リリカル For FFXI   作:玄狐

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お待たせしました、投稿いたします。


不重の想手

 若干、と言うよりも盛大に騒がしくなってしまった街を横に歩いている二人…傍目には一人と一匹ではあるが会話を続けていた。

 事情をユーノから細かに説明され、なのはは大凡ながらに理解し自分の置かれている状況を察する。

「つまり、私以外じゃこの状況に対処できない…のかな?」

「多分、難しいと思う。魔法じゃないとジュエルシードは封印できないし、なのは以外に念話に答えてくれた人はいないようだった」

 なのはに答えるユーノはなのはに言っていない不安要素について考えを巡らせていた。

 遭遇した現場は荒れおり、良くも悪くも誰かがあれと対処したのは間違いないのだが疑問が残る。

 なんで、鎮圧したのに関わらず持ち去ることはもちろん、封印さえしないで離れたのだろう?何より―――

 解決方法に謎が多すぎるのだ、残留していた魔力から一つはジュエルシードで間違い、問題はだれがそれを行ったのかだ。

 誰かが戦っていたのも間違いない、間違いないのだが魔力の反応が微量しかない。

 仮にも発掘者と考古学者の端くれ、分析と解析力には多少なりとも自信がある、故に間違いでないことが信じられないのだ。

 生身の人間がジュエルシードの発動体を倒して退けること自体がありえない―――

 魔力が微量しかないと言う事は魔法らしい魔法が使われていないことを表している。

 だった、どうやって?―――

 爆発痕はまだ分からなくはない、ここは管理外世界だ。

 魔法はなくても質量兵器ならある、この世界や地域がどのような治安状態か、爆発物を初めとした兵器群がどれぐらいの入手難度かは分からないが不可能ではない。と思う。

 が、それだけではジュエルシードの思念体は倒すことは無理だろう。なら、あれを散らした一撃の正体が理解できない。

 『それなり』の威力を持ってなけれなばならない一撃のはずだ。けど、そんなものが容易に携帯可能なのか?―――

 爆発物なら携帯も可能だが穴を穿つだけの質量か貫通力を持たせなければならない。

 しかしながら、穴の底には何もない。と言う事は何かで穴をあけ、それを持って行った。と言う事になる。

 どんな武器だ?―――

 無論、彼には火遁だけでも十分可能ではあるのだが、知らない側から可能性を考えてしまえばキリはない。

「ねぇ、ユーノ君?」

「ああ、なに?なのは?」

 ユーノはなのはから声をかけられ、思考の一部を止め慌てて返事を返す。

「あれを止めないとみんなが危険なんだよね?」

「うん、こんな事態を引き起こしちゃった僕が言うのもおこがましいんだけど、力を貸してほしいんだ」

 その為ならどんなことでもする。

 比喩ではなく、本音から出た言葉なのだ。

「そっか、みんなが危険なんだ…なら、やらないと、ね?ユーノ君」

 優しく頷いて見せたなのはに心から安堵するユーノは一瞬、見惚れ顔を赤くし顔をそむけて見せた。

「ありがとう、ユーノ君」

「こっちこそ、ありがとう」

 だから、見えなかった。

「そうだ、護るんだ…お兄ちゃんを」

 澱んだ昏い目で熱病に浮かされたように小さく呟く彼女が…。

 

 

 危機感が募っていた。

 時間がない、だんだん、会ってくれる時間が短くなっている。

 なのはにとって焦るのにはそれだけで十分、もしあの人に好きな人ができたらと思うと気が気じゃなくなるのを抑えた。

 迷惑をかけるわけにはいかない、子供の我侭だって限度があるんだと自身に言い聞かせる。

 でも、あの人のそばに居たかった。けど、そばにいる理由がないのだ。

 それでも会いたいと願うのは恋する乙女なら当然とも言えるし、それをよく我慢できているとも言えた。

 耐えて耐えて耐えきった。

 そんな中、彼女の自制心にヒビを入れるものがあったらどうなるだろう?

 何よりも簡単な問と答えが出る。

 いとも容易く崩れるほかないのだ。

 そうだ、お兄ちゃんを守るんだ―――

 そうしたら、きっとお兄ちゃんはもっと私を褒めてくれる。私を見てくれる。

 もしかしたら一緒に居てくれる時間がまた増えるかもしれない。

 なのはの中で期待が膨らみ、幸せな未来が思い浮かべられる中、ユーノが水を差すように口を開いた。

「この世界で魔法は使われていないみたいだし無用なトラブルは避けたいんだ、出来れば魔法は極力ばれるのを避けたいから秘密にしてくれる?本当は、こうやってることも違法に当たるかもしれないんだけど…本当にごめん」

 その言葉は、浮かれていたなのはの思考を冷やす水だったに違いない。

 なのはとて、バカではない、その一言で軽々しく回りに言いふらした時の弊害が予想される。

 この世界において魔法とは空想の産物であり、義務教育の行き届いた日本と言う国で言うなら状況にもよるが魔法とはペテンと同等であり、技術や出来事を指したりもする。が、この場合で魔法が使えると言って信じる人がどれくらいいるだろう?

 あの人なら信じてくれるかもしないが、同時に嘘つき、妄想家、精神的な部分での異常などを抱えている可能性を疑われるかもしれない。

 確かに私なら、まだ魔法使いになったの。と言ってもお兄ちゃんなら頷いてくれるかもしれない。けど、それが原因で離れられたら…?

