三為為為 三戦
とりあえず、あとがきで
噂、それは人が流す真偽不明な情報の塊。
その噂の一つが町を賑わせている。
為…いや、カニである。
皆さんのご存じの甲殻類に分類される生物-ナマモノ-で食べれば大変美味であり世界各国では様々な種類のカニが食べられている。
そんなカニだが、あまり大型なものはおらず、当然、子供クラスの大きさのカニなどいるはずがない。
はずがないのだが、この街に流れているのだ。
子供サイズの巨大なカニを森で見た。でっかい生き物が小川を逆上していった。等々ナドなど…キリがない。
そんな、知られざる噂の主の一日を追ったレポートである。
朝に呼び出される。
日もまだ出ていない早朝に僕はいつもの魚油汁にご主人に呼び出され、あるモノを探しに行くように命じられるとこっそり街に出てモノを探す。
モノはすごく小さくて、どこにある変わらないらしくなるべく人目の付かない場所を選んで探しているのだが、これがなかなか見つからないうえに人に逆に見つかってしまう。
僕を捨て駒やミサイル扱いすることなく、本当にペットのように扱ってくれるご主人にせめてもの感謝を表すためにも、頑張ろうと思う。
たとえ、水の中、草の中。
元々、水棲生物でもある僕らがこの近辺で探せない場所はない。
もしや、下水に落ちたのではと探してみたが残念ながら見つからず、がっかりしながらマンホールから出ると目の前に横倒しになった車椅子と倒れている少女、真っ向から向かってくるトラックがクラクションを上げていた。
目立つことはするなと言われているものの、見捨てるのはバツが悪い。
なにより、ご主人も見過ごしたりはしないだろう。
素早く彼女と車椅子の前に進むと爪を地面に突き立て力を籠め僕らの代名詞ともいえる
力を発揮して見せた。
シザーガード!―――
爪に力が入り少しだけ大きくなるのを感じながらそのまま、トラックに右爪を突き立て、左爪で地面に突き刺し勢いを少しでも削るべく抵抗を行う。
足に力を込め、地面に足のあった位置がわかるほどえぐれた跡が残っていくが、きにしている余裕はない。
バンパーを貫いた爪に力を入れ少しでも車体を浮かせるために上に持ち上げようとしたのが良かったのか、少女の手前でトラックは止まった。
足に力を入れ過ぎてがくがくしているし、爪も少し欠けてしまったが護れた結果に少しホッとする。
爪で車椅子を傷つけないように起こすと倒れたままの少女をつまんで座らせると頷いてみる。
自己満足かもしれないが、倒れている少女を車椅子まで運び届けました。
と、浸っている場合ではなく、すごい勢いで逃げようとしたトラックのタイヤを一つ爪で切り取ると、ドアを突き刺してそのまま放り投げる。
このまま、この不届きモノを警察に送り届けるのも騎士道としてはありなのかもしれないけど、そこまで目立つと流石にご主人に迷惑がかかってしまう。
しょうがないのでここで終わりと割り切り傷ついた体を癒すため、体を振り体に固定された藤籠からペットフード・イロプシンを取り出そうとするがちょうど割れた詰めの部分が引っ掛かり取り出せない。
ご主人によればジュエルシードモンスターなるNMが現れる可能性もある。
回復なしでは不覚を取る可能性も考えると食べておきたいのだが困っていると先ほどの少女が籠から取出し差し出してくれた。
「これをたべるんか?さっきはありがとうな?え~と、かにさん?」
面と向かってお礼を言われるとなんだかムズ痒くてペットフードを食べると泡を吹いて姿を隠す。
本来の用途とは違うのだがこれはこれでいいだろう。
腕を振り、さよならとあいさつをするとマンホールに身を隠しその場を離れた。
「なんやったんやろ…あれ?」
ものっそい勢いでトラック突っ込んでくるのに焦ったひとの一人が、うちの車椅子を倒していったんや。
嗚呼、うちもここで死ぬんやなぁっておもっとったら、目の前のマンホールからうちぐらいの大きさのカニが出てきて、なんか体ふるわした思たら、トラックに突進。
なんでかしらんけど、爪にひびが入った程度で済んだ上に内が引かれる前に止めよったん、これにはうちも夢かと思ったんやけど、呆然としていたうちを車椅子に座らせると、逃げようとしたトラックの前輪切り飛ばしてドアこじ開けた思ったら運ちゃん放りだしたんや。
信じられへんやろ?
うちもや!
んで、そのカニが何するか思たらなんか取り出そうとするやて、取り出せんとこまっとったから代わりに取り出して渡したらご丁寧に泡吹きながら手、振ってくれたんよ。
ちゃうで、別に危ない薬も病気もちゃうで?
なんか、えっらい、コミカルでかわいらしかったなぁ。
泡とんでったら消えてたけど、あれ、ほんまになんなんやろ?
