リリカル For FFXI   作:玄狐

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魔を統べ、闇に舞う

 目を開ければ、空に浮いている。

 仮に、いきなりそんな状況に放り込まれて冷静に居られるだろうか?

 少なくとも、現在の地球においてそのような環境に放り込まれれば、混乱するのが普通である。

 が、少女は違った。

 あふれる魔力を己が力とし、意志による統轄を行い、デバイスの補助と流れ込む知識を元に今すべきことに必要な最低限度を読み込み、必要とされる公式を一瞬で編み上げ、呆然とその状況を見上げていたフェレットを回収すると公園に向かって飛び行く。

 向かう傍らで、さらに必要な知識をデバイスから吸い上げ、爆発的に増えたマルチタスクを使い順次展開していく。

 その姿は、異様の一言に尽きる。

 力に目覚めて間もない少女が、魔法に慣れ親しんだフェレットの指示を何一つ受けることなく、デバイスを制御下に従え必要なデータを吸い上げると、バリアジャケット、飛行魔法、空気抵抗の除去、魔力の探査、周辺地形の読み込み、生命反応の有無、などと言った複数の魔法行使を同時に行っている。

 彼女が来ていた服は光に解かれ弾ける頃には下にバリアジャケットの下地が形成されており、飛行魔法はその間もバージョンアップを行うことで安定性と飛行速度を飛躍的にあげていっている。

 風の抵抗が強くなったかと思えば、突如として抵抗は弱まり、周りに魔力の幕が張られているのをフェレットが驚いていると抱きかかえられていた腕がバリアジャケットの装甲でおおわれていく。

 それは、長らく魔法に携わってきた彼にとって悪夢であり、この状況を打破する希望でもあった。

 しかし、彼女の焦りの色は消えない。

「ねぇ、さっきの塊の反応が消えたの…どういう事?」

 公園の入り口から低空飛行で侵入し、魔力を負っていたなのはが息を乱しながらフェレットに尋ねた。

 フェレットは魔力の反応が消えたことに驚くが、まずはと封時結界を張り周辺の安全を確保すると魔力が一番濃いところへと走る。

 実のところ、一番混乱しているのは彼で間違いない。

 一助になれば儲けものと思って、救難信号を発したところ訪れた少女は破格の才能を宿し、既に少年の能力の外へと飛び出そうとしており、たしかに彼女の言うとおり、あれほど苦しめられたジュエルシードモンスターの反応が消失しており代わりに密度の高い魔力が周辺を覆い尽くしていた。

 理解が追い付かない。それが彼の素直な感想だろう、が自分の役目を忘れた訳ではない彼は自身の役目を果たすべく魔力の一番高い地点へと足を向けるとそこに青く光る宝石が転がっているのを見て思わず叫んだ。

「あった!あれだ!」

「やっぱり、本当にしゃべれるんだね…」

 今更ななのはの突込みにフェレットは、自己紹介もまだだったと思い至るがまずは封印が先決と、なのはに頼もうとしたとき、ジュエルシードは再び輝き黒い塊を纏って彼らの前に立ちふさがった。

「くっ、発動したのか!? まずはあれに…えっ?」

 なのはに指示を出す前に彼女はすでに動いていた。

 全身、いや、関節などの部分に桃色の羽をはやしたなのはがレイジングハートの宝玉の部分から魔力刃を展開させ、アックス上に広がる光をモンスターに叩き込むと体の各所に生えた羽から魔力流を噴出させ急機動を行い、上空へと脱出する。

 開いた口が広がらないとは、このことを表すのではないかと言うほど口をあんぐりとあけているフェレットを前に状況は刻々と進む。

「消えて…」

 周囲の分散魔力も巻き込んだ桃色の魔力光がレイジングハートの筒先へと集まり、彼女が号令のように吼え、その一撃を放った。

「なくなれぇぇぇぇぇぇぇ!」

【Divine Buster!】

 直射型と分類される筈の砲撃魔法はモンスターに当って尚、飛散することなく地面を貫く矛の様に放たれ、そのあとに残るのは強制的に封印状態に置かれたジュエルシードのみである。

