってことは、走ってたんだ。

 

 

「ジューダ」

 

「あ、お父さん」

 

 

 再会は思ったよりサッパリしていた。面と向かっては言えないけど、両親のことは好きだしもっと込み上げるものがあるんじゃないかと思ってたのに意外と心は動かなかった。

 

 

「そろそろお母さんが戻ってくる。少し待てるか?」

 

「待てるも何も、私二人に会うためにここに来たんだよ?」

 

「そうか」

 

「トレーナーさん」

 

「お、早かったな、スティル」

 

「あ、お母さん」

 

「あら、ジューダ?」

 

 

 ……感動的な再会とはならなかったけど、とりあえず二人に会えたからまあいいかな?

 

 

「いい走りだったぞ、スティル」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 

 ……いやいや二人とも何してんの?周りの観客にめっちゃ見られてるけど。

 

 

「あー……、お熱いところ悪いけど、ただいま、お父さん、お母さん」

 

「──んはぁっ、おかえりなさい、ジューダ」

 

「──ぁっ、ああ。よく来てくれたな。ありがとうジューダ」

 

 

 ……つけいる隙が無い。ズルいなぁ、二人とも。私はこんな風に誰かを愛したことなかったのに。

 

 

「久しぶりに三人で帰りましょうか」

 

「いいな。お前は大丈夫か?」

 

「……お母さんたちがイチャイチャするとこまた見せつけられるんだぁ……。……まあ、いいけど」

 

 

 思い返される、いつかの景色。

 

 三人で手を繋ぎながら、私たちは歩いていった。

 

 

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