―――助けられた少女のコメントより一部抜粋。
追記、後日見ていた猫から報告書を受け取り、いる訳もない物体を見た必死に説明する使い魔たる猫たちに精神鑑定が必要か頭を抱えるおっさんがどこぞで確認されたらしい。
少女を助け、怪我も治って喜び勇んで探索の続きをするとついに僕は、ご主人の探していたものを森深くは木の根で見つけた。
こんなものを探していたのか、と思いつつも籠に入れ帰ろうとすると真っ黒な衣装に身を包んだ、変な子がいた。
「それを渡してください」
髪は金色、目は赤。
事前に連絡を受けていた『Nanoha』ではないのは確かだ。
となると、略奪者となるのだが…。
「あの…、使い魔じゃないのかな?どうしよう、アルフ」
なにやら、独り言を始めた。
大丈夫か?この子?
ジュエルシードを籠に収めると、彼女に近寄り俯き加減な顔をのぞいてみるが驚いた顔をしているだけで、特段、変わった様子は見られない。
強いて言えば、顔色は悪いが許容範囲内だし医者でもないのに異常がわかるはずもない。
ああ、そうだ。
「あ、うん。カニのような使い魔なんだけど…まって、今、とりだそうとしてる」
なにやら、観察されているようだが気にせず目的の物を取り出すと彼女に差し出す。
「えーと、手を出せばいいのかな?」
ふむ、わかるのではないか。と思いつつご主人にもらった万能薬をわたす。これならどんな状態異常も大抵はばっちりだ。
もっとも、僕やご主人、モーグリ以外に効くかどうかなどは知らないが。
「ち、ちがうの、ほしいのはね、ジュエルシードっていう宝石なの…わかるかな?」
残念だが、それは渡せないのだ。目の前の少女がそんな恰好で街を歩かねばならない状況程度には、残念ではあるが、だ。
「ややこしいね、もらっちまえばいいじゃないか、こっちだっていそいでるんだし」
突如、後ろから聞こえた声が私の積み荷を盗ろうと手を伸ばしたのを気配で察すると爪を振り上げ、牽制を行いつつ離れる。
何をする!
威嚇を込めて爪を空高く突き上げてみるが、二人は固まっている。
「ねぇ、アルフ、この世界のカニはこんな風に動けるの?」
「何処の世界にもこんな器用なカニはいない気がするよ、フェイト」
未知の動きに若干だが感情が前に出て目を輝かせる少女とそんな少女を見てうれしさ半分、脱力半分で答える女。
だけど、と姿勢を低くする少女と拳を構える女、どうやら一戦交えねばだめらしい。
「せぇぇぇぇぇ、ハァッ!っ!?!かたっ!」
当然だ。私をなんだと思って拳で殴ってきたのだ?バカか、この女は?
爪で腹を突き、返す刀であごを打ち据え交差した爪を居合抜きのように振りぬくと容易く吹き飛んでいく。
どうやら、モンクタイプのようだがまともにやりあいたければ無想無念あたりでも持ってきてほしいものだ。
「アルフ!?」
鎌を手に突っ込んでくるのは少女、どうやら暗黒騎士タイプのようだが踏み込みが足りない!
刃の部分を鋏で受け、あいた片手で鎌の柄の部分を切り取る。
ビックシザー―――
一時的に限界を超える力を発揮した爪は鎌の柄を切断し、もう一撃を加えようとしたところで思ったよりも素早く後ろに下がり回避されてしまった。
地味に厄介な相手である。
ついでに空を飛んでいる。
なんとも、卑怯だ。
「な、なんなんだい…あれは?」
「分からない、けど…つよい!」
僕から言わせてもらえば、浮いていることのできる君らのほうがよほど脅威なのだが気が付かないのだろうか?
更に言えば、切断したはずの鎌の柄がくっついているのも理不尽だ。
「けど、これなら!」
言うや否や、少女が杖を振りかざし魔法陣が展開され穂先が触れた瞬間、
Thunder smasher―――
稲妻が迸り、僕を貫こうとした。
ここで、ミソなのは貫こうとしただけで貫けなかったのだが。
何故か?
僕がレジストしたからに他ならない、先ほどの少女から逃げるのにはったバブルカーテンも助けになっているに違いない。
やはり人助けはするものだ。
「ウソ…」
「そんな、なんなんだい、あれは…」
などと呆然としている少女をしり目に私は再びバブルカーテンを張ると、その場を後にした。
追記、あとでバルディッシュの映像記録でててきたかにさんを見てとこぞの大魔導士さんは生命工学書を一から見直し始めたそうです。
カニ・・・おそらくFFXIでお世話になってない人はいない。
○○油・・・獣使いのサブウエポンスロットにセットし、『よびだす』にて固定のモンスターを呼び出す。
シザーガード・・・えらく硬くなります。ディスペルやフィナーレなどがないと詰むPCも昔はいたんです。
ペットフード・・・ペティグリ○チャムではなく、合成で作られる消費アイテムで使うことでペットのHP回復とリジェネ効果をもたらす。
暗黒騎士・・・攻撃に傾倒したジョブで両手剣や鎌、両手斧などを扱います。暗黒魔法なども使い、一部からは絶大なる指示を受けるジョブ。
モンク・・・拳で語ります。夢想無念は相手の防御適性を無視し攻撃を入れる手法で堅かろうが柔らかろうが、実体がなかろうがこれの前にはみな平等。
バブルカーテン・・・泡のカーテン、シェルと同じ効果で魔法に対する防御力やレジストを向上させます。