「す、すごい…なんで、こんな辺境世界にこんな子が…」

【Sealig.Receipt Number XXI】

 驚いているフェレットをしり目にレイジングハートはジュエルシードを格納し待機状態に戻るとなのははゆっくりと地面に降り立ち、再びフェレットを抱えて走り出した。

「え?な、なんで?」

「だって、これだけのことしたんだよ!?すぐに警察来ちゃう、逃げないと!」

 言われて周りを見渡せば、ボロボロになった遊歩道に砕け散った長椅子、池に浮かぶ船の欠片、ちぎれた電線からは小さく火花が散っている。

 小さくフェレットにも汗が浮かぶ。

 確かに彼だけなら問題視もされないかもしれないがなのはは違う。

 間違いなく、何らかの関与もしくは情報を知っていると考えられ疑われるのは間違いない。

 理由はどうあれ、助けに来てくれた人物が現地の司法機関に捕まるところなど見たいはずもなく大急ぎで現場から離れていくのと同じく、現場に踏み入れた影があった。

 影は周囲の状況に驚き、飛び散った破片や穿たれた穴の様子を伺いパトカーの音が近づいてくるなか、ぴたりと動きを止め、ある場所へ素早く針を投げる。

「!?」

 不意に放たれた攻撃を息を潜めていた信志は避けるが、攻撃されたことで不可視と消音の効果が消え闇に溶けていた信志が姿を現すと影は深く腰を落として警戒態勢を取り出方を伺った。

「何者だ?」

 返す言葉は硬く、殺気さえ混じっている。

 信志は何も答えず刀を取り出すと軽くステップを踏んで柄の部分で影の腹を叩くと返す刃を振りかざす。

 咄嗟に影が手にした二刀を交差させ攻撃を防ぐが次の瞬間にはその場に崩れ落ちた。

「ふむ、見破り…されるとは思わなんだな、流石は魔王一族だ。スタンは有効っとこれは重要だな、メモしよう」

 聞こえていないであろう影を見ながら呆れ交じりに呟き、その場から離れると、1,2秒をしないで影が目を覚ますが既に信志がいないのを察すると僅かに肩を落とすが警察官が影のいる方向へ寄ってくるのを察し姿を消した。

 

 

 影は素早く走り、家へと戻ると出迎える二人の人影があった。

「父さん、なのはは!?」

「無事だ…が、状況が掴みきれん」

 影のように動いてきた人影は家の明かりに照らされ、寄ってきた恭也に詰め寄られ厳しい表情を崩さずに答えた。

「どういう事?」

「不可解な現象が起きた…としか言えないな、戦いの気配がするに行ってみたんだが、さっぱりだ」

 美由希が続きを促すがハッキリしない士郎の言葉に恭也の眉間に皺が寄る。

「父さんらしくないな…でも、そこで何かはあったんだろ?」

「ああ、戦闘痕が2種類残されていた」

「2種類?どういう事?」

 状況を整理していく二人に美由紀が質問することで話を進めていく。

「一つは人の手によるものだ、踏込の跡や爆発と思しき痕跡があった。もう一つは…」

「もう一つは?」

「分からないんだ、どうやってあんなふうにやってのけたのか全く分からない」

 状況を詳しく説明していく、少なくとも解析できるのは踏込や爆発物での戦闘だけで一瞬であんなに深々と地面に亀裂を入れるような方法は見当がつかず、何かの風圧を当てたような場所などもありもう一つの戦闘法が全く思いつかなかったのだ。

「なにより、相当な手練れがいる」

「なに?」

「お父さんが言うってことは、よっぽどだよね…?」

 士郎の言葉に緊張が一気に高まる。

 この3人の中で最も実力が高いのは、やはり士郎であり、その為、なのはが出た後に追いかける役を担った。

 書置きにはコンビニとあったが、一度も夜中で歩くことはなく勝手に出かけることもなかったなのはがいなくなったことに不安を感じた高町家の面々はそれぞれに分かれ周辺の探索へと向かい、美由紀はコンビニ、恭也は家、士郎は周辺の探索に当たっていたが異常を察し、美由紀と合流すると二人に家に残るように伝え、公園へと向かったのだ。

