リリカル For FFXI   作:玄狐

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ようやく、原作開始…長すぎない?ひましない?大丈夫?


魔王、目覚める。

 そんなことない!

 アリサが叫ぼうとして叫べなかった。

 なぜなら、なのはが目に涙を浮かべている理由を理解していたからに他ならない。

 確かに、なのはが達した結論が間違っている訳ではなく、むしろ、可能性としては一番高いものであることに違いはないのだ。

 たかが年齢の差と馬鹿にすることなかれ、少なくとも今の時代では体裁が悪い。

 彼が18になったとしても、なのはやアリサは10歳だ。

 仮に女性の結婚可能年齢16歳になったとして彼は24歳となる。

 何らかの仕事をしているものが16歳の嫁をもらって何の影響もなく、その仕事をつづけれるか?

 仮にうまく恋愛から結婚と持って行けたとしても彼女の年齢は間違いなく彼の枷となる可能性が高く、なのはがそれを良しとする訳がない。

 最低限、適齢期に入るであろう20でも彼は28、体裁を考えるなら24だがそのころには彼は32、結婚していておかしくはない。

 彼女の性格をアリサは好いているし、すずかも同様だ。

 できるなら彼女の力になりたいし、協力を惜しむつもりもない。が、どうにもできない問題も同時に存在している。

 それが、時間だ。

 これが社会人、例えばOLが働きながら話している会話であったなら問題はなかっただろう。

 しかし、彼となのはが出会い、なのはが彼を求め始めたのは今よりさらに前、よしんば彼が「彼女」を作らなければ芽はあるかもしれないが、そんなものに期待できるわけがない。

 まだ、付き合っているという話を聞いていない、彼は野球や勉学に夢中のようだがいつまで続くとも限らないし、最近は野球で目覚ましい活躍をしているとなれば嫌でも異性の目につく。それぐらいのことはアリサとて重々承知していた。

「なのはちゃん」

 アリサが思考のループに嵌っていると隣にいたすずかが立ち上がり、なのはに声をかけるとそっと抱きしめた。

「お兄さんはそんなにふらふら行っちゃう人なの?」

「そんなことない!」

 すずかの問いになのはは顔を上げて、強い口調で否定すると鈴鹿が安心したように笑った。

「なら、大丈夫だよ?早く大きくなってなのはちゃんに夢中になってもらおう?」

「私に…?」

「うんっ!」

 すずかの言葉を理解できないと言わんばかりに問い返したなのはにすずかが満面の意味で答えた。

「だって、なのはちゃんはこんなに可愛いんだよ?だから、早くおっきくなってお兄さんが無視できない位美人になってお兄さんを振り向かせよ?」

「そうよ!だいたい、あんた、あの人にお弁当作ったり応援してるじゃない!思わず手が出ちゃうくらい可愛くなればいいのよ!」

 すずかの言葉に後押しされるようにアリサがなのはを元気づけ、だいたいね、と言葉を続ける。

「うちのパパとママだって似たようなものよ?パパにママが猛アタックしたんだから」

 最も、それはある程度の年齢になってからの話だったがそれは伏せる。

 せっかく、立ち直ってきたなのはの勢いに水をかけるつもりなど、彼女たちにはない。

「大丈夫なのかな?」

 恐る恐る、といった風になのははふたりに聞くと、大きく頷くと異口同音に答えた。

「当たり前!」

 実際に彼女と結婚すると言う目がない訳ではない。

 原作主人公と言うだけあり抜群の容姿に加え、家事を積極的に行ってきた経験値から料理もそこらの家事に慣れない新妻よりよほど上手く、彼の好みもよく理解している。

 主人公…と、言うよりも『管理局』や『非日常』を引き連れさえしなければ、彼女が選ばれる目は確かにあるのだ。

 そう、引き連れさえしなければ…の話ではあるが。

 更に言えば、信志は彼女を欲しがっているものの結婚相手を探している訳ではない。

 そのまま結婚、となるのが理想とは思っているものの理想像を負いがちな年代に結婚をするつもりなど、彼に毛頭ない。

 これは彼の前世の経験でもあるが、10代で結婚と言うのはよほど金銭的に恵まれた状況でもない限り、生活に制限がかかる。

 たしかに彼はある程度、スキルを使って稼ぐことは出来るが必要以上にスキルを使うことはいらない注目を集めることにつながり、本格的に将来を決めるまではスキルの乱用を自粛していた。

