リリカル For FFXI   作:玄狐

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少女の掌

 で…だ。

 これはどういった状況だ?

 漸く、解放されると思った矢先にかかってきた電話は胸糞悪いものだった。

 あれか?

 なのははペットか?

 なるほど、魔王はこうして作られたのか。

 などと考えていると、なのはが抱き着いてきた。まさか、メガンテでも使ってこないだろうな?と内心戦々恐々としていると、なのはが必死になって叫んでいた。

 なに、この別れ話を切り出したカレカノ状態―――

 落ち着かせようとなのはを撫でる。

 ひたすら撫でる。

 落ち着いてきたぐらいで撫でながら状況をまとめつつ今後どう動くかを考える。

 これは重要な選択肢と言えるだろう。

 間違えれば他の二次創作同様、済崩し的に管理局にばれて働かされるパターンになりかねない。

 ただ、何度も言う。

 これまでの選択肢ミスで状況は極めて悪い。どうするべきか悩む

 が、そこまで考えてふと思った。

 そこまで気にする必要があるのか?―――

 確かにフラグの成立は怖い。が、そこまで早急に立つものか?と言うものだ。

 積極的な介入を行わず、この子に蝕んでいる『孤独』を取り除けば条件はぐっと軽くなると言える。

 行ってみれば、近所のお兄ちゃん的なポジションに立てばあとはモブと変わらない生活が送れるのだ、試す価値はあるだろう。

 ならば、行動としてとるなら…とりあえず、食事を取らせて落ち着かせつつ、士郎の病院と部屋を特定、白にジョブチェンジをして高位回復魔法を行う。

 最悪、サポ学者にして女神降臨を行いリジェネIVとレイズIVをかければいい。

「なのはちゃん、とりあえずご飯にしよう」

 まずは、飯だ。落ち着かせなければ話にならん。

 なのはを落ち着かせつつ、戸惑う表情を浮かべさせたまま台所へと案内させ、また、渋い顔になるのを自覚する。

 冷めた飯、電子レンジであっためれば確かに温かいのだがそれとこれは違う。

 『暖かみ』のない食事など、如何に旨かろうと栄養に優れようとカップラーメンと変わらない。

 このまま、あっためて彼女に与えてもいいが、放置した場合に彼女が不安定になる可能性は否定できないどころか…さらに精神的な不安定さに加速させることになりかねない危険性が出てくる。

 メニューは鶏肉のソテーとグリーンサラダか、スキルとレシピを頭の中から検索をかけ使えそうなメニューを考え、頷く、幸いFFIXで作れるメニューは代替え品さえあればすぐに作れるし、応用も十分に利く。

 FFXIが終末期に入れられたアップデータの中で人気を博したものの一つ、ランチプレート。

 数種類の食事をギルドが販売していたプレートと合成することで作られる多目的ブーストを可能にする言わば『定食』である。

 作るのはチキンライス・王国風オムレツ・森のサラダ・ジンジャークッキーの4つにオレンジジュースである。チキンライスとオムレツを合成するとオムライスができ、それをプレートに合わせるとオムライスセットが完成する、FFXIであれば、オムライスはHP/AGI/攻撃が上がる食事なのだがプレートにすると更にMP/MND/Hmpがあがる。

