二次創作「Snow flutters. ~Fantasy Star Online 2~ 」 作:北宮 涼
鋭い爪を繰り出してきた個体の脇に素早く潜り込み、回し蹴りを一閃。
たじろいだ所に、頭部と思しき部位へ中段蹴りを食らわせて押し返す。
その間に地表スレスレを突っ込んできた空を飛ぶ奴を跳躍で回避し、飛んだ勢いそのままに別の空を飛んでいる個体に飛び蹴りをかまして地面へと蹴り落とす。
地面へ叩きつけられて動きが鈍った隙に、赤い部位を目掛け渾身の力で正拳突きを繰り出すと、背筋がゾワゾワするような甲高い悲鳴を上げて動かなくなった。
「先ずは、一匹」
黒ずんでボロボロと崩壊してゆく様を見届けると静かに身構える。
戦闘開始から、体感でおよそ3分ほど経過しただろうか。
殊の外動くこの身体に理解が追いつかず振り回されつつも、咄嗟のタイミングでは思考するよりも先に身体が動くため、数で劣勢を強いられている今の状況でも何とか張り合えていた。
周囲の動きに気を張りつつ、考える。
自分で言うのもどうかと思うが、一連の戦闘における動きは一般人のそれとは大きくかけ離れている。
繰り出す動きに全く淀みを覚えず、まるで以前からそうしていたかのような自然さで戦えているのだ。
ここひと月の間は、自身の欠落した記憶を探るために色々と思考を巡らせては見たが、解決の糸口さえ見いだせていない状況だった。
だがどうだろう、怪物と言っても差支えがないコイツらに襲われ、それに応戦する形を取ったことで、自身でさえ気が付かなかった自分の側面に気付くことができたのだ。
これはもう、ほぼ確定だろう。
(俺は、こういった荒事の中に身を置いていた奴だったんだろうな)
思考しながら、2体、3体と次々に仕留めてゆく。
最初は優勢に立てていたと思っていたのだろうか、相手の動きに心なしか焦りが見えるような気がして───
「どうした、遠慮せずにかかってこい『
───そう、不意に心が昂った拍子に放った言葉に自分で驚いた。
「ダーカーだって? 一体、俺は……うぐっ」
刹那、頭に走る激しい痛みで立ち眩み、膝を突く。
目の前の景色が歪み、急速に色が褪せてゆく。
「何が、起きた……ッ!!」
視界にノイズが走り、今まで見ていた光景とは別の光景が見え始める。
立ち並ぶビル群、立ち上る炎と煙、横転した車両に逃げ惑う人々。
すぐ傍らには……女性、だろうか。
身の丈以上もある大剣を手にしたその人は、黒い津波となって押し寄せてくるアイツら……先ほど自分自身で称した『ダーカー』を前に、戦慄した表情を浮かべている。
かくいう俺は細身の刃物一本を手に、押し寄せる黒い津波を一人で押し返すが如く、激しい戦いを繰り広げていた。
(なん、だ、これは……一体、なんなんだ!?)
正直、大勢は決していた。
視界を埋め尽くす黒に対し、こちらは二人だけ。
俺と思しき人物は兎も角、女性はすでに戦意を喪失しているのか、向かい来るダーカーだけを処理するので手いっぱいの様子。
どうあがいても、絶望しか見いだせない状況だった。
こんな状況下でもこれだけ戦えているのは、正直奇跡以外の何物でもなかったのだろう。
だがそんな奇跡も、長くは続かなかった。
最初に崩れたのは女性だった。
ガードの脇をすり抜けるようにして通った一撃が足を掠め、その一撃に怯んだ隙を狙われた。
弾かれる大剣、突き飛ばされる華奢な身体。そして、そこへ振り下ろされる……凶刃。
(やめ、ろ……)
無残に貫かれ、引き裂かれ、力なく倒れる女性の姿を見た俺と思しき人物は、自身が傷つくのも厭わずに黒波をかき分けて女性の元へ向かう。
抱き上げるが、誰の目から見てもその容体は手遅れと判断できるものであった。
『ダメだ、死ぬなッ!!』
『ごめ……なさ、い……』
急速に色が戻り始める景色に、再び激しい頭の痛みを覚える。
同時に強いノイズがかかり始め、聞こえてくる物音も、壊れたスピーカーから流れるかのような耳障りなものへと変わってゆく。
そして。
『にい、さん』
その一言が鮮明に耳へ届くと、視界が暗転した。