二次創作「Snow flutters. ~Fantasy Star Online 2~ 」 作:北宮 涼
俺の目の前で二人がしばらくの間何かをこそこそと話し合った後、二人してこちらへと向き直る。
チラリと視線をお互いに交わし、合図するかのように小さく息を吸うと、以下のことを俺に語った。
───俺は現在、この二人に保護されるという形でここに連れてこられたようだ。
会話の最中、多く欠落している俺の記憶の中でも辛うじて覚えていた『シンヤ』という自分の名前を、アークス(という組織団体があるらしい)のデータベースに照会してみるも符合する人物はいなかったらしい。
つまり、俺は出自不明の謎の人物という扱いになる訳で、このままアークスの元に送り届けられても色々と問題があるだろうとの事で、この二人の監視下の元に置かれる事になったらしい。
その判断はこの二人が下しらたしいが、何故アークスにその判断を委ねなかったのだろう。
疑問に思ったために問いを投げかけてみると『あそこのトップは危険な奴だから』という返答が返ってきた。
俺自身にそんな記憶はないが、異常な現れ方───何もない虚空から突然現れて降ってきたのだとか───をしたことが原因なようで、色々小難しいことを口にしていたが、要約すると『キナ臭い事に巻き込まれている可能性がある』という判断を、この少年───シャオというらしい───が下したため、このような措置を取ることになったらしい。
「しばらくの間、君には色々と不便をかけるだろうと思うけどそこは耐えてほしい。僕らも余裕がある訳ではないからね」
「何かあれば遠慮なく言って頂戴。できる限りは対応するからね」
二人のその言葉を最後に、その場は一旦お開きとなる。
偵察に出ると言ってサラがこの場を後にすると、必然的にシャオと二人きりになった。
「改めて……これからよろしく頼む、シャオ」
「任せてよ、シンヤ。困った事があったら遠慮なく言ってね、サラが対応するから」
その後は軽く質問を交わし合いつつ、適当に時間を潰していくのだった。
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───
─
龍祭壇と呼ばれる場所での生活を始めてからおよそひと月。
今日は新光歴238年の、3月23日だ。
最初、俺は今日の日付を新光歴228年の9月10日だと思っていたが、どうやら勘違いしていたようだ。
その一連の会話で何か思うことがあったのか、シャオはブツブツと独り言をつぶやきながら何かを考えていたが、サラからは無視していいと言われたため、一先ずは気にしないでおく事にした。
今日も今日とてサラは情報収集やら、ある人物とやらの動向を見守るためにあちこち出て歩いている。
かくいう俺は何もすることがなく、ただ龍祭壇の中をぶらついていた。
あんまり離れるような事をしなければ付近を散歩していてもいいとシャオからは許可を貰っている。
そんなわけで現在、色々と歩き回って周囲の地形などを頭に叩き込んでいるわけだが……
「なんだ、あれは」
突然、目の前の空間が赤黒く歪曲したかと思うと、その中から4本足の節足動物のような何かが複数体現れた。
成人済みのヒューマン一人分くらいはあるだろうか?
大きな体躯を持った、怖気の走るような見た目のそれは、俺を見つけるや否やその鋭い前足で襲い掛かってきた。
「うおっ!?」
突然のことで固まっていたが、相手の発する明確な敵意を感じた瞬間、意識するよりも先に
驚いて声を上げたのは、相手の攻撃に対してではなく、自分の身体が勝手に反応して素早く動いたことに対してのものだ。
現に今も、自然に身構えて相手の出方を伺うような態勢をいつの間にか整えている。
(何してんだ俺は、アレを相手に素手で迎え撃とうってのか?)
我に返った俺は即座に構えを解き、逃げるために一目散に駆け出す。
そこでまたしても、自分の身体能力に驚かされることになる。
「すっげぇ、なんだこれ」
とにかく逃げる事だけを考えて全力で走っているわけだが、そのせいなのか、後方の赤黒い存在達をぐんぐんと引き離してゆく。
途中でぶつかった背丈ほどもある段差なんかも、半ば無意識に飛び上がるとあり得ない様な跳躍力を発揮して飛び乗ることに成功していた。
普通のヒューマンなら、この段差を飛び乗るだなんて出来やしないはずだ。
(俺って、一体何者なんだ?)
尽きない疑問を胸中に抱えたままひた走っていたが、それも唐突に終わりを迎える。
走って逃げまわったまでは良かったが、土地勘も何もない場所でのその行動は悪手だとすぐに悟ることになってしまった。
「行き止まり……」
目の前に立ちはだかる壁を目の当たりにし、即座に後ろを振り返る。
見れば、先ほどの4歩足の節足動物の様な奴の外にも空を飛んで移動してくる奴が増えていた。
蜂と蟻を組み合わせたような外見をしているソレは、やたらと耳障りな羽音とともに迫ってくる。
そうして俺の目の前に躍り出た計8体の『敵』は、獲物を追い詰めるが如く俺の周りを取り囲む。
周囲を見渡してその数を確認すると、飛んでいるのが3体で、地上に居るのが5体だと分かった。
先ほどの自分の疾走に付いてこれる時点でヤバイ奴らだというのは考えずともわかる。だが。
(やるしかない、か)
そんなヤバイ奴らを前にしても、俺の心は、自分でもおかしいと思うほど何も感じていなかった。