 コストが高くなる代わりにステータスの上り幅が高く、高レベルエリアのボスを倒す時などは愛用される一つになったものだ。

 勝手に厨房に入って料理するのも如何とも思った為、なのはに待つように促し家から材料ととあるものをモーグリに言って倉庫から取り出してもらってきた。

「さぁ、食べるがいい」

 半分以上は桃子が用意したであろうものを加工しているため実際に使ったのは卵とオレンジ、少量の野菜ぐらいでクッキーは家の作り置きである。

 申し訳なさげに、どうしたら良いか分からずにオロオロしているなのはを見ていて和むものはあるが、目的を達成するためにもさっさと食べて情報を収集したいのが本音だ。

「でも、その、えっと」

「ふむ、割とよくできていると思うが…温かいうちに食べたほうがいい、冷めると不味くなる」

 そこから更に少し迷っていたものの、空腹には逆らえず食べ始めるなのはが目を輝かせてこちらを見た。

「おいしいです!」

「そかそか、たんとお食べ」

 そこまで喜ばれれば上々、オムレツはHQだったから味の補正もかかるのだろう。

 昔は、HQでは合成できない罠があったからなぁ…などと考えているとクッキーとジュースを残してなのはが皿を下げてきた。

「よしよし、全部食べたな…お腹は一杯か?」

「うん!」

 元気いっぱいに頷くなのはを撫でて、洗い物を再開するしながら横にいるなのはに声をかけた。

 これこそが今回の目的にして肝。

 なのはの歪み除去の最大の問題である孤独の解消である。

 

 

「しかし、君の姉は何をしているんだ?いくら忙しいとはいえ、まさか、店で働いている訳じゃないだろうに」

 オレンジジュースを飲み終わった私にお兄ちゃんは、お茶を入れると自分の分を湯呑に注いで呆れたように口を開いた。

 どうしよう―――

 お兄ちゃんに正直に言ったほうがいいのだろうか?お父さんは仕事で怪我をしたんだけど、周りには言っていない。でも、ちょっとならいいよね?

「えっとね、お父さんが海鳴総合病院に今、入院してるの…それで、お姉ちゃんは看病で」

「ええっ!?本当かい?それは…悪いことを聞いたなぁ。」

 聞くや否やお兄ちゃんは驚いてばつの悪そうな顔をしながら頭を撫でてくれる。

 しかし、不意に頭に乗っていた重みは消え、目を開けてみるとお兄ちゃんは鞄を開けて何かを取り出していた。

「お詫びにこれを上げよう」

 透明な液体と不思議な淡い白色の光を放つ欠片の入った瓶を、私に差し出した。

「これは?」

「これはお守り、願うとこの白い欠片は少しずつ消えていくって言われているんだ。きれいでしょ?」

 良くぞ聞いてくれましたとばかりに胸を張って答えるお兄ちゃんは、今までの真面目そうな印象とは少し違っていて、受け取ろうとしない私の手に瓶を握らせるとそっと微笑んだ。

「今夜に月のある方向を向いて願ってごらん、もしかしたら叶うかもしれない」

 微笑みながら真摯な目で私を見るとお兄ちゃんは立ち上がり、大きく背伸びをした。

「さて、そろそろ僕は帰るよ。お姉ちゃんによろしく」

「あ、はいっ!わかりました!」

 お兄ちゃんに言われ、時間も時間なためこれ以上は引き止めれないと判断して、玄関まで送ると手を振りながらお兄ちゃんは帰って行った。

 久しぶりに誰かとご飯を食べた…。

 もちろん、幼稚園でも食べたりはするけど、こうやって家で食べるのは本当に久しぶりだった。

 朝はお母さんがいるけど、準備で忙しそうで食べることはないし、晩はいつもレンジで温めている。

 ああ、そうだ、すごく楽しかったんだ―――

 お風呂に入って寝る準備が整った頃、ようやくお姉ちゃんたちが帰ってきたのか玄関が若干、賑やかになる。

 なんとなくなのだけど、あの輪の中に入り辛くて、少しだけ顔を出してお兄ちゃんが顔を出してプリントをおいて行ったことを伝えると部屋に戻って布団に入る。と、その時、机に置かれた瓶が目に入った。

 願いがかなうかもしれない―――

 不意にお兄ちゃんの言葉を思い出し、私は窓に瓶を置くと静かに願った。

 きっと、お父さんがまた元気になれば元に戻る。

 また、お兄ちゃんとお姉ちゃんが楽しそうにおしゃべりして、お父さんが私とお母さんがそれを見て笑うようなそんなときに。

 たから、どうか、どうか、私の孤独を救ってください。と―――

 閉じていた眼をそっと開けると、窓に置かれていた小瓶から欠片が消え、淡く輝く水だけとなっているのを見て、私はその不思議な現象を不振がるよりも先に、小瓶を守るように、縋るように抱きしめて眠りについたのだった。

 

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