 

 

 

 そんな中、ついに物語が物語として動き出した。

 

 

 

 

<だ■カ、□Юすケテ>

「え?」

 ふいになのはが聴こえた声に足を止めると一緒に歩いていた二人が足止めて振り返った。

「いま、何か聞こえなかった?」

 二人になのはは聞くが、二人は首をひねるばかりで聴こえた様子はない。

<僕ノ声が、聞こЭマスすか?>

 ノイズがかっているがはっきりと聞こえた声になのはは引き寄せられるようにふらふらと歩きだし、ふたりは一瞬、呆気にとられるものの、すぐになのはを追いかける。

「ああ、もうっ!どうしたのよ!」

「なのはちゃん、待ってよ~!」

 なのはの行き成りの行動に困惑し訳が分からないと追いかけるアリサとすずかは、さほどかからずしてなのはに追いつき、しゃがんでいる場所に何かいることに気が付いた。

「フェレット…?」

「かな?怪我してるみたいだけど」

「うん、こんなところでどうしたんだろう?」

 アリサがボロボロの物体が動物…自分の知る知識の中でフェレットであることに気が付いて名称を出してみるとすずかも同じ種類に思い至ったらしく、フェレットの状態を気にしている。

 先についていたなのはがそっと抱きかかえ上げると、僅かに目を開いたフェレットがなのはの手をなめると再び、気を失い倒れた。

「び、病院ってどこだっけ?」

「ええと、あっちにあったとおもうよ」

「行きましょう、流石にほっとくのは寝覚めが悪いわ」

 3人がワタワタとしながら病院に行くと大したことはない旨が説明され、アリサが鮫島を呼び出し料金を払おうとするもやんわりと断られている中、ゲージの前で会議が行われていた。

 目を覚ましたフェレットがあたりを見渡している。

 元気そうなのはなにより、と喜んだのもつかの間、3人は深刻な表情で頭を悩ませていた。

 即ち―――

「うちじゃ、流石に飼えないわ、犬に食べられちゃうかもしれないし」

「私も難しいかな、アリサちゃんじゃないけど猫がいるから」

「わたしも飲食店だから桃子さんに迷惑かけられないし」

 犬猫が大量にいる家にフェレットを放つのは、このフェレットの精神衛生はもとより生命の危機にさらされかねない、なのははなのはで家が飲食店である以上、動物はご法度である。

 決定意見が出ないため、一旦、病院で預かってもらい後日、学校で飼ってくれそうな人を探すという方向で落ち着くと解散の流れになりそれぞれは帰宅する。

 

 

 

 

 なのはは夕食もそこそこに切り上げるとフェレットの飼い方を、パソコンを使って調べる。

 人に勧める以上、何も知らないで進めるわけにはいかない。と言うのが彼女の言葉である。

 下調べも一段落したころ、また、声が聴こえた。

<誰か、助けて>

 聞き間違えではない。

 今回ははっきり聴こえた。

 誰かが助けを求めている。

 何度も何度も、助けを求めている。

 なんて、うらやましいんだろう。

 助けを求めることのできる声の主が、羨ましかった。

 なんで、助けを求めることができるんだろう?

 誰も―――

 助けてくれないかもしれないのに―――

 嫌われるかもしれないのに―――

 恨まれるかもしれないのに―――

 疎まれるかもしれないのに―――

 きっと、声の主はそれでも希望を持っていられる人なんだろう、それが、何よりも羨ましく聞いてみたかった。

 なんで助けを求められるのか?