 結果、怪しい人物…信志と遭遇し一戦を交えるも意識を奪われ逃げられると言う失態を犯した。

 決して、自身に慢心をしていたつもりはなかったがどこかに油断があったと後悔しながら説明していく。

「父さんの飛針をかわして逆に一撃入れて、尚且つ気絶させるほどの相手か…」

「どんな化け物…それ」

「神速を使ってこそいない…いや、使う余裕を与えてもらえなかったと考えるべきか、いずれにせよ、思っているよりも複雑なのかもしれないな…なのはにも帰ったら話を聞いてみよう」

 更なる情報が必要と判断し、士郎は桃子に事の顛末をまとめて伝える為に家に入り、残された兄妹は門の前で待つこととした。

 




 あとがき

 見破り>>MGS魔法を見破ることのできるモンスターを指す。
 スタン>>気絶すること、こちらは踊り子のアビリティや魔法、ウェポンスキルからの発生可能

 なのはがやたら高機動型強襲機になってない?
 >>小型凝縮したGP03みたくなってます。もしくはビームバズと多目的ミサイルを積んだGP02、自棄になるとスターライトブレイカーなる戦略兵器を打ち出します。

 解説

 RX78GP02CA-NANOHA(rapeseed blossom)
 一年戦争後に開発されたMS、致命的な一撃を入れ脱出するため、高機動重装甲となっているが小回りが弱い。一撃を入れる前や後の効率運用のためビームバジなどの強化プランが打ち出されのちに改修された。改修後はビーム色がなぜか桃色となる不具合が発生し予定出力を大きく上回ることになるがジェネレーターの出力が足りないためお蔵入りとなりGP計画の中止とともに解体されるはずだったが一部有志により極秘保管されのちのグリプス戦役にて某コロニーを制圧に来たティターズに対し『お話』と称してこのMSにて出撃した教導官が存在しているのが確認されているがNANOHAと言う実名ともコードネームとも取れる名前が残るのみで詳細は一切不明、出撃時にはジェネレーターの問題も解決していたらしくGディフィンダーと同様に技術を取り入れ出力の不足を補っていたと考えられる。
 RX78GP03rapeseed blossom
 オーキスシステムと呼ばれるデバイスにMSが入ることで運用する。フルアーマープランからの発展と言われRX78-8FA型を発展させ、そこにはジオン系MAであるビグロなどの運用データから得られた経験が蓄積されていたがソーラレイにより大破するもジャンク屋により回収されている。
 オーキスシステムを廃絶しMSとMAの一体を目指したい規模改修が行われ、問題とされていた小回りになさや接近性能の向上が図られ、奇しくもGP00と似たコンセプトとなっているがこちらはオーキスにレイジングハートと呼ばれるAIを搭載し搭乗者をサポートする形となる。
 小型化こそされているがIフィールドの出力は明らかに向上しており、的を小さくすることでさらに堅牢に仕立てたと当時のメカニックの言である。
 武装は大口径ビームライフルだがこちらは口径からキャノンと言って差し支えはなく、バックウエポンからは爆導縛やマイクロミサイルポット、試験的にファンネルビットを搭載され他は一切廃止している。
 本MAの最大特徴はMSの三倍以上の体積に当時としては珍しいサイコフレームを可能な限り組み込むことでNTや強化人間の効率運用化を目指していたジャンク屋からはとても考えられない高級ワンオフ機として仕上がっており、その素材出所はいまだに不明となり議論の的となっている。
 なお、搭乗者はユーノ・スクライアが当初運用していたがアクシズが該当宙域攻略の際、MAが小破しパイロット自身も怪我を負ったため、偶然その場に居合わせた少女が搭乗、レイジングハートの補佐と本人のNT適性の高さからアクシズから送られた2中隊をほぼ壊滅に追いやり、ハマーンに『悪魔か…?』と言わしめた逸話が残っている。




 勿論、嘘ですよ?


 なお、本SSは皆様からの応援とお声により構成されています。
 よろしければご感想等いただければ、ありがたく思います。

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