リリカル For FFXI   作:玄狐

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でたなHNM!ってあれ?

 しかし、叩いた後でトンデモナイことに気が付いた。

 いま、この高町家にいるのはHNMの中でももっとも凶悪な『Takamati Nanoha』の可能性が極めて高いことに気が付いたのだ。

 これがなのはだったら、死亡フラグになりかねないんじゃないのか?

 そう思ったが吉日と、翠屋のほうへ出直そうとした瞬間、地獄の門は開いた。

「おかえり!」

 そこにいたのは栗色の髪をサイドテールに結んだ幼女。

 間違いなく『Takamati Nanoha』だ。

 これが『なのは』であった場合、時間がたてばHNMに成長するらしい。

 フルアライアンス(…つまりは18人PT)とかでも鼻歌混じりに殲滅するHNMだ、いっそリンクシュルでも作って可能な限りの殲滅戦で倒すことが可能なのか検討に移ったあたりで、目の前の幼女がこちらを覗き込んでいた。

「あの…?」

 なんと言うか、覚悟を決めるしかない。

 あとは、以下に交渉をうまく行い、逃げるかだ。

 

 

 一人で家に帰ってお母さんが作ってくれたおやつを食べる。

 急に暗くなってきて雨が降ってきた。

 怖くて、寂しくて、心細くて、泣きそうになって受話器に伸びかけた手をあわてて戻した。

 私は、良い子だから―――

 そう、高町なのはは良い子でなくてはならない―――

 じゃないと、だれも私に声をかけてくれなくなる。

 きっと、お母さんは笑顔を見せてくれなくなる。

 きっと、お姉ちゃんはお話をしてくれなくなる。

 きっと、お兄ちゃんは頭を撫でてくれなくなる。

 それは、とても怖いことだ。

 それは、とても悲しいことだ。

 それは、とても寂しいことだ。

 だから、高町なのはは良い子でなければならない―――

 良い子じゃなければ、私にだれも見る気もしてくれなくなる。

 友達は言った。

 ナノハチャンは優しいね。

 そうすると、友達のお母さんは言った。

 ナノハチャンは良い子だからよ。と、確かにそういった。

 みんな、私を良い子だから誉めてくれた。

 なのはは、ナノハチャンで良い子でなければならない。

 じゃないと、みんなは消えていなくなる。

 膝を抱え、恐怖心と戦う。

 そんな中、戸をたたく音が聞こえた。

 雨の中、誰か帰ってきてくれたのだろうか?

 もしかしたら、雨で私が寂しがってないか誰か来てくれたのかもしれない。

 良い子にしていたご褒美かもしれない。

 そう思って、私が明けた戸の先にいたのは見たことのない、制服を着たお姉ちゃんと同じぐらいの男の人でした。

「あ~、そうだよ、そうなんだよ。なんで、俺はこんなことに頭が回らないかね」

 私を見るなり頭を抱えた男の人みて、私はサーっと血の気が引いていくのがわかった。

 私がしたのは家族を迎える為のあいさつ。

 でも、彼は来客、なら、私が言うべきなのは「おかえり」ではなく「いらっしゃいませ」

ではないだろうか?

 まずい、私は彼に悪い子と思われてしまう。

 そうしたら、彼は私から去って行ってしまう。

 また、独りぼっちになって一人で遅くまで待たなければならない。

 そんなのは、とても嫌だ―――

「ご、ごめんなさっ…ごめんなさい!」

 堪らず、私は彼のズボンの裾をつかんで謝り泣いていた。

 謝りだすと堰を切ったように涙が出てきて嗚咽が止まらない。

「おわっ!?なんだ!?落ち着け!」

 男の人が驚く様に叫んで後退りとしようとしたのがわかり、余計に鳴き声を強く上げてしまった。

「ごめんなさい!行かないで!一人にしないで!」

 そう、叫んだ私に少し間をおいてから男の人が初めて優しくなでてくれた。

 

 

 それでも僕はやってない―――

 なんてセリフを言っても許されると俺は思う。

 もっともそれは、この場にいる俺を含めた二人が10年位たたないと意味の分からないものとなり果てるだろうが。

 ああ、一部の特殊な趣味の方々にはあり得るのかもしれないが、戦闘民族高町に知られた場合、リアルに首が飛びかねない。と、条件を付ける。

 見方によれば彼女に別れ話を切り出して、彼氏に縋る彼女の図なのだが、如何せん、幼すぎる。などと考えていると幼女が震えながら叫んだ。『一人にしないで』と。控えめに見てもこの家は大きい。そんな家に、一人で待つ彼女の心は如何様なものだったのだろう?

 フラッシュバックするように病室で伽藍洞になった空間に一人まつ、前の自分がよぎった。負担になりそうだからと言われ、せっかく来た友人知人が面会を早めに切り上げられない様に必死になって場を盛り上げ我慢した。夜は死の恐怖におびえて過ごした。昼は人はいたが付きっ切りという訳はなく人が恋しくて仕方がなかった。

 だからなのかもしれない。

 そっと、幼女を撫でた。踏み込むのが危険とはわかっているが、この状況で彼女を見捨てたら、きっとはとげが残る。笑っても笑えない、許しても許せない日が来る。

 なにより、自分に被った人間を見捨てる。そんなことをしたら自信が許せないだろう。

 幸いにして、今は幼少期。

 手の打ち様もあるだろう。

 楽観的とは言うなかれ、うまくいけば場は収まり、学校に上がっていた相談は取り下げられる。逆を言えば、このまま帰れば禍根が残る。それだけは絶対に避けたい。

 あー、そこ、腹黒って言うなよ?

 どう見てもよろしくない混乱の仕方をしている魔王の卵に対し、コミュニケーションを試みる。

 思い出せ、基本的な対人交渉は一通り学んだはずだ。

 前世の経験を無駄にするな、少なくともFFで学んだ追体験だけは裏切らないはずだ俺!

 あちらの理不尽大魔王こと、某博士は別としてだが…。

 たしか、目線を合わせるのが基本だったか?

 しゃがみこんで泣きじゃくる魔王の卵に視線を合わせて、頭を撫でる。

 出来ることならば、とんずらを使って逃げてみたい誘惑に駆られるがそこは我慢。

 なぜなら、これを納めない時点で此処の住人に気が付かれた場合、良い未来は微塵に想像できないからだ。

 間違っても、いきなりこの物騒な卵が孵って魔王とならん事をアルタナに願う。

「はじめまして、信濃信志といいます。高町美由希さんはご在宅ですか?」

 わかりきってるあたり、聞いてみるのは外道の極みということなかれ、少なくとも確認は大事、いなければプリントを渡して俺は帰る!そして、モーグリとプリンを食べるんだ!

 


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