 声のするほうへ歩きなのははため息をついた。

 やっぱり、誰もいない。

 声の主も見捨てられたんだ。

 だって、こんなに聴こえる声なのに、誰も動いていない、まるで聴こえないみたいに。

 ああ、でも、あの人なら来てくれているのかもしれない。

 だって、あの人は私も助けてくれた、なら、あの人が来てくれているかもしれない。

 なら、行ってみようかな?

 これは、悪い子がすること、お巡りさんにつかまったらきっと、士郎さんも桃子さんも困るし、怒るだろう。

 でも、良いと思った。

 なにか、すごく疲れた気がする。

 最近、『疲れた』と思うことが多くなってきた。

 緩慢な動作で靴を履くと、置き書きにコンビニに行くと言う旨を書き残し、家を出るとゆっくりと夜の街へと歩きだした。

 何時からだろう?この『疲れた』と言う感覚に気が付いたのは?

 寂しいと思っていた筈がいつの間にか疲れたに変わっていた。

 てくてくとまだ聞こえる声の聞こえる方向へ、考えながら歩く。

 ああ、そうだ―――

 私が人形にされる言葉を言われた後に感じるんだ―――

 どうすればいいんだろう?悩みながらもふと思う、その分、楽にしてくれる人がいる。

 あの人に会えればきっと楽になる。

 だから、あの人がいるかもしれない声のする先へ行ってみよう。

 でも、いたのは怪我のしたフェレット。

<きて、くれたの?>

 フェレットがなのはをじっと見つめるのを頷くことで肯定すると、フェレットは慌てたように身を正し器用に頭を下げた。

<ありがとう…あなたには才能がある。僕にその才能を…力を貸してください!>

 このフェレットが必死になのはわかる。

 けど、私はそんな力を求めてはいない、欲しいのは…。

 欲しいのは、何?

 私は、ナニガホシイノ?

<大丈夫ですか!?>

 行き成り、なのはの頭にフェレットの声が響き現実気に引き戻され小さく頷く。

<さっき、通りかかりの人が襲われて向こうへ、公園へ逃げていきました。だから、お願いです、力を…力を貸してください!>

 誰、か、が襲われた?

「誰?どんな人?」

 思わずフェレットを抱きかかえ上げ、問い詰めてしまう。

<こ、こんな人です!レイジングハート、お願い>

 慌てた声でフェレットが胸もとの宝石に話しかけると宝石が輝き、映像を投影しだすとなのはは今度はフェレットを手から落としてしまった。

「お、にい、さん?」

 映像で襲われている人物は紛れもなく信志で、塊が繰り出す一撃をすれすれでさけるとコンクリートが砕け飛び散り、信志はその砕けたコンクリート片を投げ一瞬、ひるんだのを確認するやいなや走り出した。

「貸して」

<え?>

 映像では軽い身のこなしで屋根へと掛け上げると公園へ走り去る信志とそれを追撃し、体の一部を放つ化け物が移し続けられていた。

「貸して、早く!」

<は、はい!このレイジングハートを握って認証のキーワードを…わっ>

 我慢できずになのはが叫ぶとフェレットは慌ててレイジングハートを差し出そうとするが、その動作さえもどかしくフェレットごと宝石を抱えると叫んだ。

「力を貸して、早く!護るの!絶対に、失いたくないの!」

【stand by ready.set up.】

 宝石は、少女の叫びに答えるように、彼女の内なる力を形にしていく。

 ここに、魔導師が産声を放ち、桃色の濁流が柱となって誕生の喜びを表した。

 




 と、言うことでなのはちゃん、魔法に目覚めるの巻。
 ちなみにいきなり契約の言葉も言わずにレイジングハートを強制起動させてます。
 愛の力ってすごいですね、原作だと2回目の戦闘時に攻撃から守るために起動するんですが…この辺はインテジェンスデバイスのすごいところで、こっちで起動するのは祈祷型デバイスの大雑把となのはの魔導適性の高さのすごさだったりします。

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