 だめ、私には耐えきれない―――

「そうだね、ユーノ君…言ってくれてありがとう。私ももっと気をつけなくちゃ」

 そうだ、もっと気を付けないと些細なミスであの人に迷惑をかけたら嫌われるかもしれない。

 たぶん、気に負い過ぎとあの人は言ってくれる。

 けど、僅かでもその可能性があるなら、それは言うべきじゃない。

「気にしないで、巻き込んだのは僕なんだ。僕にできることがあるなら出来る限り手伝うよ」

「うん、ありがとう。私も早く魔法になれるよ」

 でも、お兄ちゃんに魔法を見せたら信じてくれるだろう。

 その時は、いろんなお話がしたい。

 だって―――

 そこまで考えてなのははある『物』を思い出した。

「ユーノ君、すぐに見てほしいものがあるの!」

 ユーノの答えを待たず、体を鷲掴みにし『グヘェッ!?』と言う割と危険な感じのする悲鳴も聞かずに家へ走り出し、門が見えてきたところで人影に気が付き足を止めると向こうから駆け寄くる。

 人影はなのはの前に立つなり怒気を隠さずに口を開き言い放った。

「こんな時間に何をしていたんだ!なのは!」

 なのはにとって恭也がここに居ることは計算外で、頭が一瞬だけ白くなる。

「それにこのフェレットどうしたの?」

 動きを止めてしまっていた間に姉の美由希にユーノを取り上げられてしまい慌てて、ユーノを返してもらおうと手を伸ばすがさらに上へと持って行かれてしまう。

「美由希さん、ユーノ君を返してください!」

 恭也に尋問されるよりも、美由紀に話しかけられるよりも、確かめたいことがなのはにはあり、優先順位など比べるまでもない。

 有り体に言ってしまえば、急ぐなのはにとって彼らは最早、邪魔者でしかないのだ。

「わ~、かわいい~。でもこんな時間にどうしてこの子を持ってるの?」

「それより、こんな時間まで何をしていたのか教えてもらうぞ、なのは」

 何より、失敗だったのはなのはとのコミュニケーションを取りたかった彼らは焦りすぎてしまったことだ。

 この場合は、恭也はなのはを心配し情報を集めることに、美由希はなのはとの話を伸ばすことに。

 それがなのはにとって何よりのストレスになると考えることもなく、久しぶりに得たチャンスを生かそうと必死になり、本当に見なければならない相手を見なかったことにある。

 一旦、間を置けばここまですれ違うことはなかったはずなのだ。

「・・・て。」

「え?なに?まってよ~もう少し触らせてよ。ねぇなのは、このこどうしたの?」

 俯き、喋るなのはを見ないでユーノをかまい声をかけ続ける姉と、

「なのは!俯いててもわからないだろう!」

「・・・い。」

 そのなのはを見てもなお、強い口調で話しかける兄に、

 決して悪気はない。

 姉は妹とつながりを保ちたくて、兄は妹を想い、一緒にいてほしかっただけだが。

「なのは!」

「心配したんだぞ、とりあえず、中に入って話を聞かせてくれないか?」

「・・・でっ!」

 声を聴いて家から出てきた親も、今のなのはにとっては障害に過ぎず、小声で呟き嵐が過ぎるのをこらえようと手をぐっと握りしめたとき、桃子がさりげなく言った一言で限界を迎えた。

「なのは?良い子だから言う事を聞いて、ね?なにがあったのかお母さんに話して?」

 何度でも言おう、彼らに悪気はない。

 桃子のセリフとて、特段悪いものではないのだ。

 愚図る我が子にお願いし帰宅を促す。

 普通の光景と言えるその一言、家に入ろうとしていたのを止めていたのは兄と姉でなのはが止めていた訳ではなく、この場合は彼らに一声かけてから移動するのがもっともなのかもしれないし、他に言い回しがあったかもしれない。

 ただ、一家はなのはを心配し、なのはしか見えていなかった。

 いや、もしかしたら、『なのは』を見ていなかったのかもしれない、『見えていた』のは不安や心配、『見よう』としていたのは初めて起こした不可解な行動とその理由解明かもしない。

 良い子、そう、なのははとても『良い子』、だから、こんなことするはずがない。

 それがそこにいたなのはとユーノを除く一同の認識だった。

「そうだよ、恭ちゃん。こんなところでなのはを怒ってないで家に入ろう?なのはだってわかってるもんね?」

 久しぶりになのは戸やり取りをして満足げにフォローする美由希も

「普段しないことだから気になるだろう!なのは、怒らないから教えてくれないか?」

 末妹が心配でたまらず声を荒げたものの落ち着きを取り戻しつつある恭也も感情的になりそうになるその恭也をたしなめる姉も…

 暗に良い子と窘め、

 先に家に入ろうとした桃子と士郎も…

 良い子だからと凡てを抑え込んだことに、

 ある種、見ても見ていなかったのだろう。

「うん、わかった」

 なのはの声に、感情と言うモノが抜け落ちていたのに誰も気が付かず、肩に乗っていたユーノだけが心配気に見上げてそのままついて行った。

 




さて、1週間無事毎日投稿できました。
ストック集めつつの作業になるので更新送れるかもです。


しっかし、うちのなのは様、見事に病んできてるなぁ…と最近気が付いた。orz

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